STAGE.7
別に銀さんが悪い訳じゃないんだけど、段々と怒りが込み上げてきた。
心の中で精一杯の悪態をついた後、この人に何を言っても無駄だと諦めて、部屋に戻ろうとすると「なぁ」と後ろから声を掛けられた。
『?』
振り返ると死んだ魚のような双眸が目に入る。
「お前、その眼‥‥」
『!』
その言葉に一瞬たじろいでしまった。
暗がりだから分からないと思ってたけど、どうしてこう気付かなくていい事だけ目ざといんだ、この人は。
『眼?眼ですかー?ついてますよー、あー何か私眠くなってきたなーおやすみなさい銀さん』
ペコリと頭を下げて、何の焦りも見せずに颯爽と部屋へ戻る。
よし、完璧にごまかせたな。
「いや、全然ごまかせてないからね。てかバカだろ、お前」
銀さんのツッコミを背中に聞き、何の言葉も返さずに私は襖を開ける。
「まぁいいけど」と言って銀さんは布団をかぶっているから、それ以上を追及してはこないようで助かった。
逃げ込むように自分の布団に入って、ギュッと両目を閉じる。
まだ眠れそうにないと思っていたけど、さすがに今日1日色々あって疲れていたらしく、しばらくすると眠気が襲ってきた。
薄れていく意識の中で、銀さんと話して少し楽になったのかな、と考えた。
いつか、この眼のことを知っても驚かずに受け入れてくれるかもしれない。
赤の他人のはずなのに。
(不思議な人‥‥)
初めて、会った時もそう思った。
不思議な魅力がある人だと。
でも、今日分かったことは、とんでもないマダオだと言うこと。
従業員に給料もまともに払えないくせにパチンコへ行って、挙げ句いたいけな少女(私)にたかるような。
あ、何か考えてて腹立ってきた。
もう寝よう。
明日の朝食も準備する羽目になったのだから、皆より早く起きないといけないんだ。
毒舌だけど妹みたいに可愛い神楽ちゃんと、ダメガネと称されているけど気が利く新八くんのために、少しでも美味しい朝ご飯を用意してあげよう。
そんなことを思いながら段々と意識は闇に呑まれていって、私は眠りについた。
Go to the NEXT STAGE.
でも神楽ちゃんの寝相のせいで何回も起こされました(泣)