STAGE.1

STAGE.2

『歓迎会‥‥ですか?』


突然の申し出に、キョトンとなる瞳を向け、提案者である近藤に聞く。


「そう!本格的な女中の仕事は明日からにして、今日は皆に名無しさんちゃんたちを紹介するから」


そんな贅沢な提案に遠慮しつつも、自分たちの為になんて嬉しい限りだ。
断る理由もなく喜んで頷いた。

それまでの時間は、荷物の片付けと屯所内を案内してもらうようにと提案された。と言っても、近藤は忙しい身であって案内は別の人物に頼むしかないのだが、一番の当てが自分の弟と乱闘を繰り広げているせいで捕まらない。

仕方ないので名無しさんは、自分のためにと用意された部屋に行き、持ってきた少ない荷物の整理に取り掛かった。

住み込みの女中は他におらず、贅沢にも一室、名無しさんのために設けられている。

思っていたより広い和室は、身の回り以外の物をほとんど持って来ていない名無しさんにとって、少し寂しく殺風景に感じられた。

普通の女の子なら、もっと装飾品として色々と持ち込むのだろうが、あいにく部屋を飾り付けるという概念が自分には皆無だ。


『うん、私にはこのくらいの環境が丁度いいもんね』


と、誰も聞いていないが、ひとりで納得したように呟く。

そんな時、


「オイ」


開けていた扉の方から、低い声が聞こえた。

名無しさんが後ろを振り返ると、煙草をくわえて、決して機嫌が良いとは言いきれない顔の男が立っていた。


ちょ、独り言聞かれました?!
恥ずかしいから、やめてくれますか!!


『あ、あの‥‥何か用でしょうか?土方さん』

(てか、ものっそい睨まれてるんですけど)


先ほど、客間で紹介された真選組副長。さっそく仕事を言い渡されるのかと考えていると、逆に反問された。


「片付けは終わったか?」


『えっ?』とその質問に驚きつつも、素直に終了した旨を伝える。

元々、持って来た荷物は最小限だ。わざわざ片付けを行う時間をもらう必要はなかったとも思ったが、とくに口にすることなく土方の次に続く言葉を待った。


「そうか、なら付いてこい」


いや、用件言って。

と心の中で思ってみたものの、発言できるはずもなく名無しさんは命じられたまま小走りで後を追った。

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