2019/01/17

↓続き


==馴染んだ

元より妹と俺は同じ親(刀の付喪神と人間)から生まれた存在であるが、時間が経つにつれ俺も妹も神格があがり、妹は文芸を俺は武芸を司る神の1人になっている。まぁ、2人合わせて拝むことで文武両道ってなわけである。いつのまにか根付いているそれには元の場所では驚いたものであるけども、妹はあの蔵書が日本一である図書館の主人を見た目が変わらないまま数百年そこにいるのだから人間に拝まれ神格をあげ、俺は審神者を保護したり刀剣を保護しているから神格をあげたのだろう。まぁ、言ってしまえば神さまなのである。姿が縮んで力は不安定になっているが。審神者さんやこんのすけを始めとした政府、刀剣は子供だから神格が高いと思っているようである。まぁ、父親、父親、むっちゃん、時々他の刀剣というふうに懐いている妹を見て神様だとは思わないだろう。俺も俺で短刀とやんちゃしてるし。
「なーんであんな場所にいたのかねぇ」
何かに呼び出されたというのが一番しっくりくるが。側で同じように掃除をしていた貞と縁側に腰掛けていた審神者さんと三日月さんがこちらを見た。
「そういや、2人の最後の記憶はどこなんだ?」
「俺は自宅。あいつは多分書庫的な場所かどっかの庭だろ」
「投げやりだな」
「別々の場所にいたからな、よくわかんね」
「何か心当たりはないのか?」
「うーん、なんかに呼ばれたかなぁ。そろそろ家のほうで騒動になってそうな気がするんだよなぁ」
そう言いつつ箒を片付ける。掃除はこれぐらいでいいだろう。
「妹が陸奥さんを困らせてる気配を察知。いってくる」
「え、ちょ?」
妹がいる方にとりあえず足を進める。困った顔をした陸奥さんが妹を抱え込んでいた。どうやら寝たらしい。俺のとこにいた陸奥も妹のとこにいた陸奥も子供好きだったが、ここの陸奥はそうでもない。接し方がわからないらしい。わかる。
「陸奥さーん、妹また寝た?」
「おん……」
「悪いな、父親に似てるのは小豆さんなんだけど、アンタもアンタで幼馴染の兄さんに似てるから安心するんだと思う」
「ワシに似とう?」
「おー、ちょっと部屋に寝かしてくる」
そう言いつつ妹を肩で担ぐ。まぁ近くを通った一期さんが抱えてくれたけど。

==

両親審神者では?説が出たので演練につれていってもらえることになった。なんでも政府が俺たちの話から推測したらしい。惜しい、ある意味はあたりである。母親は元は審神者の人間だ。ととしゃま、いっぱい!と小豆さんと手を繋いだ妹が謎の宣言をしたことでそこにちらほらいた小豆が足を止めた。桜舞ってるけど大丈夫か、他の小豆。たしかに俺たちから見れば父親がいっぱいである。妹はニッコニコ笑いながらととしゃま!といって手を振る。多くの小豆と小烏丸、他刀剣がちらほらと手を振った。父親に反応したか。
「ううむ、あるじ、やはりふたりのちちおやはわたしににているみたいだ」
「ってことはすげぇイケメンってことか。通りで二人とも顔が整ってるんだな」
「みんなととしゃま。でも、ととしゃまはひとりよ。たくしゃんいるけど、ととしゃまはひとり」
そんなナマエの発言に審神者さんは首をかしげる。変な問答をするんじゃない。審神者さんが問うように妹を見たが、妹は首を傾げただけだ。

それからしばらくして、審神者さんが五戦五勝をあげた時である。前から思っていたが、この人の刀剣たちはよく鍛えられている。バタバタと誰かがかけてきてなんだなんだと俺たちは振り返る。審神者だろうか。正座して深々と頭を下げた人物に審神者さんが困惑した。
「お探ししておりました。まさかあのような場所に降り立ってしまうとは」
「ええっと、」
「お二人をお呼びしたのはこの私めでございます」
そう顔をあげた審神者はぞっとするような何かがある。顔が見えないようになっているというのに。あまり近くにいきたくないような。どういうこと?と困惑した審神者さんに、その人物は口を開く。
「まさか他の奴があなた様を連れて行くなんて」
「……ふたりの知り合いか?」
問いかけた審神者さんに2人で首を振る。
「人違いじゃ」
審神者さんの言葉にその人物は首を左右にふった。睨んでいるのは気のせいじゃないだろう。
「いえ」
「……アンタが俺たちを呼び寄せたのか。なら、何のために呼び出した」
「我らに加護をお与えいただくために」
そうまた頭を下げたその人物に、妹が首を左右にふった。
「いいえ、ちがいましょう」
妹が淡々と告げる。
「あなたののぞみはそうではない。もっとみがってなものですね」
「だろうな。じゃなきゃこうはならねぇ。あり得る話とすれは、俺たちの力だけなんらかで利用して幽閉か。やめとけやめとけ」
そう手をひらひらさせる。俺の立場上上司の人たちが乗り込んでくるだろうし、妹も妹で可愛がってもらってる神様が神様である。
「……なぁ、もしかしてふたりともなんかすごいの?」
「しゃにわしゃまはきにしないでくだしゃい」
子供のふりをしてペチペチと審神者さんの足を叩く妹に俺も気にしないでくださいと首を左右にふる。そもそもこの世界の神様ではないのだ。チラリとその人物をみる。ワナワナと震えてるのをみると、怒っているのかもしれない。が、怒りたいのはこちらである。
「しゃにわしゃわ、ほんとのととしゃまもかかしゃまもいません。このかたはちがいます。かえりましょ」
そう小豆さんと審神者さんの手を引いた妹に俺も帰ろうぜ、と加わる。
「下手に出れば調子乗りやがって」
そう手を振り上げたその人物に妹はただずっと目を細めて見つめ、俺も俺で似たような表情で見た。
「それ、振り下ろしてもいいけど、色々しらねぇぞ」
脅しではない。だが、そういう覚悟を持ってもらわないといけない。一番調子に乗っているのはこいつである。
「あにしゃま、しゃにわしゃま、ととしゃま、あのね?」
不意に妹がそう告げてその人物を指差す。正しくはその人物ではなく、その肩付近だが。
「こわーいおかおのおにぃしゃんが、このひとのうしろにいるよ?」
「え、」
「すっごくすっごくおこってるの。おにしゃんみたいにおこってる。まっかなおかおでおこってる。はんたいがわのおねぇしゃんは、ないてるの。わんわんわんわんないてるの。あおいおかおでないてるの」
ゆらりと何かが揺れる。その人物が恐れたように後ろを見た。
「どうしてないてるの?どうしておこってるの?……とられちゃったの?たいせつなたいせつなの、とられちゃったの?」
妹がそう告げた瞬間、黒い靄がその人物にまとわりつく。感じるのは吐き気だろうか。審神者が顔をしかめて「なにかいる」と呟いた。
「あにしゃま、ととしゃま、しゃにわしゃま、あのね、とられちゃったんだって」
「……なにをだい?」
「たいせつな、たーいせつなかたな、とられちゃったんだって」
その言葉に俺も背後の霞を見る。たしかにその奥には1組の男女がいた。俺には声が聞こえないが。赤い男は血濡れて赤いし、青い女の首には跡がある。そういうことだ。
「刀を、とられた?」
「いたいねぇ、いたかったねぇ、かなしいねぇ、ぷんぷんだねぇ」
その人物は顔を青くして後ろに下がった。それと入れ替わりにその人物が連れていた刀たちが前に出てきた。そのなかの加州清光と蜂須賀虎徹はナマエにあわせて屈む。
「ねぇ、その人ってどんな人!?」
「おねぇしゃん?おにぃしゃん?」
「お兄さんの方!」
加州清光の言葉に妹がそちらを見た。舌ったらずで伝えづらいのだろいあ。チラリとこちらを見た妹にかわり口を開く。
「ーー黒髪短髪、悪いけど顔は見えない。血だらけなんだ。頭を切られてる。服は洋装寄り……もとは青か?家紋がついてる……丸に折れ柏だな」
「っー!」
「お姉さんは?!」
「髪が長いな、腰あたりまでありそう。顔つきからして俺よりちょっと年上くらいか?和装で朱色の襟が目立つ巫女衣装、おもちゃの指輪のネックレスをつけてる。首に跡がある」
「跡?」
「あれなんだろうな、縄か布かわからないけど、なんかで首を絞められたんじゃないか?」
ヒュッと人物が息を呑む。そうか、と蜂須賀は立ち上がる。加州清光がキッとその人物を睨んだ。
「うそつき!!」
「ちょっとまって、私より初対面のこいつらを信用するの!?」
そう叫んだその人物に、ザワザワと周りは騒ぐ。雰囲気に飲まれていたが、それがその声で気づいたのだろう。ザワザワとその人物を擁護するような声がする。しかしながら、よく通る低い声にそれはまた制された。
「なにごとだ」
「十六夜さま!この子供たちがデタラメを!」
「デタラメ?」
布を垂らした男がこちらを見下ろした。俺は肩を竦め、妹もまた首を振った。
「このこらは」
「かくかくじかじかで俺が面倒をみている子らです。政府にはご報告しております。今日は父母がいるかもしれないとこちらに連れてまいりました」
「……ふむ、して、いかがした、子らよ」
「あのね、あのひとのうしろに、あおいおねーしゃんとあかいおにーしゃんがいるよっておしえてあげたの。そしたらね、おこっちゃった」
むくれて告げた妹に、男はその人物をみる。
「確かに何かはいるな。石切丸、」
そう彼が呼べば石切丸が現れる。石切丸は顔をしかめた。
「話は聞いていたな。稚児の話はどう思う?」
「真実だね。確かに赤い男性と青い女性がいる」
「色が付いているのか?」
「いいや、主。色じゃない。血で真っ赤に見えるし、女性は顔色が悪いんだ。恐らく斬られたのと首を絞められたんだろう。未練も憎しみも多くて成仏できてない」
「理由は?」
「そこまでは」
「かたな、とっちゃったって。さっきからずうっとずうっとおこって、ないてるの」
「驚いた、子供だから聞こえてしまうんだね」
「十六夜さま、嘘です!私は潔白です」
「なにがだ。俺はまだ何も言っておるまい」
男性は妹からその人物に目を向ける。ご愁傷様です。
「確かお前は主が隠された本丸より刀を譲り受けている本丸だったな。本当に隠されたのか」
「ええ、ええ、私めはみたのです。あの稚児らが隠しました!」
まさかの展開である。こちらを指差したその人物に視線が向いた。
「あの稚児らは下界するにあたり、あの姿になっただけ!あの稚児らは神の端くれでございます!」
こいつもとよりコレが目的か。真面目に引く俺は悪くない。十六夜と呼んだ男性は俺と妹を見下ろす。というかそこにいる人間刀含めてこちらをみた。
「え、まじで、えっ、えっ?神様なのか?二人とも」
「やはり何も知らずに奪ったか!不束者めが!十六夜さま、私めはこの稚児らを罰するために呼び出したのでございます!それをこの男が!」
「おいそれは言いがかりだろ!俺はみるからに違う時代の子供が取り残されてたから本丸に置いてたんだ!ちゃんと政府にも報告してる!」
「うそをいうか!」
「なぁ、いい加減にしろよ」
口を開いてからああ案外俺も怒っているらしいと理解する。手を宙に伸ばしかけたところで妹がそれをとめた。
「あにしゃま、あにしゃま、いけません。ねぇ、もうきがすんだでしょう?おうちにかえしてくだしゃいな。きっとあにしゃまやわたしをしゃがしてたいへんなしゃわぎになっているのです。おとなしくかえしてくだしゃるのなら、なにもしません」
「何を言うか!お前たちが隠したんだろう!返すものか!!」
「……そう……」
妹はチラリと俺を見る。ほっとけということだろう。まぁ、放置した方がひどい目に合うだろうし。
「十六夜しゃま、とおっしゃいましたね、もうけっこうです。わたしたちのうそでかまいません」
「しかし、」
「いいですよ、別に。真実はいずれわかるから。あー、腹減った、審神者さん、帰りましょ」
「え、あ、え??」
「ととしゃま、しゃにわしゃま、かえりましょ」
抱っこをせがんだ妹に小豆が困惑したまま抱き上げる。妹は、あ、と思い出したように口を開いた。
「かしゅうしゃん、はちすがしゃん、まんげつのゆきのひに、あかとしろのつばきとぼたんぎくをかざれば、きっとよいことがありますよ。でも、そちらのしゃにわしゃまはゆきのひにおきをつけくだしゃい」
そう告げて妹は何事もなかったかのように小豆さんの胸に顔を押し付けた。俺は素知らぬ顔である。審神者さんは俺たちと十六夜と呼ばれた男性を見比べ、男性が帰るように促したため帰宅のゲートをあける。
神様は優しいわけじゃないんだよなぁと息を吐きつつ、閉まるゲートの先を見た。雪は積もれば結界になる。そしてあの怨念はしばらくは消えまい。閉じこもったそこではきっと。

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