ことばじゃ伝えきれないから



「ロー、流れ星!」

「願い事はしなくていいのか?」

「あっ!えっと…お肉お肉お肉!」

「……どういう願い事だ」

「あ、明日の夕飯がお肉料理だといいなーって…………あは!」

「あは、じゃねぇよ。本当、ククッ、色気皆無だな…」

「い、色気…どうせないですよーだ。…胸も」

「それは今からオレが大きく、」

「オープンセクハラ反対!!」




滅べ変態が!とローを軽く叩き、再び姫は星を見上げた。

―――あれから何度かあの木に来て、姫とローは星を見に来ていた。
今日もいつも通り来たのだが今日は少しだけ違っていた。
…いつもなら姫が行きたいというのに初めてローが行きたいと言い出したのだから。
珍しい、と思いつつも姫はこの場所が大好きなので断る理由もなくついてきて、星を飽きることなく見ている。




「…なぁ、姫」

「んー?」




キラキラとした目で星を見上げながら明るく返事をしたが声をかけたローが黙り、姫は不思議に思ってローに目を向ける。
…と、同時にドクリ、と心臓が跳ねた。

ローが今までにないくらい、真剣な顔をして自分の顔を見つめていたから。

瑠璃色とも言えるアイスブルーの瞳に呑まれてしまうような、そんな感覚に陥り、姫は何も言えなくなる。




「姫、」

「……っ、」



するり、とローの手が頬に添えられて優しく親指の腹で頬を撫でる。
その手つきが余りにも優しくて姫の鼓動は早くなっていくばかり。
ローの瞳に熱が帯びたことに引き寄せられるように姫はゆっくり目を伏せれば、ローの唇は姫のそれと重なる。
深くもない、ただ重なるだけのキスだけど姫にとっては初めてのキスで、心臓の高鳴りが煩いくらいに響いた。



ことばじゃ伝えきれないから

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