2018/11/15
アウターハッピーエンド4
思ったよりmgs色が強くなったので混合にしましたよっと。
アウターハッピーエンド*
貴女が好きだとお聞きしたので。
朝目覚めると自室の窓の外が真っ白な花畑に変わっていた。何だ、と思っていれば私の周辺の警備をしている兵士達の仕業らしかった。貴女が喜ぶと思って、と告げた彼らにありがとうございますと笑えば彼らは悪戯が成功した子供のように笑った。
あれから一年が経とうとしている。たったの一年。されども一年である。私の命は繋いだままである。ザイルと呼ばれたあの男もまた命を繋いだままであるし、未だに私の命を狙っているんだろう。しかしながら私のそばにいつも誰かしらいるので隙が無いのかもしれかいし、あの男の命令を誰も聞かなくなったからかもしれない。真白な世界に足を踏み出す。花をできるだけ踏まないように歩き花をみる。そういえば今日のお守りは誰だったかと部屋の方を見ればアインスさんが来ていた。こちらに来るなり周りを見渡した彼は「どうしたんだ」と私に尋ねる。
「兵士の方が私の為にしてくれました」
「なんていう花だ?」
「オオアマナです」
「赤色はないのか」
「ないですね、残念ながら。ホクサイなら作ってくれるかもしれませんね」
「頼むほどのもんじゃない」
手招いた彼に続きそちらに向かう。風に揺れたオオアマナはあの時のように花びらを散らした。
「ナマエにも、赤の方が似合うと思うんだがな」
「いずれは染まるさ」
「それはねぇ」
彼は赤い花を私の髪につける。今朝咲いたんだ、と言った彼にでは見に行くかと花畑に足を進めた。
「あひゃひゃ、マスターみっけ」
建物の廊下を進んでいれば、角からかけてきたのはベルガーである。砂埃まみれのそれに、ああ確かあの男の命令で任務に行っていたなと思い出す。怪我は特にない。彼が人でないからなのか、彼が強いからなのか。抱きついてきた彼に仕方ないなと頭を撫でる。身長は変わらないというのに、まぁ。
「おかえり」
「うーす!今回も楽勝だったぜ!アインスもチーッス!チーッス!」
「ベルガー、言葉遣い」
「いや、構わねぇさ。ベルガーが帰ってきたということは……」
「おいこらベルガー!!!お前何一人先に消えてんだよ!!報告あるだろうが!!」
足音を粗く鳴らしてやってきたのは89である。私とアインス、ベルガーを見つけた彼は「お前っ」と呟いてやってくる。
「俺のマスターはアイツじゃねぇし、アイツへの報告はお前だけでいいじゃん」
「はぁ!?あのなぁ!!」
「ベルガー、報告してきなさい。報告が終わったら約束どおり出かけようか」
「!マジで!!」
「マジで」
「行ってくる!!」
手のひらをくるりと返して彼はきた道を遡る。アインスが仕方のねぇ奴だ、と少し笑いながら見送った。あぁ、もう!と怒った89に、眉尻を下げる。
「おかえりなさい、89。貴方には迷惑をかけるばかりで、すいません」
「い、や、別に、ナマエに謝られることじゃねぇし……っておいこら、待て、ベルガー!!お前の報告はどうせ支離滅裂だろうが!」
そう追いかけた89を見送る。やはり彼は面倒見がいい。入れ違うように現れたのはミカエルとエフだ。
「マスター、アインスさん」
「あら、お兄様とナマエじゃない!」
「入れ違いか」
「あぁ、あの二人も仕事だったのね。マスター大好きなベルガーちゃんが先にナマエのとこに来たって感じかしら」
「その通りだな」
「その点、ミカちゃんは偉いわよね。きちんと報告まで付き合ってくれるんだもの」
「それは当たり前では……」
「まぁ、当たり前なんですけどね」
私の返答に彼らもまた苦笑いをする。どこかにいくんですか?あぁ、今から花壇へ行こうと。あら、可愛い花飾りじゃない。アインスさんをにいただきました。そんな会話をしていれば、「あぁ、いましたね」とファルがやってくる。
「あの人が出かけるので、貴女もついてくるようにということです」
その言葉に誰が?と惚けてみれば、ファルは「ナマエに決まっているでしょう」とため息混じりに告げた。
「きゅるちゅは?」
「今朝方ホクサイと作戦に行きました」
「あら、参ったわね。いつもきゅるちゅがあの人におねだりしてついていってたでしょう?」
「僕たちはついて行ってはいけないのかい?」
「跡をつけるくらいならいいと思うが、堂々とはあの人が拒む」
「ゴーストも人について任務に行ったしな……」
少し考えて、まぁ大丈夫か、と息を吐いた。
「恐らくあの人はレジスタンスの狙いを私にしたいだけだろうし、適当な理由をつけて男のそばを離れるかな……」
そう言えば周りの視線が私に向いた。それをすました顔で無反応でいることにする。しかしながらそれは事実だろう。
「……あの人の護衛という形で聞いてみるか」
ため息混じりにそう告げた彼らに人よりもお人好しだな、と彼らを見上げた。
=
結局である。彼は誰一人つけることを拒んだ。というのも、彼は彼らが私の言うことの方が聞くと理解しているからだ。私が彼のいうことを聞くようにと言っているのを理解している。
ーー不完全な彼の力で人の姿になっていた彼らは、一度本来の力で元の姿に戻った。そして、今度は私の力で彼らはまた人の姿になった。そう、彼らは人ではなく銃である。皇帝のいう力とはこういうことであったらしい。最初はそういう記憶を植え付けられたのかと思ったが、実際にそうなる瞬間を見て仕舞えば現実だと理解してしまう。
ガスマスクをつけずに町の中を歩く。もうすっかりと私の顔は世間にバレている。この隣をいく男がそれを良しとし、私を連れ出す時は必ずマスクを外させるからだ。ガスマスクの意味とは。皇帝は最初は眉間にシワを寄せていたが今では半ば諦めているがゆえ、あの城にも似た建物から私を出すのを良しとしていない。
「この店に入るからお前はしばらくここで待っていろ」
そう告げた彼にイエス、サーと返答して店の外に立つ。周りの人はザワザワと騒ぐが、何もしてこない為にまだマシだろう。店の壁に背を持たれてそっと目を伏せる。微かに聞こえた苗字さん?という声に私はそちらを見た。パチリとあった視線に、彼女は目を瞬いて私をみる。どこかで見たことがある顔だ。
「あぁ、やっぱり苗字さんだ!良かった、無事だったんだ!」
「君は……確か同じ高校の」
「覚えててくれたの!?嬉しい!」
「でも、ごめんなさい、名前はわからない」
そういえば彼女はガックシと肩を落とした。
「そうだよね、話したことなかったよね、同じ委員会だっただけだもんね……私、ユキノ サチ。A組だったの」
「貴女が無事で良かった」
そうそっと頭を撫でれば彼女は苗字さんこそ、と言いかけて私の眼帯を見たのだろう。あぁこれは、と眼帯に触り、彼女を見下ろした。
「君はまだあの国に?」
「ううん、あの後、ちょっと色々あって連れ出してもらったの」
「最近?」
「いや、うーん、あの後すぐって言っちゃすぐかな」
そんなただの会話である。しかしながら、それは大きな足音と共にかき消された。
「サチ!何してるんだ!」
「あ!キョードーさん、この子は同級生でーー」
「……同級生?」
「えぇ、まぁ、同じ高校に通っていました」
やってきた彼は恐らく私が何であるか知っているのだろう。そして、焦りようからして、彼は、彼女は。
「苗字さんは?」
「流れ流れていまここで暮らしてる」
「へぇ、じゃあ今度案内してよ!」
「また、いつか、ね。私もあんまり街に出れるわけじゃないから」
キョードーと呼ばれた男の、そして、彼女の周りにいる人物たちの眉間に少しシワが刻まれる。ゆっくりと手元を後ろに回していく彼らに、緩やかに笑う。ザワザワとした声がして、近くに車が止まった。
「ナマエ、何してるんだ?」
「ミスターザイルの買い物に付き合っています」
窓を開けて顔を出したのはいつもよりラフな格好をした陛下である。
「またか、断ればいいものを……彼らは?」
「彼女は日本にいた頃の友人です。他は彼女の知り合いだと」
「そうか、悪いな、再会の会話中に」
「いえ、」
「ナマエ、帰ろうか。向こうに顔を出す必要もないんだろう?」
「……えぇ、はい。あの人を置いて帰ってもいいんですか?」
「なんとかなる」
そう手招いた彼にならば帰るかと思いながら近づく。車の扉を開けた彼に乗り込む際に彼女を見てひらりと手を振った。
「またね、」
「あぁ、うん、」
扉を閉めれば車は走り出す。ちらりとバックミラー越しで彼は後ろを見た。
「本当に知り合いか?」
「えぇ、一応は。周りにいたのは恐らくレジスタンスですかね。みんな何かを取り出そうとしていた」
「そこまでわかっているなら助けを呼んでくれ」
「あの子は何も知らなさそうだったので。もうバレてるでしょうけど」
そう告げた私に彼は私を見下ろす。
「殺せるのか?」
「命令なら引き金を引けます」
「心を偽って?」
「そうですね、でももしかしたら」
窓の外を見る。いつだって私は詰めが甘いのだ。
「ーー最後には本心をこぼしてしまうかもしれない」
窓を見つめてそうつぶやけば、彼はこちらを見て息を飲んで私を見たのが窓に反射してみえた。
「まるで、」
彼はそう諦めたように笑う。目を伏せて、なにかを否定するように。
「自分がそうしたことがあるような喋り方だな」
「一度だけ、そうしたことがあります」
私の言葉に彼は体を起こして私をみた。
「いつ、」
「夢の中で」
緩やかに目を伏せて告げる。
「残酷な呪いをかけて、私は目覚めてしまいました」
「呪い、」
「最後まで嫌いだと言えばきっと夢の中のあの人は縛られることもなく悔いもなくあの後を生きたでしょう」
私の言葉に彼は小さく「ナマエ、?」と私の名前を呼んだ。私はそちらを見る。目を大きく見開いた彼は、何かを確かめるように私に触れた。その様子に頭の中で合致する。既視感の理由を理解する。似た仕草をする理由も。ジャック?と微かに私が呼んだことで彼は何とも言えない顔をしていた。歓喜、戸惑い、複雑、嫉妬に似たなにか、そんなものが渦巻いたように。息を呑んで。しかし、彼は私の知る彼でない。ぐるぐるといろんなものを押し殺したような彼は静かに私を抱き寄せた。
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