STAGE.28
浪士達目掛けて屋根の上を転がり落ちる巨大なタンク。これで逃げおおせると思ったのも束の間。
──── バシュッ!
後ろに待ち構えていた男
──── 人斬り似蔵と名乗った浪士は刀を構えると、まさに一瞬の早業で落ちてきたタンクを真っ二つに切り裂いていた。
抜刀も剣技の瞬間も全く見えなかった。
驚愕に言葉を無くす私に対し、新八くんは「まともにやり合って勝てる相手じゃない」と逃げることを提案する。その選択は間違いじゃないと、屋根を駆け上がる彼に付いていったが。
「どぅあ!」
『え?』
瓦を踏み外した新八くんに加え長谷川さんまで滑ってしまったようで、巻き込まれた私と共に屋根の上を三人で仲良く転げ落ちてしまっていた。
(死ぬッ!今度こそ死んでしまうーー!)
心の中で叫びながら、脳内には走馬灯のように今までの人生が駆け巡る。高層ビルの屋根の端から身が放り出され、あぁ終わった、と自嘲気味に瞼を閉じた。
──── が、人生の終止符はまだ打たれなかったようで。
「…あの、大丈夫ですか?」
「良かった、下に屋根があって」
どうやら屋根の下にもう一枚の屋根があったようで、そこに落ちたことで私達は事なきを得たのだった。
神楽ちゃんとお房さんもいつの間にかその屋根の裏側に隠れており、浪士達は私達の姿を見失ったようで別の場所を探しに行った。
奇跡的に助かった状況に心の底から安堵し、三十八歳にして粗相してしまった様子の長谷川さんのことは軽く無視して、私と新八くんはお房さんと向き合った。
「あの、あなた達、一体誰なんですか?」
「あなたですよね?僕らのウチの前に、赤ん坊を置いていったのって」