STAGE.6
台所へ向かう途中、訓練場の横を通りかかるとまだ誰もいないはずのその場所から何やら物音が聞こえてきた。
誰か早朝稽古でもしているのかと中を覗き見ると、そこには道着を身に纏い竹刀を振り下ろす鬼の副長のお姿が。
『あ』
と、声を出すと、土方さんはピクッと反応してその動きを止めた。
あーどうしよう、目が合っちゃったよ。
もう知らないフリして行くことも出来ないよ。
『あの、おはようございます。土方さん』
スッと姿勢を正して軽く会釈すると、「ああ」と目線だけを向けられた。
「‥‥早いな」
『え?あぁ、朝食の準備がありますから』
「そうか」
『‥‥‥‥』
「‥‥‥‥」
いやいやいや、だから気まずいって!!
なんて気まずい雰囲気を作り出すのがうまいんだ、この人は!!
とととと、とりあえず脱出だ。
『あ、あの、それじゃ私行きますね』
「え、あ、ちょ待っ‥‥」
何か土方さんが言おうとしていたけど、脱兎のようにその場を後にするしかありませんでした。
失礼だったかな、とも思いつつ、やっぱりあの気まずさに耐えるなんて到底出来そうにない。
『はぁ‥‥何で土方さんの前ってあんなに緊張するんだろ』
台所に着いた私は、手を洗いながら独り言を言ってみる。
多分、あの瞳孔を常に開かせている瞳が一番いけないんだ。別に悪いことしていなくても、怒られそうで怖いし。
でも、
『皆が寝ている間も稽古するなんて、さすが副長だな』
尊敬すべき点をひとつ見つけた。