番外編



珍しく雲雀さんがノックをしてオレの執務室に入ってきたのに驚いて思わず立ち上がる。

いや、だって、ね…逆に怖いからさ!

そしてその後に入ってきた彼女にもっと驚いて握っていた万年筆を机の上に落としていた。
(それに怪訝そうな顔をした雲雀さんを無性に殴りたくなったね!)





メーデー、メーデー 番外編





柔らかで優しい旋律がパーティー会場を一杯にする。
それを奏でている彼女は多くの熱い視線を一心に浴びているにも関わらず全く動じず、ただ楽しそうにヴァイオリンを弾き続けた。
その様子に相変わらず、と小さく笑って……そして、苦笑。

オレは隣でぶすっと…いや、拗ねている雲雀さんを振り返る。
なんていうか…こういう時だけ雲雀さんはわかりやすい。
手に持っているシャンパンを煽って、…あ、やばい。これはかなり酔ってる!


(目が据わってるんだもん!)

(…そういえば雲雀さんって酒、弱かっ、た…?)




「雲雀、さん…?」

「うるしゃい、よ、ヒクッ!」

「(完全に酔ってらっしゃるー!)」



雲雀さん、と呼ぼうとすると同時に彼女――姫の演奏が静かに終わった。
盛大な拍手に姫は優雅に一礼してステージから降り立てば、男達の群れ、群れ、群れ。(ってオレ雲雀さんみたいだ…!)
姫はやんわりと対応してるが明らかに困り顔。
止めに行こうと思えばゆらりと隣で影が動く。

え、と見て、時すでに遅し。
雲雀さんが姫のとこ行っちゃったよ…!
あああ…足取りも覚束ないし、舌は回らないし…色々とまずい!
そんなことも知らず姫は男達の対応に追われて苦笑ばかり。



「美しい人、今度僕のパーティーにきてくれませんか?」

「ごめんなさい、親しい方のパーティーにしか行かないことにしていますので」

「では今日くらい踊って…」



あああっ!あの野郎姫の腕掴んで…っ!
気安く触るな!触ると……


―――ぐいっ



「…っ!?」



ひ、ひひひ、雲雀さんが…っ!
あ、お、落ち着いて説明しよう。
雲雀さんはさっきまでの酔いを感じさせない力で姫の腕を掴んで、そ、それで…その…姫に大人の深ーいキスを…っ

あーっ!恥ずかしすぎる!
しかも何気に激しい!
リボーンが満足そうに笑ってるのがすげぇ気になるけど恥ずかしい!
なんの罰ゲームで友人のキスシーンを見ないといけないんだよ…!



「んっ…ん、ふ…っ」



ちゅ、というリップ音と共に唇が離れ、姫の姿を隠すように雲雀さんは姫を包み込む。
そして少しだけとろんとした、でもやっぱり鋭い眼差しで周りにいた男達を睨み、



「姫は僕のだ。勝手に触るな」



僕の発言。

雲雀さんはそのまま姫を隠しながらパーティー会場を出ていった。
……残ったものといえば。

「最強の守護者雲雀恭弥の溺愛人は世界一のヴァイオリニスト」

という噂であり事実だけ。



(「ツナ、お前も雲雀を見習っていい女見つけてさっさと十一代目作れ」)
(「何気に結婚しろって言ってるー!?」)

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