2018/01/21

明星は春の夜に沈む 二


・みんなにバレた

「なんで苗字さんの正装がタキシードなんだ」
そう告げた菊池さんに、俺も知らないと言いたい。本人が何処からか調達してきたのだから。タキシードをきこなしたナマエさんは上機嫌で、白秋さんが相変わらずだね、とぼやいていた。
「でたよ、ナマエの意地悪いタキシード姿」
「意地悪いとはなんだ」
「コイツ正装した少年のふりして異国人に声かけまくって、舶来品もらってたんだよ」
「違うぞ、啄木。少年のふりをして外国語を教えてもらっていた。偶に貰っただけだ、舶来品は」
「舶来品?」
「ちょこれいと、やら、ぽすとかあど、やら、さけ、やら、服、やら、タバコ、やら、装飾品」
「僕は良かったよ、タバコのお零れに預かっていたしね」
「装飾品は何を?」
「指輪とか。まぁ、全部他人にあげてしまったけれど」
そう緩やかに笑った彼女に、あげたんですか?と尋ねる。彼女は頷いた。
「自己満足な幸福な王子ごっこさ」
「笑えない冗談だな」
そう眉間にしわを寄せた高村さんは言葉を続ける。
「君は本当に、そう死んだんだから。自分の持っていた財産を全て貧しい人々に差し出してね」
「なに、ただの偽善だよ。どうせ私はいなくなるし、家族もいない。なら未来がある人に差し出した方がいいだろう?」
「お金があれば君は助かったかもしれない」
そう釘を刺した高村さんにナマエさんはやれやれと肩をすくめた。
「正しくは、お金があれば時間が稼げた、だ。人はいつかしぬものだよ、遅かれ早かれ」
「でも、君は早すぎる」
「……らしいよ?啄木」
「俺はお前よりも生きたかんな」
「……君は死ぬ時、言葉さえも紡げなかったみたいだけど、誰に言葉を与えたんだい?」
白秋さんが本をめくりながら告げる。ナマエさんは少し考えて、口を開いた。
「佐藤くんじゃないかな?死ぬ前によく会っていたのは彼だったね。彼が追いかけてきてくれたというか」
「燕じゃないかよ」
「ま、私が幸福な王子と違うのは、燕を死なせなかったコトだね!」
「褒められることではないだろうに」

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「ナマエさんはたくさんお話をしってるね」
そう告げた賢治くんに、そうかな?と首をかしげる。そうだよ、と頷いた彼に、たくさんの人にお話を聞いたからかもしれないね、と答えた。その点では八雲さんと私は似ているのかもしれない。
「私は学校に行ってなかったからね、誰かからあまり教えてもらったことがないのだよ。文字を教わったのも、偶々私を目に止めてくれた人物のおかげだし。家族もいなかったしね」
「家族が?」
「あはは、気づいたら路地にいたんだ。親の顔など覚えていない。必死に生きたね、その時は」
「寂しくなかったの?」
「それが当たり前だったからなぁ。今は、寂しくなってしまうね。たくさんの人に囲まれているから」
そうそっと目を伏せる。

浮かばないので没。でも若い燕のさとはる先生書きたかった



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