2018/07/07

いまだに眠り続けるその人を見下ろす。最近になってスリーピングキングとかスリーピーという愛称がついた彼である。意識が覚醒することはあるのだろうか、と思いながら彼のバイタルをチェックしヘイティさんが購入したノートにつける。彼女の日記のような役割があるのか、私には読めない文字が流暢な筆記体で綴られているのが見えた。

オセロットと呼ばれた男性に比べ私達が得意でないその男性は四六時中基地にいる。彼の視線は気持ちが悪いから嫌いだった。品定めするような舐めるような視線。ヘイティさんがいる時は彼女、食堂にいる女性陣がいる時は彼女達がかばってくれる。最近銃士達が私の周りにいるのはヘイティさんが私を守るように言ったからかもしれない。確かにあのような不躾な視線は良くない、と彼らも睨みをきかせているのだけど。
そろそろお昼時だと部屋の外に出ればニコラとノエルが待っていて来れた。マスター!と笑った二人と合流して食堂に向かう。食堂の扉に手をかけた瞬間である。その罵声が聞こえたのは。何かが割れる音もした。
「言うことが聞けないのか?」
「なぜ貴方の言うことを聞かなければいけないのか」
扉を少しあけて中を見る。瓶か何かーー恐らく葡萄酒だーーで殴られたヘイティさんが男をただ見ていた。
「ふん、俺の言うことを聞けないとなれば後悔するぞ。誰がレジスタンスに資金をやっていると思う?」
そうそこが問題だった。彼はレジスタンスに活動資金を与えて来れていた。だから私達はある意味逆らえないのだ。彼女は何も言わない。
「許しをこえ。今なら地面に這いつくばれば許してやる。なんでもしますとな」
彼女は何も言わない。
「それとも調教が必要か?」
「下品な口は閉じた方がいい」
「お前もその偉そうな口を閉じろ。夜の鳴き声もデカイのか?」
「もう一度言おう。下品な口は今すぐ閉じろ。金持ち坊ちゃんはお家で寝ていた方がいい。まぁその金がいつまで持つかは知らないが」
「いつまで持つだと?永遠にだ」
「そうか。わざわざ世界帝からのスパイご苦労」
彼女はそう言って当たり前のように彼の肩を叩いて横をすり抜けようとする。
「何をふざけたことを!」
「今世界の富を管理しているのは世界帝だとみる。世界帝も馬鹿じゃあるまい、そこの監視の目はきっちりしているだろう。私ならそこに目をつける。お前が王族だろうがただの金持ちだろうが、資金を銀行となりうる場所から引き出した場合、その回数が多いだけ資金が多いだけ世界帝は監視しーー金を引き出せなくさせてお前を連行する。しかし、お前は連行されてない」
淡々と彼女はそう告げる。
「残り選択肢はもちろんいくつかある。例えば資産は家に全て置いてある場合。しかしそれはいつか尽きる。それにしたって永遠に保証などされない」
「そ、それは!」
彼女は肩をすくめて笑う。
「まぁ、決めつけたわけじゃないさ。ただお前は世界帝からもマークされているだろうし、レジスタンスの北米支部からもマークされているだろうな。気をつけてくれ。片方を切れば片方に報復される、ただそれだけだ。双方の甘い蜜を吸おうだって難しいぞ。頑張って生きてくれ。ただ、私達の拠点はバラしてくれるなよ。まぁバラした瞬間、お前の眉間に穴があくだろうけどな」
おどけたように告げた彼女に、男は「ふざけるな!」と懐から銃を取り出した。古銃ではないそれ、は、現代銃である。ガタリと動いた周りに彼女は変わらず悠々と彼を見た。
「マカロフか。東側の拳銃だ」
「引き金を引けばお前は死ぬ」
「そうだな、引ければの話だが」
「馬鹿にするな!」
そう叫んだ彼が引き金に指をかける。周りが彼女を止めようとする。しかしそれより先にヘイティさんが動いた。どうやったのかはわからない。ただ、彼女に突きつけられていた拳銃は分解され、男は地に伏せて目を回していた。
「ありがたく頂戴しようか。ミスター。だが、死にたくないなら下手に動かない方がいい。君と共にやってきた山猫の鼻は聞くからね。もう聞いてもいないか」
そうため息をついた彼女は男を離すとそばに屈むと服を物色しはじめる。それを眺めていたレジスタンスや銃士、食堂の女性達が彼女を見た。
「ヘイティ何やってんだ!?というか何したんだ!?」
「腹が立ったからこいつの持ち物を押収してやろうと思って」
「ということは」
「身ぐるみを剥がす」
「あらそれならアタシ達に任せなさい、ヘイティ」
「任せてもいいんだが、爆発物があったら厄介だから」
そう言いつつ食堂の女性陣が彼を脱がしにかかる。私達はそれを見て中にこっそり入ろうとした時、後ろからオセロットと呼ばれた彼がきた。
「ガンズメディック、ノエル、ニコラ、何かあったのか?」
「ヘイティさんが……」
そう言った私に彼はハッとしたように中に入った。私達もそれに続いて中に入る。
「ヘイティ、大丈夫か?!」
「大丈夫だ」
「大丈夫じゃない。せっかくの服がワインで汚れているじゃないか。その男は放っておけ。どうせヘイティの釜かけに自ら飛び込んで引っかかっただけだろう」
「腹が立ったんだ」
そう立ち上がったヘイティさんは彼の持ち物を机に並べる。分解された拳銃も机の上に置かれた。集まってきた銃士やレジスタンス達に習い、私もそのそばによる。地面に転がされた男は一糸纏わぬ姿になっていたので二人にみちゃダメ!と言われてしまったけれど。
「……ヘイティに拳銃を向けたのか」
「誰かさんと同じだな。まぁ、誰かさんは伸びなかったが」
地図を広げた彼女はばつ印をみる。この基地の場所か!?と身構えた周りに、ドライゼさんが首を振った。
「いや、これはこの付近じゃない」
「どうせ北米支部が泳がせるために違う場所の地図を渡し違う場所に向かうと言ったんだろう。外を見せないようにして移動してな」
ヘイティさんが珍しく刺々しいのはそれだけ腹を立てたんだろう。オセロットさんが口を開く。
「あぁ、ソレは持たせたままにしておいてくれ。やってきた世界帝を叩く」
「だろうな。手帳」
「細工済みだ、燃やしてもいいが」
「女性の写真は燃やすぞ。どう見ても盗撮だ」
「構わない」
「あぁ、面白いものを持ってるなこの男。これも銃か」
「ベトコン銃だな。タバコに偽装された銃だ」
「キスオブデスと似たようなものか」
「ああ、ベトナム戦争中に一部のアメリカ兵が持っていたらしい」
「カラトリー達の後輩だな。後はマカロフの弾か」
そうやれやれと言いながら彼女は拳銃を組み立てはじめる。アリパシャさんとナポレオンが彼女を見た。
「ヘイティ、今のはどうやった?」
「慣れないでやると死ぬからオススメはしない。君たちが現代銃に触れたことは?」
「ない」
「なら説明しておくか」
「ヘイティ、先にシャワーを浴びたほうがいい」
「……私の持ってる服、コイツとスカートのと戦闘服だけなんだが、二着とも今日に限って洗濯中だ」
レオポルトさんの言葉にそう告げた彼女に、周りが顔を見合わせた。
「ああ、それならヘイティ、いいものが北米支部のトラックに積んであるぞ」
「いいもの?」
「あの女の着替えだ」
その言葉に彼女が思いっきり顔をしかめたのがみえた。

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シャワーを浴びてやってきたヘイティさんが顔をしかめている。つなぎのような服装ではあるがピッタリとしたそれは体のラインを強調させている、気がする。まぁ彼女はファスナーを上まで閉めてしまっているが。ちなみにあの男はオセロットさんにより連れて帰られてしまった。彼女は大きくため息をつくとトレカフともう一つ拳銃を取り出した。
「こっちがオートマティックピストルの一つマカロフ、こっちがリボルバーの一種シングルアクションアーミーだ。後一つ、マシンピストルというものがあるが説明は割愛する」
彼女はそう言って二つを机の上に置いた。
「彼らは君たちより新しい。故に君たちとは違う点がある。金属薬莢であること、煙を抑えた無煙火薬であること。これに関して私は特にいうことはない。今更だろうし。後はそうだな、一度に装填する弾の数が多い……のもわかったことか。そうだな、彼らは君たちより掃除がしやすい」
そう言った彼女に周りが目を瞬いた。
「掃除がしやすい」
「ああ、裏を返せば、仕組みを知れば短時間で解体組み立てができるということだ」
「ーーだからヘイティはあの瞬間に分解できたのか」
「まぁな。あとは、オートマティックピストルの場合は安全装置というものが付いている。いや、これはほとんどの銃についていて、弾丸が装填された状態で安全な携行を可能にしたり不用意な取り扱いによる不時発射を防いでくれる。分解するよりも何かの拍子に安全装置をかけた方がいい気もするが……まぁ時と場合だな。双方現代銃の扱いに慣れた人物がやるべきことで慣れてなければやらない方がいい。安全装置がない武器の代表として『リボルバー』がある。オートマが8発以上装填できるのに対してリボルバーは6発、また、リロードに時間がかかるのが特徴的だ。まぁ、リボルバーはあまり実戦向きではない。兵士というよりは発砲する回数が少ない職種向きだ。好んで使うやつもちらほらいるが」
「ふむ……」
そう考えたアリパシャさんとナポレオン。キンベエさんは触ってもいいか?と尋ねてヘイティさんが頷いた。エセンが彼女を見る。
「詳しいんですね」
「詳しくはない。多少知ってるだけだ」
「ラシーアという組織では教わるんですか?」
エセンの言葉に周りが彼女を見た。彼女は頬杖をついた。
「知りたいか?」
「ええ、まぁ、貴方が教えてくれるのなら」
「ラシーアは最後にいた、というだけでその前にいたのはアメリカ陸軍だ」
「よっしゃやっぱアメリカだったんだな!」
そうガッツポーズを決めたのはケンタッキーだ。ベスが思いっきり顔をしかめたけど。
「ラシーアのラはスペイン語の女性形の冠詞だ。意味はない」
「ならばシーアに意味が?」
「シーアは……」
彼女はペンを持ち紙に文字を書く。がたり、と恭遠さんが立ち上がって彼女を見た。
「CIAだって?」
「しーあいえー?」
「Central Intelligence Agency。アメリカの諜報機関だ」
「諜報だけではないんだが、まぁその解釈で間違いはない。もう除籍されているが。生きる術を教えてくれた人が、そこに招き入れてくれた」
彼女はそう言って目を伏せる。

==めっちゃ書くの疲れる



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