2019/01/15
神様してる兼任司書と兄
ふと気づいたらいたそこに目を瞬く。隣にいた少年は兄に似ていた。なんだこれ、と思いながら彼を揺すれば視界に入った手は子供の手である。おや、と両手をみて、体をみる。よくよく見れば足も小さくなっているし、視線も低い。兄さん、と言おうとすれば、にーしゃん、となった言葉。これは間違いなく。
「ん、」
そう目を開いた兄は私をみて、なんか妹に似た幼児がいる、と告げた。その妹である、と頷けば彼は目を瞬いて、は?と声をあげた。立ち上がった彼に合わせて立ち上がろうとすれば転んだ。なんという失態、である。兄は私を助け起こした。
「どうなってんだ?ってなんで俺も縮んでるんだよ。ってか、どこだここ」
辺りを見回した兄に私は痛みを我慢(正しくは脆くなった涙腺)しつつ周りを見た。見事に知らない場所である。森の中だろうか。図書館で燃費りしていたのだけど。私はむっちゃんを帯刀していないし、兄は兄で歌仙を帯刀していない。ガサガサと茂みが揺れる。そちらを警戒しながら凝視していたら、人がやってきた。顔をのぞかせたのは父親である。それを見た瞬間、涙腺が決壊した。まごう事なく幼児である。「ととしゃま、」と両手を広げてとてとてと走れば目をまん丸にした彼は私に合わせてかがんで安心させるように私を抱き寄せた。ぽんぽんと頭を撫でた彼に兄がやってくる。
「なぁ、父上、これ、どうなってるんだ?」
「……きみたちは、まいごかな?それに、なにかかんちがいをしていないかい?」
首を傾げた彼に私と兄がぴたりと動きを止めた。基本、私達の世界では全ての小豆長光に私たちの記憶がある。何故なら母親は本霊の彼に選ばれ、私たちは本霊の子供にあたるからだ。本霊の記憶は分霊に共有されるのだ。知らないということは違う世界にきたわけで。視界がまたにじむ。
「ととしゃま、ちがう?」
「父上じゃない?」
彼は兄と私を見比べる。ぽんと私と兄の頭を撫でた彼は「きょうからふたりのおとうさんた」と言った。
「ちょっと、何勝手に言ってるの!」
ガサガサと音がしてそちらから現れたのは光忠さんである。その後ろから現れたのは鶴丸さんだろうか。
「こりゃあ驚いたな、服装からして時代の迷子か?歴史修正主義者の置き土産か?」
「わからないが、おそらくはまいごだ。あるじにあわせてはだめだろうか。なにかわかるかもしれない」
「うぅん、」
「このままだとひもじくてしんてしまうかも……」
「そうだな、見殺しは流石に心苦しい。歴史修正主義者の子供にしろ、本人にしろ、そうだとわかれば政府に渡せばいい」
「……わかったよ」
はぁ、とため息をついた光忠さんに、父親は私を抱き上げて兄と手を繋いだ。さぁ、あたらしいおうちにかえろうか、と言った父親に兄がおう!と声をあげたのを見て私も口を開く。おー!と言えば父親が花を散らした。この父親大丈夫か。
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主さんは二十代後半くらいの男の人だった。「さ」と書かれた布を顔の前に垂らした彼は報告をきいて「まぁ政府に連絡はしとくか」とこんのすけを見た。こんのすけは「わかりました、あるじさま!」と声をあげて消えた。
「俺は審神者。この屋敷の主人みたいなもんだな」
兄がそれを聞いて私をみる。
「審神者様」
「しゃにわしゃま」
「お前サ行やっぱり苦手かよ。俺は?」
「あにしゃま!」
「幼女尊い」
さらりと告げた審神者さんに二人でそちらをみる。まぁ、何も言ってないように笑われたけど。それより襖からチラチラ覗く父親達である。審神者さんが入るように促したからか入ってきた彼はこちらをみた。
「あるじ、はなしはおわったかい?」
「あぁ、おわった。とりあえず内で面倒みようと思う」
その言葉に父親は目をキラキラと輝かせた。こうなったら甘えてやると父様と呼んでそちらに言ってみる。まぁ、裾踏んでずっこけたけど。涙目だけど。桜舞わしてるけど。審神者さんプルプルしてるけど。
「うー、うぅー」
「急に立ち上がるからだろ?」
やれやれという風によってきた兄に立たせてもらう。泣かない泣かないという兄に、ないてません、と首を左右に振る。
抱き上げられて父親にぽんぽんされる。それをみた審神者さんが少し考えた。
「その2人、なんて呼ぼうか。名前は名乗っちゃいけないからな、2人とも」
「よくわかんねぇけど、それなら俺がカナタ、こっちがナマエって呼んでください」
「カナタとナマエ?」
「本名じゃないんですけど、親類がつけたあだ名みたいな?」
そう首を傾げた兄に私も首を傾げた。まぁ、説明は難しい。本名は人間には聞き取れないから付けられた名前である。私が司書をするときに名乗っていた名前だ。
「しょ、じゃなきゃ、あにといもーと?」
「なんだそのダイレクトな名前。わかりやすいけど」
「おし、兄がカナタと妹がナマエだな。あずき、悪いけど、部屋を案内してやってくれ」
「わかった。おいで、カナタ」
「はーい」
==
妹が完璧に幼児となっている。いや、恐らく中身はそのままなんだろうけども仕草やら何やらが幼児となっている。かくいう俺も粟田口と変わらないぐらいの身長である。だからかしらないが、めちゃくちゃ周りが保護者である。保護者である、のにも、関わらず。
「何やってんだ、かねさん。堀川さんいないからって。雅じゃない」
なんで俺がはたき持って年上を叱ってるんだろうか。年下にいいわけするな、と言えば歌仙に似てるなお前と言われた。こちとら数十年、もしくは百数十年の付き合いである。散らかったものを見て息を吐く。掃除が掃除じゃない。ナマエがちょこちょこ走ってきて、部屋を見て足を止めた。「はらきよ!」とだけつげてはたきを振った。
「おー、いいぞ、ナマエ、兼さんもはらきよしてやろうな」
その言葉に合点承知したらしい妹ははらきよ!と言いながら兼さんに突撃した。こいつ本当に幼女生活たのしんでんな。妹がはらきよしてるのを横目に部屋の片付けにうつる。そう、今日は大掃除である。
「あれ、ナマエちゃんとカナタくん、どこにいるかと思えば。何してるの?」
「かねしゃん、はらきよ!」
「兼さんが散らかしてたから罰として妹がはたきではらきよしてる」
「だーかーらー、違うんだって!」
「もー、兼さんは僕がいないとダメなんだから!ナマエちゃん、もっとやっちゃって」
「あい!」
「ちょ、堀川!」
「ごめんね、カナタくん、手伝わせちゃって」
「俺たちの部屋はもう終わったし、別に大丈夫です」
「さすが長船だなぁ」
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