2019/03/27

落椿の唄 一


・春司書書けっていう天命があった
・もし他図書館があったらな話で本編数年後
・つまり他図書館のさとはるせんせがいる

「あ、佐藤さん」
くん、と裾を引かれて振り返る。そこにいたのは目の青い少女である。制服ではなく文豪のようなレトロな服に身を包んだ彼女は恐らく他の図書館の司書なんだろう。自分の司書より年若い彼女は俺を見上げて首を傾げた。しかし、すぐに違うと理解したらしい。すいませんとワタワタと手を離してみせるとまた周りを見渡した。ここ、は異質な空間だった。なんたって、司書だけでなく自分が数人いるのだ。恐らく彼女も司書であり、俺と同じ「佐藤春夫」ときたのだろう。こちらの司書といえば、女の子に声を掛けてくる!と爛々と目を輝かせて人混みに消えたが。
「迷子か?」
「……恥ずかしながら」
「別の俺と来た?」
「はい、他の太宰さんに絡まれてしまって」
ああそういうこともなり得るのかと頬を引きつらせる。彼女は探すことを諦めたのか壁際によった。
「佐藤先生の司書さまはどちらに?」
「あぁ、司書友達を作りたいらしい。声を掛けに言ったよ。偉く他人行儀になったな」
「貴方とははじめまして、なので」
妙な言葉であるが納得はできる。これは司書によるが、同じとみなすもの、違う人物とみなすもの、様々だ。それはそうかもしれない。スタートラインは同じだからだ。しかし、その後の違いが些細な人格の変化に繋がるような気がする。例えば太宰である。だれかと和解した太宰もいればそうじゃない太宰もいる。それが顕著に見て取れた。恐らく彼女の「俺」は「和解していない」太宰に泣きつかれたのだ。ちなみにうちに太宰はいないため、未知の世界である。
「佐藤春夫だ。印は朝顔。アンタは?」
「苗字ナマエと申します。印は桜です」
「桜もあるんだな」
「えぇ、一応は」
彼女はそう言って苦笑いした。何かあるのだろうか?と首を傾げていれば、別の俺がやってくる。
「ナマーー司書!」
「佐藤さん、太宰さんはいいんですか?」
「他の司書に任せた。別の俺といたのか」
「話し相手になってくださいました」
そう笑った彼女にそこまで話はしていないんだが、と思うがそういうことにしておいた方がいいのだろう。
「自分に礼を言うのも変な気がするが……ありがとう」
「いいや、俺の方こそ司書を待っている間の話し相手になってもらった」
確かに自分自身と話すのはおかしな感覚だった。彼女は気にしていないのか飄々としているが。
「司書、会議も終わったことだし帰るか」
「ええ、そうですね。では、佐藤先生」
緩やかに頭を下げた彼女にこちらも手をひらりと振っておく。人混みに紛れた彼女に頭を下げておいた。さて、そろそろ司書を探すかと辺りを見渡そうとすれば、案外近くにいたらしい。ニヤニヤと笑いながら近いてきた司書にげんこつを軽く落としてやった。

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図書館、ではなく、人がいない場所である。
佐藤さんが怒っているらしい。そりゃあ、間違えてしまった私は悪い。佐藤さんがたくさんいたなんてことは言い訳にはならないだろう。しかし、ならば私から離れた佐藤さんだって悪いのではないかと思うのだ。しかしながら、これは様子がおかしかった。まず、息が荒いのだ。熱を帯びたような体で、鋭い目でこちらを射抜く。悪い、て謝罪を一言告げた彼は私の顎をあげると、そのままかぶりつくように口づけを落とした。それに驚き体を離そうとしたが、その抵抗は虚しく終わる。ようやく話された口に銀糸がぷつんときれた。
「悪い、ナマエ、我慢できない」
「そこをなんとか、我慢してください」
首筋に顔を押し付けられる。それをなんとかのかそうとする。
「こんな場所でなんて嫌です、」
「っ、」
「っやです、」
そう拒否すれば彼は歯止めがかかったらしい。何かを振り切るように顔を離す。何かを我慢するように眉間にシワをよせる。ますますおかしい。
「悪い、ナマエ、俺の部屋に繋いで俺だけいれてくれるか」
その問いかけに頷いて彼の部屋につなぐ。部屋に倒れこむように入った佐藤さんは「しばらく入ってくれるなよ」とだけつげて扉を閉めた。私は息を吐いて別の部屋に繋げて帰る。おかえり、と出迎えた菊池さんに少し安堵したのは仕方がない。

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「あー!これは大変なお薬を盛られましたな佐藤先生!」
しばらくして佐藤さんが針を持ってやってきた。菊池さんの影に入って伺えば彼は「悪かったな、もう大丈夫だ」といつものように告げた。それに安堵して蓮子ちゃんの所に行けばこの台詞である。
「大変なお薬?」
「麻薬とかか?」
「ううん、クエン酸シルディナフィル」
カタカナに私は首をかしげる。按司が「ウェッ、えげつない」と口を開いた。東さんと棋院に「バイアグラだよ」といえば2人とも変な顔をした。なんだろうか、と首をかしげれば蓮子ちゃんが私をみる。
「まぁ、ナマエちゃんにわかりやすく言うと、科学的に作られた媚薬」
「えっ!?」
「佐藤先生、その針どうしたんだよ」
「別のところの太宰に刺されたんだよ」
頭を抱えて告げた佐藤さんに、太宰さんが「はっ!?」と声をあげた。
「なに、別の俺無差別にそんなことしてんの!?」
「いえ、佐藤さんめがけて来ましたから無差別ではないかと。話を聞いていたら別の佐藤さんは超冷たいみたいでしたよ」
「そりゃあ冷たなるわな、そんなことしとったら」
「ヤンデレを極めた太宰先生かな?」
東さんの言葉に全員が納得していたけども、本人はいいのだろうか。
「それにしても、そんなに違うねんなぁ。図書館によって」
「スタートラインは同じでも、そこからの境遇は変わるので変化はあると思います。刀剣達も結構性格はバラバラなので。まぁ、文豪同士和解してるしてないの差は大きいですかね」
そう言えば、納得されたけど。しかし、変な薬はやめていただきたいところである。

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朝顔の印がついた手紙が届いた。なんだ?と思えばこの前少し話した佐藤先生からのお手紙らしい。中を開いてみれば、司書に茶化されてしまった、しばらく仕事をする約束をこじつけたから手紙に付き合ってほしいということである。ちなみに佐藤先生も他の太宰先生から長い手紙が届いて頭を抱えていた。返事を書かないと余計ややこしくなるだろうが、書いたら書いたで面倒になるのだろう。と、思っていればそこの佐藤さんからも謝罪の手紙が届いたようである。中々に大変だ。
とりあえず私は朝顔の佐藤先生に手紙を書き、郵便ポストに入れた。佐藤さんは佐藤先生宛てに太宰先生の手紙を入れたうえで返送した。向こうの佐藤先生の胃が心配である。

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「え、ちょ、ま、佐藤先生の文通相手って、桜印の司書さんやったん!?」
手紙を抱えてこちらにかけて来たと思えば、第一声がそれである。言ってなかったか?と聞けば聞いてへん!と見事に告げた司書に、はて桜印とはそんなに凄いのだろうかと考えた。恐る恐ると言うふうに手紙を覗き込んだ司書は「うわ、古典の教科書に出て来そうな文字」とだけ告げる。様子を見ていた江戸川さんが、桜印とはそんなに珍しいのかと問う。それを聞いて司書は刻々と頷いた。
「桜印って帝国中央図書館のはずやで」
「っていうことは」
「僕らの上司で司書の先駆けや。僕らよりも膨大な量の浄化してて、僕らの手に負えへんやつは全部中央行きや。たまに来る館長さんおるやろ?館長さんは中央の一番偉い人」
まぁあの人はそんなふうには見えへんけどなぁ。
そう言った司書に、たまに来る館長はそんなに偉い人物だったのか、と目を瞬く。まぁ、それは他も同じらしく、今まで黙っていた司書は徳田さん達に怒られたのだけど。

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「佐藤さんを連れて行くと、この前みたいになりかねないので」
そう言ってみれば佐藤さんが小難しい顔をした。この前みたいな、と彼を見た周りに佐藤さんが息を吐く。
「あれくらい、……と言いたいが、そうしてもらった方がいいな」
「なんだ、そんなにややこしかったのか?」
「いや、会議自体は難しくもややこしくもなかった、んだが」
言い淀んだ佐藤さんに、私が代わりに口を開く。
「他の司書も誰かを引き連れてくるでしょう?そうすると他の太宰先生達もいるんですよね」
「あぁ、読めたぞ」
菊池さんが面白半分に口を開く。
「他のところの拗れた太宰にちょっかいを出されたな?」
「最近佐藤が丁寧に返送してる手紙はそれか」
「そんなに性格がかわるものなのか?」
露伴先生の言葉に結構違うなと思う。スタートラインは同じなんですけどね、と口を開く。
「その後の経験は結構違うでしょう?今文通している佐藤先生は関西弁が時々顔を出します」
「待て、そんな話初めて聞いたぞ。最近誰と手紙を交わしているかと思えばーー」
「はいはい、夫婦喧嘩は後にしてくれよ」
牧水さんはそう言って酒を飲む。やっぱり俺が行く、と言い出した佐藤さんに直さんが手を頭の後ろに回した。
「んー、そうなると、あんまり珍しい文豪は行かん方がいいけんね、ばってん、」
「俺や徳永、井伏や吉井達は控えた方がいいのか」
「森先生がいなくなると医務室が空いてしまうから」
「オレはそういう場所が苦手だし、こういう時は菊池だな」
肩を叩かれた菊池さんは、お、任せとけ!と笑った。まぁ、菊池さんは顔が広いし比較的角が立たないのでいいだろう。

普段、こういう会議は手が空いている人が出るようになっている。この前は偶々私が空いていたので様子を見に行ったわけだ。しかしながら、今回は全員出席するらしい。まぁ、留守番は東さんと菜乃花、刀剣達もいてくれるので何かはないだろう。大槌さんがコテンと首を傾げた。
「あれ?ナマエちゃん、佐藤先生じゃないんだね」
「ああ、あいつは休み」
「他のところの太宰先生が佐藤に絡むらしいですよ」
「あぁ、あの長文の手紙、うちの太宰君かと思ったら違ったんか」
「なんか変な感覚だね、うちの、がつくって」
徳田さんの言葉にそうか棋院の会派は一番忙しいので今まで行ったことがないのかと納得した。そんなことじゃこの先驚くぞ、と告げた按司が扉を開く。人の山である。何人かがこちらを向いたが気にしていないのだろう。按司が小さくマウント取り合戦、と呟いたのが聞こえた。言い当て妙である。
不意に視線を感じてそちらを見る。この前の太宰先生だろうか。相変わらず顔色が悪い。こちらにやってきた彼は何処か絶望したように口を開いた。
「なぁ、なぁ、この前の司書サンだよな、あの春夫先生は!?俺に優しい、春夫先生は!?」
「佐藤先生は他のお仕事が忙しくて。貴方のところの佐藤先生もお優しいでしょう?」
「俺のところの先生は、」
そこで、太宰先生!と声が聞こえた。肩をふるわした彼は司書サンと震える声でその人を呼ぶ。様子がおかしい。
「どこ行ってたの、ほら、他の司書さんに迷惑をーーってあら、この前の佐藤先生の司書」
そう行った彼女に、とりあえず挨拶をした。上から下まで見て、うちの太宰先生はあげないわよ、と言われた。はて、と首をかしげる。まぁ、何かいう前に彼を引っ張って消えていったが。
「別に太宰くん2人もいらんけど、なんかおかしかったなあの太宰くん」
「どう見ても衰弱してるだろ、あれ」
「というか、モノ扱いだったね」
その言葉に私は頭を抱えた。館長の上、政府の人がこの方針で行くと決めたとき、なるかもしれないと思っていたけれどまさか本当にそうなるとは、と。
「苗字さん?」
「審神者界隈でもたまにあるんですけど、ああいう対応とる人が。ちょっと様子見た方がいいかもしれません」
「館長にいってみよう、あんまり良くないことは確かだからね」
そんな会話をしていれば喧嘩騒ぎは聞こえるわなんだで周りが騒がしくなる。とりあえずため息をついた按司と棋院、大槌さんがそちらに向かい、蓮子ちゃんはうちに実習に来ていた子を見つけたのでそちらに向かった。私は菊池さんと話しながら壁際にいれば、「あ、いた、」という声がしてそちらを見る。朝顔印の佐藤先生とその司書だろうか。
「今日は俺じゃないんだな」
その言葉に菊池さをは理解したらしい。「お、お前がうちの司書の文通相手の佐藤か」とカラカラ笑った。
「えーと、悪い、こちらにはまだいなくて」
「珍しいな。俺は菊池寛だ」
手を差し伸べた菊池さんに、佐藤先生は目を瞬く。佐藤春夫だ、と握手した2人に菊池さんがいないとなると駆け出しなのだろうかと思う。司書は固まって動かないが。
「ほら、司書、挨拶は?」
「む、無理やって!佐藤先生、桜印やで!?お偉いさんやで!?」
「こんにちは」
「こ、こここここ、こんにち、は」
「私は苗字ナマエと申します。貴方は?」
「ひぇっ、安宅ヒフミです」
「安宅さんですね、そんなに固くならなくても」
そう苦笑いしてしまうのは仕方ない。首をブンブン左右に振った司書さんに困ったように菊池さんを見れば、菊池さんは私を見下ろした。
「まー、ナマエの場合、目が青いし何考えてるかわからないからな」
「むっ、愛想が悪いのは認めますけどもこれでもマシになりました」
ポスポスと菊池さんを叩けば、おー丁度いい強さだ、と笑う。
「名前呼びなんや……」
「おう、まぁ、公の場だと司書呼びはするがな」
「まぁ、図書ーーむぐ」
口を手で覆われたので菊池さんを見上げる。菊池さんは佐藤先生を見た。
「それだけ仲がいいっていう話だよ」
「……」
「さて、ナマエ。そろそろ他に合流するか」
そういった菊池さんに頷く。とりあえず佐藤先生と安宅さんに手を振れば佐藤先生は瞬きして振り返してくれた。

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とりあえず他に合流した。文豪同士が突っかかることもあれば司書同士が突っかかることもあるようである。しゃがみこんだ按司がジト目でこちらを見た。
「どこにいたんだテメェ」
「文通相手の佐藤先生とお話を」
そう言いつつ壁による。政府の人が、壇上に立つとざわざわとしていた空気は静かになった。そのまま始まった会話を要約すると研修するよ、怪しい人は調べるよ、という話である。按司や棋院はその言葉に頷いた。
「まぁ新卒司書なら研修は妥当だよ。僕らは館長がつきっきりでなおかつ東さんや他の職員にも教えてもらいながらこなしてたけど」
「ただし苗字は除く」
「それ余計じゃありません?」
「でも、どこで研修するんだろう」
「中央しかないんじゃないかなぁ」
「ですよねー」
そんなことを話していれば館長が苦笑いをしてこちらを見たためお口にチャックする。
「まぁ、堅苦しく考えないでくれ。研修といっても何ヶ月もというわけじゃないし、毎日行くわけでもないさ。文豪だけが来てもいいし、司書だけが来てもいい。勿論、何人かで来てもいい。ただ、わからないところを聞く手筈を整えただけだ」
館長の言葉に、ああこの人は上手いなぁと思う。恐らく館長は中央を逃げ場にしたいのだろう。研修に行ってくる、といえば中央に逃げることだってできるのだから。ひとりの司書がそろりと手をあげる。
「館長、研修はどちらで?」
「勿論、帝国中央図書館だ。帝国中央は司書は複数いるからな、話もたくさん聞けるぞ。次いでだから紹介した方がいいか?」
館長がこちらを見る。私は首を左右に振ったが、按司に首根っこを掴まれた。棋院くん、と呼ばれた棋院はハイと返事をしてそちらに向かう。壇上に上がれとのことなので壇上にあがり、一歩引いたところに立とうとすれば菊池さんが背を押した。
「帝国中央図書館、第一特務司書及び館長代理の棋院勇気と申します。純文学を中心に全ての本の浄化及び点検をしています」
そう棋院が名乗ったことで視線がこちらに向く。安堵もあれば無関心もいる、しかし、不満やあんまり良くない表情も見えた。それが酷く恐ろしく感じて後ろに下ろうとする足を菊池さんが止めた。
「同じく帝国中央図書館、第二特務司書の按司隼人だ。純文学、大衆小説及び時事の分野を担当してる」
「えっと、帝国中央図書館第三特務司書の立川蓮子です。詩歌及び児童書を担当、してます」
そう言って手渡されたマイク、に、困ったような顔をしてしまうのは仕方がない。蓮子ちゃんも困ったように私を見た。渋々それを受け取り、口を開く。
「帝国中央図書館第四特務司書、苗字ナマエです。大衆小説古典歴史書他色々と浄化を」
それだけいって大槌さんにマイクを渡す。大槌さんはニコニコ笑って口を開いた。
「帝国中央図書館、第六特務司書、大槌肇です。詩歌を担当しています。あとはもう1人、児童書担当がいますが本日は欠席を。私が一番年上ですが、この中では一番新参者です。年齢に対して思うことがある人もいると思いますが、実力が伴ってから文句を言ってくださいね」
にこやかにそう宣言した大槌さんに、按司が小さく「だからこの人元ヤン説でるんだよ」と呟いたのが聞こえた。大槌さんはニコニコしながら私にマイクを返したので私も蓮子ちゃんに渡せば中野先生が館長まで持っていった。
「ははは、まぁ、たしかに年若いが腕は折り紙つきだ。なんせ君たちが来る前はこの国の書物を全部彼らが侵蝕を食い止めていたんだから。さて、無駄話も済んだことだし、研修について詳しいことはまた書面で送ることにしよう」
そう笑った館長に促されて下に降りる。ほっと息を吐けば菊池さんが私の頭を撫でた。

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やはり読みは当たったらしい。館長曰く双方の駆け込み寺にしたかったようだ。色々な図書館に出向いたが、きな臭いところもあるらしい。ただ館長は長期停まれないがために何もすることができないので、とりあえずの処置として制度を作ったようだった。
「まぁ、聞きたいことを聞きに来てもいいしわからないことを聞きに来る若年層もいるだろう。問題はまぁ君たちより年上のプライドが高い司書だが、その場合は文豪が来ることを祈ろう」
「怪しいとこあれば探るぜ」
按司がやれやれと息を吐きながら告げる。館長は困ったような表情をした。
「今探っても、どうしようもないんだ。それに対する処罰が決まってない。文豪達はたしかに人だが、厳密には俺たちと同じ人ではないだろう?それに特務司書を辞めさせるだとか、監視、そういう話も絡んでくる。似たような組織図でいくと、君たちの組織図なんだが」
そう按司と私を見た館長に、按司はさらりと「まぁ殺されるか追放かだな」と告げた。物騒やなぁ、とは他人事のオダサクさんの台詞である。蓮子ちゃんが身を引いた。
「ひえ、犯罪」
「知ってるか、他殺だとバレなきゃ殺人罪にはならないんだぜ。まぁ、大方そういうやつは追放されるか居場所がなくて抜けるな」
「抜け忍か!」
坂口先生が嬉々と按司を見て、徳田先生が首を傾げた。
「やっぱり抜け忍には厳しいのかい?」
「まぁな。機密を知ってるやつもいるからな、厳しくなるだろ。苗字のところは?」
「うーん、追放される、みたいな話は聞きましたが、どうなるかはわからないです。こんちゃんなら知ってますよ」
そう言って「省略こんちゃん」と呼べばこんのすけが現れる。
「あるじさま、いかがなさいましたか!」
「こんちゃん、黒い本丸ってどうなるの?」
「また幼子のような……って黒い本丸?」
「図書館も似たような組織になってきたでしょ?だから、どう処罰しているのかなって」
「ふーむ……そういうことですか。しかし、館長さま、審神者も一例にしか過ぎませぬよう」
「ああ、その例を欲しくてな」
「黒い本丸ってなんですか?」
首を傾げた堀先生に、こんちゃんが口を開く。
「ブラック企業と似たようなものです。まぁ、過労だけでなく、強制出陣、手当てをせず放置、夜伽の強制などーーまぁ、これはあくまで審神者から刀剣男士に対するアクションですが、刀剣男士が審神者を連れ去ろうとする、心中をはかるなど色々なパターンがございました」
こんちゃんはそう言ってもふりと尻尾を動かした。
「ました?過去形なの?」
「今はほとんどございません。昔、あるじさまのおかあさまより前の時代はそういうものがたしかに多発しました。その時の処罰は審神者が起こした場合、切腹を含む処刑もあったと聞きます。無論、刀が起こしていれば刀は溶かされたと」
「興味深いな、どうして減ったんだ?」
「簡単なことです。政府が養成所、すなわち学校を作りました。そこで審神者は初期刀と共に最低四年、審神者について刀剣男士の扱いについてなどを教えたのです。その結果、審神者による刀剣男士の扱いは随分と良くなりました。まぁ、今そういうことをすると第三者である政府が介入、捜査の上、黒だと判断されれば最悪記憶を消して普通の人に戻っていただきます。後に残された刀剣達は祓い清められ、落ち着いた頃に初期刀になっていただいたり他の本丸に所属していただいたりします」
「刀剣が起こした時は?」
「同じことです。第三者が介入し、捜査の上に黒だと判断されれば最悪祓い清められ本霊に戻っていただきます……まぁ、双方の勘違いや双方の思い違い、相性などがございます故、研修施設に入ることもあれば、お互い新しい場所に配属されることもあります。刀といえど、人の身ですので」
「ふぅむ」
「……図書館様は、おそらくこれからこちらの初期に似た事態が起こるかもしれませぬ。大方ク……大方が人として配慮に欠ける方が起こす事態です。しかし、偶に、どうすれば良いかわからなくてそうする方や、認められたくてそうする方、自分がそうされていたからそうする方もいらっしゃいます。だから第三者が見るのです」
「第三者組織をつくる、かぁ」
「心配なれば、忍びの方を使う手も文豪たちに頼む手もございましょう。審神者の第三者は数人を除き他はローテーションでございます」
ちなみにあるじさまのお兄様の本勤はそちらです。そう告げたこんちゃんに私はこんちゃんを見下ろす。初耳である。
「まぁ、何にせよ、色々お話を聞くのが良いかと思いますが」

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