A HAPPY NEW YEAR
渡したお賽銭を手に、とても私の口からは言えない手段で参拝客の波を押しのけ、ちゃっかりと参拝を完了させた総悟。
隣でお賽銭を投げた時は生きている心地がしなかった私。
無事(?)新年の行事を済ませたように見えたが、
仕事中だと言うのに私から巻き上げたお金で屋台の焼きそばを食べている人物に恨みがましい視線を送った。
『‥‥警備の仕事、戻らなくていーの?』
「一人で参拝にすら行けねー、一般市民のお守りすんのも警察の仕事でさァ」
やりたくねーけど、と付け足されたが、そうは見えない。
というか、サボリの口実にしか聞こえない。
‥‥まぁ、それでも一人で来るよりは楽しめたと思うけど。
『そーだ!月並みだけど、総悟は何をお祈りしたの?』
「あー?」
出店が並ぶ道を二人で歩きながら、よくある質問を総悟に投げかける。
眉尻を上げた総悟だったけど、何故か回答することなく黙り込んでしまった。
『あ、ごめん‥願い事は人に言うと叶わないって言うしね』
だから、無理に言わなくても‥‥
そう言いかけたけど、総悟はフッと一瞬笑っただけで何も答えることはなかった。
大方、土方さんの抹殺を祈願したのだろうと考えたけど、違うのかな。
首をかしげても返答はなく、代わりに総悟の左手が伸ばされた。
差し出された手のひらに右手を重ねると、冬の寒さとは逆に暖かい感触が広がった。
大切な、
大切なぬくもり。
小さな声で『ありがとう』と呟いたけど、前を向いて歩く総悟には聞こえなかったかな。
来年も一緒に来れますよーに。
A HAPPY NEW YEAR!
この一年が君にとって幸せでありますように