This is my home
もう買い物に行く時間は残されていない。とりあえず冷蔵庫に残っている物で準備するしかないと、急いで食堂へ向かう。
到着した食堂の中からは、何故か話声と何やら良い匂いが香ってきた。女中さんは誰もいないはずなのにと、不思議に思って中を覗くと、弟と一緒に山崎さんや原田さんなど数名の隊士たちが台所に立っている姿が目に入った。
「姉上、お帰りなさい」
『え、どうしたのコレ?』
「夕食の準備ですよ」
『準備って‥‥私の仕事なのに』
急な状況を理解できずにいると、山崎さんが近づいて来て、優しい笑顔を向けてくれた。
「いつも頑張ってもらってるから今日はそのお礼だよ」
『山崎さん‥‥』
「だから姉上は休んでいてください。その為に局長たちにも協力してもらったんですからね」
『協力って‥‥まさか、献立を聞きに行かせたのも私を食堂から遠ざけるためとか‥‥?』
「ええ、引き留めておくように頼んでおいたんですが‥‥若干2名ほど、役に立っていない奴がいましたね」
「オイ、誰のことだそりゃ」
ふいに後ろから声がして、振り返ってみると近藤さんの首根っこを掴んで立つ土方さんの姿が。
その横からは総悟も現れて、続くように他の隊士たちも顔をのぞかせた。
皆が集まる食堂の中。
(あぁ‥‥なんて、)
とても暖かい人たち。
(なんて、私は幸せ者なんだろう)
不覚にも涙腺は緩みまくりで、堪えようのない涙が溢れてきてしまった。泣きたい訳じゃないのに、こんなに感謝の気持ちでいっぱいなのに‥‥他の言葉が見つからない。
『ありが、とう、ございます‥‥』
それだけしか伝えられずに俯いた私の頭をポンポンと優しく叩く手があった。
とても大切なその手。
This is my home.
本当に、この真選組に来れてよかった。
そう思わずにはいられない、そんなある日の出来事でした。