2019/01/25
Q&A??
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七海さんと同室である。いやまぁ、親子だがらいいんだけれど。とりあえず仕掛けを探していれば、本棚に違和感を覚える。枠が二重なのだ。……またこの部屋か、という話は置いておいて。七海さんが後ろに寄ってきたらしい。
「何してんだ」
「これ、梯子になるなって」
そう言いつつ二重に重なった部分を引っ張り出せばそれは梯子になる。
「梯子?なんでまたこんなものが」
「上に何かあるんじゃないですか?さぁさ、あがったあがった」
「ったく、お前はホントに人使いがあらいぜ」
「七海さんだから」
ニコニコしながらそう言えば、「はいはい俺は体がいいパシリですよ」と言いながら梯子に上がった。
「模様が微妙にずれてるな……隠し部屋か?」
押したり引いたりする彼を見上げつつ口を開く。
「七海さん、恋の駆け引き知ってますか」
「あぁ?押してダメなら引いてみろ」
「それでもダメなら横にスライド!」
そう親指を立てながら言えば彼はその通りだ思いっきりスライドさせたらしい。振ってきた埃がダイレクトに積もった彼を見てケラケラ笑う。
「お前な……」
「中なにがあります?」
「ちょっと待ってろよ」
そう言って登りきった彼は上からこちらに手を伸ばした。登ってこいということらしい。その手に捕まりつつ上に上がれば、子供のおもちゃがいくつかあった。なるほど、子供部屋の隠れ家的な場所だろうか。周りを眺めている七海さんをよそに、手袋をはめてその奥にあった机の引き出しを開けていれば、古い写真が出てきた。間違いなくメイドの桐枝さんである。さて、こちらの手はほとんど全て失われたわけだ。これからどう動くべきか、と幸せそうな家族を見つめて目を伏せた。
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先に釘をさすべきか、と桐枝さんに声を掛けようとすれば、参加する気がないなら部屋に篭っとけ!だなんてあんまりな事を言われて少しむっとする。とりあえず落ち着けと頭を抱える。まぁ、二度目のビデオメッセージだ。内容は腹がたつ内容である。まぁ、それぞれがそれぞれお金がいるのだというような。昔の話ならば、両親はお金がないから「私達」を置いていったのだと公開処刑されたっけ。神明さんにはしばらく私の小説の評論をかいてもらい、人命が関わる幽月さんにはもう映画化やドラマ化が決まっている小説の権利を、宝田さんなかはアニメシリーズ化が決まっている小説の権利を……あとの二人はどうしたものかな。他人の会社の肩代わりなんて無理だし……猟犬と彼の大学費ぐらいなら検討はつくかもしれない、でも事故は事故だし……小説の枠を当てても盗作して作り上げたのなら救いようがない。いや、推理以外の枠で書いたら彼女はいけるかもしれない。
「飯塚龍一くんーーいや、飯塚アキくん、君にはもっとも不名誉な肩書きがあるね」
不意に聞こえた声にそちらを見る。どうやら私の番が回ってきたらしい。
「君にまつわる話は沢山だ。調べていて面白かったよ、特にーー君が現れた場所で必ず事件が起こるというジンクスは。巷では探偵だなんだと騒がれるが、君はただの死神ではないか!いいや、死神につかれているようだ!」
嘲笑うような内容にただただ冷静になるように言い聞かせる。
「君についた死神君が最初に手をかけたのは実の両親だと話を聞いたよ。さて、君は恐らく父親と偽る誰かをつれてきているね」
ニヤニヤと。
「金さえあれば、君の両親は戻ってくるんじゃないか?」
そんなことなど、ないのに。金さえあれば戻ってくるのなら、あの二人は、とっくにーー。
彼は哀れみを込めて口を開く。
「ーー金さえあれば、君の両親に成ってくれる人など沢山いるだろうに」
ふつり、ふつり、と。中が冷えていく。ロウソクが消えるように。あぁ、我慢ならないな、と思った時にはからだは勝手に動くもので。
「是非、君には家族がいる幸せを手に入れてほしいものだよ、飯塚アキくんーーいいや、飯塚龍一くん」
ガシャン、と音を立てて壊れたのはテレビとカップだ。砂嵐となったそれをただただ見つめる。アキ、と七海さんが呼ぶ。それを聞いてああやってしまったな、と思うがからだは動きそうもない。
「へぇ、じゃあ、こいつは金で雇ったパパってこと?」
そうニヤついた視線を向けた周りに、またふつりふつりと。落ち着け、と頭で念じる。これだから大人は、と心がいう。落ち着け、と、何度も念じる。これだから大人は嫌いなのだ、と心がいう。もう一度、アキ、と呼んだ七海さんは、落ち着け、と私を諭すように私の視線に合わせて屈んで口を開く。
「大丈夫だ、お前の両親は帰ってくる。お前が言ったんだろ、今はちょっと会えないだけでもうすぐ会いにきてくれるって」
真っ直ぐな目でそう言った彼に、息を吐く。そして、笑う。クスクス笑う。
「ふふ、心配しちゃいました?」
「……」
「こんなこと、平気ですよ。言われ慣れてます。あんなクソジジイの遺産なんてものを貰ってもあの人たちは来ないのに、何ボケたことをいってるんですかね、あの盗作クソジジイ」
そうプンスカと怒る振りをして執事さんと弁護士さんに「テレビとカップ代は払います!」と頭を下げておいた。
「まて、盗作だって?先生が?まさか!」
「私ね、なーんかきな臭いと思いまして、あのクソジジイを調べたんですよね。そしたら出るわ出るわ、色んなこと」
ケラケラと笑いながらソファにかける。さて、これからは真面目な話をしなければなるまい。チラリと七海さんを見上げれば頷かれたので私は真面目な顔で彼らを見た。
「さて、龍一さん、窓から外に出て時計塔に登り時計の時刻を10時に設定して金を鳴らしてきてください」
「ーーったく、お前はまた俺に無茶を言う。あるんだな?」
「恐らくね」
そう言って窓から外に出たら彼を見る。目を白黒させているDDSには悪いが。
「おい!やっぱりお前だけが有利なんじゃないか!」
「あんまり吠えないでください。考えてることから除外しますよ」
そうはっきりと告げる。程なくして鐘が鳴り七海さんが紙を持ってはいってきた。弁護士にそれを渡した彼が目を見開いた。相続はこの紙を見つけた人物、私を含めて六人か全員がいなくなっていればこの謎を解いた人物に譲渡する、という内容だ。
「では、飯塚さんにこの遺産は相続ということですね」
「でも、アキちゃんは遺産相続をしたくないんでしょう?」
「……DDSの人たちは暗号がどうしてそうなったか考えたらいいですよ。ここからは長いお話ですから」
DDSの生徒にニコリと笑ってから、彼らを見る。
「まず、神明さん」
「なんだ」
「しばらく私の小説のあとがきに評論もしくは解説をお願いします。これで慰謝料の分は大丈夫でしょう」
「……!」
「幽月さん、貴方には『少年探偵シリーズ』の権利を譲渡致します。映画化やドラマ化が日本だけでなく海外でも決まってますので弟さんの医療費は当分持ちます。宝田さんには日本でアニメ展開されている『オフ探偵』シリーズの権利を同じく譲渡します。人命はなによりも優先すべきものですから」
「っ!ありがとう!!」
「……私としてはお金が欲しかったから良かったけれど、遺産は譲渡してくれないってことね。なら、あの二人のどちらか、かしら」
「いいえ。申し訳ありませんが、私は他人の事故や会社経営に首を突っ込めるほどではありません。なので梅園さんには文芸誌の枠を数枠。恐らく貴方は推理小説にこだわるよりも、主婦が好きそうな男女の関係を描いた小説の方があうと思うんです。ね?神明さん、宝田さん」
「ふん、そっちの方がたしかにましだな」
「えぇ、梅園さんは男女の機微な感情を書くのが上手いですからね。そちらの方がたしかに映えるでしょう。こちらも掛け合ってみるよ」
「……じゃあ、」
「犬飼さんは申し訳ありません。貴方一人の大学までの学費の肩代わりまでしかできなさそうです。猟犬に関しては知人の獣医が広い牧場を経営しているのですが、そちらに預けるというのはどうでしょうか?夏休みにアルバイトに行けば会えますし……」
眉尻を下げてそういう。いや、それでも十分ありがたいよ、と彼は息を吐いた。
「では、遺産は誰に?」
「本来ならばこの屋敷を手に入れるはずだった方ーー桐江想子さんに」
そう彼女を見る。彼女は目を大きくみひらいた。
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「さて、先にみなさんには面白いものをお見せしましょうか」
そう笑って鞄の中から彼の遺稿を取り出す。
「なんですか、これ」
「露西亜館、新たなる殺人ーー山之内恒星の遺稿か!?」
「さて、あらかた内容をお話ししまょう。遺産相続が誰か集められた五人の弦楽器楽団と一人のピアノ伴奏者、そしてそこに居合わせたメイドが一人。五人が醜い争いを繰り広げ、ピアノ伴奏者は見て見ぬ振りをしーーそして遺産相続者は誰もいなくなった!残ったのはただ一人!最後の最後で謎を解いたメイドだけ!」
戯けたようにそう告げる。彼らはピシッとかたまった。今まで静観していた賢一さんが冊子を流し読みしたらしい。
「登場人物は全員の名前をもじってありますね。なるほど、貴方はこうなることを止めに来たわけだ」
「え?」
「この館が山之内恒星に渡る前、彼の知人である貿易商がここに住んでいたことは調べがついています。そして、彼が推理小説を書こうとしていたこともね。彼は事故で亡くなった後、露西亜館が出版されています」
「まさか、先生はその人の案を?」
「ええ。では、もしその人の子供がいたら。その子供が自分だとすれば、多くの人がこう思うでしょう」
ーーその富を、名声を得るのは父親や自分だったのかもしれないし。
「まぁ、私は人の心のうちなんてわかりません。ただ、山之内氏の手のひらで踊らされるなんてまっぴらゴメンです。それに現実がそうなるかわからないにしろ、止めれるものがあるならそれは止めるべきだ」
そう言って目を伏せる。
「でも、桐江さんだったっていう証拠はあるの?」
「私の部屋にある隠し部屋から写真を見つけました」
そう言ってさっき見つけた写真を机の上におく。周りが息を飲んだ。
「貴女が隠していった、貴女の写真でしょう?」
写真をみた彼女は目に涙を溜めーーお父さん、お母さん、とその写真を抱き寄せたのである。それをみて周りは驚いたように目を見開いた。
「はい、めでたし、めでたし」
そう笑顔で拍手をする。七海さんは溜め息をついつ私の頭を撫でた。
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「めでたし、めでたし、なわけないよね」
そう言いつつ七海さんに抱きつく。権利云々やらはまた後日弁護士を通してという話にまとめ、Qクラスが無事に暗号を解いた。なんだこの私一人だけ中傷されて終わった感じ。どっと疲れた。
「七海さん、私、傷心です。癒しが欲しいです。クマちゃん、某夢の国の猫ちゃんのぬいぐるみでもいいですよ」
「俺に買って来いってか。俺は忙しいんだ、他のやつと行けばいいだろ」
その返答にムーっとしながら彼を見上げる。飯塚さん、と後ろから呼びかけられて振り向いた先には賢一さんである。
「こんにちは、賢一さん」
「こんにちは……って、さっきも挨拶したけどね。大丈夫かい?」
「大丈夫とは?」
「疲れてそうだったから」
そう私を気遣った彼に、大丈夫ですよ、と苦笑いする。後ろで七海さんがなんかぼやいたが無視をする。それならいいんだけど。そう頬をかいた彼は幽月さんに呼ばれたらしく、じゃあ、と頭を下げる。七海さんとすれ違う際に、まさかこんな場所で会うとは思わなかったよ、七海光太郎、と少し違う声色で告げた。七海さんが反応したのを見るに彼は何かあるらしい。
「七海さん?」
「……アキ、アイツと知り合いか?」
「うーん、最近知り合った。多分私の好きなものとか熟知してるっぽいから、私に近づ来たかったんだろうなって思ってる」
そう言って彼の背中を眺める。人の良い笑顔でこちらに手を振られたけれど。
「あんまりアイツとかかわるな、いいな」
釘を刺した七海さんに頷いておく。なにやらきな臭いらしい。そのあとキュウくんがかけてきて、DDSの教員が七海さんをロリコンといいかけたのは別の話だ。
==その数日後にやっぱりネコちゃんを持ってくる七海光太郎
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