2019/02/14
大神妹と劇団没 バージョン2
・大神妹ちゃんと奏くんの能力引き継ぎ転生トリップ
・むしろ奏くんと妹ちゃんは従兄弟あたりで巴里と紐育も行った
・大神さん達がいないものの似たような劇団/楽団はある模様
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そもそも、私がここにやってきたのは流れに近い。クラスメイトの咲夜くんの舞台を見に行ってそのまま海外にいる不在がちな両親に許可を得てここに住みーー経理やら雑務をこなしているのだ。そうこうしているうちに、時間が結構たったわけである。手元にあるのは楽譜だ。これが台本ならまだ理解できるのだけれど、楽譜である。文化祭の時に発表しましょうよ!だなんて両手を叩いて告げた音楽の先生を恨めしく思った。うちのクラスは喫茶店だったというのに。がっくりと肩を落として楽譜を見つめる。オタマジャクシを辿ればそれはメロディーとなって頭に降り注いだ。談話室にやってきた稽古終わりの監督さんに、帰りが少し遅くなるだろうことを告げれば心配されたけれど、大丈夫だと笑っておいた。……奏くんに見てもらおう。
この世界には兄達はいないらしい。同じような劇団はあるけれどそこには兄達はいなかった。誰かに会えることを期待して入った私が落胆する羽目になったのはいい思い出である。別に演劇が嫌なわけではない。でも、そこにあるギスギスしたもの、あるいは陰湿なものが嫌で辞めてしまった。恐らく彼彼女らは私がいなくなったことで清々しただろう。ぽっと出の私が娘役を掻っ攫ってしまったらそりゃあ昔からいた人は面白くないだろう。その実、彼彼女らと変わらないくらい歌劇をこなしているのだけれど。当たり前ではあるが、兄達がいないので加山さんもいない。そもそも、私と奏くんが異質なのだろう。それをお互い口にしないだけで。
お稽古から帰ってきたら、何やら賑やかである。何だろうか、とそちらを見ればどうやら成人してるメンバーがお酒を飲んでいるらしい。監督さんが酔いつぶれてなければいいのだけれど。ただいまかえりました、と声をかければ視線がこちらに向く。う、と固まっていれば父親よりも父親らしい左京さんが「遅い」と告げた。時計を見れば10時である。ああもうこんな時間だったのか、と思う。奏くんは音楽の先生よりもスパルタだ。まだ学生だというのに小さな楽団を率いることになった彼、またその弱小楽団が成長しているのを見ると彼の手腕がわかるだろう。まぁ、彼らの練習もあるので必然的に私の帰りは遅くなってしまうわけだ。私は苦笑いして、ごめんなさい、とだけ告げておく。心配そうにこちらを見た監督さんに、従兄弟のお兄さんに会いに行ってただけですよ、と言えば彼女は目を瞬いたのだけれど。
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あぁ、これは目に見える悪意だなぁ、と思う。見えないにしろ見えるにしろ悪意が嫌で逃げてきたというのに、どこにでもそういうものはあるのだ。前、に、そういうものに直面しなかったのは、周りにそういう人がいなかったことに加え、加山さんが見えないように誘導してくれていたからだろう。事務仕事?お似合いよ、だなんて見下して笑ったその人に、私は固まる。何かを言い返したいけれど、それは浮かばないままだ。そうして彼女は気にしないまま歩いて行ってしまった。周りの人が伺うように彼女と私を見比べて、ある人は心配そうに、ある人は優越感に浸って歩いていく。その様子を眺めてから息を吐く。最後の抵抗とばかりにベッと舌を出せば、吹き出す声が聞こえて肩を跳ねあげた。そちらを見れば紬さんである。
「紬さん、いつから」
「ついさっき。助けようと思ったんだけど、最後のを見ると大丈夫そうだね」
「言い返す言葉が思いつかなかったので。紬さんはお仕事の帰りですか?」
「うん、そうなんだ、大神さんは?」
「私も帰りです。今日は食事当番なので」
そう言って二人並んであるく。偶に妹と紹介されるけれどもまぁそれはご愛嬌である。
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あんた、暇人かよ。そうはっきり言った奏くんは強い。ピシリと固まった向こう側に、彼はこんなことしてる暇があれば自主練の一つや二つ、とぼやいた事で金切り声を上げられた。動じない奏くんは流石というか。彼女のいうように、たかだか文化祭、ではある。だが、その認識は危ないと思うのだ。ステージに立つ人として。それがどんな部隊であれ。
「そう言えば、大神さんは音楽の授業の成果発表もするんだよね?」
そうワクワクしながら告げた咲夜くんに、うん、と頷く。周りが成果発表?と首をかしげた。摂津くんが、訳知り顔で「あぁ」と何か告げる。
「そういや大神は毎年なんかやってるよな」
摂津くんの言葉に、ああ彼は見てない方の人かと理解する。まぁ、必ずしも見なければいけないものでもない。監督が首を傾げた。
「何か?」
「音楽の授業の成果発表ですよ。音楽の先生に言われてーーなんやかんやと、嫌いじゃないので毎年してますね」
苦笑いしつつそう答える。皇くんがこちらを見た、
「へぇ、じゃあ、上手いのか」
「はい!大神さんは凄いんですよ!!」
そう力説した咲夜くんに、そんなことないよ、と言いつつなんとかこの流れを断ち切りたいなぁと思う。じゃあ歌ってといいかねられない。そろそろ夕食の支度しないと、と会話と区切り夕飯の支度をする。逃げるに越したことはない。
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中庭でぼーっと読書していれば膝の上に猫が飛び乗った。その姿を眺めながら、口を開く。
「Midnight Not a sound from the pavement」
大人しく撫でられる猫にそのまま歌詞の続きを口ずさむ。ふわふわである。猫はゴロゴロと喉を鳴らしながら私を見上げた。
「You’ll understand what happiness is Look a new day has begun」
歌い終わればぴょんっと膝から退いた猫は机の上に飛び乗るとにゃあと鳴いた。アンコールですか、と問いかければ猫が鳴く。それが面白くてクスクス笑い、口を開く。
「We’ve just been introduced I do not know you well But when the music started Something drew me to your side」
そう口ずさめば口ずさむだけで終わるはずがなくーー。そのまま踊り出してしまうのだけれど。
「Shall we dance? Shall we dance? Shall we dance?」
本来ならばここで男役とぶつかるところである。ぶつかる相手もいないのでそこで歌をやめる。猫は満足したように足にすり寄ってきた。可愛い。君が相手役してくれる?だなんて笑いながら猫の前足を触る。まぁ、にゃあとだけ鳴いて何処かに行ってしまったけれど。さて、そろそろ昼ごはんを用意せねばなるまい。服を一応叩いて部屋の中に入った。
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「大神、」
昼ごはんの準備をしていたら丞さんに呼び止められる。なんだろうか?と首を傾げて、どうされましたか?と尋ねれば彼は私を見下ろした。
「前から思っていたんだが、演劇やったことがあるのか?」
「どうして?」
「さっきの、慣れてそうだったからな」
はっきりと言った彼に動きを止める。み、見てたんですか、といえば頷かれたけれど。がっくしと肩を落とす。こうなっては仕方がない。
「少しだけ、歌劇の方を」
「歌劇……ミュージカルか?」
「はい。高校に入る前なんですけど……ちょっと色々あって」
そう野菜を刻みながらつげる。彼は色々?と眉尻をあげたけれど、それには笑みで返しておいた。
「色々、は、色々です!秘密にしておいてくださいね!」
「どうして?」
「どうしても!です!」
おたまを持ちながらそう言えば、理解できないみたいな表情をされた。まぁ、一つ言うならば。
「……あまりにも悪意が渦巻きすぎてて離れちゃったんですよ」
かき混ぜながら野菜を投入する。丞さんはなんとも言えない顔をした。お皿を出してください、と彼に頼めばああと返事をされた。今日のご飯はスパゲッティだ。
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今年は在校生の前で歌うことになったらしい。まぁ、それがいいだろう。とりあえず独唱をこなして、先生達と話して帰れば咲夜くんが「おかえりなさい!」と出迎えてくれた。そのままその感想を話してくれる彼はありがたい。監督さんが聞きたかったなぁとぼやいたのを聞いて苦笑いしておく。摂津くんが、本当に上手かったんだな、と感心したように告げた。
「へぇ、それは是非とも聞いてみたかったね」
「聞かなくていいです。そんな大層なものではないので」
そう苦笑いして首を左右に振る。ピコン!と太一くんが何かを気づいたらしい。じゃあ、トランプでナマエちゃんが負けたら歌ってください!と言われた。まぁその後トランプ勝負は勝ったので何事もなく……いや、負けた彼らに歌ってもらったのだけれど。
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喧嘩を売られている気がするなぁ、と他人事のように彼らをみる。いや、現に売られているから監督さんや周りは怒ってくれているのだろう。まぁまぁとなだめれば、ナマエちゃんのことっすよ!?と言われてしまったが。でも、まぁ、そのままカンパニーに敵意が向いたのはあまり感心しないというか。
「やめてください、彼らは関係ないでしょう。第一、貴女は何が気に入らないのですか。貴女は私が退いて望むものを手に入れたでしょう」
そう淡々とつげる。彼女は目を見開いて、側にいた男性が、あーあ、というふうに頭を抱えた。有りっ丈の暴言を吐いた彼女はそのまま人混みに紛れていく。男性はそれを見送った。
「ナマエちゃんは本気で言ってるからある意味タチが悪いんだよなぁ。たしかに、彼女の望んだ地位は手に入れたね」
彼はそう言って言葉を区切り、私を見下ろした。
「でも、君が浴びていた喝采を彼女が浴びれるわけじゃなかった」
「そこは彼女の努力次第でしょう?」
私の言葉に彼は目を瞬いて、笑った。それもそうだ!と告げて彼は監督さんに彼女の無礼を詫びて歩いていく。べっ、とこの前みたいに舌を出せば隣にいた監督さんが私を見下ろしたけれど。
「ナマエちゃんの知り合い?」
「昔ちょっと所属していた場所の人たちです。苦手なんです。もう関係もない私に当り散らせばどうにかなると思ってるんでしょうか」
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没!その2!
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