2018/07/30

没ネタ集B兼任司書かるであパターンB


何があったかはわからない。ただ、按司に突き飛ばされたのは確かだ。ただそれ以降は意識を失い、目が覚めたら親切な人に拾われたことは覚えている。何故か縮んでしまった身体、そのまま育てられた私である。どうやら違う世界に来てしまっているらしいが元の世界に戻れないのに加え本丸にも戻れないときた。ただ召喚は可能であり、刀剣やら桜隊やらローロの部隊は呼び出せる。ただ、先生達は帰ってしまっているため彼らが残していった武器しか取り出せないのだけど。
だから、マスター適性があるとか言われて連れてこられても何もかもが意味がわからなかった。どうやら隣の彼もそうらしく、二人して追い出される羽目になりーー二人して生き残ってしまったいまである。ただ少し違うのは彼はマシュという女の子を助け、私はドクターと呼ばれる彼の手伝いをし、生き残ったというぐらいだろうか。他に生き残りはいないの!そう言った所長にドクターが私がいることを言えば、文句を言われてしまったが気にしない方向で行こう。ナマエちゃんも後で召喚してみる?と尋ねられ、話聞くに複数人召喚しても大丈夫なのかと思った私は悪くない。一人だけならいいかも知れないが。
とりあえず私は今カルデアと呼ばれる場所にいて、歴史修正を訂正する審神者業務のもっと直接的なものに接することになったのである。

考えてみたんですが、そう言って口を開いた私にドクターは首をかしげる。疲れたので倒れこむように眠った隣の彼ーー改め藤丸立花くんとマシュを部屋に運び、私はドクターの手伝いをしていた。
「聖杯戦争とやらはマスター同士が敵対していたんでしょう?なら、私が呼んで仕舞えばややこしくはなりませんか?」
「君は彼と喧嘩したい?」
「いえ」
「マウントをとりたいかい?」
「いいえ」
「ならきっと大丈夫だとは思うよ。でも、そうだなぁ、最低限にはした方がいいかも知れないね」
そんな会話だ。誰かが舌打ちをした気がするが、無視である。
「予備は予備らしくしていればいいじゃないか」
そんな宣言になんともいえなくなってしまった。というより、納得してしまったというか。
「そうか、そんな考え方もありですね。藤丸くんが怪我した時の交代要員といいますか。臨時ヘルプといいますか」
つらつらと考える私に周りは私をキョトンとした顔で見る。嫌味だとはわかっているけれど。
「ドクター、藤丸くんとマシュと話し合ってみます。藤丸くんだけに背負わしたくないですし」
「うん、うん、そうだね。そうしよう」

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結局、私はとりあえず一人だけ呼ぶことになった。様子を見て二人でいけたらいいね、だなんていいながら召喚するそこに向かう。藤丸くんにはマシュ意外にもサーバントがいて、それぞれキャスターだったりセイバーだったりと正義感が強そうな人ばかりである。
ーーもしも、である。もしも、これに、佐藤さんが。
よぎった言葉に首を左右に振って召喚サークルの前にたった。
ーー私はともかく、藤丸くん助けてくれる人。
基本的に召喚に応じてくれるのはそういう人らしいけれど、それでも願うことは悪くないだろう。ありはや、と紬かけた言葉に口を紡ぐ。しかし、藤丸くんと同じ方法をとったのにも関わらず現れないそれに、首をかしげる。いや、ありはや、と紡いだ時に二、三枚桜が舞ったということはそういうことだろう。同じく首を傾げた周りに息を吐いて振り返る。
「……ちょっと今から変な口上いいますし、変な現象起きますが気にしないで」
苦笑いしてもう一度召喚サークルをみる。
「ありはや、あそばずともうさぬ、あさくらに」
そう謳えば、サークルが反応したのがわかった。サークルの中で桜吹雪が起きる。さて、ここからはなんと続けるべきだろうか。護ってくれる人。藤丸くんを、マシュを、人を、護ってくれる人。
「ーー人を護りし英霊よ、おりせしませ」
そう告げれば桜吹雪の中にカードが現れる。金色に似たその色、ゆっくりと反転したそれは桜と共に人の姿になる。赤い服と褐色の肌、白い髪が眼に映る。
「サーヴァント、アーチャー。召喚に応じ参上した。私はのマスターは……こっちか」
彼はそう言って私を見下ろす。とりあえず、と思いつつ手を差し伸べた。
「苗字ナマエです。主にサポートに奔走すると思いますがよろしくおねがいします」
「……あぁ、よろしく頼む、マスター」
軽く触れた彼の手は大きい。じゃあ他も紹介せねばと思いながら藤丸くん達をみる。藤丸くんとマシュは普通だ。ただ、キャスターさんは珍しそうに私をみていてドクターが慌てたようにダヴィンチちゃんを呼んだ。

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赤いアーチャーさんはなんというか光忠さんみたいな人だと思う。皮肉屋な面もあるが、あの個性的な文豪やら刀やら銃に比べれば常識人というか。なんというか。今もあんまり無理はするんじゃない、マスターと飲み物片手に咎められる。カルデアに図書室があると聞き与えられた休みの日に来てみれば前の騒ぎで酷い有様になっていたのである。よくドクターこんな場所から資料取り出せたな。本が可哀想であるためしまっていたのだけども、魔術関連の本だけでなく童話や小説なんかもあることに気づき分類して片付けた。図書館勤務のおかげといえばいいのか、図書館勤務の職業病と言えばいいのか。とりあえず、残りは魔術関連だけである。
「本を読んでいるかと思えば、片付けていたのか」
とりあえず飲み物を受け取れば彼は周りを見てそう告げた。
「はい、散らかっていたので。あとは魔術関連とか資料と思われる本だけなんですけどね。魔術の分類とかがわかんないのでどうしようかと」
「あぁ、そうか。マスターは彼と同じく魔術の知識がないんだったな」
「はい、」
「しかし、私は特殊な召喚法だっただろう?」
「あぁ、なんというか、父親に教わったんです。困った時にああやれば誰かが助けてくれるって。たしかにあれを言えば親切な誰かは来てくれます。人じゃないですけど」
「……英霊か?」
「いえ、英霊でもないです。英霊を呼んだの、アーチャーさんが初めてですし。多分、そのうちまた顔を覗かしますよ。珍しいものが好きなんで」
そう笑えば彼はそうか、とつげる。まぁ、私を探して入ってきた藤丸くんと立花、サーバントにより片付けは迅速におわったのだけど。

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魔力の回路が繋がると、それを通して英霊の過去を見ることがある、とはアーチャーさんに教わった言葉である。悲しくて悲しくて彼を抱きしめてはらはら泣いていれば、周りはなんだなんだと私はを見た。マスター?と困惑したような言葉が聞こえる。悲しむのは身勝手だとは思う。彼はそうなる道筋をたどって今になるのだ。哀れんではいけない。でも、悲しい。人は身勝手だ。それは私も嫌という程理解していた。あちらでは自分もそういう立場だった。恐らく今は横軸の偉い人間である按司が図書館にいた変わらない私をここに飛ばしたのは、誰かが私を捕まえようとしにきたんだろう。審神者は今やそんな存在なのだ。
無言で泣いている私に、彼はため息をつくて私を俵担ぎした。どうやら精神的に疲れているようだから休ませてくる、と告げた彼は私の部屋に足を進める。
「ごめんなさい」
そう呟いた私に、彼はため息をこぼす。
「マスター、何があった?」
「悲しい夢を見ました。でも、私にはどうすることもできない夢でした」
ベッドに降ろされて目を伏せる。ありがとう、と小さく言えば彼は礼には及ばんよと告げて立ち上がり、部屋を出ようする。
「ありがとう、沢山の人を救ってくれて」
そう呟けば彼がこちらを見た気がしたけれど、夢の中に意識は落ちた。

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ナマエは小さな子供に優しい。というよりは、懐に入った人に優しいのかもしれない。初対面では淡々としているけど。いや、子供相手には最初っから優しかった記憶はある。
「なんていうか、お母さんみたいだね、ナマエ」
そう言ってからそれは失言だったと気づく。エミヤの視線が飛んできて、マシュからは慌てたように制止が入ったけれど。ナマエは気にしていないのか、右から抱きついているジャック、左手はナーサリーとつないで目を瞬いた。
「いや、ごめん、なんていうかさ」
「いえ、気にしてません。小さいこの面倒は今までも見てきたので」
「妹か弟がいたの?」
「いいえ、ただ周りに面倒をみるべき子供がいたといいますか、預かっていたといいますか」
あそんでおいで、と二人の背中を押した彼女はかけていく二人を見送った。

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「貴方、人じゃないわね」
そう告げたエウリュアレさんに目を瞬く。ある意味当たっているけども、誰も触れられなかったそれである。エミヤさんが私の半歩前をたち、マシュが小さく首を傾げた。
「ナマエさんが……人じゃない?サーヴァント、ということですか」
「いいえ。正しくはギリギリ人よ。瀬戸際ね。それは貴方が一番わかっているだろうけれど」
それだけ告げて彼女は歩き出す。私はといえば、はて、と態とらしく首を傾げておいた。あれは心配なのか、それともただ思ったことを言っただけなんだろうか。確かに私は人ではない。少なくとも半分は。私の首を傾げた様子をマシュは私がわかっていない、貴方=エミヤさんだという風に捉えたのだろう。彼女はエミヤさんを見上げた。
「何かわかりますか?」
「いや……」
チラリと私を見下ろした彼に私は首を再度傾げた。マシュも傾げたけれど。

マスターと回路だかなんだかを繋げてしまったサーヴァントは同じ夢を見るのだという。と、いうことは藤丸くんの夢は沢山のサーヴァントに生中継のように放映され、私の夢は唯一のサーヴァントであるエミヤさんに見えるのだろう。と、いうことはあの真白な空間も昔の夢も彼には見られているということだ。そう、例えば、佐藤さんたちが消えてしまう夢だとか、陸奥達と過ごす夢だとかーー両親や兄が消えてしまう夢だとか。
つらつらと考えているのは今日見た夢が幼い私の夢だったからだ。おいていかないで、と手を伸ばしても母親の手を引いて消えてしまった父親。それに連なるように消えてしまった兄。誰かがーーそう、たしか谷崎さんが私が佐藤さんに向ける感情は恋であり愛ではあるが、そこには少しの父親に向ける感情がある、と言われたことがあった。按司にもだ。佐藤センセや直生センセはともかく、他のセンセに向けるそれは父親に向ける感情だろ、といわれて否定できなかったのは記憶にある。
恐らくは、彼は見た。珍しく寝坊した私と同じく珍しく寝坊したと思われる彼はその夢を見たんだろう。
「マスターの両親は、」
溢れるように告げられた言葉に、いなくなっちゃいました、と答える。私の答えに藤丸くんとマシュ、他のサーヴァントが私を見た。
「お父さんが連れて行っちゃった」
そう頬杖をついて答える。それは普通、二人で駆け落ちをしたように捉えられるんだろう。でもそれはハズレではない。ただ、神聖なサーヴァントは何処か納得したようだった。藤丸くんが私を見る。
「それから会わなかった?」
「だいぶ時間がたった後に、迎えに来て数日はいっしょにいたかな。でも私だけ元の場所帰って来ちゃった」
「どうして?」
「大切な家族のような人、大切な友達、大切な仲間……大切な人が私を連れ戻しに来たから」
まぁ素敵、と声を上げたマリー王妃に、そうでしょう?と笑う。7年間。たったの7年間、私は両親といた。25年間。私は佐藤先生達といた。それ以上、刀剣達や按司達との縁は続いている。
私は人ではない。普通の人は年老いていくのに私は年老いることはない。冗談で按司は化け物というが、本気で言われることはない。ただ、それ以外は化け物と私を言うけれど。母親だったこともある。朝陽とローロを育てたのだから、母親だったことは確かにあった。だから母親のようだと言われても気にはならない。
「貴女は人であることを選んだけれど、神々がそれを許さなかったのね」
そう告げたエウリュアレさんに、周りはギョッとしたように私を見た。
「そうかもしれません。ただ、周りの人は私を化け物といったりするあたり、人であることも拒まれてる気はしますね」
もう完全な苦笑いである。ガタリ、と立ち上がったのは藤丸くんだけでなくエミヤさんもだ。マスター、ちょっと来い、と手を引いた彼に、なんてね、エウリュアレさんの遊びに答えただけですよ、と周りにおどけておく。マシュが安堵する中、私はエミヤさんに手を引かれた。

連れ込まれたのは私の部屋だ。
「マスター、君の両親は」
「夢、見たんですね」
そう言ってベッドに座る。頷いた彼に私は口を開く。
「私の父親は人じゃありません。でも、英霊でもないです。変な話にはなりますが、私の父親は刀です」
「……刀?」
「正しくは刀に宿った神さまと言いますか。物を大切にすることにより宿る神。日本特有のものですね」
「付喪神か」
「はい。私の母はそれを使役する人でした。そして母は父親である刀と出会い、恋をしてーー私を産んだ。私のような家族にはきまりがあって、七つまでは両親とともに暮らせますが、七つになると親は子から離れなければならないんです。だから七つの誕生日に二人は消えて、私だけが残った。今日はその夢を」
そう緩やかに目を伏せる。
「マスター、下手なことは言わない。サーヴァントはともかく、そのことを藤丸以外の魔術師に言うな。いや、諸葛孔明はロード・エルメロイ二世だったか……だが、それ以外には言うな」
「どうして?」
「ホルマリン漬けになるぞ。厄介な機関に追われる可能性だってある。君はそれほどまでに希少価値が高い人間だ。そばについて護ってやりたいのは山々だが、私はいつ消えるかわからん」
そう私の隣に腰掛けた彼に「大丈夫ですよ」と告げる。
「私はそこまでヤワじゃないです」

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偶々気になったというか。李先生の持つ槍が不調そうだな、と思ったというか。足を止めた私にエミヤさんが「どうした?」と尋ねた。
「いや、なんか李先生の槍が不調そうに見えたので」
「君はまた難解なことを」
そういったエミヤさんに、でも多分あの人は触らせてくれないだろうな、と思う。というか、一部のサーヴァントは結構触らせてくれるけども危ないからと触らせてくれないサーヴァントが多い。どちらかといえば李先生は後者だろう、と思っていればエミヤさんが声をかけてくれ触らせてもらうことができた。とりあえず何かが付いているようなので少し祓って返す。目を瞬いた彼に、ありがとうございます、といえば彼は口を開く。
「何かしたか?」
「いいえ、いい槍だなって思っただけです」

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マスターも戦えた方がいいのでは?ということで藤丸くんの戦闘訓練に巻き込まれてる、なう、である。しかしまぁ最初に持つ武器が問題らしい。さまざまな武器を持つサーヴァントに追いかけられてる藤丸くんをエミヤさんと見つつ、私も昔あったな、と思う。
「なんでナマエはエミヤと見学してんの!」
そう私のそばに駆け込んできた藤丸くんにエミヤさんが「マスターには私がいるからな」と平然と返した。
「そういう問題!?」
「まぁまぁ、私は刀剣類ならある程度使えるので……サーヴァントには絶対に及びませんが不審者ぐらいなら」
「とーけん?」
「刀とか槍とか薙刀とか」
「またアレコレ手を出したものだな」
「最初は刀だけだったんですけどね、アレもこれもと教えられました。なので流派という流派がごちゃごちゃです」
そんな会話をしていたら嫌な気配がしてエミヤさんに引っ張られる。なんだ、と思えば土方さんが私に突っ込んだらしい。なにこれ怖い。

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刀の名前を叫びそうになって慌ててやめる。そうすれば彼らが手元に現れるのは事実だけども。それに習って一節なんかもやめておいた。吹き飛ばされた木刀に首元すれすれにある木刀。握りが甘いだなんて告げたその人は退いてみせる。
「だが、太刀筋はいい」
「ありがとうございます?」
そう苦笑いしてズルズルと座る。疲れた。とても疲れた。
「ナマエ、戦えたの!?」
「稽古だけですよ。実戦はあまり得意では……」
「実戦なんざもん、連れてきゃなれるだろ」
「気持ちはわかるがやめてくれ。マスターは英霊じゃない。毒なんかには耐性がないぞ。室内で追いかけ回す分には構わんだろうが」
「え、エミヤさんの裏切り者!」

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ナマエもそろそろサーヴァント増やそうか、とはダヴィンチちゃんの話である。いや、度々増やそうかと藤丸くんに話すとエミヤさんが俺だけでは力不足か?というからしなかったんだけど、強制ならば仕方がない。どうやらダヴィンチちゃんは私の召喚が不思議でしかないらしく、究明したいらしいけど。呼符を何枚か投げ入れてから少し考える。なんていうのがいいんだ。藤丸くんと同じ方法では相変わらず人は現れない。
「現れない、か?」
「いいや、なんか嬢ちゃんの場合マスターと同じ方法じゃ現れないんだよなぁ」
「前もなんか唱えてたもんね」
エミヤさんの言葉にキャスターのクーフーリンさんが答え、藤丸くんとマシュが頷いた。
「うーん、どうして、だろうねぇ。ナマエ、前みたいにやってくれる?」
そう告げたダヴィンチちゃんにさてなんと紡ごうか、と思う。
「ありはや、あそばぬともうさぬ、あさくらに」
謳うように告げれば召喚サークルの中でまた桜吹雪が起きた。はて、ここからなんと紡ごうか。
「……人理を、人を護りし英霊よ、降りましませ」
そういえばカードがまた桜の中から現れる。くるりと回ったそれは概念礼装だったようでそのまま私の手元にやってくる。とりあえず隣に来たエミヤさんに渡しておいた。2枚目。
「ルーラーか?」
エミヤさんの言葉通りである。くるりと回った金色のカード、姿を現した彼の配色はエミヤさんにそっくりだ。なのでエミヤさんを見た。俺じゃないと即答されたけど。
「サーヴァント、ルーラー。天草四郎時貞。誰かに似ています? 他人の空似というやつですよ」
その他人がそばにいるわけなんですがそれは。
「苗字ナマエです。よろしくお願いします」
「はい、よろしくお願いします」
ニコニコと笑った彼にとりあえず退いてもらう。四枚目五枚目、六枚目七枚目と概念礼装やら種火と呼ばれるそれが続き最後の一枚はまたアーチャーだ。嫌な予感がする、ので、それがひっくり返る前に掴み取る。マスター!?と叫んだ二人、同じように叫んだ周りに、手の中にあるそれを見た。裏は金色のアーチャーのカードであるが面は何もない真っ暗なままだ。
「マスター、なにしてるんだ!危ないだろう!」
そう怒った彼に首を左右に振り、もう一度それを見る。
「ごめんなさい、貴方はまだ呼べない。呼んじゃいけない。もう少し眠ってて」
「マスター、それがだれかわかるのですか」
尋ねた天草さんに、首を左右に振る。周りがこちらに駆け寄って来た。ダヴィンチちゃんが困ったようにしている。
「わからりません、でも、私が呼んではいけないことはわかります」
「え、なんで呼んじゃいけないの?悪い奴、とか?」
「そんなのある意味いっぱいいるだろ、ここ」
「人理修復を望まないとか」
「いえ、彼は人理を護る人であることには変わりないとは……恐らく、貴方は人を護るという言葉に反応して彼は人理を護るという言葉に反応した、んだと思います」
「じゃあ、余計にどうして」
「私は……あまり人が壊れていく様を見たくはありません。多分、彼は戦ってくれます、でも、壊れていきます、ほんの少し残っている人間性が失われていきます、だから、今の私には呼べる決心がつきません」
「どうしてナマエにはそこまでわかるのかな」
「それを説明する術はわたしにはありません、ただ、嫌な予感が一瞬したので止めました。わかったのはその後ですが、本当に説明できません。言えるのは脳裏に一瞬よぎったということと、私はこの人が怖いことです」
はらはらと流れた涙はわからない。怖いのか悲しいのかよくわからない。恐らくはその二つが入り混じっているんだろう。エミヤさんがため息をついた。私の目線に屈んだ彼は私の涙を指ですくった。
「しかし、それはどうするつもりだ?」
「こうなった以上、いつかは呼ばないといけないのはわかってるんですが、今は」
「しかたない、ちょっと保管しておこうか。うーん、でもナマエは本当に不思議だね、サーヴァントみたいだ」
「泣くつもりはなかったんですけど」
ゴシゴシと袖で拭くとこするな、と怒られる。藤丸くんが「そんなに怖い人なのかな?」と首を傾げた。

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だめ、だめ、だめ。まだ、だめ。そう言って彼の手を掴む。こちらを見下ろした彼にゾッとするが、それでも両手で彼の手をとった。
「何故止める?マスター。呼んだのはお前だ」
「そうです、私が貴方を呼びました。でも、貴方を降ろせない。下ろして仕舞えば最後、貴方は壊れてしまう」
「壊れる?俺はもうとっくに腐って壊れている」
「それでもまだ人間らしさはあるでしょう?」
「マスター、お前も人間じゃないくせによく言う」
「そんなこと、私が一番わかってます」
「まぁいい。俺も腐ってない自分を見るのは疎ましいのでね。ほら、呼び出しだ、マスター」
その声に体が桜の花びらになる。真白に変わった視界に瞬きすれば、おはようございます、と天草さんが笑った。

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ナマエがよく眠りこけるようになった。どうしてか聞いても疲れてるのかもと笑うだけなんだけども、気になるのは気になるもので。ナマエの元にいるサーヴァント二人に聞い見るが天草さんはナマエがそういうものだと思っているし、エミヤは顔をしかめるだけだ。
「多分、アレがマスターを呼んでるんだとは思うが」
そう言ったエミヤの視線の先にはナマエが無理やり召喚を止めたカードがあった。

「ナマエってエミヤほいほいだね」
そう告げた俺は悪くない。ナマエのそばにいる英霊はエミヤの反英霊らしい。ピンチに現れた彼であるが、ナマエが何故嫌がったのは理由がわからないままである。……エミヤが二人になるからかな?
何はともあれ怪我をしているナマエを担ぎ上げた真っ黒な彼に、赤のエミヤは顔をしかめている。その反対もしかりだけども。
「アーチャー、歩けます、大丈夫です、おろしてください」
「……喚くな、落とすぞ」
それだけいった彼はまたそのまま歩き出した。

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「あの二人はある意味反対ね。だからあの子は泣くのよ」
そう告げたエウリュアレを見る。前から度々ナマエに関することを言う彼女に首をかしげる。
「エミヤのじゃなくて?」
「本来ならそうなんでしょうね。あの子は人じゃないのに人であろうとして、オルタは人であったのに人じゃなくなっていくのよ」
「え、ナマエって、人じゃないの?」
「あの子、人じゃない血を引いてる。私達に近い血よ」
その言葉に叫んだ俺とマシュは悪くない。


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「宝具が使えない?なんでまた」
「んー、英霊たちに変な力が作用してるってダヴィンチちゃんはいってた。俺の原因ではないらしいんだけど。宝具だけならまだマシで、もっとひどければ動けなかったりして大変で……」
「藤丸くんには作用しないの?」
「うん」
「だから二人でレイシフト?」
「うん。サーヴァントの反応がないし、大丈夫じゃないかって」
それって何かのフラグでは、と思っていれは、近くにいた赤いエミヤさんと天草さんに「その油断が命とりでは」と言われる。同感である。
「不安だな、二人だけか」
「しかし、その不調となる原因を取り除かなければ我々が手出しできないのも事実ですね」
「何かあれば呼べ」
そう言ったのはオルタさんである。マジックで何か手に書いた彼に、そっと息を吐いた。
「何もないことを祈るしかないなぁ」

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「あぁ?勝手に帰ってきてんじゃねぇよ」
レイシフト先は見るからに帝国図書館で、出会った人は按司である。タバコを蒸した彼は見るからにボロボロになっていて、私の腕をひっ掴み逆の手で藤丸くんの服ををひっ掴む。あたりに気配がないことを確認し、司書室に入って結界を強化する。ホッと息を吐いた按司は近くにあったソファに腰掛けた。
「そっちの人はナマエの……知り合い?」
そう首を傾げた藤丸くんに頷いて、少し待ってもらう。とりあえず、レイシフト先で戦えなくなるバグは理解した。恐らくは私が張った結界のせいである。そんな会話を聞いた按司がこちらを見た。
「なんだ、お前また変なことに巻き込まれてんのか。通りで幼くなってるはずだと思ったんだよ」
「どっかの誰かさんに突き飛ばされたお陰でね」
「あぁ、時間がなかったからな。次元転移の時にお前の縦も多少はズレたんだろ」
「棋院達は」
「棋院と蓮子は大神サンとこ、朝陽はローランドのとこだな。蓮子と朝陽はともかく、相手の狙いは棋院とお前だけだろうからな」
「私の行方を指定しなかったのはこの際流しましょう。あと言うなれば貴方も狙われる立場かと思いますが。相手は」
「言うなればそこの坊主が連れてきた奴に似てる奴もちらほらいる、が、文学歴史の方の方が圧倒的に多い。中には混ざったような奴もいる。本来なら混ざらないだろうから何かはあると思うが、ここから一歩も出れてない。腹減った」
「あ、サンドイッチならありますよ」
そう差し出した藤丸くんに按司はお前いい奴だな、と按司はそれを受け取る。
「で、お前はそいつと何処でなにしてんだ。一週間も立ってねぇよ」
「よほど縦軸のブレがあるようで。彼と並行世界の歴史を正しいものに直してます。人類滅亡の危機なんですよ」
「世界の理が働いたか、お前の幸運が高いのかは知らないが、面倒だな。いや、そうなるべきでそうなったか」
「恐らくはそうでしょう。ということは、あちらの世界の理を持ち込んだ人がいる。混ざってるのはその力が働いてるんでしょう。按司はそれ食べて休んでください。私はあちら側の人と相談します」
そういえば片手を上げた按司に、藤丸くんを手招く。とりあえず椅子にかけるように促す。
「ドクターやダウィンチちゃんやマシュにも繋がっているんですよね」
『あぁ、繋がってるよ。どこからどう突っ込めばいいのやら』
「元を辿れば単純なことです。私はこの特異点の人間で、そこでサンドイッチを食べる男に逃がされて貴方達の世界に幼くなってたどり着き、そのままカルデアのマスターの1人に選ばれた」
「え、じゃあナマエって俺と同い年じゃないの?」
「ソイツは俺より三つぐらい年下だぞ。外見老けねぇだけで」
そう容赦無く突っ込んだ彼に藤丸くんが目をパチパチと瞬いた。
「年齢については世界を跨いだ際に縮んでいるので藤丸くんたちの世界においては私の年齢は正しいものだと思われます。簡素にこの世界について説明しましょう。この世界は貴方達の世界の過去ではありません。ズレにズレた世界の先、並行世界と呼ばれるものでしょう」
「漫画とかでよくあるやつ?」
「そうです。そして、カルデア、もしくは魔術協会とやらと言われるそれのように特殊な組織がこの世界には四つあります」
「四つ?」
「一つ、海の正体不明侵略に備える組織。一つ、並行世界間が混ざらないように監視し、何かあった時に秘密裏に対処を行う組織。一つ、文学の消滅を防ぐための組織。一つ、歴史を監視し修正しようとする存在を止めるための組織」
「最後はカルデアみたいな感じ?」
「ええ、まさに。ただ、呼び出すのが英霊ではなく付喪神なんですが」
『では、どうしてその組織は動いていないのですか?』
「ーー正しくは、四つのうち三つは『あった』だ。三つは大きな戦いが終わり落ち着いたあとに解散された。残ったのは森羅ーー並行世界云々だけだ。いや、文学云々も図書館にいるあたりある意味まだある、か」
按司がそう言ってまたタバコに火をつける。
「そっちが関わる理由はわからないが、名前を連れてきたのは間違いだな」
「そうですか?貴方が死んでも終わりだと思いますよ。元帝国図書館特務司書、現森羅特殊部隊総括の按司隼人さん?」
「どう考えてもお前が死んだ方がアウトだろうよ、元特務司書で現世に留まっている最後のひとりの審神者さん?」
その言葉に動きを止める。
「嘘でしょう?十数人いたはずですが」
「殺された。森羅が動いてたが森羅の動いてた奴ごとな」
「審神者?」
「歴史を監視する組織に属していた人間のことだな」
「ってことは、」
『ナマエちゃんが死んだらそこでここの歴史はめちゃくちゃになる、と?』
「もう案外ぐちゃぐちゃだけどな。坊主が連れてきた奴みたいな奴が色々まぁやってくれてる。ナマエを探してな」
そうタバコの煙を見つめた按司に、なんともいえなくなる。
『マスター、今すぐ俺を呼び出すべきだ。理由はどうであれ、危険すぎる!』
『そうだね、それには賛成かな』
「でもエミヤ達、動けなくならない?」
「こいつの張ってる結果のせいだな。だが、外すのはおススメしない。窓の外を見ろ」
按司の言葉にカーテンを引く。庭の外側、その先に広がっていた街はない。まるで、冬木のようなーー。
『これは、酷いな……』
「お前の結界で護られてたからここは無事だ。外せば攻め込まれてアウトだ」
「……宝具を使えないなら他を使っていただくしかありません。恐らく、藤丸くんのサーヴァントならアンデルセン先生や土方さんは動けたのでは」
「え!なんでわかったの?」
「……よくわからんが刀と文学か」
そういった按司に私は頷く。
「そういうことです。アンデルセン先生とシェイクスピア先生はある意味戦えるでしょうが……恐らく銃と剣を振り回していただかないといけませんね。そもそも、宝具が使えないとなると何か武芸に秀ているひとを呼んだ方がいいのかもしれません」
「えーと、じゃあ作家二人と」
『鬼か!お前は!』
「あとは日本史に準ずる方と李先生ならなんとか武器は提供できると思います。ただし、決して壊さないでください……あと、ドクター、ダヴィンチちゃん、今から色々やりますが目をつぶっていただけると」
それだけ告げて扉を見て触れる。ああ、それだけでは弱いな、と藤丸くんを呼んで扉に手をついてもらう。
「つなぎましませ、道祖の神よ、那由多の先とは言わずとも、所縁のある地につなぎませ。幾多のものと契約す、かの少年との所縁の地、真白な大地にそびえ立つ、その建物とつなぎませ」
その言葉にゆっくりとドアのプレートが回り、表示が外国語になる。ガチャリと扉を開けばその先はカルデアである。向いた視線、藤丸くんは目を瞬いた。
「え?は?」
「藤丸くんはいけないよ。行きと帰りは同じ道じゃないといけないから、私も藤丸くんも中には入れない」
そう空間を叩く。コンコン、と音がなったそれに藤丸くんも習ってさわった。壁みたい、と言った彼と話していると駆け寄ってきたのはマシュ達だ。
「コレはレイシフト……いや、違うな。高等な魔術、いや、空間そのものを魔法の域だ。そっちはそんなことができる人がごまんといるのか?」
「そんなわけねぇだろ。作り出せんのは今はナマエだけだ」
「とりあえず、エミヤさん達はきてもらって……オルタさんってRPG1使えます?」
「使える」


追記はたぶんごはん軸
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