共犯者という関係
「俺は坂口憲三に似てるって言われるかな、と」
『坂口憲三はないんじゃない?それ絶対嘘ってバレるし』
「マジでか。じゃあ、玉木田宏」
『いやいや、それもバレる』
昼休みのまったりした教室の中。
ケータイでカチカチとメールを打つ総悟の隣でスナック菓子を頬張りながら私が答える。
結局、最初の意見でメールを送信した総悟。ものの数分で返信メールが届き、手の中のケータイが着信音を鳴らした。
『早いね。さすが出会い系』
「お、写真付きですぜィ」
ディスプレイに表示される一枚の写真。そこには中々に可愛い女の子が映し出されていた。
『私は浜崎あゆに似てるって言われるの、だって』
「ふーん」
あまり興味が無さそうな声を出した総悟。自分が出会い系してみたいって言って始めたのに。
土方くんのケータイで。
「オイ、何やってんだ?お前ら」
総悟の机の横にいつの間にか立っていた土方くんが、声を掛けてきた。
「土方さんじゃないですかィ」
『保健室でマヨネーズ注射し終わったの?』
「何だ?マヨネーズ注射って!」
『土方くんの90%はマヨネーズでできているから定期的な注射が必要だって』
「誰の入れ知恵だ?!お前か、総悟!て言うか、何また人のケータイいじってんだ、テメェ!!」
「あ、バレた」なんて呑気に言った総悟が持っていたケータイを私に向けて投げつけた。
え、ちょ、何で私に!!
受け取ってしまった手の平サイズのその機械は、まるで死への片道切符だ。
ガタッと椅子から立ち上がった私を睨み付ける土方くんの姿はものっそい怖い。
「逃げるぜィ」
教室の窓から廊下に出た総悟につられて、咄嗟に逃げ出した私。
いや、土方くんのケータイで出会い系してたの私じゃないし!何で私まで一緒に逃げてんのォォォ??!!
「待ちやがれェェェ!!」
って、土方くんが鬼の形相で迫って来てるし。
『ちょ、総悟!何で私まで逃げなきゃなんないの?!』
「安心しなせィ。すでにお前は共犯でさァ」
グッと親指を立ててキラリと言う効果音が聞こえてきそうな笑顔で言ってのける。
ムカつくんですけど。
ダダダダと廊下を駆け抜ける私たちはさぞかし異様だろう。勝手に共犯に仕立て上げられた私は何て災難だと、心の中で涙を拭いた。
今はまだ。
共犯者という関係
これから違う関係に変われるように