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まとわりつくような幼稚なキスが私に送られる。
ねっとりとした舌が口内を荒し、気持ち悪く感じた。
だって目の前の男は…白蘭は私と初めて会って、好きでも何でもないから。
不快感に眉を顰めるとビクリ、と私の体が跳ねる。
…白蘭が、太股に手を這わせ始めたから。
ぞわっと寒気が襲って、体が恐怖で固まるかと思った。
このままでは好きでもない奴に抱かれてしまう。…そんなの、絶対に嫌。
何とか逃れようと暴れるけど白蘭の手はどんどん上にあがっていって……
……っ、そこには、銃を仕込んで…!
「ん。こんなもの、隠し持ってたんだね」
「っ、返して!それはっ…」
「翠徠チャンの愛銃、だよね?でも残念、返してあげれないよ」
危ないからねーと愛銃をそのまま床に捨てて、私を見下ろす。
ガシャン、と愛銃の落ちる音が無情にも響き、そのまま血の気が引いていった。
これで私を守ってくれるものは何一つ無くなった……
翡翠もパーティーだから、と置いてきてしまったから。
情けなくなる…私が、今まで誰にも負けまいと腕を磨いていたのに。
こんな…こんな形で負けるようなこと、絶対あってはならないのに。
空翠徠…いいえneve neraの名前が聞いて呆れる…っ
「フフッ♪いいね、その表情」
噛みつきたくなる。
そうゾッとする声で囁き、
―――ガリッ
「……っ!」
痛みに声をあげるのを必死で耐え、首筋に這う舌の不快感に眉を顰める。
ツゥッと伝う血を舐め上げるかのように這う白蘭の舌。
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪いっ…!
ギリリ、と手首に鎖が絡みついて食い込み、血が滲む。
それでも。…私、は。
―――バァァァンッ!
「「……!」」
勢いよくドアが蹴破られ、白蘭の行為が止まる。
ハッとしてドアに視線だけ向けて…目をこらせば。
綺麗な…どこまでも澄んだオレンジの炎が、燃え上がる。
……来て、くれたんだ………
「その薄汚い手を離せ、白蘭」
「……思ったより早かったね、綱吉クン?」
冷たい笑みを再び浮かべて白蘭はゆっくり私から離れる。
郁織もつな、と小さな声で呟き、呆然とドアを見つめていた。
煙が晴れ…パーティーの時の白いスーツのまま手に炎を灯した彼が姿を現す。
綺麗な綺麗な、オレンジ……大空の色。
そんな彼の隣に並ぶのは、…どこまでも不機嫌そうに無表情な…雲雀、さん。
(どうして、)
「予想外だったよ。…郁織」
「…っ!違う…違うの、恭弥…っ」
「黙れ。…裏切り者に用はない」
気付いたときにはもう、遅かった。
声もあげる暇もなく雲雀さんは銃を引き抜いて、郁織を撃ち抜いていて。
どさり、と郁織の体が赤く染まりつつ冷たい床に倒れ込み。…真っ赤に、真っ赤、に。
苦しい断末魔もなく、郁織の息は、止まった。
目の前で…自分が一番嫌いな人間が、死んだ。
(なのに……どうして…どうして、こんなに)
(虚しいんだろう)
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