2018/01/19

続・文豪(仮)


・司書がなんやかんや花賀瀬先生になった

この図書館で一番練度が高いのはさとはるせんせである。それもそうで一番に来た彼を私が連れ回したからなのだけど、私が業務を先生に引き継ぐ傍、さとはるせんせに潜書を学ばなければならない。この前は有魂書に潜り、さとはる先生を見つけた。二人存在するのか?と思ったら宝石みたいなやつになってしまったけど。ちなみに私クビ説が流れてるらしいからめちゃくちゃ心配されてる。菊池さんとかお捻りくれる。ありがたくもらっとこ!
「先生ー、私の本どこですかー」
そう言って今日は森先生が助手な花賀瀬先生を訪ねてみる。有碍書に潜るにあたり、本が必要になったのだ。ああ、これだね、と渡された本はしっくりくる。とても。なんの話?と聞いたら児童小説に近いんじゃないかな?と言われた。
「君の作品はタチが悪いんだよ。児童文学と純文学のちょうど間なんだ。だから、評価が分かれる」
「ふぅん」
「全く君は一度書いた話には見向きもしないね」
「終わっちゃった話だからね。登場人物はきっとお話の中で幸せに暮らすでしょう」
そう言って本を受け取れば、さとはるせんせが文豪引き連れてやってきた。
「さとはるせんせー、貰ってきた」
そう本をブンブンする。本をどうやって武器にすんの。
「ナマエ?」
「ナマエがなんでいるんだ?」
「わー、ぼっさんとカミサマだ。ガチメンツだ」
「あー、説明は、後でいいですか?ややこしいんです」
「どうするのかさっぱり分からん」
そう言って本を見る。
「こっちじゃ武器にならないぞ」
「なんだ」
「は?ちょっと待て」
「苗字くん、気をつけるんだよ、ちょっとでも傷ついたら帰ってくるんだ、いいね?」
「治るけど気をつけますー」
「ちょっと待て、」
志賀先生の制止も虚しく、光が包んで世界が変わる。さとはるせんせの腕を咄嗟に掴んだのは仕方がない。ぽん、と頭を撫でられて、目を開いた。ゆっくりと周りを見渡せば違う気配が広がっている。見たことのないレトロな街並みである。牧水さんが感心したように口を開いた。
「ははぁ、お前さんクビになったと思ったら、そういうことか」
「苗字は文豪だったってことでいいんだな?佐藤」
そう頭を抱えて告げた志賀先生に、佐藤先生は苦笑いをする。
「すいません、この間判明しまして」
「私が死んだ自覚なかったからさー、でも考えたらそうなんですよね、文豪なしで偶に私誰かを連れてきたでしょ?」
「言われて見たらそうだな……でも、お前、俺たちの時代じゃないだろ?」
「死んだのは今から十数年前って聞いたよ」
そう言って、本を開いて見る。本が光って武器――銃剣になった。
「なんという孫市スタイル」
「お前、めちゃくちゃタチ悪い武器じゃねぇか」
「銃の扱いわからない」
「勝手に装填されるぞ。でも、銃ってことは歌人か詩人ってことか?」
「私自分で勝手に鞭かなぁって思ってたんだけどなぁ。先生はタチが悪い文学って言ってたし」
「タチが悪い文学?」
そう首を傾げたさとはるせんせと志賀先生。
「児童文学と純文学の間って言われた。そこって大衆小説じゃない?って思ったんだけど」
「だからそんなタチ悪い形なんじゃねえか?新見と宮沢は銃だろ?」
「まぁ、無理はするなよ」
「これで、お前さんが弓なら誰が教えてたんだろうな」
「弓は経験あるから大丈夫大丈夫」

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「コイツ本気でタチ悪いぞ」
潜書から帰ってきて、志賀先生が偶々そこにいた芥川さんと菊池さんに言った。
「タチが悪い?」
「初段は銃による射撃なんだよ、そのあと銃持ってるやつなら行動まで隙あるだろ?」
「ええ、?」
「コイツそれがないんだよ。銃の先についた刃で斬りかかるから」
「は?」
「あっはっはー、志賀先生、二人は私が潜書できるって知らないから、混乱するだけだよ」
「お前は反省しろ。敵に突っ込みすぎだ」
おっと、さとはる先生と志賀先生同時に言われてしまった。でも銃剣のメリットってそこだと思わないか?私は思う。芥川さんが目をパチリと瞬いて首をかしげる。
「苗字さんがクビになったのは、彼女が此方側だったから、という解釈でいいんですか?」
「ああ、構わないぜ。俺も驚いたんだよ」
「お捻りは返したくないよ」
「別に返さなくていいぞ。そうか、でも、ホッとした」
「甘やかしてくれる菊池さんスキー。あ、本先生に返してくる」
「お前さんのだろう?」
「先生のだよ?」
「いや、それはお前が持っとくものだから返さなくていい」
ポンポンと頭を撫でたさとはるせんせに「はーい」と返事する。さとはるせんせはよろしい、と言った。
「でも読んでみたいね、苗字さんの小説」
「それは確かにな」
「これは死守するべきだ……」
「図書館に並んでないのか?」
「先生が出版社に圧力かけて出版取りやめたから一冊しかないらしいよ」
「ソレが、それか」
じっと見つめられたけどスルーして逃げることにする。

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本日、何故か、さとはるせんせがよそよそしい。なんでや工藤?とぼやいたら、オダサクさんが「そやなぁ、ナマエの破廉恥な夢でも見たんちゃう?」と告げた。さとはるせんせがピクリと動いた。
「破廉恥な夢?」
「ほら、最近、よう怪我してナマエ服はだけさせとるやん?」
「あぁー」
「こう、男子としたらムラっとくるんやわぁ。ぼろぼろな姿がまた加虐心そそるし」
「なに?エスっ気あるの?むしろなに私なんかにムラっとしてんの?」
「え?」
「え?」
そうオダサクさんと見つめ合う。なに不思議そうな顔してるんだこの人。さとはるせんせが本を勢いよく閉じた。眉間のシワが深いし、青筋が立っている気がする。
「オダサク、いい加減にしろ」
「そうだそうだー、さとはるせんせが私にそうなるわけないだろー?外に出たら逆ナンされるお方だぞ!」
「ナマエもいい加減にしろ」
飛び火!と騒ごうとすれば、怒っているさとはるせんせにオダサクさんがニヤリと笑った。
「名前呼びになっとんで?佐藤せんせ?」
その指摘に、さとはるせんせが目を開いて頭を抱える。話をすり替えるな、と怒った彼からは怖さはなくなっていた。

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「友人に会いたいと思わないのかい?」
白秋先生にそう尋ねられて、思わないよ、と言ったら意外そうな目で見られた。
「友達がいないっていうわけじゃないんですよ。でも、私は死んだじゃないですか」
「僕らもね」
「あなた達は時間が経ってる。私はたったの十数年です。知り合いも親も生きてる。でも、あっちゃいけない」
そう言って原稿用紙を太陽に透かす。ぼんやりと見えた文字を目で追った。
「死んだ人に会えないのは世の理でしょう?本来なら私は先生にもあっちゃいけないんですよ。人は蘇らないから。そもそも、私は生前と同じ人物かはわかりませんね」
「これは驚いたね、君は意外と物事を考える人物らしい」
「これでも色々考え出るんですよ、晩御飯のおかずとか」
そう言って原稿用紙をおろす。
「そう……ところでなにをしているんだい?」
「見えないインクもらったんで、裸の王様になってないか確認してます。先生に提出するために。あの人最近課題出してくるんですよ、面倒くさいから、反抗しようって」
正直に言ったらため息つかれた。解せぬ。



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