2018/11/16

アウターハッピーエンド5

アウターハッピーエンド*


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この国は、終わるべくして作られた。彼はそう言って優しく笑んだ。そこにいた将軍達は知っているのだろう。何も言わずに、私の反応を見ている。終わるべくして?と尋ねれば彼は頷いた。
「この世界はーー」

ピアノの音を聴きながら、先程の言葉を考える。統一的な思想を得る為にその思想を掲げる空虚により作られた国家。彼は、彼らはそれに利用されただけの人物。ただ、他の何も知らない人物達と違うのは忠誠を誓う誰かの代わりに生きそしてその為の犠牲になるのを承知の上で「そこ」にいるのである。
ーー君には無理を言いたくはないが。
彼の言葉に構いませんと告げた。もうそんなものは慣れている。誰かの悪役に徹しろということでしょう?と尋ねれば、彼らは頷いてみせた。もう一度、だ。人生に二度目はない。普通は。繰り返すものでもないのだ。なのに、私は。
「マスター?」
ピアノの音が止む。目を開けばピアノを弾いていたミカエルがこちらを見た。
「マスター、どうかしましたか」
「あぁ、いや、少し考えごとをね」
「考ええ事?」
そう小首を傾げた彼に「つまらないことだよ」と笑いながら彼を見た。
「ミカエルは人の姿が好きか?」
「そうだね、好き、かな。ピアノが弾けるから」
「そうか、私はミカエルの弾くピアノ好きだよ」
「本当に?」
「本当に」
「でも、マスター、考え事をしてた」
「それはそれ。これはこれだ」
少し不機嫌そうに告げたかれに、苦笑いしてそう告げる。続きを聞かせて、と言えば彼はまたピアノを奏で始める。聞いたことがある曲だ。少し古い曲ではあるけれど。あぁ、確か映画である。それを聴きながらもう一度目を伏せた。

もし、あの人生が映画だとしたら、まさしく私は悪役だろう。いや、あの世界はフィクションだと記憶しているけれど。では、この現実での私はどうなのだろう。陛下と呼んだ彼はこの国は終わるべくして作られたと言っていた。ならば、正義とはあの子のいる方にあるのだろう。いつだって私はこちら側だ。正義ではない、対の方だ。自分が選んだとしても、選んでないとしても。決して幸せな終わり方はこない。幸せな終わり方を望んでいるわけじゃない。あぁ、でもこうも揺らいでいるのはあの時のように信念があるわけじゃないからだ。そもそもーー。
「そんなものを塗りつぶしたのは私だ」
ポーン、と音がなって曲が終わる。心配そうに振り返った彼に何でもないよと笑った。

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「苗字さん、どうしてそこにいるの」
そう尋ねた彼女に私は何も答えない。ねぇ、答えて。彼女はそう言って私を見た。あぁ、思い出す。こんな問答をジャックとした。そして、私は彼を嫌いだと告げたのである。一緒にいるレジスタンス達がナイフや銃を構えて私を見た。
「世界帝が何をしてるか、わかってるんでしょう?」
知ってる、そう答えようとすれば足音を鳴らして誰かが近づいてくる。走ってくるような音だ。人をかき分けて、押しのけて、その人物はやってくる。
ーー隻眼である。片目を眼帯で隠した彼は壮年の男は周りに指示を出した。あの子は彼を見て小さくボスと声をかけた。そして、理解する。この世界(現実)はあの世界(フィクション)の続きなのだと。この国が終わるべくして作られたことも、全て。あぁ、そういうことなのだと。
「待て、銃を下げろ、やめろ、」
そう震えるような声を出した彼を見て、笑う。レジスタンス達は銃をさげた。
「久しぶりだね、ジャック」
私は笑ってそう声をかける。彼は目を見開いて私を見た。彼だけではなく、周りのレジスタンス達もだ。そして、世界帝の兵士やそばにいるファル達もである。
「ナマエ、やっぱり、お前は、」
「君が『私』を殺して、どれくらいの日が過ぎただろう」
カツン、と靴音を鳴らす。彼は目に動揺をみせた。
「違う、あれは、任務で、」
「またそうやって現実から逃げるのか」
それはどちらだろうか。ジャック、と愛しさを込めて彼を呼び、彼に手を伸ばす。震える手を伸ばしてきた彼にーーそのままCQCを利用して投げ飛ばした。その瞬間、銃を構えたレジスタンスを気に留めない。
「だから、私は君が嫌いなんだ」
嫌な音を立てる。ジャックの骨がおそらく折れた。あの時のように。彼からゆっくり手を離し、ファル達のもとに向かう。銃をこちらに向けたレジスタンスに彼は待て、とまた告げた。お人好しだ。敵対しているのだから撃たせればいいものを。振り向けば彼は周りに助け起こされていた。あの子が両手で口を覆うのが見える。
あぁ、理由ができてしまった。こちら側でいる理由ができてしまった。この話は彼の、おそらくはあの子が主人公のお話で、私はまた悪役としてここにいる。私はまた英雄譚の下敷きになるのである。
「帰ろう、ベルガー、ファル。今日は気分が乗らなくなってしまったよ」
そう二人に帰ろうと促せばジャックは小さく「知ってる」と呟いた。わかっている、それでも俺は。彼が近づこうとしてーーレジスタンス側の男が撃たれたことによりそれは空振りに終わる。角度からしてアインスだろう。
「人のマスターに、馴れ馴れしくしてんじゃねぇ!」
ベルガーが彼らに銃を向けーー引き金を引いた。その隙にファルが私の手を引いて喧騒の中に走り出した。目の前にいきなり止まった車に身構えたが開けた先にいたのは陛下、運転席には将軍である。ファルは私を押し込むようにそこに入れる。走り出した車に息を吐いた。
「ナマエ、どうした?ひどい顔だな」
そう大事そうに私のほおを撫でた彼に、目を伏せる。
「ジャックに、会った、だけです」
「あの人に?」
「はい」
「ーーそうか」
彼はそう言って抱き寄せた。葉巻の香りだ。ジャックと同じ、葉巻の香りだ。泣いてしまいそうな自分に嫌気がさす。しあわせになりたい。そんな言葉を飲み込んで口を開く。
「やっぱり私はジャックが嫌いだ」



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