2019/01/26

Q&A???



あんまり好きな場所ではなかったと覚えている。同窓会と書かれたそれに参加したくないなぁとネコちゃんを抱きかかえる。この頃は七海さんとも会う前で色々と不安定、かつ、黒歴史の時である。……。
「行きたくないな〜」
そう言ってネコちゃんをもう一度抱きかかえた。

ということで、気が進まないままやってきたわけである。変わらない外観に、帰ってしまおうかと踵を返そうとすれば、あれ?アキさん?と声がかかった。そちらを見ればキュウくん達である。
「キュウくん?なんでこんな場所に」
「それはこっちの台詞だよ!なんでこんな場所に!って、そっか、メグがアキさんと会った、って言ってたのはここだったのか……」
そうぼやいた彼にピシリと固まる。まさか。
「まさか、メグちゃん、ここ出身なの?」
「うん!」
「……うわぁ」
頭を抱えて目を伏せる。もう帰りたい。むしろ海外にいたい。ぐるぐると考えていれば、背中をポンっと押されて振り向いた。そこにいたのは水樹さんである。
「久しぶりね、アキちゃん。綺麗になったわね」
そう笑んだ彼女に首をかしげる。水樹さんとはそこまで久しぶり、ではないのだけど、なるほど、と思う。水樹さん、お久しぶりです、とハグをする。ギューと抱きつけば、彼女はあらあらと困ったように笑った。これは違うな。七海さんだな、と理解して少しホッとした。いや、彼がいる=事件が起こる、だろうけれど。
「あ、やっぱりアキさんも来たのね」
そう駆け寄ってきたのはメグちゃんである。
「来たくなかったんですけどね……ほんと、メグちゃんの記憶から私がここにいた時の記憶を消して欲しいくらい」
がっくしと肩を落とす。
「そんなに違うの?」
「うん、かなり違うわ。だから最初かなり驚いたのよ。なんていうかーー」

「飯塚さん、子供っぽくなったね」
その言葉にまたがっくりと肩を下ろす。メグちゃんに引き続き二人目だ。いやいや悪い意味じゃなくて、と首を左右に振った彼らをじとっとみる。
「とっつきやすくなったっていうか……」
「そうそう、すごい大人びてていつも一人だったし……」
再び向いた視線にもう一度項垂れる。つん、と鼻を突いた綺麗な指を眺める。
「何が原因で変わったのかしら?恋とか?」
「そんなんじゃないですよ……」
「またまた〜教えてよ〜」
「……でも、確かに会いました」
そう言いつつ指を逆に向ける。いてて、という彼女に、そのままに口を開く。
「私を信じてくれる人にあったのと、私を守ってくれる人に会いました。私はとてもとても安心しました。多分、だからこうなったんだと思います」
そう唇を尖らせて余計に指を反らせる。ギブギブと言った彼女から手を離した。
「それって、七海先生のこと?」
「……あの人は、テイのいいお手伝いさんです」
その言葉に三人がガクッとしたけれど、誰が本人の前でいうか。

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事件が起きた。サクッと解こうとしたら七海さんにQクラスに任せるように言われたので大人しくしように、また真木先生とやらに注意するように促されて今に至る。謎は全て解けた!わけだけれど、頑張っている彼らを大人しく見ておこう。
そういえば、である。ここにいた時、懐いていたお兄さんがいたな、とふと思い出した。何処か高遠さんにそっくりな彼に、私はホイホイ懐いたのだ。そういえば彼は私をおろそかにはしなかったな、と思う。まぁ、彼はすぐにいなくなってしまったのだけど。
「飯塚さん」
ふと呼ばれた名前にそちらをみる。注意するように言われていた真木さんである。
「君は謎をとかないの?」
「キュウくん達が解けなければ私が解きます。今は新しい話を考えるので忙しいです」
そう左右に首を振ってノートをとじ、さりげなくそこを後にするように立ち上がる。
「貴方はキュウくん達のフォローはいいんですか?」
「ははは、彼らなら大丈夫さ」
「……あんまり下を見てると、足元を掬われますよ」
そこまで言って、ハッとする。これは完璧に余計な一言である。まぁ、そのあとすぐにキュウくん達と合流したのだけれど。

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とりあえずそこからは三人のフォローに周り、探偵団ものもいいな、と思う。まぁ、変装をとった七海さんが団探偵と一緒にズンズンと足音を立ててこちらにきた。
「お前なー!俺のこと、あんな風に思ってたのか!」
「あんな風?」
「テイのいいパシリ!」
「あぁ、お手伝いさんって言いました」
「パシリだろ!」
そう腰に手を当てて私を見下ろし指をさした彼に、むーとする。七海さんから団探偵の方を見た。
「七海さんって変なところで朴念仁だと思いません?」
「はぁ、どこがだ、ど、こ、が!完璧だろ!」
「完璧な人間なんて創作の中しかいませんよ……私が言えるのは、私は貴方といると安心するんです」
そう言いつつまた彼の指を反らしていく。
「私は基本、大人を信用も信頼もしていません」
「いでで、」
「私が心の底から信頼してる大人なんて、片手に収まるくらいなんですよ」
ポツリと呟いて、ああいけないな、と首を左右にふる。悪戯っ子のように笑って、七海さんの手を離した。
「なーんてね、七海さんはからかいやすい人ナンバー1ですよ。これからも是非私を楽しませてください」
そう言いつつ伸びをする。
「さて、私は帰って原稿の続きをします。団探偵もお元気で」
そうぺこりと頭を下げる。彼は「飯塚さん」と声をかけた。
「……これからも七海くんを使ってやってくれ」
「団先生!?」
「わかりました!使います!」
ガッツポーズをすれば七海さんが項垂れた。団先生は笑っていたけれど。それを見てまた手を振る。多分見抜かれたな、と思いながら私は森を抜けた。

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「喧嘩を売られました」
そうDDSで七海さんに訴えてみる。職員室的な場所である。七海さんが大きく溜め息をついた。
「お前、俺を暇人だと勘違いしてないか?」
「別に七海さんじゃなくても、いいんですけどね、」
ぽこぽこと怒りながら日本の新聞を並べる。最近続いている不可思議な殺人事件の記事である。近くにいた真木さんーーどうやら彼は本物らしいーーと怖い人がこちらをみた。
「最近報道されてる事件だな。なんでこれがお前に喧嘩売ってることになるんだ?」
そう問いかけた彼に、ムーとしながら口を開く。
「このトリック、私が考えた奴です」
「……おい、自首するなら警察だぞ」
「ちーがーいーまーすー!この朴念仁!今の私がやるならもっと完璧な計画立てます!」
ぽこぽこと七海光太郎を叩く。なんだこいつ。もう呼び捨てでいいのでは。今の?と反応した怖い顔をした人物に頷く。
「昔、私が小さい時、親が私の書いたトリックノート売ったんです!全部で五冊!手元にないのは七冊ですけど!売られたのは五冊です!」
「おい、初耳だぞ」
「そりゃあ言ってませんもん。でも、三冊は自力で回収したんですよ!」
そう言いつつ七海さんを未だに叩いていれば手を掴まれた。御用である。ちなみにそれを元に書いたのが推理作家の再推理シリーズなのであるけれど、それはまぁ置いておいて。
「大変だったんですからね!海外に売り飛ばされてるし!そのトリックノートを純粋に持ってるならまだしも、再現する輩が現れるし!証拠品として押収処分で安心したら警察がそれみて犯罪やるから自分で回収するしかないし!」
「……この事件はそのトリックノートを元にして起こされたということかい?」
そう尋ねた真木さんに頷く。
「トリックノートの五冊のうち、青い手帳のものだと思うんです。国立能力研究所に行く前に書いた奴です」
「……君がその当時書いた、ということは、容赦がない奴だね」
さらりと言った真木さんに固まる。え、どうしてこの人知ってるの。七海さんを伺うように見上げれば、七海さんは「あー、真木さんは設立に関わった人だから」という返答をいただいた。
「あぁ、気にしないで。君が今のように誰かに甘えたりできるようになったことを僕は嬉しく思っているんだ。それも七海くんのような人にね」
「俺はテイのいいパシリですよ」
そうぼやいた七海さんに、怖い顔の人がこちらを見た。
「で?」
「あ、ノート!ノート、取り返してください!これ以上犯罪が起きる前に!」
「推理小説用のトリックノートならお前のことだし、何処かで崩してるだろ?ボロが出そうな気がするけどなぁ」
バッサリとそう告げた七海さんに違うのだ、と手をふりほどきもう一度ぽこぽこする。
「今の私ならね!探偵役が必要だから!どこかでトリックをね!崩すんですよ!でもね!昔のね!私はね!違うんです!周りに!悪意のある!というか!悪意しかない!大人しか!いなかったの!だから!完璧な!完全犯罪のトリックを!作ってたの!大人にいわれて!作ってたの!」
ぽこぽこと大人しく殴られている七海さんに、むっとしたまま彼を見上げる。
「事の重要性わかった!?ただでさえ、七海さんがうんうんうんうん悩んでるトリックが!もっと、容赦がないの!だから、その人がミスした場所を細かく繋げて犯人を考えるしかないの!完璧に実行されたら終わりなの!まぁ!完璧そのままとか小説じゃないんだから、無理なんだけど!」
つん、と、彼から顔をそらす。こちらは必死である。チラリと七海さんを見れば随分と真面目な顔をしている。真木さんがこちらを見た。
「……そのノートにはいくつトリックが?」
「たくさん載せてますが、今回抜粋されてるのは5つからなる一連の事件だと思います。トリックノート、分解されて持ってる可能性もあるので」
「今起こっている事件は3件……あと2件起きるか……DDCを動かすか?」
「ダメ!」
と、声をあげて怖い人がこちらを見たので固まる。なんで?と尋ねたその人たちに口を開く。
「この一連の事件の副題、名探偵連続殺人事件だから、ダメ……です!」
「お前、それ、俺にもちかけたってことは、俺が名探偵じゃないって言いたいのか」
「七海さんは死ななさそうだから……」
しゅん、としながらそう言ってみる。まぁ、確かにと頷いた彼らに七海さんは怒ったけれど。
「まぁ、簡単にDDCの探偵はしなねぇよ、安心しろ」
ぼん、と私の頭を撫でた七海さんにもう一度頷く。それで、安心、したのだけれど。

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あのあと結局団探偵がやってきて私が再度事のあらましを話す。報酬はトリックノートである。うむ、まぁ、DDSならば変なことには使わないだろう。ぶっちゃけトリックは微かに覚えていたりする。基本は私は奇術師寄りのトリックを使うから、その手はわかりやすい気がするのだけれど。黒板に部屋の状況、それに合わせて数式を書いていく。ついでに何十人いる容疑者も弾いていく。そしてしばらく黒板を見つめた。あれがああでこれがああでそれを満たすのは誰だ。些細なミスはなんだ。
「あー、やっぱり、犯人は規定の体重以上だな?」
「は?」
「完全な完璧な犯罪をするには全てを管理する必要があるんです、七海さん。これは多分犯人の体重が幼少の私が考えるより重かった。だから、物が倒れた」
「はぁ、たしかにこの数式通りに行けば物は倒れないね」
聞こえてきた声に肩を跳ねさせて後ろを向く。キュウクラスと知らない人がいる。隣でああだこうだ口を出していた七海さんのそばにまでかけて、背中に隠れる。誰ですか、あの人は、と言えば、彼は「はじめまして、飯塚龍一くん?」と笑った。
「僕はドクタードクロこと鬼首独郎。君がいると聞いてね、やってきたら黒板に数式が並んでいたから眺めてたんだ。まぁ!先に、この数式通りに行けば要件を満たす人を弾こう」
「なんでまた数式なんて」
「私の作るトリックの80%は数式化学式の応用です。奇術師のトリックがそうであるように」
「あとの20%がきになるねぇ」
「残りは見せかけです。そう『見える』だけ。見てる人の勘違い。数式の事件が三つ続いてるってことは、次は『見せかけ』の事件がきますね。……というよりは」
「気づいていないだけで起こってる可能性もある、か」
団探偵の言葉に頷く。わかっていないだけで、そう見えただけで、もう事件が起こってる可能性はある。最後の一つはなんだ。おそらくこうなって仕舞えば、最後の一つは高遠さんの影響を受けた事件で締めくくるはずである。
「最後の一つの場所にかけてみるしかありません。だいたい、最後の一つができる場所は限られます」
「どんなトリックだったか覚えてるのか」
「あまり、はっきりとは。ただ、青のトリックノートは水に関する物が多いので、どういうものを組み立てたかは大体わかります。今回の場合、『溺れる人魚』です」
「溺れる人魚?」
「最後は女性でしょう。おそらくは綺麗な」
「人魚……海の中か?」
「いいえ、最後の凝ったものは見る人がいて初めて完成するんです。見られなければ意味がない。見る人がいない絵画を誰も評価しないでしょう?それと同じような考えだとは思うんですよね。だから、答えとしては水槽だと思います。事件が起きている場所を考えれば、水槽があるのは二つ」
「水族館とホテルか」

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こぽり、と、空気の泡が浮かんで行く。あーあ、せっかく七海さんと水族館デート(正しくは捜査)をしていたのに。まさか自分が襲われるとは、不覚である。まぁ、一応、私も探偵の一人として数えられるのだから、そうなるだろう。まさか自分のトリックで死ぬとは。もう一度、こぽり、と、空気の泡が浮かび、魚がそれを蹴散らしていく。ガラス越しに誰かが見えたけれど、苦しくて、何も見えない。水中の美しさ、から、苦しさが上回る。もがいたところで足についたそれは取れないだろう。はや合点した犯人のミスだ。
ーーこのまま、眠ってしまえば、記憶の中で恋い焦がれた人に、会えるのか、なんて。
最後の息がこぽり、と、浮かぶ。誰かが私を引っ張った気がする。緩やかに感じる浮遊感、から、上昇する感覚。誰かが私の名前を叫んだけれど、それは。


昔の夢だ。私が昔に囚われていた頃の夢だ。最初は誰だっただろう。確か、叔母にあたる人だ。彼は私のトリックノートを見て面白いね、といった。そう、それが始まり。私の面倒をよく見ていた叔母はともかく、両親は私に関心がなかったようだった。何をしようが両親は気にしなかったのである。しかし、そのノートをみて両親の態度は大きく変わることになった。
両親は私の作ったトリックノートをつかい、犯罪を企てーーそして仲間にそのトリックノートを売りさばいたのである。
もうかけないよ。
そう私は小さくなった視線で両親を見上げる。両親は目をまん丸くして、私を見下ろす。困った子。どうしてそんなこと言うの。彼らの言葉に私は口を開く。
叔父さん、いなくなっちゃったね。
そうして歌を口ずさむ。叔母さんを殺したトリックの歌を。彼らは目を見開いて私を見た。
お父さんとお母さんも、いつかいなくなっちゃうね。
私はただ二人を見る。二人は顔を真っ青にして、私の手を引くと私を研究所に預けて何処かに行った。
そこで、切り替わる。目の前には少年がいる。彼は優しかった。私がついていっても何も起こることなんかなかったし、私を不気味だと言うこともなかった。何をしてるんだい、アキ。そう告げる彼はとても夢の中のあの人に似ていた。だから、安心した、し、彼が出ていくとき、行かないで、と泣いたのも記憶している。迎えに来るよ、と彼は私を撫でて私はノートを一冊渡した。殺人の方法が書かれたノートではなく、なんて事のない奇術のトリックが書かれたノートだった。でも、約束を破ったのは私だ。私は叔母さんの旦那さん、の、弟である男性に引きとられたのだから。
そこからだ。彼は私に告げた。私が書いたトリックノートを模倣した事件が沢山起こっていて、世界中の人が困っているのだと。全ての推理小説に解答がつくように、このおかしな事件にも解答をつけなければならないと。
アキ、いいかい。君の空想はある一定の人間を毒してしまうんだ。だから、次、作るときは必ず欠点を入れるんだ、いいね。
そう、だから、それからは。
ーーガキンチョ。チビ。チビ助。お澄ましちゃん。お転婆娘。
不意に振ってきた声に周りを見る。けほり、と咳が出て何かを吐き出す。息、が、できる感覚がする。瞼に力が入る。明るい。ゆるりとそちらを見れば七海さんがこちらを見下ろしていた。
「!息を吹き返した。もうすぐ救急車がくるからな!」
見えた七海さんに安心して、また目を伏せる。寝るな!と叫ばれて揺すられたけれど。救急隊がやって来る音がする。回らない頭のまま、私は担架に乗せられてーー意識はまた落ちた。

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緊張が、切れたのだと思う。目が覚めてみれば解決したらしい。どうやらDDCの活躍により犯人は捕まりノートの一部も回収されたらしい。それをなんとなく聞いて、恐らく緊張が一気に。何も死にかけたのは初めてではない。でも、確かに最近なかったそれである。だから、七海さんを見た瞬間に安心してポロポロと泣いてしまったのだと思うのだ。ぬいぐるみを抱えた彼は目をまん丸くして私を見た。
「おいおいおい、なんで泣くんだ!俺が来ただけだろ!イルカじゃなくて、シャチだったか!?」
そうぬいぐるみをもってきた彼に首を左右にふる。子供が大人に甘えるように彼に手を伸ばせば彼は少し戸惑ったように葛藤したようにこちらを見下ろした。ぬいぐるみを私に押し付けると彼はベッドの側に座る。緩やかに髪を撫でた彼にあやして欲しいのだと首をふる。彼は深いため息をついて、口を開く。
「ほんっとお前は俺が好きだねぇ」
そう抱き寄せた彼の、匂いが、少し違うことに気づいて彼を見上げる。口角をあげた彼は七海さんじゃない。不意にシャラリと音がしてそちらを見る。ぶら下がったペンダントに、耳元で声が聞こえる。
「さぁ、アキ。今回の事件のことなんて、忘れてしまおう」
おやすみなさい。
そんな優しい声が聞こえて、目を伏せる。おやすみなさい、と小さく呟いた。

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飯塚姉弟関連 

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