2018/11/24
飯塚姉(37)if
・ただのもしもだから本編でこうなるとは限らない37歳のif
「こんにちは」
そう檻の向こうの彼に声をかける。本を閉じてこちらを振り向いたのだろう彼が優しい声で私の名前を呼んだ。今でも訪れてくれるのは貴方とヤマト君ぐらいですよ、だなんて告げる彼に、ヤマトも来ているんですね、と告げる。
「あまりヤマトくんに会っていないんですか?」
「ヤマトは事件に引っ張りだこみたいで。海外でも、日本でも。まぁ、哀ちゃんのところに帰るのでなんとも言えないんですが」
「アキが心配ではない?」
「心配と今だに言われますが、大丈夫で通しきっています」
そうゆっくりと目を開く。ぼんやりとぼやけている視界に、彼はいるのだろう。かしゃりと音がなる。彼が近づいたらしい。
「ああ、本当に腹が立ちますね。貴方のその両目を奪った人間が憎たらしい。それさえ無ければ貴方は華々しい世界にいたでしょうに」
「きっとそう言う運命だったんでしょう」
そう笑う。彼がどんな顔をしているかわからない。彼はそっと私を呼んだ。アキ、と心地の良い音で。その声にああいけないな、と思う。愛しさというか、そんなものが込み上げてくるのだ。
「アキ、ここに来た事を明智警視には?」
「言えるわけがないでしょう?あの人、過保護なんです、とても」
「なら、怒られてしまいますよ。行きなさい。またね、アキ」
昔のようなその言葉に、またねと笑って杖をつく。カツンという音が響いた。
==
どうしてそうなったかと言われれば、なんて言えばいいのだろう。今や世界で指折りの真田さん曰く、私の立場を妬んだ人物の犯行。黒羽くん曰く、拗らせた恋が引き起こした犯行。そんなもので両目を奪われーー奇術師をするのが難しくなりーー今に至る。世界を飛び回るヤマトには黙っておこうかと思ったけれど、哀ちゃん経由でバレたらしい。いや、警察の関係者の知り合いは沢山いるからそこからかもしれない。高遠さんには自分から会いにいった。マジックを教えてくれた彼に説明をしなければいけなかったからだ。彼は怒った。私にではない。私の目を奪った誰かに。声だけでもわかる。戸惑い、怒り、そんな感情を露わにする彼が発した言葉は「どうして」だった。
「おや、アキさん、どこかでかけてたんですか」
「ええ、少しだけ」
「誰に会いにいったか、は目を瞑りましょうか」
「なんでばれてるんです?」
「貴方は目立ちますから。さぁ、帰りましょうか」
手を引いた彼に息を吐く。別に彼と結婚しているわけではないのだけども。
没!
Comment(0)
次の日 top 前の日