2019/01/06
王国心の派生
最後の最後に、誰かに名前を呼ばれた。ゆっくりと目を開けば光が天に昇っていくのが見える。そして、私が誰かに抱えられているのも。キーブレードを杖にするように、それも、私を抱えた状態で。ぼんやりと見える景色に、割れた仮面のしたの顔が見える。ますたー、と、彼を呼べば彼は私を見下ろした。
「おとなしくしていろ、きえるな、消えることは許さない」
そう強い口調で告げた彼に頷いてまた目をゆっくりと伏せる。狭間の世界を通り抜けようとしたその時、何かがマスターの前に立ちはだかったらしかった。足を止めた彼に私はゆっくりとまた目を開き、彼に告げる。
「ますたー、わたしをおろしてください。あなたひとりならきっと」
そう懇願するように告げる。彼はいいやと否定するように口を開いた。行く手を阻むならば容赦はしないと吠えた彼に対面していた誰かが何かをつげる。幾度も続いた攻撃、そして。
落ちるような、浮くような、そんな感覚。ゆっくりと手を伸ばしてみたけれど、手は届くこともなくーー私はマスターの声を聞きながら、何かに呑まれた。
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「ーーであるからにして、われわれはかたなをえらび、それを顕現させることによって初めてたたかうことができるのです」
繰り返されるその内容に頬杖をついて窓の外をみる。鳴ったチャイムの音、教師のこれまでという言葉。そんなものの後に周りは騒めきがひどくなる。
あの時、何かに呑まれた後、気づけば知らない場所にいた私である。体は何故か縮んでいて、ひとりの男性に保護されたのは未だに記憶に新しい。彼が優秀な審神者であったからか、私も審神者になるべくしてこの学校に通っているわけである。ちなみに彼は私がどういう人物か知っている。チリシィが伝えたわけではなく、知ってるから知ってるとしか言われないが、まぁそれはいい。彼の娘となっているからか周りも遠目で見てくるぐらいだし。続いて始まったホームルームに、他校との演練があるということが告げられ、この学年の代表として私が選ばれたと言われた。その言葉に周りはザワザワとうるさくなった。あぁやっぱり、だとかいう声に混じり嫉妬のような妬むような声も聞こえた。そういうことだからと笑っている教師の目は笑っていない。面倒だなと息を吐いて「わかりました」と返事をしておく。酷く狭い世界だことで。
他校との演練に参加すればその分審神者となる日が近くなるらしい。何故ならば必ず刀からその人を降ろさなければならず、それをつき従えて学校にいると色々起こるからである。彼の屋敷に帰って演練に出ることになった、と頬杖をついて言えば周りはエッとこちらを見た。審神者の彼も例外ではなく、私をみる。
「あれ、もう?お前はやくない?」
「学校の厄介払いな気がしなくもありません」
「何かしたのか」
「いいえ、何も」
そう首を振って教師から手渡された刀をみる。加州を選んだのか、と言われたけども、選んでいるわけではなく強制的であることを告げれば彼らは目を瞬いた。審神者の彼は少し考えて、お前は引き継ぎ枠か?と口を開く。なんだそれ、と思っていれば蜂須賀さんが説明してくれた。どうやら審神者は若い人しかいないと思ったがそうでもないらしい。教師に手渡された刀を眺める。
「主従というより友達になってくれるかな」
そう小さく呟けば、周りは笑ったけれども。
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夢の中であると理解できるのはそこにマスターがいるからだ。マスターと呼べば彼は振り向いて優しく笑んだ。手を差し伸べた彼に走って向かう。しかし、後ろから現れた何かに叫べば彼はキーブレード を構えて後ろからきた何かをきる。ズブズブと私の体は何かに沈む。マスターがこっちに気づいて手を伸ばしたが、それはつかめることなく私は沈んだ。暗闇である。夢の中で魔法を使う。光よ、と叫べばそこは光が溢れた。佇んでいるのはディックだろうか。ディック、と呼んで走り出そうとしたら誰かに手を掴まれた。
「ストップ。それ以上行ったらやばいよ」
振り返ればいたのは加州さんである。加州さん?と尋ねれば彼は首を左右に振った。
「あー、多分、オレはアンタの知ってる加州清光じゃない。今日、アンタが手渡された加州清光」
そう言った彼に彼をみる。ふむ、姿は全く同じだ。周りの景色がはじけて、真っ白な空間へと変わった。奥に渦巻いたのは闇だろうか。
「ありがとう、闇に心をつけ込まれるところだった」
そう言えば「別に」と彼は首を振った。夢ならばと景色はもう一度デイブレイクタウンでもいいはずだと思った瞬間、そこはデイブレイクタウンの街並みに変わる。よくディック達とアイスを食べた場所ーー時計塔が見える屋根の上だ。そこに座ってアイスを取り出す。かれにも一つアイスを渡せば周りを見渡していた彼はアイスを手に取った。
「なにここ」
「私の故郷」
そう告げれば彼は目を瞬いた。アンタ外国から来たの?と尋ねられたので似たようなものだよ、と言っておいた。
「私の名前はナマエ」
「ちょっとなに名乗ってんの?」
「名乗るには自分からっていうし」
「オレの名前なんて知ってるでしょ」
「貴方は貴方だから、貴方の口からききたいなって」
アイスをかじってそう言えば目を瞬いて、加州清光と言われた。手を差し伸べれば彼はおずおずと手を重ねた。
「よろしくね、加州。友達になろう」
「友達?主従じゃなくて?」
「主従はうーん……下につかれるのは苦手なんだよね」
「変な奴」
「普通じゃない?」
そう首を傾げて彼をみる。彼はアイスをかじって、しょっぱいと告げた。
「シーソルトアイスだからね。塩のアイス。でも、甘いでしょう?」
笑ってそういえば、彼はたしかにと呟いて街を見下ろした。
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それからぼちぼちと夢の中で加州とあって話す。どうやら彼は他の審神者の下にいた刀らしい。審神者さんの推測は当たってたわけだ。
「誰かの初期刀だった?」
「ううん、そこの本丸じゃおれは初期刀じゃないかな」
アイス片手に彼はそう言って景色をみた。
「ほかに初期刀がいた?」
「他の俺が初期刀だったんだけど、まぁ色々あってね、本丸が無くなることになって俺は政府に回収されて、今」
「色々」
「そ、色々」
そんなものなのかとアイスを齧る。ナマエも色々あったんでしょ、とこちらをみた彼に頷く。たしかに色々あったし、これからも色々あるに違いない。朝日が高くなる。それをみて、ああ目がさめるな、と彼をみた。
「じゃあね、加州また後で」
「あとで?」
「今日ほら演練だから」
ひらりと手を振れば体は透き通って消える。パチリと目を覚ませば短刀が私の布団に入ってねていた。
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降ろそうとしたら先輩に止められ今に至る。自分の加州と見分けがつかないからというけども、感覚や性格が違うのでそうはならないのでは?と思ったり。まぁ所謂補欠要員なので仕方ないかもしれない。加州と話せると思ったのにな、と、会場の隅のベンチに座って思う。ここにいる殆どが刀が心を宿らせたからいるのだと思えば感慨深い。座ってぼうっとしていたら、となりに誰かが座った。
「何を見ている?」
「何をって、刀剣男士ーー」
耳馴染みがある声にそちらをみる。そこにいたのは見覚えがある人物である。ディックに小さく息を呑んだ。ディック?と小さく尋ねれば彼もまたこちらを見て目を見開いた。
「まさか、ナマエ本人か?」
そう手を伸ばした彼の手に手を触れる。
「生きてる?」
「……残念ながらな」
「まって、敵対するつもりはない」
慌ててそう首を左右にふる。ああ、よかった、彼は死んでなんていなかったのだ、他と同じように光の粒になることもなく、わたしと同じように世界に飛ばされたのだと理解する。彼も同じくそうだったらしく、眉間にシワを寄せて口を開く。
「マスター・イラはどうした?」
「私だけが何かに呑まれたからよくわからない。私を抱えて移動してたんだけど、誰かが立ち塞がって、そのまま」
そう言ってマスターに贈られたネックレスを触る。ディックはそうかと小さく告げた。
「でも、ディックに会えたから、どこかで会える。鍵が導いてくれる。ディックはどうしてここに?」
「お前に敗れて空を見上げてたんだ。そしたら、お前と同じく何かに呑まれて今に至る」
「……ごめん」
小さくそう謝って目を伏せる。ごめんね、と謝れば彼は「気にするな」と告げた。
「あれは戦争だったんだ。限りは闇に向けるものだ。お前の言う通り、あの鍵は人に向けるものじゃない。それに、こうして会えた。俺はそれでいい」
彼の言葉に、君らしくない答えだと笑えば彼は一言、考えた、と告げた。
「ここに来て色々と考えた。本当にあの戦いは正しかったのか、マスターの考えは、周りは。それに、お前が泣いてた理由も全て」
真面目に告げた彼に否定とかできないなと思う。確かに泣いた。もしも、こうならない結末があったなら、と。ああなら彼の遺言に似た言葉も告げるべきかと彼を見た。
「じゃあ私と友達になってくれる?今度は正面じゃなくて、隣か背中を並べられるように」
そう手を差し伸べれば、彼は目を瞬いてーーああ!と笑いながら私の手を取った。まぁ、お互い違う学校の同じ立場であったらしく、先輩に仲良くするなと怒られたのだけど。
「それは無理です、彼とは友達なので」
「そうです、彼女とは友人なので無理だ」
はっきりと言えば生意気とか言われたが、(強面気味な)ディックのひと睨みに彼らは何も言わない。それに爆笑すれば私もディックに怒られたのだけど。
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私達の扱いに困っているだろう教師達にお前らはセットでそこにいろと言われて今に至る。お互い顕現させていないからの処置でもあるだろうけど。力はお互い拮抗というところか。3勝3敗で解散となるかと思えば、先輩がこちらを見た。嫌な予感、と引く。
「あの二人に競わせればいいのでは」
「しかし、あの二人はまだ顕現させていない」
「お互いで戦ったらいいじゃん」
そんな会話。悪意があるのかないのか。いや、向こうはディックが戦えるとわかってるんだろう。だから勝つと踏んでいる。竹刀ならいいけどなぁ、と頬杖をつく。
「しかし、先輩。ここには竹刀も木刀もありません。何で戦えと」
「決まってるだろ、お互いの初期刀だよ」
そういった彼に、お互いに刀を見る。何も殺せって言ってないだろ、とはお互いにタチの悪い先輩だなと思う。流石に止めに入ろうとした刀剣達と教師を眺めつつ、喧騒を見ながら口を開く。
「手が滑っちゃった、で近くにサクッとはダメかな」
「よし、それでいこう」
そう言いつつ立ち上がって手袋をはめた彼にガチモードだな、と思う。私も手袋を投げ渡されて立ち上がったけど。先輩達がこちらを見る。場所を開けた彼らに、ディックは一言口を開く。
「はっきり言いますが、先輩。コイツは俺より強いぞ」
「勝ち越してるしね。でも、制限あるし力技ならそっちの方が上手じゃない?」
「お前の方が身軽だろ」
刀を抜いた彼に同じく刀を抜く。まぁ、お互い逆さに持ってるのはご愛嬌ってことで。
カンカンと打ち合うけども、やはりディックの剣劇は重い。目があったので頷いて二人して手の力を抜く。飛んで行った刀は計算通り、先輩達の目の前にささった。顔を真っ青にした彼らに口を開く。
「あ、ごめんなさい、手元狂っちゃって。でも仕方ないですよね?先輩が真剣で戦えって言ったんだから」
「ああ、そうだな、慣れないもので戦うとどうしても手元が狂ってしまう。怪我しなくてよかったな」
ディックは完璧な上から目線である。敬うのをやめたらしい。固まったままの彼らの元から加州を引き抜く。刃こぼれは恐らくないだろう。「ごめんね、加州」と謝れば、ふわりと花の匂いが香った。花びらが人の姿を作り上げ、それは加州になった。
「ナマエ、刀使えたの?」
「いや、刀はないよ。だから多分扱いが雑だったでしょ、ごめんね」
そう言いつつ刀を渡す。いいよ、と言いながら刀を腰に刺した彼はディックを見る。同じく視線を向ければディックが青年といた。こちらを見た二人にひらりと手を振っておいた。
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二人と二振りで大目玉、ではなく、けしかけた先輩が大目玉を食らった。とりあえず夢で会おう!と言って別れたらカセンが不思議そうにしていたけれど。
「なに、夢がつながってるわけ?」
少しむっとしたように告げた加州に、心が繋がってるからじゃない?と言いつつ、周りを見渡している二人に手を振る。ディックが歌仙を抱えてやってきたのが見える。軽々と屋根に登ったディックに、歌仙が雅じゃないとぼやいていたが無視をすることにする。
「ここは、」
「多分私の夢の中なんだなぁ。記憶から形成されてるんじゃない?」
そう言いつつ加州にアイスを渡し、ディックに二本アイスを渡す。
「ここは、外国の景色かい?」
「……あぁ、俺たちの故郷の景色だ」
懐かしそうに彼はアイスをかじった。そして驚いたようにこちらを見下ろす。
「お前、シーソルト派だったのか」
「え、なに、だめ?」
「いや、他の味を食べてるイメージしかない」
「いつも最後に行くから売り切れてたんだよね。ディックは?」
「俺もシーソルト派だ」
少し嬉しそうに笑ったディックに、珍しい顔だな、と思う。歌仙が同じように食べて、しょっぱいけど後味が甘いね、と呟いた。
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・多分夢の中の街で予知書擬またはマスターオブマスターが残したもう一冊の予知書を見つける→予知書の中には自分達が書かれていない→七つの光と13の闇の戦いに加われるのでは?→とりあえずマスターの捜索と予知書の読めない場所の解読したい→こんな世界にとどまっていれないからお互い本丸持つ前に初期刀つれて世界へダイブって流れになる
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「てい、こく、らい、ぶら、りー?」
掲げられている言葉を読んで首をかしげる。目の前にある立派な建物はどうやら図書館らしい。図書館かぁ、と言えばディックが首を傾げた。
「図書館?」
「誰でも出入りできる書籍庫みたいなところじゃない?」
「なら本に詳しい奴がいるのか。ページの修復はできないだろうか」
「うーん、ページの修復は魔法に似た範疇ではあるけど、他の世界ならできるかも」
そう言えばならばと足を進めたディックに、行動派め、と小さく呟く。まったくもって彼は彼のマスターに似ている節がある。ナマエ、と心配そうにこちらを向いた彼に「今いくよ」と敷地の中に足を踏み出し、彼の隣にならんだ。
××Tekoku Library
少し重い扉を開ければ立派なホールが顔を覗かせる。なるほど、かなり大きな施設らしい。人っ子一人いないその空間ですいませーんと声をかけてみるがどうやら誰もいないらしい。いや、猫だけが奥の扉からやってきて、何もなかったように通り過ぎていった。
「休館日かな」
「休みってことか?だが、開いてたぞ」
「そうだよね……誰かいませんかー?」
そう呼びかければ、奥のカウンターまでお願いしますー、という言葉が返ってきた。奥のカウンターとは。「あの扉の中じゃないなか?」
何かを見ながら告げたディックに同じように隣に並ぶ。館内見取り図と書かれたそれにはたしかに一番手前の扉の先にカウンターと書かれている。他は棚の陳列だろうか。純文学、詩歌、童話、大衆文学、学書、などなど、色んな本があるのだろう。その中に錬金術という記載はあれど魔法という記載はない。先に進もうとしたディックに声をかける。
「ディック、この世界、錬金術ってのはあるけど魔法はないみたい」
そういえば彼は「使わないように心がけよう」と告げた。
「しかし、錬金術と魔法の差はなんだ」
「さぁ?」
とりあえずはカウンターにいくか、と彼の隣に並び扉をあげた。その先にあったのは山のような本だ。正しくは、たくさんの棚がならんでいて、その中にはぎゅうぎゅうに本が詰まっている。
「おおお、すごい。お城にある図書室みたい」
「何処の?」
「結構どのお城でも図書室あるよ」
「……お前はどの城でも顔だしてんのか」
「うん、ハートレスひたすら倒すためにね」
ヒラヒラと手を振ってカウンターを探す。棚の間から見えたそこに向けて足を踏み出せばため息をついたディックが追いかけてきた。
カウンターにいたのは青年二人と少年である。こちらに目を向けた彼らは首をかしげる。
「宅配便屋さんだと思ったら違ったみたいですね」
「ごめんなぁ、この図書館は年中休館日やねん」
独特な言葉で謝った青年に年中休館日……と首をかしげる。なんというパワーワード。扉は開いてたし、何も表記がなかったが、とこぼしたディックに彼らは首をかしげる。
「もしかして、二人とも遠い場所からきたの?」
「えぇ、旅をしている身なので。で、ちょうど修復してほしい本があったんで立ち寄ったんですけど」
「あー、それくらないならお司書はんか館長がなんとかしてくれるやろ」
私の言葉に青年はそう答える。彼らの背後の扉が開き、顔をのぞかせたのは壮年の男性だ。おや、お客さんか、と告げた彼は申し訳なさそうに口を開く。
「申し訳ないが、この図書館はーー」
「館長、そのことは伝えたよ」
「なんや遠くから来た人らしいねんけど、本をなおしてほしいらしいわ」
「本を?」
壮年の男性がこちらをみる。私は鞄から本を取り出して彼に見せた。彼はそれをしげしげと眺めて口を開く。
「しっかりとした作りで特に破損はないようだが……」
「いや、修復してほしいのは中だ」
「中?」
「ページが敗れた、とか、抜けたページがあるのかい?」
「いえ、変に空白があったり、文字が化けてしまったりしていて読もうにも読めないんです。図書館なら何かわかるかと」
その言葉に彼らの雰囲気が変わった。なるほど当たりらしい。
「……この本は何処で?」
「……私達の師の師が書き残したもので、私達が受け継いだものです。内容はたしか、お伽話だったと思うのですが」
借りても?と尋ねた彼に本を手渡す。館長はそれをペラリとめくった。
「外国語だな、たしかに所々文字が消えたり文字が化けたりしている」
「でもここにある有碍書とは違いますね」
「ほんまやな、文字が浮き出てへん」
「どちらかというと、封印に近いかもしれない」
ああだこうだと告げた彼らの言葉を頭に刻む。
「君たちは錬金術師なのか?」
「いいえ、違います」
「俺達の師も違う。師の師(マスターオブマスター)はわからんが」
フゥム、と言った館長と呼ばれた男性は口を開く。
「そうか、なら、調べてみる価値はある。二人は何処のホテルを?」
「あー、一文無しで」
そう苦笑いしてみれば彼らは顔を見合わせた。ちょっとそれ大丈夫なのかい?と尋ねた青年に、なんとかなるかな、という。大道芸なりなんなりで稼ぐか、どこか住み込みで働ける場所を探せばいいだろう。ディックもその気なのか、「住み込みでアルバイトすればいい話だからな」と告げた。
「それならウチの雑務を手伝ってくれないか?本のこともある。給料は出せないが……食事ぐらいはまかなえる。この本が大事な本ならば側にいた方が良いだろう」
「え、本当ですか!」
「あぁ、君たちが構わなければだが」
「やった、馬車馬のように働きますよ!」
そう宣言すればディックが呆れたような顔をした。お前がいうと冗談じゃないと呟いた彼に気にするなと手を振った。
「私はナマエです。こっちはディック。この子がチリシィで持っているのが加州と歌仙」
ぬいぐるみのフリをしているチリシィを見せ、加州と歌仙の鞘だけ見せる。「お、おぉ、」と戸惑ったように告げた青年に男性はカラカラとわらった。
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図書館には幅広い年代の人が住んでいるらしい。正しくは、全員文豪と呼ばれる作家且つ職員らしいけども。どこの国から来たんだ?という問いにはとりあえず遠い場所から来ましたしか言えないけども。今も本の整理をしつつその話をしていれば、バタバタとシュウセイがかけてきた。
「ディック、ナマエ、ちょっと来て」
そう私とディックの腕を引いた彼に二人で目を見合わせる。そのままたどり着いたのは館長の部屋だ。頭を抱えている館長に何かあったのかと尋ねる。
「二人とも、大事なことを俺たちに伝えていないな?」
その言葉に顔を見合わせる。大事なことってどれだ。ケンジくんがこちらを見上げる。
「ナマエさんとディックさんって、他の世界から来たの?」
「あぁ、それ……って、」
「なんでわかった?」
ディックが警戒する。それを止める。
「ディック、警戒しない。言ってなかったのはこっち」
「だが、」
「あの本に何か書かれていたんじゃないかな」
それだけ行ってもう一度館長をみる。
「今まで黙っていた無礼をお許しください。世界によっては他の世界があるなどと思わない世界もあるので、省いていました」
「いや、それが正しい選択だろう。普通は異世界と言われたってピンと来ない」
館長がそう言ってこちらを見た。ふむ、彼らはなんらかの理由で異世界を理解しているらしい。
「話を詳しく伺っても?」
「ええ。私とディックは離れ離れになった師や友人を探して世界を渡って旅をしている最中なんです」
「はぁ、たいそうな旅だな。一文無しというのは通貨が違うからか」
「ええ。あなた方に修復を依頼している本は師の師が書いたお伽話、と告げましたが、実際は違います。あれは、師の師が書いた予言書なんです」
「予言?未来が書かれていると」
「いえ、半分ほどはもう過去にあたるでしょう。しかし、その先は」
「未来というわけか」
館長の言葉に頷いた。シュウセイはこちらを見て口を開く。
「君たちは未来を知りたいってこと?」
「未来を知れば予言書のその先で何かできるかも知れない。それに、友人や師を探す手がかりになるかも知れない。もう一度会うことさえできれば、何かを変えれるかもしれない。ううん、もう一度会って言葉を交わすだけでいい」
私はそう言って彼らをみる。
「あのままさよならなんて、私は絶対嫌だ。だから、もう一度会いたいんです。マスターに、友達になれるかも知れなかった彼らに」
「俺も同感だ。あの時とは違う。今は選択肢がある。それなら明るい方を選べばいい。過去は変えられないならば、その過去を踏み台にするしかない」
真っ直ぐにそう言ったディックに彼らは息を吐いた。
嫌になるほど真っ直ぐだ、と言ったのは誰だろうか。館長が、「そういうことなら協力しよう」と頷いてくれる。
「しかし、中にいるのが思ったよりも強力でな、時間がかかるだろう」
「中にいる?」
「あぁ、そうか、君たちはわからないよね。僕らが本の中に入って本を侵食ーー読めなくなった原因を倒してるんだ」
シュウセイの言葉に少し考える。「本の中にも世界がある?」という私の呟きにディックが眉間にシワを寄せた。
「どういうことだ?」
「本自体が実世界をもとにした仮想世界なんじゃないかな。正しくは実世界を文字で書き起こしたもの、みたいな。例えば、この世界に伝わっている白雪姫には少し違うけれど、ドワーフウッドランドの七人の小人や白雪がでてくるし、千夜一夜物語にアグラバーのアラジンが出てくる。何処かの世界の真実が、お伽話になって少し形を変えてこの世界に伝わってるんだよ」
「わかりやすくいってくれ」
「この予言書の中にはもう一つのデイブレイクタウンがあるってこと。ただ、現実世界じゃなくて仮想世界のね」
「もっとわかりやすく」
「……君と話してた夢の世界と同じような世界がある」
そこでようやくピンと来たらしい。そういうことか、と彼は告げた。
==つづく?
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