胸に秘めたこの想いの行方は



『雲雀さんへ

この間は不快な思いをさせてしまってごめんなさい。
直接渡せない臆病な私ですが…どうしても伝えたいことがあります。

雲雀さんが好きです。
友達としてではなく、一人の男の人として。

でも…もう、会えません。
雲雀さんには黙っていたのですが、留学することになりました。
大好きなヴァイオリンのために……
雲雀さんが褒めてくれたから、決心がつきました。
今まで本当にありがとうございました。

     姫』




〜メーデー、メーデー〜




手紙を読み終える前に僕は走りだしていた。

ずるい……ずるい、よ…!
言い逃げなんて、許さない。
この僕にこの気持ちをはっきり自覚させておいていなくなるなんて……っ
僕だって…!

グッと拳を握りしめながら乱雑にバイクにエンジンをかける。
いつもより数倍もスピードを出して、全速力で空港に向かう。

お願い…間に合え…っ!

空港に着いて姫の姿を必死で探す。
黒い長髪に赤いリボンで結んで。
落ち着いた雰囲気を出している、後ろ姿……
姫…っ
一体どこにいるの…!?


「雲雀さん!」

「…!沢田綱吉…」


自分の名前を呼ばれて振り向くと、はぁはぁ、と息を切らせて走ってきた彼の名前を呟く。
なんで君もここにいるの。
困惑したようにそう問えば彼は少し怒ったような表情を浮かべられた。


「どうして…姫が雲雀さんに言わなかったか、知ってますか?」

「………」


何を、なんて言えなかった。
僕には言わなくて、彼に言った理由……
怒りなのか走ってきたからかはわからないけれど、彼の声は微かに震えていた。


「姫、言ってました。…好きな人ほど、別れが辛いって」


泣いてたんです。
でも、笑ってた。
哀しそうに、笑ってたんです…っ

―――あぁ、何て姫らしい。
最後まで君はそうやって笑っていたんだね……
泣くくらいなら、僕の側にいればいいのに。

……なんて、言えるはずがない。
僕はどれだけ姫がヴァイオリンが好きか知ってるから。
僕が並盛を愛しているように、姫も音楽を愛してる。
…最初から、止められるはずがなかった。

でも……それでも。
最後でいいから、伝えたかった。

僕が彼に背を向けて人間で溢れかえった空港を出ると一機の飛行機が飛んでいく。
僕は眩しい空を見上げ、その姫の乗っている飛行機に目を細めた。


「…好き、だ……っ」


そんな僕の本音は空へと消えて、



(虚しく飛行機の音にかき消された)

(頬を伝うものを、快晴の空のせいにして)



胸に秘めたこの想いの行方は

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