2018/01/12

ペンは剣より強しと言うが 三


書いてたのが消えたぞ!最悪だよね!

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「ダルタニャン!聞いてないぞ」
そんな言葉と共に扉が開いて肩を跳ねさせる。ダルタニャン?と首を傾げた周りには申し訳ないが私は苦笑いしかできないわけで。ダルタニャンは私が男装する際に名乗る名前である。というか何故日本語で話す。
「グリシーヌ、どうして日本に?」
「えっへっへー、ナマエだけずるいって言ったらグラン・マが言っておいでって」
「コクリコもいるのか」
そう頭を抱える。他のみんなもいるよー!帝劇にいるけど!と答えたコクリコは良い子だが、問題はグリシーヌである。
「元よりグラン・マの子息ではないと聞いていたが、まさかこの国の人間だとは。しかも、お前を捨てたそうじゃないか!どれだ!私が引っ叩いてやる!」
そう告げたグリシーヌにそばにいた太宰さんが「おっかねぇ女」とぼやいた。怒ってるだけだよ、と言っておく。父親が見るからに怯えたけど。
「ダルタニャン、何をコソコソと」
「グリシーヌ嬢、落ち着いてくれ」
そうグリシーヌの手を取って止める。キッとこちらを睨んだ彼女にドードーと落ち着かせる。
「第二にお前はいつまでここにいるつもりだ!」
「グラン・マには一年ぐらいって言われましたけど」
「お前をこんなところに置いておけるか!」
「あ、それは僕もちょっと思ったよ!一人でイチローに会いに行ったのかと思ったし」
「そんな命知らずなこと出来るか。というか、なんでまた日本語なんだ?」
「郷に入っては郷に従え、従えないなら切腹だ、でしょ?」
「あー」
「なんか違う。ナマエ、納得してるけど、違うからな。切腹はない」
そう突っ込んだ太宰さんの頭をわしゃわしゃ撫でる。う、わ、と照れた太宰さんは今日も私にベッタリだ。慣れたけど。
「で、お前の父親とやらはどれだ。まさか隣にいるなよなよした男ではあるまいな」
「なよなよ、!?」
「あー、違う違う、太宰さんは友達。逆にどれだと思う?」
そう意地悪して見る。コクリコが周りをぐるりと見渡した。なんかいつの間にか人増えてる気がする。
「僕はねぇ、あそこのお髭のオジさんか軍服を着たおじさんだと思う!」
シマシマスーツの!と無邪気に言ったコクリコに父親が落胆した。本人達は笑っているが。
「あの二人が父親とか恐れ多い。彼は夏目漱石先生と森鴎外先生。図書館に暮らす作家さん」
「ほう?ならば、」
グリシーヌが周りをぐるりと見渡し、父親を見て眉間にシワを寄せた。
「アイツは除外だ」
「え!」
「アイツは除外さしてくれ、いや、逆にアイツか?アイツだからダルタニャンは置いていかれたのではないか?」
また怒りだしたグリシーヌを落ち着かせる。グリシーヌの初恋の人がナマエだからね、怒ってるんだよ、と太宰さんに耳打ちするコクリコは知らないし、納得する太宰さんも知らない。
「ぼ、僕が父親、です、」
「よし、殴ってくる」
「グリシーヌ、やめるんだ」
「どうせお前のことだ、一回も殴っていないし、文句を言ってもいないんだろう」
そう腰に手を当てたグリシーヌは悔しいが絵になる。
「言った」
「どのくらい」
「かなり言ったから父さんはああなってる」
そう嘘をつけば彼女は落ち着いたらしい。当たり前だ、と言って息を吐いた。
「で、グリシーヌ嬢、コクリコ、本当の用事は?」
「なに、帝国劇場で顔触れが揃ったものだから歓迎会をするそうだ」
「時間は?」
「18時からだ」
「それに間に合うように行くよ」

==浮かばないので話が変わる

もう何回も何回も繰り返し読んだ本がある。私の男装した名前はその物語の主人公からとったものであるが、実際は少し違う。名前がわからない私(正しくはフランス語がわからなくて名乗れなかった私、だが)に、フランス語を教えてくれた人物がつけた名前である。その人物は途中でいなくなってしまい、私は巴里で飢え死にしかけたわけだけど。それを昔グラン・マに言ったところ、イマジナリーフレンドという言葉を告げられてしまった。なんでそう言っているかというと、手元にあるその本が有魂書なのではないかとジリジリと父親に詰め寄られているからだ。最近わかったが、父親は研究に没頭する時と普段のキャラが全く違う。ギャップ激しいやろ?とは長い付き合いの五人を代表した織田作さんの言葉だ。
「ナマエ、それを渡すんだ」
「しつこい、これは大切な人に貰ったものだから渡さない」
「お父さんとその人、どちらが大切なんだ」
「そんなの、その人に決まってる。その人がいなきゃ私はフランス語を話せなかったし、もっともっと小さい時に死んでる。私を捨てた人よりそっちの人の方が大切に決まってる」
と言ったところで言いすぎたと思う。ピタリ、と動きを止めた父親に、目を逸らして駆け出す。そのあと、父親の大泣きする声が聞こえ、なんだなんだと文豪達が彼に寄ってくるのがわかる。部屋に入って扉を閉める。言ってしまったが、それは本音である。ずるずると扉を背に座った。



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「怒ってる、とは言わないが、許してる、とも言ってないからな」
エグエグと子供のように泣いている司書に森鴎外はグサリと言葉のナイフを刺した。
「本来ならもっと拒絶されてもおかしくないッスよ」
「三好クン、それ慰めになってないで。ほーら、司書、ちゃんと御免なさいしよか?ナマエ優しいから許してくれるって」
「第一、あの本が有魂書だとしても誰が潜書するか問題になると思うが」
そう告げた荷風に佐藤が少し考える。
「あの本、この間少し見せて貰ったが、仏蘭西語だった」
「それは面白いね」
そう口を開いた芥川に、司書は鼻をかみながら首をかしげる。
「ナマエ、昔に有魂書から僕たちみたいな存在をひきだしたんじゃないかな?何かしら生存本能的なもので」
「火事場の馬鹿力ってやつか」
「それはあり得ると思いますよ。ナマエをダルタニャンと名付けたのは昔過ごした人だとお聞きしました」
館長が夏目漱石の言葉に考える。
「ダルタニャン、といえば、ダルタニャン物語か。作者は確か」
「アレクサンドル・デュマ。アレクサンドル・ペルとも呼ばれておりますな」
そう告げたのは第三者だ。羽飾りのついた帽子を被った男はどう見たって日本人ではない。ただ、話す言葉は流暢な日本語だ。ナマエがその後ろにビッシリと張り付いているのが見える。
「可愛い子の本当の父親がいるとお聞きした。少しばかり話をしたく」
目をスッと細めた男に、司書は肩を跳ねさせた。
「偉い日本語流暢やねぇ」
「ダルタニャンにフランス語を教えるついでに学ばさせて貰ったのだよ。して、貴方方も私と同じ存在であると見る。では、貴方方も知るのだろうか?『私』は何であるのかを」
そう告げた男に、芥川は菊池を見た。
「ほら、言った通りだった」
「そういう問題じゃないと思うが」



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