2018/09/01
GRネタ
お隣さんが忍者
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引っ越した先のお隣さんがどう見ても双璧でしたありがとうございます。最初青ちゃんの双子のお兄さん認識だったんだけど否定されてしまった。否定しないで欲しかったなぁ、と今やもう同じ鍋をつつく伊賀崎さんと赤垣さんに思う。青ちゃんはいい。いや、私一般人だから探られてもなんてことないけど。大学も近いし引っ越すつもりはないけどさ。でもあんまり仲良くしてると殺されそうだよね、と思ったりもする。どうか穏やかな世界でありますように、と私はシズマ管を使いながら思うのでした。なんてフラグだ。
知らないうちに赤垣さん達と伊賀崎さんが決裂していたらしい。飛騨狩りか何かが起こったんだろうか、と思う。何処か泣きそうな伊賀崎さんに、どうしたの?と何も知らないフリをして尋ねる。赤垣さんと喧嘩でもした?とそれとなく聞けば動揺した目で一瞬こちらを見た、と思ったら抱き寄せられたでござる。頭の中に大量のクエスチョンマークを立てていれば彼は「ごめん」と小さく謝った。何に対しての謝罪かはわからない為、仕方ないなしばらくこうしてあげよう、だなんて笑って彼の背中を叩く。別に殺されたっていいのさ。悲しむ人なんて一握りだろうから。
変な話だけども、私は四度目の人生を送っている気がする。今の暮らしに近い人生、赤垣さんに似た人を先生と慕った人生、そして影丸と呼ばれた少年というか最後は青年だったけど、まぁ、影丸と呼ばれた人物と一緒にいた人生、そして今。どれも長いものじゃない。一度目は突き落とされて死に、二度目は忍者の里に生まれて生き残ったけども先生と慕った人物を庇って死に、その次はなんだったかな、あぁ商人の子供でとりあえずぐっさりされて死に、今にいたる。だから二人をその二人と重ねてしまうのは仕方がないのだと思う。そう緩やかに目を伏せる。昔も同じようなことをした記憶があるし、された記憶もある。私は先生のように、彼の髪を撫でた。
ーーナマエさんは、
「ーー伊賀崎さんは、」
ーーいいこですね。
「いいこだね」
なんてね、と、ぽん、と背中を叩く。少し体を離した彼に元気でた?とイタズラっぽく尋ねれば彼は目を伏せて苦笑いした。「僕みたいな年にいい子はないだろう?」と。
そこから伊賀崎さんには会ってない。赤垣さんにも会ってない。どちらの名義の部屋だったかは知らないけれど、隣の部屋はいつのまにか空室に変わった。きっと会わないほうがいいのだろう、と大学を卒業した私は部屋の片付けをしながら思う。きっと、会わないほうがお互いのためなのだ。
ーーと、思っていたのになぁ、と客観的に思う。目の前にいるのは赤垣さんなんだろう。血を被った彼は私を見て微かに目を開き、私の名を紡いだ。周りにあるのは死体の山だ。あぁ、殺されるのだろう、と人ごとのように思う。彼は悪役に徹するべきで、私は被害者、または殺される立ち位置に徹するべきだ。そうツラツラと思う。左右隣にいた同僚が叫んで逃げ出してーー別の人に殺された。別に見ているわけじゃない。パチン、と指を鳴らす音がして、血しぶきが顔にかかったからだ。どうせ殺されるなら赤垣さんがいいな、と思う。隣に立った人物ーー同僚を殺した人物は私を見下ろした。綺麗なスーツ、茶色に似た色には血がこれっぽっちもついていない。
「逃げないのかい?お嬢さん」
「やだなぁ、どうあがいても死ぬでしょう?」
完璧に諦めているそれだ。にっこりと笑って隣に並んだ人物を見る。隣にいた人物は笑う。可笑しそうに。
「お嬢さんはこの惨状を見てもなんとも思わないのか!」
「いえ、普通に吐きそうで気持ち悪いし怖いですよ。夢なら冷めて欲しいくらい。むしろ夢では?って思ってます」
あっはっはー、と二人で笑う。可笑しなお嬢さんだ、とすっと差し出された指を掴んだ。
「どうせ殺されるならあっちの人の方がいいです」
そう赤垣さんを指差す。指を構えたその人は、手を下ろした。
「お嬢さんのご指名だぞ、レッド」
「こういう時ってどういう表情をするべきなんですかね」
「恐怖にかられた顔をするべきじゃないか?」
意外にも会話が続くものだな、と近づいてきた彼を見る。彼が刀を引き抜くのが見えた。表情がない。ああ、死ぬなぁ、と思う。なので、笑う。そういえば別れの言葉を言ってなかったな、と思い出したので口を開く。
「さようなら、」
振り上げられた刀に、風と木の葉が舞う。距離をとった二人、私は誰かに引き寄せられたらしい。見上げれば黒い忍者装束がいた。この術は、と小さく呻いた隣に立っていた人。起こり始める喧騒。襲ってくる安堵と眠気に目を伏せた。
目を覚ませば病室だった。生きてたらしい。生きていることを神様?いや、多分影丸?伊賀崎さん?に感謝しつつぼんやりとする。なんで彼は刀を振り上げたんだろうか。まっすぐ突いてたら私はすぐに絶命したわけだけども。ガチャリ、と扉が開く。やってきたのは伊賀崎さんだ。起きている私を見て、大丈夫かい?だなんて近づいてきた彼になんと返そうかと迷う。そして、一通り考えを巡らせてーー。
「伊賀崎さん?」
ーーショックで忘れたふりをするのが正解だと見た。彼は近くの椅子に腰掛けて私を見た。
「……何があったか覚えているかい?」
「何が……?私大学にいたはずなんだけどな」
その言葉に彼は目を見開いた。
「記憶がない、のか?」
そう、数ヶ月間の記憶の喪失、いや、数年かもしれないけど、その記憶の喪失をすればいい。なので笑う。
「なんだか変な感じだね、伊賀崎さんだけって。赤垣さんや青ちゃんはどうしたの?」
残酷な事を問いかけている自信はあるし、見破られない自信もある。四度目の人生をなめないで欲しい。まぁ変な力を使われたら終わりかもしれないけども。こてん、と首を傾げた私に彼は微かに目を開いてーー片手で顔を覆った。
「げん、き、だよ、」
そう小さく笑った彼は口元だけ無理やり笑っている。しかし、それは私が聞いた言葉の返答ではない。
「あの、ふたりは、げんきだ」
「どうかした?」
「いいや、なんでもないんだ」
泣いているんだろうか、笑っているのだろうか。彼の顔を覗き込む。小さな子供にするように、こちらを見下ろした彼の顔に手を添える。目には迷いが見える。
「伊賀崎さん?」
そう尋ねれば、彼は手に手を添えて、眼を瞑る。
「大丈夫、飲み物を買ってくるよ」
手を離した彼を見送る。しばらくして慌てたように伊賀崎さんが入ってきたことで気づいた。多分あれは赤垣さんで、私を殺しにきたのかもしれない、と。まぁ、慌てたように入ってきた伊賀崎さんに首をかしげる。
「あれ、伊賀崎さん、飲み物は?」
「え?」
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なんだか知らないが巻き込まれてしまった。記憶がないフリしたら解放されると踏んでいたのに。なんて事だ。人間やめたくないぞ、私は。まぁ私に拒否権などないのは理解しているのだけど。
「伊賀崎さん、刀、持ってる」
そう言って私の相手をしてくれている彼に尋ねる。頭巾を外している彼はあぁ、と刀をちらりと見た。
「刀って、振りかざすのと突くのどっちが強いの?」
夢を見る。実は怖いのかもしれない。伊賀崎さんはなんとも言えないような顔をした。
「どうして?」
「夢の中で、刀を振り上げられたから。そして、突かないのかぁって眼を伏せたら目がさめる」
「怖くないのかい?」
「夢だから、別に」
苦笑いする。
「昔から何回か死ぬ夢を見ることがあるから、慣れちゃったのかも。死ぬ夢は吉兆だって聞いた」
ケラケラと笑えば、彼はなんとも言えない顔をした。その理由を私はしっているため特に気にもしない。
「何回かっていうことは、他にも死ぬ夢を見るのかい?」
「うん。例えば、ね、誰かに突き落とされて死ぬ夢とか」
「物騒だな」
「他は面白いよ」
「死ぬのに?」
「戦国時代の夢なんだけどさ、私は実は忍者で焼け落ちた里から逃げてきたんだけど、孤児院の先生に拾われてね、暮らしてたけど、悪い奴らがきて先生を庇って死ぬ夢とか。江戸時代の夢で、私は商人の娘なんだけど、仲良くなった少年?いやあれは最終的に青年?まぁ、仲良く暮らしてたら辻斬りにあって死ぬ夢とか」
漫画みたいな内容でしょ?と尋ねる。伊賀崎さんは困ったような顔をした。
「やけにはっきりしてるね」
「でしょう?親や友達には前世じゃない?って言われた」
「なら、君の前世は一度は忍者だったわけか」
「戦国時代はね」
「いつぐらいだい?」
「信長がいた気がするよ」
「ちなみに里は?」
「知らないなぁ、名前もない里じゃないかな」
夢の話に付き合うくらい彼はいい人なのだろう。他に覚えてることは?と問いかけた彼に、そうだなぁ、とぼんやりとする。
「髪の色が白かった気がする」
そう髪を摘んで告げる。先生に拾われた時、髪の毛の色は真っ白で、次の商人の娘の時も白い髪が混ざっていた。今は完璧に黒いけれど。
「まぁ、昔から見る夢の話だよ」
そう話に区切りをつけて外を見る。青い空が無限に広がっている。
「この飛行船はどこまで行くの?」
「……ずっと遠く、君が安全に暮らせる場所までさ」
その答えに首を傾げた。
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ただの人間が梁山泊にいてもいいんだろうか。そんなことを思いながら過ごしている私である。伊賀崎さん、改め影丸さんは仕事で多々いなくなる為基本私はぼっち……ではなかったでござる。なんやかんや九大天王が気にかけてくれたり、エージェントが気にかけてくれたりするのでぼっちではないし、事務仕事をしたりするので結構忙しい。紙にメモ取ったりしてるとパソコン使わないのかって言われることあるけど、アタイ知ってる。爆発してパーになる可能性があるって。まぁ、パソコンカタカタする傍ら何かと教えようとしてくるジッさまと話してるけど。
「いやいやいや、幻妖斎様、無理ですよ。そんな人外みたいなこと……私影丸さんに連れてくるまでBF団?なにそれ??美味しいの??っていう世界で生きてたんですよ」
「だがしかし、影丸がずっと付いているわけも行かぬぞ」
「うーん、確かにそうだ……」
そう手を止めて考える。しっかし、まぁ、他はちいさいころからやってああなわけだし、そんな人外にもならないか。影丸さんに迷惑かけたくないし。
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へたり、と楊志さんに抱きついて見る。ナマエ、どうしたんだい?と首をかしげた楊志さんに、ジッちゃんがスパルタ、とぼやいた。ら、快活に笑われた。
「あぁ、最近何をしてるかと思えば、幻妖斎様に手習いか!」
「うーん、だって、影丸さん達に迷惑かけ続けるわけにはいかないしね、」
そう体を少し離していえば頭をぐしゃぐしゃと撫でられた。
「いい心がけだね、でも、ま、向こうは迷惑だなんて思ってないさね!」
その言葉に首を傾げておいた。
ジッちゃんに三味線をもらったけど、そういや、戦国時代も江戸時代も三味線持ってたな、と思う。ベン、と撥で弾けば、いい音を立てたそれに音を奏でる。なんというか、体は覚えているらしい。そんなことをしていたら貰った紙が人の姿になる。なんだ、とやめてみればそれは紙に戻ったのを見ると、式神の類を操る三味線らしい。江戸時代と同じかよ。ちなみに戦国時代は隠し刀で振るってた記憶である。
「ああ、でもここに切り込みがあるってことは、君もそうなのか」
三味線に違和感がない切り込み。恐らくは刀の仕込みがある。なんという私使用だよ、と思いながらとりあえず式神を回収して撥で弦を弾いた。
「菜の花畑に、入り日うすれ」
そう音を奏でながら口ずさんで目を伏せる。
「見わたす山の端は、霞ふかし。春風そよふく、空を見れば、夕月かかりて、にほひ淡」
それだけ歌って音を止める。そしてぼんやりとしていたら上から声が降ってきた。
「朧月夜か」
見上げればいた天童さんに、こんにちは、と頭を下げる。上から飛び降りた彼は隣に並ぶようにすわる。
「でも、それどうしたんだ?」
「幻妖斎様にいただきました」
「幻妖斎様が?」
「いつまでも影丸さんに頼ってられないでしょ?」
そう言えば彼は首をかしげる。なんだその反応。
「いや、影丸はそのつもりだと思うが」
「え?」
「いや、なんというかな、アイツは優しいっちゃ優しいけど、どう見てもアンタには」
「天童、なんの話だい?」
ずっと音もなく現れた影丸さんに天童さんが肩を跳ねさせる。私もビックリして振り返れば影丸さんが私を見た。
「おかえり、影丸さん」
「……ただいま、ナマエ。それ、どうしたんだい?」
「あぁ、幻妖斎様に貰ったんだと。その話だよ、その話」
苦笑いしながら私の頭ぽんぽんしたけど、歳変わらないぞ、この人。下手したら私の方が年上の可能性があるんだぞ。わかってるんだろうか。
「幻妖斎様に?」
「影丸さんに頼ってばっかりじゃだめでしょう?」
「構わないよ」
「そうなの?でも、影丸さんがいない間に何かあったら大変でしょう?」
「梁山泊にいる限り大丈夫だ。君は戦う術を持たなくていいよ」
「ほらな」
影丸さんの言葉にあっけらかんと天童さんがいう。
「そもそも、幻妖斎がナマエを探してたぞ」
「え、私、幻妖斎様からこれ貰ってここから動いてないんだけど」
私の言葉にピシリと二人が動きを止める。どういうことでございやしょうか。
「おお、ナマエ、ここにいたか」
そうやって来たのは幻妖斎のジッ様である。それは、と目を細めた彼に、首をかしげる。
「さっき、幻妖斎様が私に渡したじゃありませんか」
「……侵入者か?」
「いや……とりあえず、ナマエ、これは預かろう」
「そういうことだから、ナマエ」
そう私の手から三味線を影丸さんがとった瞬間、ピシッという音と一緒に弦が切れた。ぽたり、と流れた血に目を瞬く。
「影丸さん、大丈夫?」
「大丈夫だよ……幻妖斎」
「これは参ったな、ナマエが持ち主に選ばれよったか」
ふむふむと少し面白そうに言った幻妖斎様に、じゃがまだはやい、とそれは宙に浮いて回収された。とりあえず影丸さんの手当ての為にポケットからハンカチを取り出して傷口に結んでおく。彼は困ったように告げた。
「汚れるよ、大事なものだろう?」
「いいよ、物より人の体の方が大事だし、漂白すればおちるから」
まぁ、赤垣さんに貰ったものだと言えばうるさそうだからちょっと黙っとく。ちなみに、寝て起きたら隣に三味線があるという怪奇現象と恐らく誰に貰ったか察したであろう影丸さんの機嫌がちょっと悪かったのは後日の話だ。
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赤垣さんとあった。たまには外に出歩かないと可哀想だと楊志の姐さんと銀鈴さんが駆け寄ってくれた結果というか。とりあえず外はお祭りらしい。小さな子供が路地裏に入るのが見えてそちらに足を踏み出したところに彼がいた。ヒュッと息を飲むような殺気を感じたのは一瞬で、すぐさま彼はそれを緩めると仮面を外した。
「ナマエ?どうしてこんな場所に」
そうツカツカと歩み寄った彼に、赤垣さん、久しぶりだ、と笑う。彼は一瞬目を泳がせて息を吐き近づいてくる。私の手から綿菓子を奪った彼に、奪い変えそうと奮闘するが、いいように遊ばれている気がする。彼に激突する羽目になったし。
「というかそもそもなんで中国にいるんだ、仕事か?てっきり日本の三重あたりにいるかと思ったが」
「仕事、かなぁ?よくわからないうちに今の場所にいるから」
そう首をかしげる。彼はスッと目を細めた。一瞬だけ。
「……危険な目にはあってないんだな」
「あってないですよ」
「今現在危険な目にあってるという実感は?」
「なんで、赤垣さんと喋ってるだけで?」
首をかしげた私に、彼は深いため息をつく。ぽん、と頭を撫でた彼はぐしゃぐしゃと頭を撫でる。そして抱き寄せるように耳元に口を寄せたと思うと、口を開く。微かに血の匂いが香る。
「いいか、ここからできるだけ北にーー社の方に離れろ」
いいな、と言った彼は私を人混みに私を突き飛ばす。わ、とバランスを崩した私に、人混みの奥に消える彼がひらりと手を振ったのが見えた。
「綿菓子取られてしまった」
そうため息をついて、そう言えば影丸さんとの待ち合わせ場所も社の方だった、と歩き出す。社のようなものの近くにいけば、いた影丸さんにひらりと手を振る。
「あれ、綿菓子は?」
「あぁ、取られちゃった」
「……誰かにあったかい?」
少し顔をしかめた影丸さんに、鋭いな、と思いながら口を開く。
「赤垣さんにちょっとだけ」
その瞬間、彼の術で場所が移動していたのはなんと言えばいいんだろうか。
oo
影丸の弱点は私である、と韓信さんが言ったけどもそうなんだろうか、と思ったりする。なんというか、外堀を埋められている感覚は確かにあるけど。中条さんがまぁ人間らしくなった、ということさ、と笑ったけども、それこのままいくと影丸さんに殺されないだろうか?と思ったり。そもそも、知らないうちに同じ部屋に暮らしているぞ、とは思う。そういや昔も知らないうちに同じ部屋に暮らしていた気がする。うつらうつらしながら隣で寝ている人物を見つめる。まぁいいか、と目を閉じて息を吐いた。
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なんか知らないけど、一時休戦、敵の敵は味方?共通の敵?うん?まぁ、そんな理由で争っていた二つが手を組んだらしい。まぁ、だからこのオシャレスーツさんと出くわすのだけど。
「おや、君は」
「……初めまして?」
そう首を傾げておく。あぁ、そういえば、と呟いた彼になんらかの報告があったのだろうと思う。
「はじめまして、ミス。名前を伺っても?」
「ナマエ・苗字です。なんやかんやあってしがない事務員です。えっと、貴方は?」
「これは失礼。ヒィッツカラルドと申します」
軽く手をとってキスを落とした彼にわぁ、西洋式、としか思わない私である。あとモテそうな雰囲気。
「作家さんにいそうな素敵な名前ですね」
そうにっこり笑えば彼は目を瞬いてカラカラと笑った。やはり面白いお嬢さんだ、と言った彼は私に尋ねる。
「今からどちらに?」
「部屋に帰るだけです」
「お茶でもお誘いしようかと思ったが、疲れた顔のレディを引き止めることは気がひける。お気をつけて」
「ありがとうございます?」
そう首を傾げて背中を向ける。指パッチンされたら死ぬよなぁ、と思ったら誰かに抱えられた感覚がして視界が変わった。
「影丸さん?」
「出歩いちゃダメだって言っただろう!」
「韓信さんに呼ばれて」
「ダメだ。部屋から出ないでくれ」
そう言われて扉を閉められる。なんてこった。軟禁じゃないか。
怪我をして帰ってきたらしい影丸さんの手当てをする。手当てを一通り終わらせたら、コツン、ともたれかかった彼に最近デレが酷いなこの忍者、と思うわけである。
「お疲れですか」
「少しだけね。こんなことになるなんて思いもしなかったから……本当なら、君を日本支部に送るべきなんだけど」
そう告げた彼に、はて、と首をかしげる。いいや、何にもないよ、と告げた彼は私の髪をすいた。
過保護め、とは戴宗の兄貴が影丸さんに告げた言葉である。まぁ、確かに過保護だろうな、と思う。でも、原因としては私が警戒心も何もなく後をついていってしまうからだろうな、とヒィッツさんが淹れてくれた紅茶を飲みながら思う。
「お嬢さんは警戒心がないって言われないか?」
「昔からよく言われます。美味しいです、これ」
「それはありがとう」
拍子抜けしたようなヒィッツさんにこの人実はいい人では?と思ったりもする。まぁ、上から降ってきた誰かにすぐ目隠しされたが。
「何をしてるんだ、ヒィッツ」
「何ってわからないのか?お嬢さんとお茶をしてる。そう警戒するな、ただのお茶会さ。なぁ、お嬢さん?」
「ヒィッツさんの淹れた紅茶美味しいです」
深いため息が聞こえたので手を離して欲しいと抗議してみようとすれば、体が浮いた。移動する感覚がして、手が離されると自分の部屋にいる。そして目の前には赤垣さんがいた。
「赤垣さん?」
「ナマエ、関わるな。お前は関わるべきじゃない。……なんで影丸は……」
そう呟かれた言葉に首をかしげる。そっと彼の顔に手を伸ばす。それを享受した彼にもう一度首を傾げた。
「赤垣さん、どうかした?」
「いいや、なにも」
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いやぁ、私が弱点になるのかな。そう思いながら扉のその先を見る。弱点になりうるなら真っ先に処分したほうがいいのでは、とは思ったりする。でも、まぁ、おそらくなんやかんや私が死にかけても見捨てるつもりはあるのだろうとは思ったりはする。そういう判断ができるから彼らは忍なのであるから。優しすぎる気もするけども。
私が死んだら彼らは泣くのだろうか。ぼんやりとそう考える。最後の記憶、例えば戦国時代のそれなのであれば彼は泣いていたのかは知らないし、例えば江戸時代のそれならば彼は泣いていた気がする。まぁ、ツラツラと考えてしまうのはそうなる可能性が高いからなのだけど。喧騒ではなく破壊音、叫び、号令。そんなものがこだまする中、二人が現れないということは彼らはいないか捕まっているか死んでいるかの三択になるわけである。もしかしたら軍師さんの策略にはまったのかもしれないね、と冷静な部分が告げた。靴の音、近づいてくる破壊音。上品になるノックの音。ゆっくりと開いた扉の先にいた人物は私を見て口角を上げた。
とりあえず三味線を引っ掴んで逃げていれば嬲るように攻撃をされる。転んで入った先にいたのは捕らえられている主要人物達である。これしき余裕と出てきてくれないかな、と一瞬思ったけども恐らくはガチで出れないのだろう。影丸さん達の様子を見るに。
「追い詰めた」
そう愉快そうに笑った人物に、私はそちらを向いて一歩一歩と距離を取る。例えば、戦国時代ならばクナイを手に彼に立ち向かう。例えば、江戸時代なら。そこまで考えて手に三味線を持っていたんだといきを吐いた。
昔々、江戸時代、商人の親が気味が悪い見た目の愛娘に渡した三味線。屋敷の離れに幽閉された娘の大切なもの。忍術というよりは陰陽術に近いそれ。撥をするりと手にとって、弦を弾く。鳴った音に目の前にいた人物は首を傾げた。それに合わせて口ずさめば、桜の花嵐が辺りを包む。懐に入れていた紙が人の形になって彼を襲う。それが持つのはいつまでか。私の居場所がわからないようなので徐々に距離をとっていく。我慢比べの間に彼らが脱出することを願いながら音を奏でた。
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「音」
そう呟くように告げる。手に持っていた撥が割れ、弦が音を立てて切れた。でも恐らくはそれで十分なのである。幻術のようなものが解け始め、彼が呼び出された部下であろう人や彼は周りを見渡す。式神がただの紙へと変わった。
「あぁ、なるほど、その楽器が壊れたからか。面白いものを見せてもらったよ」
ケラケラと笑った彼に、そう?と首をかしげる。
「面白いかな、私は化け物みたいだと思うんだけど。だから殺されたと思うんだ」
「まるで一度死んだみたいな言い草だな」
「そうだね、でも、貴方に理解できない話だから」
小さく歌を口ずさむ。笑っていた相手、しかしながら周りの異変を察した彼は聡い。私の歌が彼の部下を思わせる彼らに移っていく。私が口ずさんだ歌が次第に大きくなった。そして彼らは武器を持って彼の方を見た。目がチカチカとする。視界が霞みがかっていく。待て、という制止が聞こえる。眩しい。両手で顔を覆う。
「いきはよいよい、かえりはこわい。あの道この道、とおりゃんせ」
叫び声。誰かが私の前に立つ静かな音。ナマエ、とこちらをみた人物は暗闇で見えない。というか、目が痛いから開けれないが正しい。どこにいるかわからなくて手を伸ばす。その手を掴んだ人物は戸惑っている。
「影丸よ、少しどくがよい。……ナマエ、目を開けることができるか?」
頬に誰かのてがあたる。恐らくは幻妖斎様の手だろう。うっすらと目を開けば、朧げに見えた視界。二人の人物が見えるということは、片方が影丸さんだろうか。しかし、すぐ手のひらで蓋をされてしまったあげく、幻妖斎様が何か術を呟くのが聞こえた。それと同時に目元を包帯か何かで包まれる感覚がする。
「しばらくは見えぬだろう、時期に見えるようになる」
影丸、ナマエを安静にしろ、という言葉に影丸さんが返事をして、私の体は宙に浮いた。
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「紫」
あの後手当てされて幻妖斎のジッちゃんが包帯のようなものを外された。鏡に映った私の目の色は紫色で、髪の毛の一部が白くなっているのがわかった。老けた?と首を傾げて見る。いや、そんなはずはない……と思う。
「妖付きか」
いきなり現れた赤垣さんーーもとい、レッドさん、に肩を跳ねさせる。鏡にはレッドさんがうつっていた。私にもたれるような形をとった彼は白くなった髪を触った。
「妖付き?」
「俺たち忍ではそういう。他はわからないが」
「妖怪がついてるってこと?」
「そういういわれはあるが、わからん。ただ、普通に暮らしていた人物が何か力を得た際に使われる言葉でもある」
「ほうほう」
「似たような言葉に天狗の里があるが、お前は行方不明になっていないし見た目に多少変化がある。だから妖付きというわけだ。忍には重宝されるぞ、お前」
そういった彼になんで?と首をかしげる。いや、だから江戸時代も影丸が住み着いていたのかとか思ったけどもまぁ置いておく。
「残念だが、一般人には戻れまい」
「レッドさんって優しいなぁ」
そう振り返って彼を見上げる。彼はこちらを見下ろした。
「優しいのは影丸だろう?俺は優しくない。そもそも、俺は事実を告げただけだ」
「影丸さんも優しいよ、とってもね。でも、彼は事実を言わないだろうから。多分、普通に戻れないことを隠し通すんじゃないかなぁ」
緩やかに笑えば、彼は「そうだろうな」と淡々と告げる。視界に彼の目が映る。まっすぐな。
「ナマエ、俺と共に来い。俺が守ってやる。お前を利用なんかさせやしない」
クラクラするような言葉だな、と思う。なんと返答をしようか、口を開きかければ口を塞がれた。何でって口で。あまりにも急なそれに思考停止して動きを止める。少し離れた顔に、彼は「なんてな」と淡々とイタズラに成功した子供のように笑った。
「お前を影に隠してもいいが、影丸が煩い。BF団に入るなら口添えしてやるぞ」
「レッド」
上から降ってきた影丸さんに「お前は意外と性格が悪いからな、見てただろ」てレッドさんが告げる。
「何を」
「いいや?見てないならいい。じゃあな、ナマエ」
ひらりと手を振った彼はまた消える。どうなってるんだ、忍者。入れ替わるようにやってきた影丸さんは「なんの話をしてたんだい?」と尋ねる。
「私が妖付きだって話ともう普通に暮らせないよっていう話」
その言葉に彼は目を見開いた。そして、そんなことはないさ、と彼は告げる。
「きっとまた普通に暮らせるさ。大丈夫、僕が守るよ」
ほら、やっぱり。そう思いながら、ありがとう、と告げた。
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妖付きですな、とは笠を被った血風連の人の言葉だ。その道で有名なのだろうか。
「何か知ってるんですか?」
「いえ、日本に伝わる話ですよ。お伽話のような話です。貴方は何も知らないのですね」
「全く」
そういえば、ならば教えて差し上げましょうか、と彼らは口を開く。
ーー昔々、妖がよく見えていた時代。妖と手を組む人達がいたらしい。妖付き、と呼ばれた彼彼女らは特殊な力を持ったという。ある時は朝廷の命令、ある時は豪族、貴族、そんな人達の護衛だったり、駒として動いたり、不思議な力を生かして人を助けたりそんな人達だった。しかし、戦国時代になると妖付きの隠れ里は力を恐れた武将に殲滅され、妖付きと呼ばれる人達のその殆どが命を落としたという。生き残った人は忍の里を頼り、また忍の里の人達も彼らを受け入れたとかうんぬん。あとは多くが狐狸狗猫に分かれるとかなんとか。ふむ。
「苗字殿はなんの妖付きでしょうね」
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夢を見る。夢、夢、欠けてしまった間の夢。欠けてしまった始まりの。
パチリ、と目を覚ます。大きく伸びをしていつも通りの朝が始まる。鏡を見れば、白髪が増えている……気がする。なるほど、もしかしたら思い出せば出すほど白い髪になっていくんだろうか。
恐らく、だけれど。私は猫の妖付きなんだろう。そいいえばはじめの人生を終わる時、いや、あれは次の人生が始まる時かもしれない。微かな猫の鳴き声がした気がする。私の家族、兄もしくは姉、妖付きではなく妖として同じ腹をさいて出てきたという猫は珍しく、またその猫の死骸を使って作られたのがこの三味線だった。昔からこの三味線を兄者兄者と慕っていたのはそういうことだ。試しに兄者、と呼びかけてみれば三味線は触ってもいないのに音を立てる。記憶を引き継いでいるのも猫だからだろうか。ならば何回めの人生なんだろうか。ツラツラと考えながら三味線を片手に廊下に出て幻妖斎様を探す。そこでばったりと出会った軍師二人に回れ右を決めようとして阻止されたけど。
「失礼な、何故踵を返すのです」
「何故って……」
影丸さんとレッドさんに二人には関わるな、と言われたからなのだけど。孔明さんの言葉になんと返そうか考えていれば、そばにいた韓信さんに上から下まで眺められる。気分があまりいいものではない。ジリジリと後ろに下がれば孔明さんが「韓信殿、女性はそうジロジロと眺めるものではないでしょう」と咎めた。
「いえいえ、妖付きなど珍しいと思いまして。妖怪そのものなのか、何者なのか、とね。影丸は全く教えてくれませんし、」
「あの、韓信さん、失礼な言葉なんですが」
ジリジリと寄ってくる彼にそう告げる。なんですかな?と首を傾げた彼に、大変気持ち悪いです、といえば孔明さんが噴き出した。扇で顔を隠してるけど。イヤイヤしながら「近寄らないで」という。孔明さんが「韓信殿、嫌われてしまいましたね」と笑いながら告げた。韓信殿はワナワナとしている。
「孔明、こんな場所にいたか。……その子はこの前の」
やってきた第三者、樊瑞さんの姿にホッとため息をつく。
「この前はお前のお陰で助かった。礼を言う」
「いえ、私も何が何だかわからないままだったので……」
「そうなのか?慣れていると思ったのだが」
「一度だけです。ああ言う風に式神を操ったのは」
「ふぅむ……妖付きが何かはわからんが、そういう才がお前にあったのだろう」
何この人とてもいい人。そう思っていれば、孔明さんが口を開く。
「ナマエ殿、と言いましたな。あの幻術や他の人を操っていたのは初めてなんです?」
「他の人……」
幻術はともかく、他の人をあやつる。そうぼんやりする。ああ、確かに操っていたな、と思い出した。
「音……」
「音?」
「多分?」
多分、と繰り返した三者に私は首をかしげる。
「音、聞こえない人には意味ないんじゃないかなぁ」
「ナマエ、何してるんだ?」
やってきた天童さんはさりげなく私を後ろに隠す。ありがとう。
「天童殿はナマエ殿と仲がよろしいようで」
「影丸ほどじゃないけどな」
「ならば、ナマエの幻術について何か?」
「幻術?あぁ、この前の。俺に聞くより本人に聞けばいいだろう」
「あれはじめてだからよくわからない」
いや、夢では多々あるけど。
「は?いや、おまえ、この前、朧月夜歌ってた時もああなって……」
そこで彼は言葉を止める。無意識だろう、と思った瞬間、天童さんが私を完璧に背に隠した。
「制御ができていないのであれば教えるべきでは」
「あぁ、そうだな。これには孔明に同意する」
「BF団が責任を持って彼女の面倒を見ましょう。彼女がいればレッド殿が大人しくなりますしね」
「制御云々に関しては同意だが、国際警察で事足りる」
「ええ、彼女はすでに国際警察の一員であることをお忘れなく。あと、そちらに譲れば影丸が煩いので」
「ならば影丸と共に彼女を譲ればよろしいかと」
なんだその暴論。そして本人達の意思とは。
「軍師寄り集まって何してるんだ。あとナマエは貰っていくぞ」
現れたレッドさんがヒョイっと私の首根っこを掴んで抱える。とそのまま移動した。これいつも瞬間移動みたいだなと思ってしまう。
「で、何話してたんだ」
「力の制御云々。BF団に入る?みたいな話を。幻妖斎様探してたのに」
「幻妖斎を?」
「うん。夢を見たから色々と聞こうと思って」
「俺には聞かせられない話か?」
「ううん。昔から死んだ夢を見るんだけど」
「ああ」
「一つは突き落とされて殺される夢、もう一つは孤児院の先生をかばって殺される夢、もう一つが辻斬りにあって殺される夢」
「物騒な。いや、しかし、死んだ夢は吉兆だったか。繰り返しみるのか?」
「何度か。友達には前世じゃない?ってふざけて言われる程度には」
そう言って近くのベンチに腰掛ける。レッドさんは影丸、と言って手裏剣を投げた。弾かれたそれに影丸さんが現れる。
「投げることないだろう?」
「お前こそ普通に出てきたらいいだろう。で、ナマエ、その夢について話に行きたかったのか?」
「夢を見たら白いところが増えたし、なんというか」
「ナマエ、またあの夢を見たのかい?」
そう顔をしかめた影丸さんに頷く。
「なんか色々端折るけど、私、猫の妖付きなんじゃないかなぁ」
「本当に端折ったね」
「猫。三味線の皮か」
「鋭い。あと、猫の魂って九つあるっていうでしょう?猫の妖付きも魂が九つあるんじゃないか、私はその九つのうちのどれかなんじゃないかって思って」
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