2018/10/28
兼任妖アパ没2
・兼任司書の世界図書館救済ルートの続きみたいな感じ(設定が≒)の妖アパ(救世主なので各人の好感度が圧倒的に高い)
・兼任司書と一緒にいる刀剣が兄がわりの陸奥のみ。
・二週目兼任司書は親元を離れてない。陸奥守は世話係的な感じでお兄さん的立ち位置。文学をどうあれ救ったので文字を司る/文学を司る神様的な立ち位置らしい。
・妖アパ世界には母親の本丸に襲撃があったため、逃がされるような形で迷い込む→大家に出会って住むことがきまる。ちなみに相変わらず喋れない
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このアパートには色々いる。妖怪というか、幽霊というか。そういうものと人間が一緒に暮らしているのだから不思議な空間である。まぁ、私と陸奥守もそれに当てはまるわけだけれども、陸奥守は姿を見せていないし、私は学生あたりと思われているからいいだろう。不意にあった実家の襲撃、びっくりじいこと鶴丸さんに掴まれてゲートの先に投げられた際に不具合が生じたのか、人間でいう13、4歳ごろの姿になってしまった。若干途方に暮れていたら今の大家さんに出会いーー今に至る。まぁ、大家さんに頼んで変な位置に扉をつけてもらい、図書館との行き来ができるようになったからいいだろう。相変わらず文学排除側が鬱陶しいから仕事をするのは仕方ない。
「苗字って、学校に行ってないけど、昼間何してるんだ?」
そう首を傾げたユウシさんに首を傾げる。学校に行っていないというのはやってきたその日に打ち明けたことであるが、日中何をしてるかはなんと言えばいいか。恐らくは不登校だと思われているのだ。周りにとっては私は部屋に引きこもっている子供になるのだろう。参った。仕事といっても信じてもらえないだろう。
「一日中ここにいるんだろう?」
「でも、ナマエちゃん、たまにいないよね。部屋にいってもいないときあるし」
一色さんの言葉にペンとノートを取り出す。それに何を書こうかと迷いながら、結局は「仕事?」とハテナをつけておいた。きょとん、としたまわりに一色さんが目を瞬いた。
「あぁ、働いてたんだね。偉い偉い」
「なんの仕事?」
その問いに本を整理したり本を修復したり、人の相手をしたり?と書き連ねれば、司書さんかな?と言われたので頷く。司書といえば司書である。
「司書って図書館にいる人ですっけ」
「そうだねぇ」
へぇ、といったユウシさんはこの近所の図書館を思い浮かべてるんだろう。まぁ、ここは読書好きが多いし、いつか連れてきてもいいだろう。アキネさんが偉いんだね、といったのでおとなしく褒められておく。実際は私の方が年上だけど。アキネさんはたまに私が喋れない原因を彼女の先生に見せようとするけれど、その実チャンネルが合わないからなので何も言わないでおこう。ちなみに一色さんの本を買って図書館に持って行ったら回し読みされている今である。気に入ったらしい。
「一人でさみしくない?」
そう尋ねたユウシさんに、一人じゃないからさみしくない、と答えておいた。
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新しい住人の苗字は謎である。年は13、4歳あたりだろうか。学校に通ってはおらず、図書館で働いているらしい。苗字が寝ると部屋に帰ったあと、ひとしきり推測が始まった。学校に居場所がないから図書館で司書のお手伝いをしてる、とか、声が出せないから学校に通ってない、とか色々なことを考えてみるけども、結局は決めつけるのもよくないという話になるのだ。礼儀正しいし、いい子だし、所作が綺麗だから多分良い家の子供とはこの前初めて会った長谷の言葉である。ちなみに、フールは何か知っている風だったけど。……もしかして:人じゃない。ちなみに近くの図書館に寄ってみたけども、苗字はいなかった。目が青いし、目立ちそうな気がするんだけど。別の町の図書館だろうか。
まぁ、苗字の正体が判明するのは月見の時であるが。
私も人連れてきてもいいですか?
そう綴られた文字に俺たちは顔を見合わせる。友達?と聞けば、お兄さんみたいな人とか、と書かれている。落差である。良いよ、と頷いたまわりに彼女はにこやかに笑ってアパートに入りーー一人の青年を連れてくる。……どこからきたんだろうか。え、部屋にいたっか?来客は特に聞いていない。甚平のようなものをきた彼は笑った。
「ナマエが世話になっちょるのう。どれ、ワシも手伝うき」
「お、土佐弁だ」
「おん、ワシの生まれはまぁ土佐ぜよ。ナマエからはむっちゃんと呼ばれとるき、むっちゃんでよかと」
そう明るく笑った彼にむっちゃん、という。苗字が陸奥でも良いと思うよ、と紙に書いてみせた。
「陸奥さんはどこからきたんですか?」
「ワシか?ずっとナマエのそばにおったけんど」
「え?」
「さぁ、餅つきじゃ。ナマエ、子規あたりよびゆうか?」
頷いた彼女はまたアパートの中に入る。陸奥さんは腕まくりをして、さぁ、やるぜよ!と意気込んだ。こちらの疑問など置いてけぼりである。どうやら人ではないらしい。
苗字が次に連れてきたのは男性だ。野球選手のような格好をした男性である。辺りを見渡した彼は口を開く。
「なんだここ、面白いやつらがたくさんいるな。お、陸奥さん久しぶりだな」
「おん、子規久しいの!他は……」
「おー、締め切りだったり仕事だったりに追われてたから俺だけだ。ここは?」
「ナマエの仮住まいぜよ」
「あっちはなんかあったのか」
「おん、ちょっと色々あったんじゃ」
「大丈夫なのか、それ」
「大丈夫じゃ、どうせもう解決したけんど、可愛い子には旅をさせよとか言うて迎えにこんだけぜよ」
なんか色々初めて聞く気がする。男性は俺たちの視線に気づくとにこやかに笑った。陸奥さんが「こっちはシキじゃ」という。
「おー、俺は……シキだ!よろしくな!」
「おれは、ユウシです」
「ユウシ、な。野球に興味ないか?」
「シキー、勧誘はあとぜよ、餅つきじゃ、なぁ、ナマエ?」
陸奥さんの言葉に苗字が頷く。まかせろ!と俺から杵を奪ったシキさんは陸奥さんと餅をつき始めた。苗字はそれをみていたが、アキネちゃんに呼ばれていく。やんや、やんやと周りは騒がしくなった。
月夜である。どうやらシキさんは餅つきだけに着たらしい。団子を幾つかもって帰った。話してわかったのは野球が好きだし野球をしたいにもかかわらずまわりにいる人が付き合ってくれないことぐらいだろうか。あと、不意に息を吐くのと同じように俳句を読む。詩人や妖怪たちがひどく気に入っていたけど。苗字を司書と呼ぶので、苗字の職場の人かもしれない。もう一人、陸奥さんは相変わらず苗字のそばにいる。たまに二人で会話しているように見える。唇を読んでるのかしら、とアキネちゃんは首を傾げた。しかし、それが違うのだとわかったのは藤之先生が来てからである。アキネちゃんが話していたのはこの子何ですけど、と苗字を連れてくる。陸奥さんはどうやら他で騒いでいるらしい。苗字を見た藤森先生は目を瞬いて、これは違うね、と言った。
「違う?」
「体や心の病気ではないよ、そして、仮病というわけでもない。チャンネルがあってないのさ、私達とね」
「チャンネルがあってない?」
「そう、彼女は人じゃない」
ズバリ、と言った藤之先生に、え、と俺たちは動きを止める。苗字は苦笑いである。
「かと言って、幽霊というわけでも妖怪というわけでもない。あまり見かけない存在だね」
「つまり?」
「つまり、神さまの端くれ、それもあまりこちらの世界に関与しないような神さまだろう。」
その言葉に俺は苗字と藤之先生を見比べる。そういや龍さんも驚いていた気がする。
「貴女の名前を伺っても」
「ーーーーーーーーーーー、ーーーーーーーーーーーー」
苗字が何か紡ぐ。苗字ナマエさん?と首を傾げた藤之先生には聞こえてるらしい。
「ははぁ、人間と関わる時はそう名乗るのですか」
「ーーーーーーーーーーーー。ーーーーーーーーーーーー」
「ははは、フランクな神さまもいたものだ」
苗字は笑って藤之先生に酌をする。ありがとう、と笑った彼。苗字はそのまま陸奥さんの元に駆け出したけど。
「まじか……」
「全然気付きませんでした」
「まぁ、気づかなくてもおかしくはないさ。あの子は特に混じるのがうまいみたいだね」
にこりと笑って藤之先生はお酒を飲んだ。
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「へぇ、ナマエちゃんって神様だったんだ」
俺たちが衝撃を受けたというのに周りはそんな調子である。不思議な子だとは思った、などと言う彼らになんともいえなくなる。
「なんの神様なんだろうねぇ」
「藤之先生は神様の端くれであんまり人と関わらない神様だろうって言ってましたけど」
「神様の端くれかぁ。神様も色々いるからね」
「なんじゃあ、昼間から酒か?ワシもまぜとーせ!」
ひょこり、と顔を覗かした陸奥さんに詩人が「残念、陸奥くん、お茶だよ」と返す。それでもかまん!と笑いながらやってきた陸奥さんはクリとシロの頭を撫でて座った。るり子さんがお茶を淹れるのが見える。
「あれ?ナマエちゃんが神様ってことは陸奥くんも神様かい?」
「ん?正しくは神様の眷属じゃけーど、神様じゃったり妖じゃったり、言い方は人によるき、微妙な位置じゃな」
「ん?んん?」
「かっはっは、そう首を傾げなさんな。ユウシは素直な奴ちや。ワシは刀ぜよ。刀がずーっと大切にされてたき、ワシみたいな奴になるんじゃ」
「ははぁ、じゃあ、刀の陸奥くんは付喪神ってことか」
「おん」
「じゃあナマエちゃんも何かの付喪神か。陸奥と兄弟みたいなものなら」
「あぁ、それは……大まかに言うとナマエは姪っ子、少し踏み込んで言うとナマエはワシが使える主の娘ぜよ。ワシはその世話係。もっといえばナマエは半人半神じゃき、どっちつかずやったんじゃが……」
「半神半人?」
「ちょっと昔、ワシら付喪神を呼び出して色々あった。ワシが言う主はその時ワシらを呼び出した審神者ーー女巫ぜよ。刀の付喪神は天目一箇神の眷属なんじゃけんど、その女巫はその加護を受けとったき、ワシらを呼び出せた。……話が逸れたな……まぁ、ナマエはその時呼び出された付喪神と女巫の娘やき。その女巫に頼まれちゅう。まぁ、ナマエの母親も悪い奴から逃げるために隠されて今やこちら側じゃき、ナマエはこちら側って言ってもいいんじゃが……」
そう言い淀んだ陸奥に、何かあったんですか、と尋ねる。
「ナマエも、ナマエの兄も人にちかいき、こちら側によくも悪くも馴染むぜよ。それが、人からすれば疎まれやすい。何十年、何百年も同じ姿じゃ、最初は友達言うて遊んでた人間も疎み出す。悪い場合はナマエ達を売ろうとする奴もいる。やき、ナマエは普段はこちら側で過ごしたり、図書館で過ごしたりしゆう。ワシは万が一の為の護衛じゃ」
「じゃあなんでナマエちゃんはこっちに?」
「たまーにおるんじゃが、主と自分が取ってかわれると思ってる烏滸がましい人間が、変な呪術道具提げて急襲してくるんぜよ。主はワシの仲間に投げら……逃がされて迷子になって大家にあってここじゃ」
「投げられたの?」
「おん、ちょっと投げた奴が愉快な刀やき、ぽーい、と。そらお嬢、出口だー、とかなんとか。追いかけるワシの身にもなって欲しかったぜよ」
そういった陸奥さんに周りはケラケラと笑う。陸奥さんもケラケラと笑う。その時、襖が勢いよく開いた。そこにいた苗字は眉間に皺を寄せて、陸奥さんに近づくとポカポカと殴る。陸奥さんは笑って受け止めてるけど。
「ーーーー!ーーーーーーー!!」
「おん、そうじゃな、逃がされた、じゃな。鶴丸の緊急回避はいつもあんな感じぜよ。カナタよりはマシやとおもうけんど。カナタは岩融に投げられとったき」
「ーーーー、ーーーーー」
「それよりナマエ、どした?まだ向こうで仕事の時間ぜよ?」
ポコポコと殴っていた苗字はそれを止めて何か陸奥さんに伝える。陸奥さんが少し眉間に皺を寄せた。そしてチラリと古本屋をみる。
「何?俺?」
「古本屋、文字が消えたり文字化けしたり、位置が変な本見つけゆうがか?それか、何も書かれてない本ぜよ」
「あぁそれなら一冊ある。おまけで貰ったんだよ。なんでわかったんだ?」
その問いに、その話はひとまずおいて、と女の子の声が聞こえた。聞こえた、というより頭の中に響いたというか、そんな感じである。
「今のは」
ーーああ、私です、私。
そう手を挙げた苗字に俺たちは目を瞬く。口は動いてない。これがテレパシーと言われるものだろうか。
ーーこれすると疲れるんで普段はしないんですけど。とりあえず、その本下さい。あと、他の本と一緒くたにしているなら、その本を今すぐ離した方がいいですよ。
「ふぅん、ナマエちゃんは何か知ってるとみた」
そうニヤリと笑った古本屋は持ってくるよ、とトランクを取りに向かう。その間に色んな人が帰ってきてーー長谷まできたので、夜ご飯のあと、という話になったけど。ナマエちゃんはあまりいい顔しなかったけど。
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古本屋が持ってきた本はたしかに変な本だ。アキネちゃん曰く、変な感じはしないらしい。ただ、一確かに文字があべこべでぐちゃぐちゃだった。文字が消えたり、文字化けのような記載の仕方だったり。何か封印が施されてるのかな?と言えば、アキネちゃんが首を振る。
「それもなさそう」
自分の部屋から戻ってきた苗字ーーどうやら本当にあの会話方法は疲れるらしくあの後二、三言話して苗字は寝落ちしたーーは俺の側に来ると小さな桜の花を渡す。
ーーフール。これを一応つけといて。
そういって何かをフールに渡した苗字に、フールは喜んだ。古本屋にも何かを渡す。
ーー詩人さん、原稿用紙はこの場にお持ちじゃないですよね?
「持ってないよ」
ーー他の皆さんも、何か文字が書かれたものを持ってないですよね。
その問いに首をかしげる。長谷が携帯は?といえば、データが消えても保証できない、といえば長谷が部屋の外に置いた。どういうことだろうか、と首をかしげる。苗字が本に手をかざすとそれは赤黒く光る。
「え、どうして」
アキネちゃんの言葉に俺たちはそれをみる。フールが怯えたように俺のポケットに潜り込んだ。
「フール?」
「ご主人様、あれは私どもと相性が良くないのでございます」
「あの本が?」
「いえ、あの本が、ということではございません。あの本に住まうモノが相性が悪いのです」
フールの言葉に古本屋がフールを見た。その瞬間、嫌な気配が浮かび上がる。周りに散ったのは文字だろうか。赤黒く、文字化けしたような文字が本から浮かび上がりーー奇妙な姿を描き出す。たとえば、ニヤニヤとした笑みを浮かべた、黄色い炎を灯した奴、とか。やばい、と本能的に感じ、俺がフール!と叫ぶのと古本屋が本を取り出そうとするのは同時だった。しかしその瞬間、苗字が動いた。
「ーーーーー」
苗字が何か言葉を紡いだ瞬間、一瞬の青い光とともに、桜の香りがする。目を開くとそこにはシキさんがいて、彼は戸惑うことなく引き金を引いた。悲鳴にならない雄叫びをあげて、化け物はまた本に吸い込まれるように消える。赤黒さが少しぬけた。シキさんが銃から手を離すとそれは文字になって消える。え、と思っているとシキさんは苗字をみた。
「司書ー、こうなるってわかってたなら最初から普通に連れてきてくれたらいいだろ」
その問いに苗字は紙に文字を書く。太宰さんがうるさいからと書かれたそれに、シキさんは頭をかいた。
「悪い、司書。俺太宰といたんだわ」
その言葉に苗字は頭を抱えた。
「この本って結局なになの?」
「おー、一色、久しぶりだな。それは有碍書っつってな、さっきみたいな奴らが住み着いた本だ。さっきみたいなのは本を食っちまうんだよ。この本は食われてる途中ってわけだ」
「え?」
「厄介なことに、食われた本は無くなるんだよ。本の記憶も、著者のことも。司書と俺みたいなのはそれを食い止めてる」
「じゃあ、その本は」
「ほっとくとなくなるな、存在自体」
そうあっけらかんと告げたシキさんに、古本屋が身震いした。
「司書、これは向こうで浄化でいいのか?」
頷いた苗字は古本屋をみる。
ーー元に戻すまでお借りします。
「お、おお!お願いします!」
そうガッチリ握手した古本屋はシキさんをみる。
「ところでこいつ誰」
「俺か?俺は正岡子規だ」
「ん……?」
正岡子規って俳句の有名な人だよな。教科書にいるような。本人は気にしていないのか、あっけらかんとわらう。苗字が襖を閉めて、もう一度襖を開く。
「え、?」
その先に広がったのは、本棚が並んだ図書館だった。
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「え?いや、は?」
パニックなる俺たちを他所にシキさんは堂々とそちらに向かう。
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