STAGE.1
「何でィ‥‥強くなったって言うもんだから相手してやったのに、もう終わりかィ?」
溜め息混じりにそう声を掛ける沖田に対し、その人物は痛みに堪えながら上半身だけを起こすと、
「いきなりバズーカ打って来るヤツがあるかァァァ!!」
と、大声で反論した。
おそらく、沖田が放った砲弾によって吹っ飛ばされたその人物が、土方の背中に勢い良く衝突して襖を大破させたという流れだろう。
いや、屯所内で何やってんだよ。
と、心の中でその場にいた隊士たちがツッコミを入れるが、口にしないのは‥‥以下同文。
バズーカの被害を受けて、所々焦げた隊服を着ているその少年は新米隊士か何かだろうか。
困惑した表情で隊士たちが中の様子を窺っていると、近藤がその少年に驚きながらも笑顔を向けた。
「おぉ、名無しくんじゃないかぁ!」
名無しくん、と呼ばれたその少年は近藤の存在に気付くと、身体をそちらに向けて軽くお辞儀し、
「お久しぶりです、近藤さん」
ニコリと人のいい笑みを浮かべた。
「大きくなったなぁ」と感心しながらまた豪快に笑う近藤は、少年の肩をバンバンと叩く。
ちょ、痛ェよ。
和やかな雰囲気が漂い始めたところだった、
「人の上にいつまでいんだ、このガキャァァァァ!!」
「うぉあ!」
ご丁寧にも土方の上に乗っかって正座していた名無しくんがおののく。
額に青筋を浮かべて、存分にキレた表情で抜刀する土方は、これでもかという位に怒りを露にして叫んだ。
「どこのどいつか知らねェが、叩っ斬ってやる!!そこに直れェェェェ!!」
おやおやと言う表情で名無しくんが向き直ると、
「あれ、もしかしてオレのクッションになってくれた人?え、何?オレのファン?いやぁ困るなぁ」
照れたように頭を掻く。
ブチッという効果音が聞こえてきそうなぐらいに顔を歪ませて、土方は名無しくんの胸ぐらを掴んだ。