メーデー、メーデー



メーデー、メーデー

私の声…届いてますか?




〜メーデー、メーデー〜




絶え間ない盛大な拍手と称賛。
全ての人間が彼女の演奏に魅入られ、ブラボーと叫ぶ。
彼女――僕の記憶の中の彼女より数段も美しくなった――姫は10年前と変わらない幸せそうな笑顔で一礼した。
舞台から降りたのを見届けて僕は席を立つ。
外に出ると草壁が待っていて小さく微笑んだ。


「どうでしたか?恭さん」

「…変わらないね」


心が、と呟けばそうですか、と返された。
騒がしくなってきた出口に目を向ければ出演者達が出てくる。
僕は無言でそこに近づいて…友達らしき人と話ながら出てきた姫の前に立った。


「姫、」


そう呼ぶと姫の視線が僕に向かう。
キョトリと一瞬したがみるみるうちに目が大きく見開かれていった。

…あぁ、覚えてくれていたんだ。

(よかった……っ)


「雲雀、さん…?」


少し高くなった声が僕の名前を紡ぐ。
名前を呼んでくれただけなのに。
たったそれだけなのに、


(懐かしさと愛しさが溢れ出して)

(抱き締めたくて、仕方なくなる)


でも、それを抑えてゆっくりとさらに近づき、胸に抱えていた薔薇の花束を差し出した。


「約束…果たしにきたよ」

「嘘…っ覚えて…?」

「…それと、言い逃げなんてさせないためにね」


ふっ、と笑みを浮かべて薔薇を受け取らせるとゆっくり姫を抱き締めた。
そしてそっと唇を耳元に寄せる。
今までの気持ち、全部込めて。


(精一杯の愛を、君に)




「僕も君が好きだ、姫」

「雲雀さっ…」

「ずっと…僕の側にいて」

「…っ、プロポーズに、聞こえちゃいますよ…っ?」

「プロポーズしてるつもりなんだけど?」


雲雀さん、と再び僕の名前を呼んで。
姫は泣きながら僕に抱きついてきてくれた。
決してその声は悲しげなものじゃなくて、どこか幸せを詰め込んでいるような、そんな声だった。
姫の濡れた頬に手を添えて初めて姫にそっと口づける。

重ねるだけの、キス。

周りが冷やかしの口笛を吹いていたけど、そんなの気にしなかった。
ゆっくりと名残惜しく離すと姫と目が合って、優しく両手で姫の頬を包み込む。


「僕の側にいて…姫」

「…っはいっ…!」


ふわり、と。
まるで大輪の花を咲かせたように笑う姫をもう一度、思いっきり抱き締めた。

やっと…やっと、戻ってこれた。
僕の大切な場所に……




メーデー、メーデー

この想い、君に届いてるかい?


――愛してるよ、姫。



メーデー、メーデー

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