穏やかな空気によい夢を



「雲雀さん」



そう名前を呼ばれて僕は不機嫌さを隠さず、呼んだ本人……今やボンゴレという巨大マフィアを束ねる男となった沢田綱吉を睨み付けた。
折角…懐かしい夢を見ていたのに。
何、と短く問えば沢田は慣れてるとばかりに苦笑した。



「そんなとこで寝てたら風邪ひきますよ」

「…僕の勝手だろ」



それにそのセリフは姫だけが言っていい言葉だ……





〜メーデー、メーデー〜





「そんなとこで寝てたら風邪ひきますよ」



クスクスという柔らかな笑い声に僕は重たい瞼をあげる。
霞む視界には姫の笑顔。
もう一度目を伏せるとまた笑い声が降ってきた。



「もう……仕方ないですね」



姫の声と共に僕の上に温かな重み。
微かに香った姫の甘いシャンプーの香りにそれが姫のブレザーだとわかった。
僕は睡眠を欲する体を叱咤して体を起こすとブレザーを姫に押し返した。



「…いいよ。姫が風邪ひくでしょ」

「私そんな柔じゃありませんよ?」

「いいから。着てて」

「…仕方ないですね」



姫は小さく笑ってはい、と正座して自分の足を軽く叩いた。
え、と固まれば姫は不思議そうに首を傾ける。

…そんな顔をされるとこっちが困るんだけど。
膝枕…なんて。
姫はいいわけ?

…そんなこと聞けるはずなく、僕は黙って恐る恐る頭を乗せた。
冬は越したけどまだ肌寒く感じる風が吹き抜ける。
でもかけられた姫のブレザーと姫の温もりにまた眠気が襲ってきた。


今度は逆らうことなくして揺蕩う意識に身を任せた。
眠りにつく直前に聞いた姫のおやすみなさい、という言葉に乗せて……



穏やかな空気によい夢を

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