好きって言うまで放さねぇ



デート、と言われて外に出かけたはいいものの、特にすることもなく。

(実はデートなんてしたことがないからローは何をしていいのかわからなかったのだ)

帰ろうか、となってから一緒に歩き始めたが…やっぱり私はこの人がどうして私を好きになったのかわからない。
どう考えても私との接点はないし、先輩のことを褒めるどころか貶すことの方が多い。
嫌いではないが、先輩にはもっといい女性がいっぱいいるように思うし、より取り見取りなんじゃないか。
…やっぱり私と付き合っている意味がわからない。(いや、まだ付き合ってるとは思ってないけど)




「あれー?ロー?」

「………」

「やっぱり!ローじゃん!久しぶりー!!」




ぼんやりしていると前からそんな声が聞こえてきて、私の視線と先輩の視線が前に向かう。
笑顔で駆け寄ってくるとても可愛らしい女の子。
華やかで、どこか守ってあげたくなるような女の子で、先輩とすごく親しいのかぎゅうっと抱きついた。
こんな可愛い女の子に抱きつかれたら幸せだろうな、なんて思っていれば先輩は無言でその子の体を突き飛ばした。




「…っ」

「え、あ、先輩!何してるんですか!」

「触るんじゃねェ」

「いやいやそんな言い方「あなた、何よっ…!」




キッと涙目の彼女が私をきつく睨んでくる。
え、えっと…何で私が睨まれないといけなんだろう。突き飛ばしたのは先輩なのに。
その涙目にタジタジになっていると先輩がかばうように私と彼女の間に入る。




「こいつは関係ねぇだろ。さっさと失せろ」

「…っ!!」




先輩のきつい言葉についに彼女の涙腺が崩壊して泣きながら走り去っていった。
あんないい方しなくても…なんて思うけど、これは先輩とあの子の話だ。私が首をつっこんでいいはずがない。

何も言わずにいると「悪りぃ」と何故か謝られた。
どうして先輩が謝るんだろう。私には何の被害もないのに。
それが私の素直な本音だったから少し首を傾げながら「別に気にしてないです」と返すと先輩は少し驚いたのか私を振り返り…小さく笑った。

その笑顔はいつもの何か企むような笑顔じゃなくて優しい、綺麗な笑顔だった。




「…だから、好きなんだよな」

「……そのことなんですけど、何で私なんですか?
先輩ならさっきの子みたいに私なんかより可愛くて綺麗ないい子がたくさんいて、より取り見取りだったじゃないですか」

「ばーか、んなの興味ねェよ」




ぐいり、と腕を引っ張られて、私の体は先輩の腕の中に吸い込まれる。
ぎゅうっと抱きしめられて私の心臓が自然と高まっていった。
…あれ、先輩の心臓の音も、速い…?




「好きって言うまで放さねぇ」


そう言った先輩の声はどこか切羽詰まっていて、少しだけ胸が締め付けられた。

…そんな声で言うなんて、ずるい。
私はただ先輩の背中に手を回すことしかできなかった。

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