2018/01/21
明星は春の夜に沈む 一
文豪になったーで遊んだ結果、大衆文学/明星/さとはる先生に心配されてるってなった記念
でも調べたらどうあがいても学生さとはる先生しかないね!ってなった。
→詩人だけど児童文学の先取りをしていた人物。童話作家ともいう。
→やはり男装してた
=
「人の一生は短いものだよ」
そう笑ってみせた女は出会った頃より細くなった手を口元にやってわらってみせる。女は詩人であった。良い詩を書く傍ら、女子供にも読みやすい話を書く女だった。いや、世間には男だと思われているだろう。高潔な女だった。凛とした、しかしながらどこか艶めかしい。元より作品は知っていたが、本人と出会ったのは大学に上がってすぐであった。たまたま、喫茶店で相席となったのが原稿用紙をめくるかの人なのであった。
「そして、その人生の中で幸せな時とは、もっと短い。私の人生は幸せで満たされていたから、普通の人よりもうんと短いのかもしれないね」
女は私の手を取る。細い手が、一回り小さな手が力なく私の手を握った。
「どうか、君が幸せで、長く生きることを私は願うよ」
女は願うようにそう告げて目を伏せた。それが、女と最後に交わした会話であった。
女が死んだとわかった時、学生の身であるがために、女の葬儀に行くこともできず、ただただ途方にくれた私は詩を紡ぐ。人生の節々で、あの女の願うような声が聞こえた。
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「苗字ナマエという。子供の為に文学があってもいいだろう」
そう言って現れたのは、かっちりとした帽子をかぶり、様相に身を包んだ人物だ。少し背が低いその人物は滅多に現れることのない人物だ。現に、こちらに来た彼は一人目である。あ、あ、と細かく声を上げる俺に首をかしげる人物に、そばにいた――というより連れてきた宮沢賢治は「司書さん変わってるから気にしないでいいよ」だなんて言葉を告げる。
「た、た、たくぼくーー!!たかむらさーーん!!はくしゅーーー!!!」
そう叫んだ俺は悪くないはずである。
「如何にも懐かしい顔ぶれだな」
そう可笑しそうに笑った人は苗字ナマエという。今となっては児童文学の先駆けと呼ばれる人物であるが、その前は明星に詩を発表する詩人であった。故に、その人物の付き合いは明星を中心に広がることとなる。
「ナマエじゃねぇか!」
「久しいな、啄木。さっそくだが金を返せ」
「げ、」
「冗談だ、チャラにしてしまっていいさ、死ぬ前の話だからな」
そう石川啄木をつついて笑う苗字ナマエに、白秋さんが「君も変わらないね」と告げた。
「いや、変わったぞ。元気だ、とても。これなら子供と駆け回っても大丈夫だな」
「あぁ、そうだね……そうだったね」
「白秋、そんな面はお前らしくないぞ。般若の顔がお前っぽい」
「君は相変わらず僕を怒らせたいらしいね」
「まさか、そんな」
ははは、と愉快そうに笑った彼に、高村さんが「君は、本当に」とやれやれというように呟く。そして、彼に珍しく悪戯をする子供のようにニヤリと口角を上げた。
「佐藤くんもいるけど会うかい?」
「佐藤?」
「佐藤春夫」
「あぁ、あの坊か。あの坊もいるということは、彼もまた筆者になったというわけか」
そう少し考えた苗字ナマエに、白秋さんが首をかしげる。
「おや?知り合いだったのかい?」
「死ぬ前にできた最後の友人だよ。年下のね」
「また誑かしていないだろうね?」
「あれは、誑しこんでると思うよ」
「はぁ?アンタまたかよ。いい加減にしねーと、勘違い野郎に刺されるぞ」
「君たちの私の認識はどうなってるのか小一時間ほど聴きたいね」
==
「やぁ、坊。久しいな」
盛大なため息をついた佐藤さんにそう言ったナマエさん。佐藤さんは彼を見下ろすと目をまんまると見開いた。奥にいた太宰とオダサクが首をかしげるのが見える。
「苗字、先生?」
「君は相変わらず、肩苦しい。私は作家を名乗ったことはあれど、先生と名乗ったことはない」
そう告げた彼は、佐藤さんを見上げる。
「随分と逞しくなったものだな、坊。青年が男性へと変わったのは喜ばしくもあり、すこし残念な気もするよ」
そんなことを言うナマエさんに、佐藤さんは手を伸ばす。恐る恐る、壊れ物を触るかのように。ナマエさんはその手に手を絡ませると、笑った。
「あいもかわらず、寂しがりのようだな」
「っ、苗字先生!!」
感極まれり、というように佐藤さんが、あの佐藤さんがナマエさんに抱きついた。それを見た明星が「ね、誑しこんでるでしょう?」「あれはもう手遅れだね」「だからアイツはタチが悪いんだよなぁ」と話してるのが聞こえた。
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この人生前何したんだ、と思う。しどろもどろになるぼっさんだったり、太宰の如き佐藤さんであったり。同じぐらいの時代を生きた人とはある程度知り合いらしい。顔が広い。
「君が大衆文学に属しているとは僕は知らなかったよ。てっきり水鉄砲でも持つんじゃないかと思ったけれど」
「それは私の死後を知る白秋達にしかわからない事ではないのかな?恐らく私の書いていた詩よりも後世には子供向けに書いていた小説の方が評価されたんだろう」
そうあんまりにバッサリと告げた彼に、白秋さんはため息をついた。現に、苗字ナマエという人物が生きている間に知り合ったと思われる人物達は彼を詩人とさし、死んだ後を生きた人物達は小説家と指す。今日、彼を評価する言葉は『児童文学の先駆け』、即ち小説家を指すのだ。児童文学は純文学と分け隔てられているから、大衆文学となった、ような感じだろうか。似たような存在に宮沢賢治や新美南吉がいるが。館長が口を開く。
「恐らく貴方が『女性や子供の為に文学があってもいいじゃないか』という趣旨の発言が記録に残っているからじゃないか?」
「誰だその発言を残した奴は」
「高村」
「たーかーむーらー」
「いいじゃないか、書いた時、君はいなかったわけだし」
「君が酒に酔って怒った時の言葉だね。そのあと、女も子供も男と等しく文学の未来を背負うのだから、その布石があってもいいだろう?が続くね」
「忘れてくれ、頼むから」
そう頭を抱えた彼に、まぁ貴方の書いた話を読んだ子供は多いよ、と館長がフォローしたけれど。
「苗字先生、いますか?」
そう顔を覗かせた佐藤さんに、いるよ、とナマエさんが返事をする。
「先生じゃないと言っただろうに。次先生と言ったら話を聞かないよ」
「いや、そんな、無理です、」
「ナマエさんって呼んでごらん?」
そう首を傾げたナマエさんに、佐藤さんが手で口元を隠す。視線を泳がせて、ナマエさん、と声を震わせて告げた。
「はい、よくできましたー」
「はい、よくできましたーじゃねぇよ」
==作品をねつ造する
「あぁ、あの、高嶺の君ですか」
そう告げた谷崎さんに佐藤さんが慌てて口を塞いだ。谷崎さんがひらりとかわしたけど。
「高嶺の君?」
「あの話、未発表のままでしたか?」
「お前はいつか俺の部屋をひっくり返すとは思っていたが、読んだのか」
「ええ、読みました。貴方には珍しい話でしたね、多くが妄想の類ですから」
「語ってくれるな、忘れてくれ」
そう頭を抱えた佐藤さんには悪いが、俺は知ってる。確か、『高嶺の君』は彼の死後に発表された小説の登場人物ではなかろうか。確か、主人公が夢にまで見て欲した女性のあだ名で――終盤に主人公が尊敬する師はその女性の男装した姿だと最後にはわかる、と、いう。たらり、と、冷や汗がでる。ナマエさんが、高嶺の君、のモデルなら。
「ナマエさん、女の人なんですか?」
俺の言葉に、佐藤先生が目を見開いて、頭を抱えた。
「司書が知るってことは……」
「書籍になっている、ということですね」
高値の君、が、現れる話は、題名をつけられていない話だ。いや、後に、井伏鱒二によって『誰そ彼』とつけられた。確か、大学に入学したばかりの主人公がとある喫茶店に入った時、相席することから話は始まる。初対面だというのに弾む会話。話もそこそこに、立ち去った女性客は一枚の原稿用紙を残し、それが作家のものであるとわかった主人公はその女性を探して作家に会いに行くという話だ。度々現れる「高嶺の君」に心奪われた青年が、夢で彼女を欲しながら、その女性の親族であるといい作家と親交を深め――作家が死に落ちる前に、同一人物だと知る、そんな話だ。佐藤さんと谷崎さんの話を聞き、佐藤さんの表情を見るに恐らくは、その主人公が学生時代の佐藤さん本人であり作家と高嶺の君がナマエさんなんだろう。『誰そ彼』の載っている本を図書館から奪取した佐藤さんは顔を覆った。
「頼む、司書、記憶からコレのことは消してくれ」
こうなった佐藤さんは弄りがいがある。普段常識人をしてるだけに。ただ、引き際が大切だが。イカガワシイ妄想じみた夢が書かれたソレ、は、本当に公表する気はなかったのだろう。ご丁寧に自分自身でつけた添削が入っていた、とは、井伏鱒二の言葉である。繰り返し読んだのだろうか。
「貴方も欲望を口に出すべきなんですよ」
「できるかそんなこと、お前じゃああるまいし」
「ナマエさん、やってくれるかもしれませんよ」
「……言えるか」
少しの間、動揺した目。佐藤さんが弱気だ。
「純真な佐藤青年の心は、死期が近かったナマエさんに弄ばれたってことか」
「違う……いや、違わなくないが、違うんだ。俺が勝手に舞い上がったというか……我慢できなかったというか」
「はぁ、抱いたんですか」
谷崎さんの言葉に、佐藤さんは何も答えない。ただ両手で顔を隠した。耳が赤い。谷崎さんがソレをみて、「冗談のつもりでしたが、そうですか」と驚いたように告げた。
==追記はえっちぃからワンクッション
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