2018/11/18
アウターハッピーエンド 終
・めちゃくちゃはなしがとぶきがする
アウターハッピーエンド7
世界とは統一されるべきではない。そのままであるべきものだとはボスの言葉であるが、全ての人間の意思を統一するなど、不可能なのである。言語も体も意思も心も違うものを統一するなど、数年は持つかもしれないが、時間が経つにつれそれはほつれていくのだ。
空虚に支配されたこの国は、終わるべくして作られたこの国は、だれかの英雄譚の下敷きになる。この国が積み上げた「嫌悪」は膨らみ、そうして終わりを迎える。嫌悪を膨らませたのは陛下でも将軍でも私でも統制された『空虚』でもない。選ばれたのだと驕り高ぶった貴族の行い、そして繰り返される反乱分子の弾圧だろう。
「そもそも、どうしてファルは私を連れてきたんだ?」
そう首を傾げて彼に問う。静まり返ったその空間で彼は私を見上げた。いや、彼らはだろうか。今更ですか、と言った彼に今気になったからと言う。
「偶然の産物だろうと今まではあまり気にしなかった。偶々私が貴方より先にあの米軍基地に向っていて、偶々貴方もそこに用があったからと」
「貴方に興味があったからだと言ったらどうします?」
「なんで興味を引かれるかがわからないな……」
「貴方には色んな噂がありましたからね。なによりも、あの狂気にも似た集団で貴方が一番正しい反応をしていたことが一番気にかかりまして」
「キョーキ?」
「私がいた国は平和だと思い込んでいた。いや、政府が思い込ませていた。恐らくあの国の国民は火の海になって初めて平和でないことに気づいただろう」
「貴女は違った」
「同盟を組んだ他の国が撤退したのが違和感がしていた。あれはあの国からの撤退じゃなく、恐らくは総出撃だと踏んだまでだ。それを確認したくてあの日はあそこに向かった。でも、先生は違うでしょう?」
「私は先生でしたからね、誰がどこへ向かうかは把握する必要があったんですよ。元より貴方だけが他の人とは大きく外れてましたから」
「逆に何かあると思った?」
「……まぁ、空振りに終わりましたけどね」
肩をすくめた彼に、そう言えばマスターは制服をきた女の子だったものね、とエフが告げた。きゅるちゅがつまらなそうに口を開く。
「あの時はマスター美味しい思い出持ってると思ったのになぁ」
「あんまり思い入れがなかった。学校も、家族も。昔は仲が良かったんだが、どうもこういう性格になってから線を引かれてね。両親は特に。まぁ、彼らは海外へ行っていたから巻き込まれてはいないだろうけど」
さて、と小さく息を吐く。もうじきレジスタンスがここに来るだろう。陛下の守りは硬いだろうが、向こうもまた攻め込まれるだろう。私が死んだことによって。大丈夫だ、と言い聞かせて扉を見つめる。悲鳴、怒号、そんなものが近いてくる。
「逃げるならいまだぞ」
「マスターを置いて逃げるバカはいないがな」
アインスがそう言って銃をかついだ。
==
消えていく感覚がする。喪失感ともいうのか。流れる血の涙を拭う。一人一人、足止めに向かった銃達は帰ってくることはない。寝返ったのだろうかとも思ったが、喪失感からして違うのだろう。
「酷い顔ですね。よっぽど私たちが消えることがつらいですか」
そばについていろ、と言われたファルは私のそばにいた。彼の言葉にそうだな、と目を瞑る。彼はそっと私の膝の上に銃を置いた。彼の本体とも言えるものだ。
「貴方が使えばいい。私の最後は貴方にお任せしますよ」
その言葉とともに彼は紫色の光の粉を纏って消えた。伸ばした手は空振りに終わる。そっと銃を撫でて扉を見た。勢いよく開いた扉の先には古銃やレジスタンス達がいる。そして、ジャックもあの子もいる。銃口を向けた彼らにそっと目を伏せた。
「あぁ、全員負けてしまったか」
「現代銃の奴らのことか?それとも兵士のことか?」
「両方だよ」
頬杖をついて彼らを見た。彼らには私がどう映っているのだろうか。ちらほらとレジスタンスに見たことがある人間がいるのを見るとやはり寝返った人も多いのだろう。私と同じく歳を重ねた彼女は口を開く。
「ねぇ、苗字さん、どうして、」
「君のいう『どうして』は難しいね。どうして逃げなかったの?と言いたいのか、どうして世界帝についたの?と言いたいのか」
「違う、どうしてあんなことをしたの!」
「あんなこと?」
「どうして現代銃達に命令して虐殺まがいなことをしたの!」
「忘れたとは言わせないぞ!三年前のあの大虐殺を!」
あぁ、と頭の中で思い起こす。私の前のマスター、すなわちあの男がやったことだ。どうやら私がやったことになっているらしい。まぁ、彼らが知らなくてもいいことだ。
「さて、どうしてだろう」
そう少し笑んで彼らを見る。
「あの虐殺でどれほどの人が死んだと思っている!」
「知らないな」
「こいつっ」
「では逆に尋ねよう。君たちとの戦闘でどれほどの世界帝の兵士が死んだと思っているんだ?」
そう言って彼らを見下ろす。
「彼らとレジスタンス、民間人はなんら変わらない。彼らにも故郷があり、家族があった。君たちはそれを奇襲し撃ち殺したね。虐殺となんら変わらない。君たちが殺した数を把握できていないように、彼らもまた把握などしていない。君たちを呼び出した彼女がその死体の数を知らないように私もまた知らない。それだけだ」
「ふざけるな!俺たちには正義がある!」
「知らないのか。正義とは常に勝者の言い分だ」
「……あぁ、そうだな」
静かに頷いたのはジャックである。彼は青年やあの子、古銃達を下がらせて一歩前に立った。
「戦争なんざ、どちらも悪だ。勝った方が正義とされ英雄として祝福をうけるが、負けた方は永遠に憎まれそして戦犯として歴史に名をのこす」
彼は静かにそう言って私を見上げた。
「真実は闇に埋もれ、塗り固められた嘘だけが残ってしまう」
「世界とはーー歴史とはそういうものだよ、ジャック。それは君も嫌というほど理解しているだろう」
カツン、と彼が足音を立ててやってくる。
「ナマエ、本当のことを教えてくれ」
「私が命令したよ」
「嘘だろう?」
「本当だ」
「君は嘘が上手だな」
カツンカツンと彼が近づく。目の前で止まった彼は私を見た。泣きそうな顔で私を見た。
「ナマエ、ひとつだけ教えてくれ、どうしたら俺は君と生きられる?」
「ひとつ言うのであれば、それはできないよ、ジョン。そう言う運命なのさ。君は英雄として生き続けーー私はその対として生きる。君にはーー君たちは幸せな終わり(ハッピーエンド)を迎えるが、私はそうではない」
そっと目を閉じる。そう、私は常にハッピーエンドの外側にいるのだ。幸せな終わりを迎えてはいけない、英雄の対にいるのである。あの時はコブラ部隊を巻き込んだが今回は銃達を巻き込んで終わりに足を進めるのだ。ああくだらないことを喋ってしまったな、と息を吐く。
「無駄話は終わりにしよう、スネーク。陛下が真にやりたいことは十分もあれば終わるだろう。さぁ、ジャック」
そうして、彼に銃口を向けた。微笑んで。
「ーー最高の十分間にしよう」
引き金を引いた。
ヴィランズアウターハッピーエンド
そうしてこうなる運命なのである。壊れてしまったファル。力がもうほとんど入らない体。ひゅうひゅうとしか音を漏らさない喉。見上げた先にいるジャックはまた古い銃を構えて私を見下ろした。そして、あぁ、彼の呪いを解いてあげなければと笑った。
「ジャック、ほんとうのことをおしえてあげよう」
「……」
「わたしは、きみがきらいだ」
彼が引き金を引く。衝撃が走る。暗転するなか、声が聞こえた。
「そうか、でも、俺は愛している」
そのたった一言で、私は。
==ヒーローズアウターハッピーエンド
白い花が揺れる。ひっそりと立てられた彼女のお墓、その周りを守るように置いてある銃達。誰が作ったのかはわからない。名前が刻まれていないそれが彼女のものだとは必ずしも言えないが、恐らく元々世界帝の兵士だった人が作ったのだろう。あの大虐殺を機にこちらに来た兵士達の一部には彼女の世話をしていた人もいたと聞いていた。あの人、この花が好きだったんです、と零したのは誰だったんだろうか。そんな真白の空間に、その人はいた。ただただお墓を見下ろす彼は老兵とも言えるだろうか。誰もが彼を英雄と呼ぶ。あの世界帝を打ち破った英雄だと。ボス、と呼べば彼は彼は振り返った。
ーー彼女と彼の関係を私たちは誰も知らない。
サチか、と私を呼んだ彼はまたお墓を見下ろした。
「何してるんですか、護衛も付けずに。銃士達がいないって騒いでましたよ」
「それはすまない」
彼はそう言って目を伏せた。私は彼女のお墓を見下ろす。彼女は本当に、悪い人だったのだろうか。世間で言われるような極悪非道な人物だったんだろうか。
「ナマエは嘘つきでな」
彼はそう言って笑う。
「俺をきらいだと言ったり、好きだと言ったり」
「天邪鬼なんですか?」
「いいや、本心を隠すのが上手いが油断したら本心が出るんだろう」
「……ボスをきらいだと言ったのは?」
「あれは嘘だろう。俺を解放しようとついた嘘だ」
解放とは、と尋ねかけて彼の視線が静かにお墓に向いていたのでやめた。
「英雄にも、幸せな終わりはやってくることはない」
呟くように彼は告げて踵を返す。私はそれを見送った。追いかけてはいけないと思ったからだ。でも、呼び止めればよかったとも思う。なぜならそれが私が見た彼の最後の姿だったからだ。
ーーそうして、私たちの英雄は、この世界(ハッピーエンド)から消え去ったのだった。
アウターハッピーエンド(終)
1014じゃなくてmgsだこれ。
補足
・サチ=君僕ディヴィッド主=古銃マスター主人公位置。ただこの世界ディヴィッドがいるかは微妙。ハッピーエンドの中にいる。
・陛下=エイハブ=ヴェノムスネーク。原作ではボスの顔になってるけどこの話では催眠学習受けただけ。最初はナマエもそうだと思っていたが、そのうち違うことに気づいた。アウターヘヴンの延長=世界帝というわけではないよ。ラスボス。
・将軍は特に決めてない。ただ、ヴェノムスネークに忠誠を誓ってる人。
・ボス=ジャック=ジョン。あの世界の続き、ずれた世界のボス。空虚に抵抗するためレジスタンスを率いることになった。マスターではないが、銃達からも信頼は厚い。多分今頃花畑にいる。
・空虚=愛国者のAI。4と同じようにしようとも思ったけどやめた。パロディ的な意味で現代銃を「ガンズオブパトリオット」と呼ぶ案が頭の中よぎったけど無理だった。世界帝が愛国者のaiにより統治され統一された国。
長々とありがとうございました〜。
Comment(0)
次の日 top 前の日