STAGE.2
「新しい隊士の名無しくんくんとー」
パチパチパチ‥‥
「新しい女中の名無しさんちゃんだー」
ウオォォォォ!!
あれ、ちょ、リアクション違いすぎくね?
女中として紹介された名無しさんに興奮する隊士たち。
どんだけ飢えてんだよ、てめェらよー
呆れた表情というより、若干軽蔑の目を隊士たちに向ける名無しくん。
近藤の「よろしくしてやってくれ!」という乾杯の発声で、歓迎会と言う名のただ自分たちが飲むための口実だろってサラリーマンはよく言うよね的な飲み会が開催された。
ドンチャン騒ぎが開始される中、当然のごとく名無しさんの前には黒い輩が集合していた。
手に持つお猪口に次々と注がれるお酒と、次々と与えられる質問。
「名無しさんちゃんって歳いくつなの?」
『じ‥‥十八です』
「未成年?!お酒飲めるの?」
『す‥‥少しなら』
「じゃあ、彼氏は?いるの?」
カチャッ
質問の途中、喉元に当たった冷たい感触に、一人の隊士の顔が引きつった。
「質問の内容に気を付けなせェ」
「す、すんません‥‥隊長」
突き立てた刃を鞘に納めると、沖田はまた静かに酒に手を伸ばす。
いや、君も未成年だよね。
そんな感じで、隣に凶器を携えた保護者に見守られながら、楽しい時間が過ぎていった。
もう一人の主役である我が弟は、乾杯のお酒を一口飲んだ時点でバタンと倒れてしまった。
早くね?!
後で部屋に運んであげないと、と名無しさんが考えていると、襖が開いて一人の人物が部屋へと入って来た。
「「「『‥‥‥‥‥‥』」」」
え、誰ですか?
包帯をグルグル顔に巻いて、かろうじて目だけは見える状態のその人物に、全員が釘付けとなった。
ゆっくりとこちらに近寄って来たと思ったら、ガッと沖田の胸ぐらを掴んで無理やりに立ち上がらせる。
「オォイ、総悟。てめェ、さっきはよくもやってくれたなァ」
「あれ、土方さんじゃないですかィ。どうしたんですかィ?すっかり男前になっちゃって」
「んな訳あるか!今日という今日こそは叩っ斬ってやる!!」
土方が振り下ろした刀は易々と沖田に避けられた。しかし、この怒りを収めるためには一回だけでもコイツを殴らないと気が済まない。
いや、むしろボコボコにしたい。
というか、死んでくれ。
逃げ回る沖田を追い掛ける土方。もう飲み会なんて言ってられる状態ではなく、2人を止めようとした近藤は褌一丁姿でのびている。
え、何で褌?
驚けばいいのか、楽しめばいいのか、何だかもうよく分からない。
収拾が付かなくなって来たけれど、とりあえず皆大声で笑っていた。
こんな大勢で騒げることなんて初めてで、こんなに楽しいのも初めてだ。
“家族”ってこういう感じなのかなと名無しさんは思う。
その一員に迎えれているなんて、厚かましいのは重々承知しているが、嬉しくて仕方がない。
ガヤガヤ、ガヤガヤ‥‥
騒がしくても心地良い音を聴きながら、その飲み会は夜中まで続いた。
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「おはようございます、ミイラ方副長」
「ミイラ方さん、うぃーす」
「うるせェェェェ!!」