2019/04/24

君僕主没


・君僕

なんて人を酔い潰したんだ!と思ったが、そういや彼女は私に持ってこられたお酒を次から次へと飲んでいたことを思い出す。恐らく毒味的なそんなことをしてくれていたんだろうが、だれが送る?みたいな話になっている連中ときゃあきゃあと騒ぐ連中は恐らく手に負えない。というか任せられない。とりあえず、ジャックさんに連絡してジャックさんに迎えにきてもらうか、とスマートフォンを取り出す。結構可愛い顔してるよね、みたいな会話にはやく繋がれー繋がれーと念じてみる。
「もしもし?サチ?どうしたんだ?」
「ナマエちゃんが酔いつぶれて寝ちゃったから迎えにきてほしいなって」
「……ああ、なるほど。今どこに?」
「××っていうとこの△っていう居酒屋さん」
「今丁度その近くにいるから向かう。5分あればつくと思う」
そう言ってきれた電話に、ナマエちゃん後5分したら迎えにくるから、と周りに言えば周りの女子も男子も色めいた。
「え、え、だれ!?まさか苗字さんって彼氏いるの!?」
恐らく二人は付き合ってるので肯定しておく。じゃあなんで苗字さんの彼氏の連絡先云々は私の彼氏(仮)が彼女の彼氏の兄弟(仮)だからという説明をする。そうしてしばらくすれば、サチ、と声がかかったのでそちらをみる。ジャックさんがいるよね。最近何処かで働いている彼はオフィスカジュアルというか、そういう格好だ。トレンチコートが似合うのは流石ナマエちゃんの見立てというか。周りがぴたりと言葉を止める。彼は私の周りを見渡して、ナマエちゃんを見つけるとやすやすと近いた。
「ナマエ、起きろ、帰るぞ」
それを数回繰り返しても起きないのでこれはおかしいと思う。密かに脈を確認した彼は仕方ないかと彼女をやすやすと抱き上げた。絶対にナマエちゃんが起きてたら断るだろうお姫様だっこである。
「サチ、悪いがナマエの分の会計と君の分の会計を彼らに渡してくれるか」
「ん、私の分も?ですか?」
「デイヴィッドが車をつけてる」
「え、嬉しいけど珍しい」
「ちょうどそこにいたから拾った。ほら、はやくしないとキップを切られる」
そう促した彼に、私は彼女と私の参加費を友達に渡して外に出た。確かに近くには車が止まっていてが、そこにはデイヴィッドがいない。首を傾げれば、「抜ける口実になっただろう?」とジャックさんが答えを告げた。ナマエちゃんを助手席にのせた彼は、私に後ろに乗るように促す。促されたとおりに私は後ろにのった。
「ナマエちゃん、起きませんねぇ」
「大方、この寝方だと酒に睡眠薬を混ぜられたんだろう」
「えっ」
「人ごとじゃなさそうだぞ。ナマエは普段飲酒を好まないからな。君のカップに混ぜられたんだろう。あんな場所には次から参加しない方が身のためだな」
その言葉にヒェッと身震いする。なにそれ怖い。だから彼は一緒に連れ出したらしい。信号で止まった時、不意に隣のバイクが窓を叩く。そこにいたのはスネークだ。
「見たことある顔が運転してるかと思えば、一緒にいたのか」
「遅い迎えだな」
「これでも急いで来たんだが。サチ、帰るぞ。上司のデートを邪魔すると後が厄介なんだ。まぁ、お姫様は珍しく寝ているようだが?」
「あんまり見るな、お前に見られると減る。端につけてやるから待て」
親切だなぁ、と思う。車を端につけてくれた彼に、私はとりあえず降りてお礼を言う。構わない、逆に恩にきる、と告げた彼はまた車を動かした。とりあえず敬礼したスネークに首を傾げていれば、彼は車を見送って口を開く。
「機嫌があんまり良くないな」
「わかるの?」
「何時もなら彼処で切り替えしがああこないだろう?」
「あー、確かに」
「まぁ、お嬢さんが起きたらうまくやるだろう。帰るぞ」
そうヘルメットを投げたスネークに、あれ私の所為なんだよなぁと思いながらヘルメットをつけて後ろに乗った。

==

二日酔いだけではないだろうけど、とりあえずは二日酔いである。起きたら既に寝室であり、何時も隣を占拠している住人はいない。動きたくもないのでそのままボーっと天井を眺める。これで知らない寝室なら全力で逃げたが、自室なのを見ると自力で帰ったのかジャックが迎えに来たのか、だろう。いや、自分の有り様を見るとジャックが迎えにきた。
足音が聞こえたのでそちらを目線だけで見る。入ってきたジャックが私が起きていることに気づいたのか、近くのベッドサイドに座った。
「起きたか」
「今さっき」
「気分は?」
「最悪だ」
そう言えば彼は葉巻に火をつける。
「そうだろうな。酒と睡眠薬を混ぜたのは流石にきつい」
「それだけじゃなさそうだが」
「無防備な誰かさんが悪い。俺でよかったな」
そう言った彼に、よくないぞ、と寝転びながら彼を蹴る。まぁ彼は葉巻を悠々と吸っているが。それにさらに腹が立ったので起き上がって後ろから葉巻を掠めとる。そのまま吸うが、予想通り不味い。吸い方がわかってない、とはいつかのジャックの言葉だろうが。ジャックが眉間にシワを寄せてこちらを見た。
「大方サチの分を飲んだんだろうが」
「サチの友人の頼みで出たが、もう二度と行かない」
「そうしてくれ」
「あぁ、もう、最悪だ。今日は動きたくない。今日は布団の中で暮らす。学校には行かない」
近くにあった灰皿に葉巻を押し付ける。文句が来るだろう、と思っていればジャックは「そうか、」と何処か嬉しそうに告げる。
「じゃあ、俺もそうしよう」
そう言う意味じゃない。

==当サイトのボスはジャック成分多めでお送りしております

何故かある免許証に、何故かある身分証。どう言うことだと頭を悩ませたが、まぁ辻褄合わせなんだろうと適当にジャックと二人で納得したのが最近である。どうやらそれはデイヴもそうであったようで、調べたら彼らは退役軍人に当たるようである。軍部めちゃくちゃ惜しい人を手放したね……と私たちの知り合った経緯を知ったサチが遠い目をして告げた。とりあえず二人とも最近は働き出して、要人護衛系の仕事をしているようである。まぁ、鈍らないからいいんだろうけど。そこでもジャックが上官、デイヴィッドが部下という立場らしいが。(まぁそれは先にジャックが見つけてデイヴィッドがジャックのスカウトという位置に当たるから仕方がないのかもしれないが)
「ボス、女子大生に何を仕込んでるんですか」
そうぼやいたジャックの部下に、俺の妻だからな、と謎の返答をした彼はをみた。
「ある程度はできてもらわないとこまる」
「この前アンタ投げ飛ばされてたな」
「つまみ食いしたら怒られたんだ」
「ジャック、君のつまみ食いはつまみ食いじゃないと何度言えばわかる?」
「たくさん作ってただろう?」
「お弁当用の作り置きだったんだが」
はぁ、とため息をついて伏せたままのジャックの部下から手を離す。ごめんなさい、と言えば全力で首をふられた。その様子を見ていた職員が口を開く。
「もううちに就職決定ですね」
「いいや、働かせない」
「えっ」
「働かせて対立企業の護衛になんかなったら困る」
またそんなことを言って、と思うが彼はわりかと本気のようである。私はため息をついて、心配しょうだなぁ、と、苦笑いをしておいた。

==

苗字さんって隙がなさすぎる。
いつだったか、そう告げた男子学生に、悪かったな、と思ったことを覚えている。隙があったほうがモテるよ、と言われたが大きなお世話だった。今の段階では隙があったら死ぬわけではないが、染み付いてしまったものは仕方がなかった。まぁ、普段一緒にいる割合が高いサチがポヤポヤとしているから余計かもしれない。そんなこんな同世代との関わりが面倒になってきた最近、ALTの方が仲がいい気がするのは気のせいではない。そんな中、告白なんてされてみろ。
「……罰ゲームですか」
そう問い返してしまうのは仕方なかった。いや、そんなことは、という反応を見るにそうらしい。ので、ごめんなさい、恋人がいるので、とお断りして頭を下げてその場を離れた。はぁ?!みたいな声が聞こえたがするーにかぎる。まぁそのあと他の学生が集まったのを見るとそうなんだろう。逆上した彼を転がすのはそんなに時間がかからなかったが。

と、いう話を最近ジャックにしたら、ジャックが指輪を買ってきて私の薬指にはめた。こういう事はしないだろうと思っていたが、シンプルなデザインは彼らしい。ただ、はめるだけはめて何処かに行ってしまったので本意は不明である。とりあえずああいうのを避けるのには最適だろうとはめたまま過ごすとする。
「え?ナマエちゃん、その指輪」
「あぁ、ジャックがはめるだけはめていったんだ。理由がわからないし、人除けにはなると思ってはめてる」
そう言ってカフェで頼んだコーヒーを飲む。デジュメをめくっていれば通ったALTの知り合いが同じく指輪を見て二度見した。
「何それ何それ何それ!ナマエ、何それ!聞いてないよ!」
相変わらずオーバーリアクションである。まくしたてるような英語だ。ohmygodとぼやくのはいかに。サチが私と彼を見比べる。そういえばサチは別クラスだった。
「何がそんなにショック何ですか」
「君に恋人がいるなら一緒に出かけてもらえないじゃないか!日本の知り合いがいないから、色々連れていってもらいたかったのに!」
「他の生徒に言えばいいでしょう」
「嫌だよ、君が一番理解するじゃないか!夫は!英語が喋れるのかい!?」

没!



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