夜空がきれいだったから
「ロー、ロー!」
「…ん?」
今日も今日とて医学書を読み明かそうとベッドの縁に座り、本を読み進めていたのだが突然外から聞こえた自分の幼なじみの小さな声とこんこんと窓を叩く音に窓に目を向ける。
そこには案の定というべきか姫が立っていて、ローは読みかけの医学書を置き、窓の鍵を開けた。
「ロー、一緒に行こう!」
「行くってどこにだ?今何時だと、」
「あの木のとこ!」
早く、とわくわくした感情も抑えずニコニコと笑いながらローを急かす。
あの木に登る時は自分も一緒、という約束を律儀に守る姫の気持ちは嬉しいが今は夜中。よい子はみんな寝てる時間だ。
…自分があまり“よい子”ではないことくらい知っているが。
それにしたって姫を夜に外出させるなんて……
「ロー!早くっ」
「…………………はぁ、わかった」
この姫の笑顔に「No」と言える奴がいたらオレの前に連れてきてほしい。
少なくとも、オレには無理だ。
医学書から手を離すと刀と帽子を代わりに持ち、窓から出れば姫は嬉しそうに笑う。
……畜生。そんな顔するから甘やかしたくなるんだ。
「ロー、こっち!」
「あんま走んな。転けるぞ」
「こけないもーん」
やれやれ、と後からゆっくりついていけば岬とあの木が見えてくる。
早く登ろう、とまた急かされて姫を抱き上げるとそのまま木に登った。
…今日は痛いとか言わねぇんだな、詰まんねぇ奴。
「わぁ…見て、ロー!綺麗ー…!」
「…へぇ」
満天の星、っつーのはこういうことを言うのかもしれねぇな。
夜空に浮かぶ星々が海に浮かんでいるみてぇで…確かに、綺麗だった。
自然と上がる口の端に姫は気づいたのかローが喜んでくれて嬉しい、とか言って微笑むからぐしゃり、と照れ隠しにいつもより強く頭を撫でてやる。
……あんま可愛いこというな、馬鹿。
夜空がきれいだったから
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