2019/04/18

イントゥザベストエンド 1

・mgsから帰ってきたら≒1014世界だったシキノさんの話
・ユキノちゃんも帰ってきてサポート要員
・極東支部というか、極東のレジスタンスの一人。ユキノちゃんと常に行動してるため一匹狼癖。
・元会社員ヘイティさんもいるよ
・メディックは別にいるよ


==

「今から帰還する」
この人はどこでこんなことを覚えたんだろうか。そうボヤいて告げれば、それは君にも返ってくる質問だ、とタバコをふかして告げる。たったの三日、されども三日。重要な拠点であろうそこを乗っ取ってみせたのは、同い年の学生ーー所謂同級生だった。

スネークか!と私はよく彼女を突っ込みたくなった。いや、だって、単独潜入して普通に奪還して帰ってくるってなんだ。比較的大陸とは違い緩やかな侵攻だとか、国民性をみて緩やかな警備だとか他国の人のレジスタンスはいうが、いや、どう見てもおかしいでしょ、と思うわけで。しかしそれをいうとハッキングとか色々できる私もおかしいし、ただのサラリーマンの筈なのに飛行機やヘリを飛ばせて戦闘をこなすヘイティさんもおかしい。おかしい揃いのそこで、唯一のまともな人がレジスタンスと私達をつなぐ元自衛官の更田さんであるが、彼も順応しているのをみるとおかしいのかもしれない。バイクを走らせて帰ってくるだろう彼女を迎える準備をする。それをみて、ヘイティさんが苦笑いしたのだけど。
「また彼女が可笑しいって思ってるのかい?」
「まぁ」
「僕としては世界も僕も君たち全員が可笑しいけどね」
笑いながら告げられた言葉に、グゥ、と言い返せない。彼の精神は常に綱渡り状態だ。自傷癖もあるから変につつかない方がいい。しかし、顔色をみると今日は随分と良い。彼女の任務が無事に終わったからだろうか。
「さて、ナマエ、帰ってくるまでが遠足だよ」
「わかっているさ、ダッド」
「今はそんな年じゃないんだけどなぁ」
そうぼやかれた言葉の意味を私は知らない。

==

そこにいるのは確かに歪な人間達だろう、と更田は思う。どこで鍛えられたかはわからない。一人はただのサラリーマンであるし、あとの二人はただの学生だ。しかしながら、この状態においてーー多くの自衛官が殺され、残りの多くが敵側についてしまった今ーーその戦力は十分貴重であり、また、唯一に近い潜入向きの戦力であるには間違いがなかった。だから、この国を秘密裏にーーレジスタンスが奪い返した今、未だ多くが世界帝の支配下に置かれている大陸側に送る必要が出てくるだろう。とりあえずは報告会議のようなそれに出なければいけないのだが。
「貴方も難儀な位置にいるものだ」
そうタバコをふかしているのは18歳である。未成年であるがタバコを吸っているが、だれも注意などできない。それはもはや彼女のトレードマークであり、逆にレジスタンスの多くが彼女にタバコを貢ぐことが多い。もう一人の学生が名付けたスィートスネークと呼ばれることが多々ある彼女は、更田をちらりと見た。いや、実際は更田ではなくその奥にいるヘイティと呼ばれる男だ。何かの後遺症なのか、髪はグレイカラーであり、瞳の色も通常の日本人である彼は更田をジッと睨みつけている。これでもかというほど、憎そうに。
「娘を差し出すつもりか?」
「いやーー」
「この国は落ち着いた、それでいいだろう!」
この男は今日は酷く錯乱しているらしい。この男は使えるのだが、精神状態が常に綱渡りであるには違いなかった。スネークがいなければ、恐らく自死することが透けて見える。ナイフを握りかけた彼に、彼女がそれを止めた。
「ダッド、大丈夫だ。ダッドもサチも一緒に行くし、帰ってくるさ」
言い聞かせるような声だ。その声に彼は落ちついたらしい。本当かい?と今度は子供のように尋ねる。まぁ、サチと呼ばれた人物はパソコンに向いていた目を驚いたようにこちらに向けたが。
「あぁ、君たちはセットだ」
「え?えええー、私は力ぶそくだとぉ」
「衛生飛ばしといてよくいうな」
ぼそりと呟かれた言葉に彼女はがっくしと肩を落とす。
「なに、なにも悪いことだけじゃない。君たちがただの学生に戻った時にはどんな大学に行こうが学費を出してもらえるらしい」
「えっ」
喜ばしいことのように顔を跳ねあげたサチに、スネークが首を左右にふる。
「そんなものはいらない。それより、サチやヘイティに証人プログラムを受けさせ、終戦後は探らせるな」
タバコをふかしてそう告げた彼女は一番思慮深いのかもしれない。
「君はいいのか」
「どうせ逃してはくれないだろうからな」
諦めたように彼女は告げた。それは正しかった。だれがこの国の、異常な国民を逃すと思うのだろうか。
「君のその鋭さは嫌いじゃないよ」
「そうか、ありがとう」

==

そこは一際人が賑わっているというか。いや、静かではあるのだが、ある意味賑わっていた。キョウドーさんに連れてこられたそこには色んな国の人が集まっていた。あちらこちらから聞こえる声は色んな国の言葉である。辺りをキョロキョロと見渡していれば、飛行機が止まっているのが見えた。それが珍しくて、飛行機だ、と近くにいた銃士とキョードーさんの裾を引く。ああ本当だな、と苦笑いしてみせた双方に子供扱いだとむくれていれば、そこから女の子が顔をのぞかせていた。恐らくは同い年ぐらいだろうか。彼女は周りを見て苦笑いしてまた中に戻ると、同い年ぐらいの女の子を引っ張ってくる。タバコを吸っている彼女に眉間を潜めたところでーー二人が日本の学生服を着ているのに気づいた。



周りの喧騒をみて、タバコをふかしながらナマエちゃんが一言。
「こんなに騒いで世界帝が狙わないわけがないだろう。ダッド、いつでも飛べる準備を。最悪、更田さんとフルトンで帰る」
「わかった」
ナマエちゃんの言葉に「うわぁ、あれをまたやるのか」と更田さんが絶望したような顔をした。わかる、あれちょっと怖い。ナマエちゃんはそれすらもバッサリと断るのだけど。
「仕方ないだろう。サチは世界帝の動向を探ってくれ。何かあれば無線で飛ばせ」
「あいあいさー」
着々と準備をするナマエちゃんは学生服である。懐かしい姿だなぁ、と思ったがそもそも彼女も私も戦争がなければただの学生だ。というか、私も学生服姿である。通りで周りの視線が向くはずだ。自分と更田さんが降りたらハッチを閉めるように指示したナマエちゃんは更田さんと人混みに紛れていく。それを見送って私達はハッチを閉めた。

==

喫煙所というか、人のいない場所で一服するか、とタバコを吸っていれば、一本くれないか、と聞いたことがある声が聞こえて顔を跳ねあげた。ジャック、と呼びかけて口を紡ぐ。確かにそこにいた男は彼にそっくりだった。でも、両目が揃っている。目の色と髪の色が少し違う。第一彼は現実には存在しない。とりあえずタバコを差し出せば彼はそれを加えたので火をつけてやる。ありがとう、と煙を蒸した彼は壁にもたれた。
「貴方は美味しそうに吸いますね」
「本国ではこれがなかなか手に入らなくてね。不健康だと支援物資から除かれる」
「……一箱いります?」
「いいのか?」
「戻ればカートンがあるので」
そこで彼は私が無線をつけていることに気づいたらしい。トン、と耳を叩くフリをして口を開く。
「いいものを付けてるが、使えるのか?」
「ええ、」
「世界帝のものを使って?」
「いいえ」
そう短く答える。彼はあまり良い顔をしないが。彼が味方とは限らないわけだ。
「貴方はこの状況をどう思いますか?」
「世界帝が狙うなら今だとは思うな。スパイはいるだろう……俺を疑ってるのか?」
「知らない方なので」
私の返答に彼は目をまん丸にしてーー笑った。そうか、俺を知らないか、と、嬉しそうに。何が嬉しいのだろうか。そうタバコをふかしていれば、誰かがやってきたためにそちらを見た。やってきたのは女性である。恐らく軍にいたことが見てとれる。
「こんなところにいた。また口説いてたの?」
「いや、タバコをご合い判していた」
「伝説の傭兵が肺癌で命を落とすなんて笑えないわよ」
そう告げた女性に、伝説の傭兵とは、と考える。更田さんが何か言っていた気がしないでもない。しかしながら、彼はスパイではないのだろう。
「申し訳ありません、いらない疑いをかけてしまいました」
「いいや、警戒は正しい選択だ」
「ナマエ、そろそろ行くぞ」
聞こえた更田さんの声に「わかった」と返事をする。タバコの裏面に無線番号だけかいて、彼に投げ渡した。それを見事キャッチした彼に女性はいい顔をしなかった。
「没収されるかもしれませんが」
「大事に吸おう」
そう手をひらりと振った彼に更田さんに並ぶ。彼は?との問いに、さぁ、伝説の傭兵って呼ばれてましたよ、と言えば彼は目を瞬いた。有名人らしい。

==

建物の中に入れば各支部の偉い人物が集まっていた。議会席のように並ぶ席に私は着席し、更田さんは極東支部でもなかなかの立場であるので前に出た。周りをぼんやりと眺めていれば、そこに眼帯をつけた人物を見つける。中高年あたりの男性である彼は、更田さんと何かを話しているようだ。その様子を見つめていれば、彼がこちらを向く。彼はただ目を少し見開いてこちらを見た。その姿があの時のジャックと重なる。そんなことはあり得ないのだと目を伏せていれば、隣に誰かが座った。そちらを見れば、先程の男性である。タバコの箱をトンと机に置いた彼はなんともないように前を見た。私はタバコの箱をちらりと見て、同じく前を向く。
「可愛らしいことをしてくれるな。これは君のアドレスか?」
「えぇ、まぁ、何かあればどうぞ」
「世界帝の衛星を介していないんだったが、どうやった?」
「友人が世界帝のミサイル発射のどさくさに紛れて衛星を打ちました。まだ、未完成の衛星があったようなのでそれを利用したようですけど」
「向こうはノータッチというわけか」
「今のところはね。無線を傍受できるものは?」
「残念ながら北米支部にはないな」
そう言った彼にポケットから予備を取り出す。そしてそのまま彼にじゃれ付くようにして耳にはめた。まぁ、後ろから席を蹴られて、何してるのよ、と先程の女性に彼が怒られたが。不意に無線がはいる。
『ナマエ、彼は伝説の傭兵と謳われる人物だ。そんな相手にふざけすぎだぞ』
更田さんを見ればこちらを睨んでいる。とりあえず、無線を通じてすいません、と謝る。そうして誰かが始まりを告げたその会議に頬杖をつけば、ただのティーンにしか見えないな、と隣の伝説に言われたのだけど。
今回の会合は意見交換に近かったらしかった。世界帝の力にいかに立ち向かうか、そんな会話である。しかしながらそれは元々どこかの国のお偉いさんの演説に近く、更田さんは軍人のようにーーまぁ彼は軍人に近い職種だった人間であるがーー待機している。それは更田さんだけではない。数人は軍人のように待機しているのをみると何人かは軍人だったのだろう。あの隻眼の男性もそうだった。何分経ったのか、世界帝を排除する旨の誰かの演説が終わり、拍手が聞こえる。それに混じって、無線がなった。
『ナマエ、更田、こちらヘイティだ。聞こえるか?』
ちらりと傭兵を見る。彼もまたこちらを見たが、何ともないフリをしてくれた。それを確認して口を開く。
「聞こえる、何かあったのか?」
『サチが敵の進行を確認した。俺たちは離陸してまつ』
『兵力はわかるか?』
『空からはないとはわかっているんだが……装甲車が動いているのは確かだ。南から進軍している、が、北から敵の無線も傍受できた。北に逃げれば蜂の巣だ』
『退避ルートはあるか』
『北のスナイパーをかづけるか、正面衝突するかだ。ーーあ、わかった、伝えるーーどうやら西に行けば抜けれる可能性はあるらしい。だいぶ道は悪いんだけど。空からの回収は今ならまだ間に合うよ』
「了解、また通信する、over」
そう言って通信を切って更田さんを見た。彼は彼で近くにいた偉い人達に声をかけているのがわかる。しかしながら、あまり信じられていないようだったが。しかしながら促さなければ阿鼻叫喚になるのは見えているわけで。無線を更田さんの方に合わして告げる。
「更田さん、貴方は先に機内に。そこにいる重鎮も一緒にな。パニックになられるよりはマシだろうし」
『ああ、そうだな。だが数が足りない。怪しい奴を切り捨ててもな』
「私の分も渡す。自力で頑張ろう。合流ポイントをきめて、そこに回収する術を落としてくれたらいい」
『わかった、武運を祈る』
そう切れた無線に、息を吐く。彼は真っ直ぐに前を見たまま口を開く。
「何かあったのか」
「南から世界帝軍が侵攻中、北にはスナイパーを配置されてるらしい。仲間が確認した」
「なんだって?」
そう言って彼はこちらを見た。私は前を見たまま口を開く。
「重鎮達は楽しいフルトン遊覧飛行をしてもらうとして、問題はこの場や外にいるその他だ。パニックになって北に逃げるのが目に見えてる。今、上官が一部に伝えたみたいだが……あの様子を見るに信じられていないな」
逆に更田さんに詰め寄る様子が見える。先程演説をしていた人物が口を開く。
「やはり極東支部は狂っているらしい。ここに世界帝軍がくるだと?そんなことはあり得ない。さすが、女学生に武器を持たせる支部は違うな」
その発言に周りはガヤガヤとする。そんな馬鹿なと言って、一緒に嘲笑う人もいる。そのまま可哀想に、と私を見ながら告げた男にならばこの男は孤児がレジスタンスになることについてはどう思うのかと問いたいが無視に限る。
『同情されてるぞ、お前が嬉々と本職を置いて制圧したところを見てほしいな』
「同情されてもなぁ」
『信じないのであれば味方を危険を晒すべきではない、か。ナマエ、見限るぞ。俺は本国が無事ならほかはどうでもいい』
日本語でそういった彼に、意外と短気なんだよなぁと思う。まぁ肩入れする義理もないだろう。私もそこまで介入するお節介さはないし、このまま同情や哀れみ、嘲笑の視線を受ける気にもならない。どうせなら席を立つか、と立ち上がれば隣の伝説はこちらを見た。
「恐らく北米支部ーーアメリカも席を立つことになるだろうな」
「そうですか……何かあれば連絡をください。迎えぐらいはいけるかもしれませんから」
そう彼の耳元で呟き、ご武運を、と手を振る。彼もまたひらりと手を振った。

==

あの日本人がいったのは本当のことじゃんか!と泣きそうになった。阿鼻叫喚である。静かな夜は一瞬にして阿鼻叫喚の地獄になったのだ。銃士やキョウドーさんと一緒に逃げ惑う中、キョウドーさんは多くの人が向かう北ーーではなく、西側に私達を連れて行く。だんだん離れていく喧騒、騒音。ようやく静かな夜に戻ったが、彼はまだ足を止めることはない。足元はかなり悪くてガタガタだ。私は転けないように細心の注意を払いながらいく。
「でも、キョウドー、どうして無事であるルートがわかった?」
「極東支部の男が逃げるなら西に行けと言ったんだ」
「襲撃を予期したアイツか」
ベスさんがそう言って眉間にシワをよせた。タバティさんが同じく眉間にシワをよせる。
「問題はどうやってその襲撃をよきしたか、だよなぁ」
「あぁ、それがーー」
「静かに」
ドライゼさんがそう言って私達に黙るようにつげる。ゆっくりと、草の根を掻き分けるような音がして私はまた泣きたくなった。必死に泣かないように歯をくいしばる。ガサリ、と近くの茂みが揺れた瞬間、銃士達が銃を向けた。その先にいたのは、中高年の男性だった。眼帯をつけた彼は警戒を解いたらしい。ドライゼさん達の銃口を下げて、キョウドーさんが口を開く。
「貴方は……北米支部の」
「そう言う君は東欧支部だったな。よく仲間を導いた」
彼はそう言って、振り返る。銃口を下げろ、仲間だ、と言う言葉に茂みの奥からはレジスタンスが何人か現れた。
「このまま山を越えるが付いてくるか?」
「山を越えた先に何かあるのですか?」
「あぁ、極東支部が迎えに来てくれるようだ」
その答えに、迎えとは、と思う。もうしばらく頑張れそうか、と私に尋ねたキョウドーさんに頷けば、北米支部の男性もまた無理はするなと言ってくれたのだけど。

山を越えて平地に出た時、そこが一面白いものだから目を見開いてしまったのは仕方がなかった。真っ白な花畑である。わぁ、と、少し元気が出たのは仕方がなかったが、その奥に人がいたことに気づきベスさんが止めた。その人はこちらを振り向く。風が吹いて、花びらが揺れる。そこにいたのはあの学生服を着た女の子である。
「ーーナマエ、?」
隣にいた北米支部の男性ーーどうやら彼はビッグボスと呼ばれているらしいーーは目をこれでもかと見開いて動きを止める。同じく北米支部のデイヴィッドさんが怪訝そうに問いかける。
「ビッグボス?」
「あぁ、いや、違うんだ。そんなはずがあるはずはない」
彼はそう告げて彼女に問いかける。
「お前が極東支部の?」
「ええ、こちらに飛行機を止めています。とりあえず極東支部を経由することになりますがお送りしましょう」
彼女はそう言って背中を向けて、そのまま先に向かう。
「飛行機?飛行機って言っても何処に」
その問いに答えるように、真っ白な花畑の中から飛行機が現れる。それはまるで魔法のようだった。

==

見るからに気が参っている。伝説さんや彼の上司は飄々としているようであるが、それ以外は疲弊しているようだった。私は自由に眠れるし、恐らくヘイティはコックピットから、更田さんは周りを見るために動かないだろう。適当な場所(といっても狭いが)で寛ぐように告げて、気が参っている子のためにココア、その他のためにをいれればサチが起きたらしい。
「誰か来たの?」
「他の支部の連中を拾った。サチ、替えの服や下着はあるか?」
「あるけど」
「同い年ぐらいの子が参ってそうなんだ。頼めるか」
「あぁ、そう言うこと。ちょっとまってて」
そう自室に向かったサチに湧き上がったお湯を火にかけるのをとめ、コーヒーとココアをいれる。しばらくすれば「シャワー室整えたし、着替えも準備できた。ばっちこい!」と言う返答がくる。ひらりと手を振り、トレーに飲み物をいれたカップをのせてーー先にヘイティに労いのコーヒーを渡してからーー更田さん達がいる下に降りた。
「更田さん、コーヒーをいれました」
「あぁ、ありがとう」
「皆さんも良ければ」
そう言って近くのテーブルにコーヒーをおく。そうして辺りをキョロキョロと見渡していた彼女にココアを渡す。
「それが飲み終わったら声をかけてくれ。着替えを準備できてる。疲れたろう?」
そうぽん、と頭を撫でる。ココアを見下ろした彼女がグズグズと鼻を鳴らしたので、よほど怖かったのだろう。ウゥッと声を押し殺した彼女の頭を撫でる。更田さんがそれを見て口を開く。
「ナマエ、俺は彼らと有意義な情報交換をするから彼女にシャワーでも浴びさせてやれ。子供は寝る時間だ」
「全く、こう言う時だけ子供扱いする」
それだけ告げて彼女のココアを彼女の近くにいた人物にとりあえず渡す。そのまま彼女を姫抱きにして、またココアを受け取った。その際、彼が心配そうに見たので何かあれば上の階に上がってきて貰えばいいとだけ告げて上の階に上がった。


「っていうか!どろだらけ!先にシャワーあびよ!!ね!!」
今だ声を押し殺して泣いてる彼女を二人がかりで宥めていると、サチがそう言って彼女の手を引いた。しばらくするとサチだけが帰ってくる。
「よほど怖かったんだね」
「普通は怖い」
「同い年ぐらいがくるとナマエちゃんの普通じゃない感が滲み出てしまう」
「今更だ」
「それもそうだ」
頷いた彼女にデコピンをくれてやる。いてて、とうずくまったサチとたわいもない会話をしていれば、あの子がシャワーからあがったらしい。目を腫らした彼女に、サチと一緒に寝るように言えば、女子会だ!とサチは笑いながら彼女の手を引く。
「私のベッドを使っていい」
「ナマエちゃんはどうするの?」
「ここで寝るかヘイティさんのところで寝るさ。おやすみ」
「おやすみ」
まぁその後ヘイティさんのところに行けば戻るように言われたのでソファで寝るとする。まぁ、気は立っているので熟睡はできないだろうが。

==

「あの娘が噂の?」
「どういう噂かは知りませんが、まぁ、うちの支部で唯一のーー最初から使い物になった学生ですね。あの子達がいなければ恐らくは極東は大敗でしょう」
「そんなになの?」
「貴方がたとは違って、うちの国民は普通は銃もまともに握れない。学生なんてものは知識はいくらでも仕入れることはできるが、実践はできない。しかしながら、何処かに渡航した経験もなければ、普通の生活をしていたので人物だ。あの子達は異常なんだ」
そんな話が聞こえて、確かに異常だな、と認める。社会人であるヘイティはおいておいて、私なんかは特にそうだろう。少し息を吐いて目を閉じる。寝れそうもないのはいつもよりも感じる人の気配が多いからか。ヘイティのところにでも行くか、と考えていればサチがひょこりとやってきた。
「あの子は?」
「寝たよ、もうぐっすりと。よほど緊張状態にあったみたい」
そう言って彼女は近くのパソコンに向き合った。
「暇すぎて下をスキャンしてたんだけど」
「寝なさい」
彼女をそう言って小突きながら後ろから画面を眺める。映し出されたのは地図だろうか。タバコに火をつける。
「機内は禁煙なんだけどなぁ」
「毎度のことだな」
「あぁ、あったここ。何かの工場があって、そこそこ世界帝軍に警備されてるんだよね。何これ」
「知らん、と言いたいが……厄介なモノの可能性もなきにしもあらず、か」
しかしまぁ、更田さんは他国なんだから放っておけと言うだろう。あの人の愛国心は素晴らしいが、他国には無関心である。
「とりあえず報告しよう」
「下ってどれぐらい人がいるの?」
「大人の男が多い。君が不用心なそんな格好で出る場所じゃない」
「む。ルームウェアですぅ」
そう言った彼女にもう一度寝なさい、と告げる。はいはい、と言ってパソコンから離れそうもない彼女は寝る気は無いんだろう。
「暇ならコックピットでヘイティの話し相手になってくれ」
「ヘイティさんはさっきまではご機嫌だったよ」
「ならいい」
そうひらりも目を振り、階段を降りる。向いた視線を無視して階段の上部に腰かけた。
「ナマエ、機内は禁煙だぞ」
「そうだった」
「未成年の喫煙はオススメしないわ。肺癌で死ぬわよ」
「人間はいつか死ぬものですよ。肺癌で死ねるだけマシでしょう」
肩をすくめて携帯灰皿に押し付ける。可愛くない子供、とは、私に注意した女性の言葉だ。
「ナマエ、暇ならヘイティと話していろ」
「彼はご機嫌でしたよ。あと、面白いものを見つけたみたいで」
「面白いもの?」
「世界帝の警備があつい何かの工場」
そう頬杖をついて告げる。更田さんが眉間にシワをよせる。
「何か?」
「そこまでは把握できませんでしたし、世界帝軍に化けた友軍の基地の可能性もなきにしもあらずですが」
「放っておけ」
「そういうと思った」
「ちょっと!」
「残念ながら、俺は一軍の指揮を任されているわけじゃない。一匹オオカミ風情のコイツらのおもりだ。作戦指揮権はない」
はっきりと断言した彼に実は彼にもある程度の作戦指揮権はあるのだがと思ったりもしなくない。まぁ、無防備な状態で突っ込んでも意味がないからだろう。
「ナマエ、あの子にこの付近のデータ採取ぐらいはさせておけ」
「もうやってるとーー」
「更田さーん、やってまーす」
そう返事だけよこしたサチに、だって、と肩をすくめた。
「ーーもう一人いるのか?」
「いるが、貴方達に教える義理はない」
「ナマエ、タバコはよせ。寝ろ。寝れないならヘイティにでも子守唄を歌ってもらえ。無駄な警戒はするな」
釘を刺した彼に息を吐く。じゃあお言葉に甘えて、と言ってまた上に上がった。
「寝る?私が子守唄歌ってあげようか?」
「結構」
そう言って近くのソファに伏せる。眠れるわけなどないのだけど。

==

白い夢を見る。あの白い花畑にまた行ったからだろうか。真白な世界に、赤を咲かせた夢をーー。
カタリ、という微かな音で目をさます。起き上がってみると、サチがパソコンの前で寝ているのが見えた。部屋に運んでやろうかとも考えたが、陽の刺し方からしてもうすぐで支部に着くだろう。下の階に音も立てず降りると、彼らもまた仮眠を取っているのが見えた。そこに更田さんはいない。恐らくはコックピットだろう。
「はやい起床だな」
不意に下から声が聞こえてそちらを見下ろす。眼帯をつけた男が声だけ投げかけたらしい。
「君の上官ならコックピットだ」
「そうですか。貴方も休まれては?」
そう返し邪魔だろうと上の階に向かおうとする。不意に彼は「ナマエ」と私の名を呼ぶ。懐かしさが込められたような。哀愁が込められたような。
「私の名をどこで?」
「いや……君が私の古い友人に似ていた」
そう言って彼は立ち上がる。葉巻をくわえた彼に、原則禁煙ですよ、と言っておく。懐かしい匂いだ。それはジャックが好んで吸っていた葉巻の匂いと似ている。彼がジャックと被って見えて、私もタバコに火をつけた。ジャックがもし、現実に生きていれば彼くらいの年だろうか。ふざけたように、ジャック、と彼を呼ぶ。彼はこれでもかと目を見開いて、こちらを見上げた。
「私の夢に出てくる隻眼の友人の名前です。いつも彼に殺されて目が醒める」
今度は私が煙を蒸す番だった。彼がひゅっと息を呑むのが聞こえる。無駄話だな、と区切りをつけて上に上がれば足音をたてて彼はついてきたのだが。ぐいっと手を引かれたので反射的にCQCをかけるーーが、相手も同じように受け流し、私もまたそれを受け流す、が、結局は相手の方が経験も体重もあったのだろう。逆に抑え込まれる形になる。タバコは床に落ち、彼に踏まれた。助かったのが、私の着地点がそばにあったソファだったことだろうか。怪訝な顔をしていると思う。この男が何をしたいかわからなかった。彼に退け、といいかけたところでポタリと水滴が顔に当たる。それはポロポロと私の頬を濡らす。どうして泣いているかなんて検討もつなかい。いや、一つだけ心当たりがあった。彼はーーいや、でも、ありえない。彼は現実にいないはずの存在である。
「夢の中で」
そう小さく呟く。そっと自由になった片手で彼の頬を撫でる。
「夢の中で、貴方に似た人に会う。でも、貴方は彼じゃない。そんなことはありえない。貴方は誰だ」
その問いかけに今度は目に喜びの色を灯して彼は私を見下ろした。
「俺がジャックーージョンだ、ナマエ」
「違う、貴方も、ジャックなんだ」
「いいや、俺がナマエの知るジャックだ」
「どうしてそう言い切れる」
「あの花畑。脱出に指定したあの場所。あそこで俺はお前を撃ち殺した記憶がある」
その言葉に息を詰める。彼は耳元に口を寄せた。言葉を続けた。
「お前が最期に告げた言葉も。お前の名前も。過ごした日々も。どれだけお前を怨んだことか。どれだけお前を引きずったことか。ナマエへの気持ちを抱えながら、俺は死んだ」
「死んだ?」
「あぁ、死んだ」
「でも貴方は生きている」
「それはナマエにも言えることだろう」
ゆっくりと彼は体を離す。
「俺は探していた。君だけがいなかった。いや、正しくは君だけじゃない。だが、俺が知る中でいないのは君だけだ」
そして、彼は笑う。目に愛しさを宿して。涙に悲しみを込めて。
「あの時の答えをやっと言える。俺も、ナマエをーー」
その瞬間、カタン、とした音に彼は言葉を止めたのだけど。

==



 Comment(0)
混合系 

次の日 top 前の日