皆には見せられない
本日、銀魂高校文化祭。
『ちょ、先生、動かないでくださいよ』
「あー?まだ終わんねェのかよ」
目の前で右に左に揺れる銀髪の頭を動かないように両手でガッチリと押さえる。
だいたい先生が髪のセットをしてくれって言うから引き受けたのに、さっきから「まだか、まだか」って煩いんだよね。
しかも、天然パーマの威力は凄まじく全然思った通りの動きをしてくれない。
あーもー!
バシッ!
「いてェ!」
『あ、ごめん』
あまりにセットがうまくいかないものだから勢い余って先生の脳天にチョップをかましてしまった。
「何でチョップ?!何でチョップぅぅ?!担任への反抗?!学級崩壊ですか、コノヤロー」
『いや、つい‥‥』
「ついって何?!」
『もう煩いですって。大人しくしてください』
「何この子。まったく反省してないんだけど」
ぶつくさ文句を言う担任の言葉は無視して髪のセットを再開する。ワックスをつけた手で前髪をグイッとあげて、跳ねる横髪はおさえて流れをつけた。
椅子に座る銀八先生の後ろに位置した私は机の上に置かれた小さな鏡を覗きこんだ。
今日の文化祭で新八くんや神楽ちゃんとバンドを組んで歌を披露するという先生は、いつもの気だるげな白衣を着た姿とは違い、ホストちっくなスーツを着こんでいる。
前髪も立てているからか、10人に4人ぐらいはカッコいいと言いそうな感じだ。
『‥‥‥‥』
「え?うわっ何?」
急にグシャグシャと頭を掻きむしられた先生は驚きの声をあげた。
セットされたはずの髪はまたいつも通りのモジャモジャ天パに戻る。
『あ、先生。もうステージ始まりますよ』
「え、ちょ、え?」
意味が分からないと困惑している先生を残して私は教室を出た。
入れ違いに新八くんと神楽ちゃんが先生を呼びにきたようで、急かして体育館へと連れていっている。
そんな先生の後姿を見送った私。
皆には見せられない
『カッコイイ先生を見て、ファンが増えても困るしね』