Come per me, il cuore fu preso involontariamente.



びっくりしましたよ。
綱吉くんが突然走り出したかと思えば、玄関に向かったんですから。

でも何かあるとは思っていたので理由もしらずにとりあえず綱吉くんの後を僕も走った。
玄関につくと、門番と一人の綺麗な女性が目に入る。

なんだか必死な表情な彼女…誰かの愛人でしょうか?

でも、愛人にしておくには勿体ないくらい綺麗な女性ですね。
容姿も綺麗ですけど…その、目が。
日本人みたいで、黒い瞳がとても綺麗に思えた。

彼女を綱吉くんは“海鈴”と呼んで駆け寄っていく。

綱吉くんの恋人なのだろうか?
彼女は綱吉くんを見るとホッとしたような表情になる。

でも、綱吉くんの恋人にしては違和感のある表情ですね。
普通、恋人に会ったら嬉しそうな顔をするものでしょう?

どうして安心したような表情なんてするんでしょうか……




「どうしてここに…!どうやって来たの?」




綱吉くんは心配そうにそう聞いた。
すると彼女はどうしてかメモ帳に何かを書き始める。

…そういえば門番と言い争っている時も、何もいっていなかった。
綱吉くんはそれが当たり前のように接しているということは…

もしかして彼女は、声が出ない?

事実はわからないが、僕も綱吉くんの隣まで歩いてメモ帳を覗き込んだ。…日本語で読めないんですが。



『たくさんの人に聞いて来たんです』

「そうだったんだ…でも、どうしてここに?」

『……』



綱吉くんの言葉に彼女―――海鈴さん、でしたっけ?―――は哀しそうに目を伏せた。

本当に悲しそうで…今にも泣きそうな表情。
この僕が慰めてあげたい、と思ってしまうような。

そんな彼女の様子に綱吉くんは自分のことのように眉を寄せた。
そして優しく彼女の肩を抱いて、とりあえず中に入ろっか、と勧める。
彼女はこくり、と頷くと綱吉くんにあわせてボンゴレの屋敷に入った。

門番には引き続きそこにいるように指示して僕もその後に入っていく。
しばらく歩いて、再び綱吉くんの部屋に入ることになった。

綱吉くんは海鈴さんをソファーに座らせて、紅茶を淹れに行く。
手伝うつもりは全くなかったんですけど、その後をついて行くことにした。

海鈴さんのことを、聞きたくて。



「綱吉くん、彼女は…?」

「彼女は…瑞樹海鈴。たぶん、雲雀さんの、好きな人」

「はっ…!?」



ひ、雲雀くんの、す、好きな人…!?

綱吉くんの予想だにしない言葉に思わず僕としたことが素で驚いてしまった。
でも、仕方がないと思う。なんせ相手があの雲雀恭弥なのだから。――孤高を好み、群れを厭う…どこまでも一人を貫く人。

そんな雲雀くんが人を好きになるなんて…雲雀くんも人の子だったんですね。

様々な意味を込めて、ほぅ、と一人感心していると綱吉くんが慌てたようにしっ!と指を口の前に立てた。




「声が大きい!静かにしろよ!…もうわかっていると思うけど、海鈴は声が出ないんだ」

「…やっぱり、そうなんですか」

「でもすごくいい子だ。だから傷つけるようなこと言うなよ」

「言いませんよ、そんなこと」



そんな会話をしている間に紅茶は出来上がって綱吉くんはそれを持ってソファーに戻る。
綱吉くんにまだ気づいていないようで、彼女はやっぱり哀しそうな顔をして俯いていた。
綱吉くんは微笑を浮かべて海鈴、と彼女の名前を呼ぶと彼女はぱっと顔をあげて小さく笑う。

彼女の笑顔は知らないけれど、何故かその笑顔は本当の笑顔じゃない気がして、無理して笑っているようにも思えた。
綱吉くんもそのことに気付いているようで微笑が小さな苦笑に変わる。
けれど、そのことを綱吉くんは面と向かって言葉にすることはなかった。



「…紹介するね、海鈴。彼は六道骸。雲雀さんの同僚、ってところかな?」

「六道骸です。よろしくお願いしますね、海鈴さん」



手を差し出すと海鈴さんは困ったように笑って手を握りかえしてくれる。
よろしくお願いします、と言いたかったみたいだったが、僕と握手をしているせいでそれを伝えられず、困ったように笑った。
でも声が出ない海鈴さんは口の形だけで教えてくれた。

お互いの紹介も終わって、綱吉くんが本題に入る。
どうしてきたの?と聞くと海鈴さんは哀しそうな表情に戻りながらも紙に何かを書いた。



『恭弥さんに、逢いたくて…』

「雲雀さんに?…海鈴、もしかしてこの前、雲雀さんと何かあった?」



綱吉くんの言葉に海鈴さんはゆっくりと頷いた。
と、いうことは雲雀くんの様子の変化には彼女が関わっているということですね。

この前、というのは僕が書いた報告書の交戦があった日でしょう。

海鈴さんは紙に書き込んで綱吉くんと僕に見えるように差し出した。
僕がイタリア語しか読めないことを言っておいたので海鈴さんの字もイタリア語に変化している。



『実は…私のせいで、恭弥さんに怪我を…』

「怪我…?」

「そんなこと一言も…」



と、言いながらハッとして口を噤んだ。

あの雲雀くんのことだ。
怪我したことを言うなんて彼のプライドが許さないはず。

綱吉くんも同感なのかまたか、と苦笑し始めた。
まぁ雲雀くんが怪我のことを言わないのはいつものことですしね。
怪我には慣れていますし、心配はしませんけど。

でも海鈴さんはそんなこと知るはずない。
海鈴さんは純粋に雲雀くんの怪我をとても心配している。

思った通り、優しい人ですね……



『私が、いたから…恭弥さんに怪我をさせてしまったんです。
恭弥さんに謝りたいのに、恭弥さんお店に来てくれなくて…』

「雲雀さんが海鈴を庇ったの?」



こくり、と頷くと同時に限界だったのか海鈴さんの目から涙が零れる。

海鈴さんは本当に優しすぎる人だ…この世界には、合わない人。

雲雀くんはきっと庇いたくて庇ったはずなのに。
いや、海鈴さんを巻き込んでしまったことが自分で許せなくて、距離を取り、絶対に守りたい、と思ったからこそ庇ったのだと思う。

それなのに彼女は危険を犯してまでここにきた。
あの交戦に立ち会ったなら、彼がマフィアだとわかっているはず。
雲雀くんのことですからマフィアだということを言ってないと思いますしね。

普通ならそれだけでもう雲雀くんとは関係を絶つはず。
怖い目にあってしまったのなら、尚更。

なのに彼女はマフィアの本部に…いつ殺されてしまっても可笑しくない場所に一人で来た。


だた、雲雀くんのために。


こんなにか弱く見えるのに…海鈴さんはとても心の強い女性だ。

そんな彼女を尊敬して、僕は、



思わず心を奪われそうになった
(憧れだとわかっているけれど)

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