2018/10/28
兼任司書妖アパ没3
「もうしわけございません、まさかこのようなことになるなんて」
「いえ」
帰ってきた龍さんの後ろについてやってきたのは女の子だ。白いフードのようなマントのようなものを羽織った彼女は時代錯誤な格好をしている。羽織の下からはワイシャツがのぞいているが、その下は袴だ。青い目をした女の子は俺たちを見た。
「こんにちは、これからよろしくおねがいします」
そう頭をさげた彼女に俺もおずおずと頭をさげる。えーと、つまり、彼女は。
「新しい入居者?」
「はい、よろしくおねがいいたします」
にこり、と笑った彼女に俺はまた目をパチパチとまたたいた。
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新しい入居者は子供だ。クリよりは勿論年上である。ユウミと同い年ぐらいだろうか。しかしながら、雰囲気は長谷に似ている、気がする。そして、なんというか、龍さんの雰囲気にも似ている気がした。クリとシロも妖怪たちも彼女を伺うようである。その様子に俺たちは首をかしげるばかりだ。秋音ちゃんが、龍さん、その子は、と口を開いた。龍さんが困ったように告げる。
「とある教団に乗り込んだけど、助けてもらったんだ」
龍さんが助けられた?その言葉に俺たちはピシッと動きを止める。女の子は気にすることなく食事に舌鼓をうっていたけれど、龍さんを見上げた。
「いえ、私が助けられました。ありがとうございます。あのままだとどうなっていたか……」
「お疲れでしょうから、食事が終われば部屋にご案内しましょう」
「何から何まで」
ぺこり、と頭を下げだ女の子に俺たちは?をたくさん浮かべた。ごちそうさまでした、と手を合わせた彼女は龍さんの後をついていきーー長い裾を踏んで見事にこけた。ドジっ子、なのかもしれない。
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次の日である。おはようございます、と俺たちに頭を下げた彼女はやはり育ちがいいというか。しかしながら周りの幽霊や妖怪を恐れないあたり、慣れてるんだろうかと思ったりもする。貞子さんに向かっても、昨日はご親切にどうもというくらいだ。貞子さんも答えるように頭を下げたけど。
「怖くないの?」
「ここにいらっしゃる方は害がなさそうなので」
昨日の夜、俺たちは龍さんに根堀り場堀り聞こうとしたけれど、龍さんは準備するものがあるからと帰ってしまった。今日また来るよと言っていたし。古本屋が彼女の隣に座った。というよりは、面白いものを見つけたと言わんばかりに大人達が彼女のまわりを陣取った。画家が頬杖をついて彼女を見下ろした。
「龍を助けたんだって?」
「助けたといいますか、事態の収束に手をかしたといいますか……結果的に私も助けられたんですけどね」
「事態の収束?ということは、ナマエちゃんは霊能力者ってこと?」
その問いに彼女は首を傾げた。そして少し考える。違うの?とこちらも首を傾げれば、龍さんと秋音ちゃんの声がした。
「あの、食事を作ってる方にお願いしたいのですが」
そう彼女に詩人がるりるりーとこえをかける。奥からやってきたるり子さんに、彼女は「もう一食分、成人男性分を用意していただきたいのですが」と告げた。龍さんの分だろうか。るり子さんは了承した。食堂に龍さんがやってきて、ナマエちゃんを見つけて声をかけた。
「あぁ、いたいた。頼まれていたものをお持ちしましたよ」
「ありがとうございます」
彼女は椅子から降りた。何かが始まるらしい、と俺たちは顔を見合わせた。
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並べられたのは水に何かの鉱石、そして石に炭だ。何だろうか、と思っていれば龍さんがやってくる。その近くに立った彼女は手を二度と頭を下げて二回打ち鳴らした。その様子は見たことがある。主に、神社で。
「あのガキ、神主か?」
「いや、」
龍さんが断る。彼女がうたうように口を開く。
「なおしましませ、かぐつちの御神よ。傷つく刀をなおしませ」
その瞬間、炭が燃えた。彼女はどこからか刀を取りだすとそれを掲げる。何か会話をしているが、こちらに聞こえそうもなかった。至近距離なのにである。刀が浮き上がりーーカァン、カァン、という音がする。むせかえるような熱を感じて俺は目を瞬いた。最後はわ、という声とともに刀が彼女の手に戻った。火が消え、彼女は頭を深々とさげる。そして彼女は刀を見た。
「おりしましませ、刀の御神、以下省略」
ふいに桜の花びらが舞う。え、と思っていればそれは人の姿を作り上げた。桜が散ると現れたのは和洋折衷というか、そんな服装の青年である。ゆっくりと目をあけた彼は彼女を見て目を見開いた。がしり、と彼女の肩を掴んだ彼は彼女を揺する。
「主!無事やったが!?」
「うん、親切な人に助けていただきました」
「人……?」
そう言った彼は俺たちを見る。その瞬間に、ヒュッと息を飲むような威圧感を感じた。蛇に睨まれた蛙というのはこういうことかもしれない。しかし、それを制したのは彼女だ。
「むっちゃん、ダメ。あの人たちは助けてくれた人」
「けんど、主。人間のせいで主は危険な目にあったんじゃ」
「大丈夫。あの人たちは危なくないよ」
そうぽん、と青年の頭を撫でた彼女を青年は見下ろす。
「大丈夫、ね?連れ出してくれた人もいるし」
「……主はお人好しぜよ」
深いため息をついて彼女の頭を撫でた彼からは怖さはない。彼女はそれを見て微笑むと彼の手を引いてやってきた。
「ごめんなさい、気が立ってしまってて」
「いえ、彼らがそうなるのも当たり前でしょう。人間が貴方に無礼を働きましたから」
「あー……あー、謝るな、おんしらがやったことやない。顔を上げぇ。あいつらはワシは許さん。おんしらは別じゃあ」
頭を下げた龍さんに彼は困ったような表情でそう答えた。
「龍、彼らは何者?」
「茜さんみたいなもの、かな?」
「え?神様ってことですか?」
「主は半分人の子じゃったが、もうこっち側やきそうじゃな。ワシは付喪神じゃき、人によってまちまちじゃ。主はそれを使役する側……やったやが、今は」
「付喪神?」
「おん」
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