2018/07/30
没ネタ集Fかるであ
「あぁー、元々対等だったわけじゃないからなぁ」
そう頭をかいたナマエさんに俺は首をかしげる。ナマエさんは俺と同じくマスター候補に上がっていた一人、であり、凍結もされず運良く生き残った一人でもある。ダヴィンチちゃんの部下にも友人がいる彼女に、その友人との関係を訪ねていた時だ。
「対等じゃない?」
「私元々あの子の家の御庭番というか門番だったんだよね」
「門番?」
「あの子の先代に拾われて門番として育てられて、代替わりして今。先代時代は廃れかけた一族だったんだけど、彼女に変わって復興した。で、門番から解放されたら友達になってと言われて今に至る」
そうへにゃりと笑ってみせたナマエさんに目を瞬く。それを目撃したらしいサーヴァントが呆気にとられたのが見えた。そうだよなぁ、ナマエさんいっつも小難しい顔してるもんなぁ、と思いつつ、羨ましいなぁ、と思う。それが声に出ていたのか、彼女は「リツカも友達でしょ?」と平然と言ってみせたのだけど。それに勢いよく頷けば、彼女はまたヘニャリと笑った。
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ナマエさんはサーヴァントではないのだけど、サーヴァントに抵抗できているあたり半分は人間じゃない気がする。今日は流石に負傷したらしくエミヤに担がれている彼女である。(ちなみに召喚された直後、エミヤはナマエさんを男だと思っていたらしい。最初に俵担ぎにした際に疑い、その後ナマエさんの生着替えに遭遇して認識を改めたとはナマエさんの言葉である。)
君は女なんだ、と怒っているアーチャーにその前に門番だからなぁとボヤいたナマエさんはいつも通りである。
「ナマエさん傷大丈夫?」
「治癒魔術つかったから多少は?」
「その割には新しい血の匂いが酷くするが」
「細々した場所は流石になぁ」
「その状態でオルタの私には会ってくれるな」
「……この前のこと、オルタさんは忘れてるんじゃないかなぁ」
「何かあったの?」
「まぁ、いろいろとね。最終婦長が二人とも叩き出してたね」
「私はとばっちりだったがな」
ツンツンしているエミヤに、ナマエさんはとばっちり……となんとも言えない顔をした。
「とばっちりの割にはしっかりと」
「マスター、子供の前だやめ給え」
その言葉にもう一度首を傾げた俺にエミヤは咳払いをした。
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エミヤさんにより医務室に『ドナドナ』されたナマエさんを見送る。またドナドナされてるんですか、ナマエさんは。そう告げたマシュに頷いた。ちなみにドナドナとはナマエさんがつれて行かれる際に某合唱曲を歌うからだ。なのでカルデアでは誰かに連れていかれることをドナドナされるという言葉に置き換えられている。
「エリちゃん庇っちゃって」
「あぁ、だから怒ってらっしゃったんですね」
それは誰を指すのか。彼女がああなった時怒る人は多い。勿論俺も怒る。でも、最近彼女は彼女だから庇うんだろうな、と思うようになってきた。
「ナマエさんは不思議な人だなぁ」
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「全快ー」
「してないでしょ、馬鹿。動けるようになるのと全快は違うのよ。包帯グルグルだし」
そう突っ込んだ駱駝に、「いいじゃんいいじゃん、リツカもマシュも婦長もエミヤさん二人もいないんだし」という。視界に入らなければいないのとどう意義である。まぁ、そこにいるクーフーリンはなんとも言えない顔をしているけど。
「嬢ちゃん、後ろ」
「やだな、知ってるけど知らないふりしてたのに」
「ならばさっさと戻るべきだと思うが?」
「部屋にいると暇なんだもん」
そう言いながら後ろを見る。エミヤさんじゃないですかー、やだー、リツカが周回連れて行くって言ったのはオルタさんだけだったかー。まぁ知ってたけどな。ため息で色々と逃した彼は筋力が思ったよりないからな。暴れる私は抱えられないのを私は知っている。しかしながら、エミヤさんにすっと目に影が入った気がする。気にしない。
「マスター、あまりいうことを聞かないと前みたいなことになるぞ」
「……それはちょっと遠慮したい、デス」
「ならばおとなしく寝ておけ」
そう私を抱えたエミヤさんに大人しくする。それを見ていた駱駝が「ナマエ、攻略はほどほどにしなさいよ」と告げた。
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壁際に追い詰められてるのなんでだろうな?顔が近いのなんでだろうな?むしろ、口の中になんか入ってんのなんでだろうな?魔力ってカルデアからの供給だよね、この人。沢山のはてなを理性が飛ばす。ぞくぞくする、というより苦しくなってきたので彼の肩を叩けば彼は顔を離した。息を整えようとはくはくしているところで、彼の顔が首筋にやってくる。
「いやいやいや、何してるんですか」
「暇、と言っただろう?ならば魔力の補給でもするかと思ってな」
「いやいやいやいや」
「この前あんなことをしておいてこの期に及んでか?」
「くっそー、髪型乱してやるからな!」
そう頭に手を伸ばせば、カプリと彼は噛み付いた。
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「あれ?エミヤ、ナマエさんは?」
「部屋でおとなしく寝てるぞ」
いけいけしゃあしゃあと。そう思いながら素晴らしい笑顔で答えた英霊を見る。どっかで見たことあるんだよな、と思っていたらそういえばナマエが父親に言われて一回共闘してた人に似てるんだよな、と思う。どうりであの子がホイホイ懐くわけだ。
「……なんだ、何か言いたいことでもあるのか?」
「いや、二、三年前にフランスで聖杯戦争あったっけな?って思って」
「なんで?」
「エミヤにそっくりな青年とナマエが会ってたから」
その言葉にピクリと反応したのをみると彼は何か知るらしい。
「フランス?」
「私の母親がこのカラーだっただけで私フランス人だからね、パリに屋敷があるのよ。まぁ、父親がまだ生きてた時だし、ナマエがめちゃくちゃ殺伐としてた時期なんだけど。私よく知らないんだよね。その期間だけやたらナマエがボロボロになって帰ってきてたのを見てたぐらいで」
「ナマエさん何してるんですか」
「知らない。父親に使われてたんでしょうね。まぁ、その頃のナマエはパリで踊り子してたり、命令に忠実バーサカー的な感じだったし、そのお兄さんを殺そうとしたのか何なのかは知らないけど最終そのお兄さんに懐いてるっぽかったし、まぁ、最後の最後、ナマエが半年間閉じ込められる結果になったというか」
そう言えば言うだけ、彼はピクリピクリと反応をする。まぁそのあと父親は死んだわけで私がナマエを解放したわけなのだけども。転生前からの友人がああも酷い扱いを受けているのをみると流石に良心が痛む。できることを聞いた時になんでやり返さないんだ!?と思った私は悪くない。
「うぇ、閉じ込め?え?ええ?ちょっとまってナマエさん、ええ??」
「まぁー、その前から男女問わず寄ってたかられてからね。サーヴァントを必要最低限にさせてるのはだからなのよ。ある意味カリスマというか魅了のスキル持ち。そしてアンタ達もその人もそれに見事にハマってるわね」
はっきりそう言えば彼は頭を抱える。手に飲料を持った彼は、マスターに渡してくる、といって席を外した。
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「マスター」
そう呼ばれてジト目でみる。なんだ。誰かさんのおかげで私の体力はもうゼロに等しいのである。
「君は日本人だと思っていたが、フランス人なのか?」
「駱駝から聞いた?私は血筋的には日本人だよ。冬木にいたこともあったしね」
「冬木に?」
「うん。駱駝の父親に引き取られたから離れたけど。まさか何年か後にああなるとは思わなかった。まぁ、駱駝の父親に引き取られてフランスに渡って今に至る感じ……なんだけど」
そう区切って彼をみる。飲料を差し出した彼にそれを受け取った。
「まぁ、色々あって記憶があやふやな場所もあったりするんだよね。誰かと仲が良かったらしいんだけど、その人についての記憶がなさすぎる。多分、駱駝の父親に不必要だから消されたんだと思うんだけど」
「……そうか」
何処か残念そうに息を吐いた彼に首をかしげる。
「聖杯戦争でもあった?」
「いいや、駱駝がバーサカー云々と言ったから気にかかっただけだ」
「それ私のことじゃん。駱駝含む腐れ縁にたまに言われる」
「まだいるのか」
「何人かね。おねんねしてる子もいれば、関係ない場所で生きてた子もいるから今は駱駝だけ」
頬杖をついてそう告げる。彼はもう一度そうか、と告げてとなりに座った。なんだ、別にめげてないぞ。人理修復したらまた会えるんだからな。
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空白の期間はいくつかある。空白というよりは確かにいたはずの存在をそこだけ消しゴムで消されたようなというか。例えばこの世界の両親がそれにあたる。冬木にいた記憶はある。そこで両親と生きた記憶もある。でも両親だけが消されている、そんな感覚だ。それと同じく、駱駝に解放される前の記憶の一部がない。不必要だから消されたのだろうけども、それでも気にならないと言ったらノーである。パリにいた頃はそれで呼び止められる時がいくつかあったわけであるし。まぁ、冬木にいたころギルギル呼んでた人物がまさか英霊だとは思ってなかったけど。なんでこんなことを考えてるかといえば、目の前に駱駝の父親ーー私を拾った人物がいるからである。リツカに代わってやってきた特異点であるけれど、これはヤバイのではないか、と思う。破壊跡があるパリの街、その人は私を見て目を開いた。
「アーチャー、これは私がここにくるべきじゃなかったかもしれない」
グラグラと心が揺れる。小さく呟いた言葉に、霊体化している彼がどうなったかわからない。
「令呪をもって命ずる」
『マスター?』
「貴方達は私ではなくリツカ君を助けなさい。彼の元に行きなさい」
そう告げて目を伏せる。マスター、待て!とか、モニター越しの言葉はこの際無視だ。
「ここ、ダメだ、駱駝。おやすみなさい」
小声である。そう言ってもう一度彼をみる。
「おかえり、ナマエ。どこに行っていたのか探したよ。あぁ、違うな、おはよう、ナマエ。いい夢は見れたかな?」
そう漆黒に飲まれた私はまた忘れるんだろう。消しゴムにかけられたように。
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はてなを沢山飛ばす俺たちに、駱駝さんは顔面蒼白になる。やばいとかどうしようとかしきりにそう告げた彼女は俺のそばにやってきたエミヤ達をポカポカと殴った。
「何帰ってきてんのよ!ナマエ残して!」
「令呪を使われたんだ!仕方ないだろう!」
「じゃあ今から戻りなさいよ!」
「何かあるんですか?」
「最悪敵対するわよ、ナマエはあの人の命令には忠実なの!不必要な記憶は全部消されるだろうし、ああ、最悪!ここのこと消されるに決まってる!」
ぐしゃぐしゃと取り乱す彼女は珍しい。
「何で忠実なんだよ」
「そう教え込まれたからに決まってるでしょ!」
「でも、流石に英霊が相手なら抑え込めるんじゃ」
そう言った俺に彼女はこちらを見る。ぞくっとするような、そんな顔だ。
「アンタ、ナマエの戦い方まじかで見てもそういう?あの子、命令なら片腕が吹っ飛ぼうが命に関わる怪我をおおうが、突っ込んでくるわよ。だからバーサカーってわたしは皮肉ってるの!それに敵サーヴァントとやりあってるの、アンタも見てるでしょ!」
「……その前に、ナマエはどうしてサーヴァントとやりあえるんですか?」
そう尋ねたセイバーはもっともだろう。サーヴァント達が駱駝さんを見る。彼女はそれは、と口籠った。
「ナマエが、サーヴァントを見本に、」
だんだんと顔色が悪くなる。
「お父様が、」
「駱駝さん?」
「お父様が、記録に残ったサーヴァントを見本に、無茶な実験を、」
口を手で覆った彼女は目に涙をため始めた。
「じんたいじっけんで、つくりあげた、にんげんだけど、もう、にんげんじゃない、あのこはにんげんにもどれない、」
「ーー人体実験で作り上げられた擬似サーヴァントってこと、かな?」
そう尋ねたダヴィンチちゃんに彼女は首を縦に振った。その瞬間、周りは唖然とする。いや、なんだって!?と動いたのも数人いた。
「ナマエ、かみのいろ、いまはもうあんないろじゃない。わたしが魔術でかえてるだけ。めのいろもあんな色じゃない。あと、数年で、ナマエは。ナマエは、元々マスターこうほじゃない。私がオルガマリーにかけあって、マスターこうほに」
「マスター候補じゃないというならなぜカルデアに?!」
「ナマエは、元々、デミサーヴァントの実験に参加するために、おにいさまが……わたしは、わたしはナマエがともだちだから、あんなの、みとめたくない」
遂に涙腺が決壊したらしかった。駱駝さんは両手で顔を覆う。俺は彼女を慰めようと手を伸ばし、彼女の頭を恐る恐る撫でた。
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パチリと目を覚ます。そこにあった顔は男性の顔だ。それを認識した途端に体に力が入らなくなり、くたり、と倒れ込めば彼は私を支える。治癒魔術を使わなくては、と思うけども、何も動かない体。あぁ、死ぬのか、と思いながら彼に抱えられる。
「マスターは捕獲した、連れ帰る」
『了解、リツカ達も元凶を戻したようだ。時期に世界は元に戻るだろう。急いで治療するから連れて帰ってきて』
誰かとの通信。いまいちわからないそれらに何か言葉を紡ごうとしても、言葉は空気と成って消える。引っ張られるような感覚。ぐるん、と回った視界。ゆっくり目を伏せれば襲ってきた眠気に身を任せた。
夢を見る。ぐちゃぐちゃとしそうな夢を見る。色々な夢をみる。昔の夢、忘れてしまった誰かの夢をみる。正義のヒーローの夢をみる。友達の、懐かしい夢をみる。誰かの夢をみる。
パチリ、と目を開いたそこは自分の部屋だろう。どうしてこう成ったのか、と考えてーー納得した。確か、レイシフト先に駱駝の父親がいて、諸々の記憶を消されたんだったか。で、サーヴァント達と戦う羽目になり、最終的にエミヤと交戦してーー片腕吹っ飛ばされたりなんやかんやした気がする。そう腕を見ればやはりない片腕。なるほど、弓はもう使えないな。義手作ってもらうか。起き上がることもままならないし、声が出ないようなのでアーチャーと念話で呼びかけてみる。
『おはようござます、アーチャーさん、ちょっと自分で立てないので迎えにきーー』
「マスター!」
勢いよく開いた扉、そこにいたアーチャーにある方の手を挙げる。
「起きたんだな、あぁ、メディックを呼ばなければ……」
そうぶつぶつ告げた彼に『起き上がらせてくれたら立てる』と念話で話せば彼はこちらを見た。え?まさか、足もない感じか?そう思いつつ片足ずつあげる。あるある。五体のうち一つがないだけ。いけるいける。
「マスター、動くんじゃない」
『動ける』
「声を使え」
『出ないんだもん』
「やるだけやってみろ」
没!
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