2019/05/05
タイトル未定 1
・君僕主if
・蛇一家(といいつつ兄弟、ヴェノさんは部下)
・もしや逆はなのでは?
緊急事態だったのだ。まさか人質になるとは思っていなかったし、まさか体が反応して投げ飛ばすと思っていなかったのだ。一拍も置かずに反応したのは側にいた男性である。彼は落とした銃を拾い上げると私をかばうように膝を立て銃を撃った。と、いっても足に、だが。私はそのまま後ろからやってきていた犯人をcqcを使って無力化し銃を奪う。彼がこちらに銃を向けるのと同時に、私もまた彼ーーの奥にいた犯人に向かって銃を撃つ。彼もまた奥にいた人を撃ったらしかった。これで全員だろうか、とあたりを見る。ひっ、と逃げ出そうとした最後の一人は彼が撃った。私は敵意がないのでそのまま銃から手を離す。まさかできるとは思ってなかった、と思いつつ他の大人たちが犯人を抑えていくのを見た。手をグーパーしていれば、彼はこちらを見た。
「勇敢なお嬢さん、怪我は?」
「ありません。貴方は?」
「私はこう見えて軍人でね。でも、君が投げ飛ばしてくれて助かった」
「まぁ、私がいたから撃ちにくいですよね。でも、あの正確さをみると貴方なら大丈夫では」
そう客観的に言えば、彼は肩を竦めたが。
「君は何処かの軍隊に?」
「いえ、ただの学生です」
「……では、いつか君が来ることをいのる」
「それはできませんね」
では、とかわして言って去ろうとすれば、彼は「名前は?」と尋ねてきた。これで、ジェーン・ドゥ、と言えればカッコいいのだが、警察が恐らく許してくれないだろう。他国民であることを理由に拘束される可能性は大いにある。彼は私が去らないことに気づいたのか首を傾げた。
「ちょっと協力してくれませんか」
「協力?」
「私はこの国の人間ではないので、警察が面倒だというか……」
「その割には癖のない言葉を話す……どの国から?」
「日本から」
「就職のビザで?」
「いえ、就学のビザです。パスポートみます?」
そう言ってパスポートを渡す。彼はそれを見て私をみる。
「ナマエ・ミョウジ?」
「はい」
「……ナマエ・クラウディアに聞き覚えは?」
彼の言葉に、言葉を止めて彼をみる。それをどこで、といいかけた言葉を飲み込んで目を伏せる。しかしながら、変に空いた空白を埋める言葉には皇帝に似た言葉が必要になるのだが。
「……現実ではありませんね」
「現実では?」
「ーー夢の中で、名乗ったことはありますが」
そこまで言ったところで、警察が話を伺っても?とやってきた。私と彼を見て、私に目星をつけたらしい。やはりこうなったか、と思っていれば彼が口を開く。
「この子は私の知り合いでね。日本から留学に来たんだ。迎えにきたらこんなことに」
「貴方は?」
「オセロット」
彼はそう告げて、警察をみた。私は彼を凝視する。彼はただ、まっすぐに彼らを見たが。
「そう言って軍に照会をかけてくれたらわかる。聴取ならそちらを通してくれ。彼女はこちらで保護している」
「……わかりました」
「行こう、ナマエ」
そう私の手を引いた彼に、私は置いたままのスーツケースをとる。学校の寮に行く段取りをしていたので、どうにか別れてそちらに行きたいところであるが離してくれそうもない。
「君の夢に」
彼はそう告げて私を見下ろした。
「私はいるのか」
「ーー貴方はいませんが、同じ名前の若い方は」
「そうか」
彼はくつくつ笑って、私を見た。
「今度は俺が君より年上だな。君が一番年下だ、ヘイティ」
嬉しそうに告げた彼に、ああ、彼もまた同じなのだと理解したのだけど。
==
「君はいつ記憶を?」
「つい最近、17歳のころに」
「今は?」
「18歳」
「若いな、まだ子供だ」
そう言って車を走らせる彼に、どこに連れて行かれるのだろうか、と思いながら連れらていく。
「留学と言ったが、大学に?」
「バージニア大学に」
「海外受験で?優秀だな」
「高校に勤務していた海外の先生に勧められた。受かった時は冗談だったのに、と言われたけれど。それより、今からどこに?」
「何処だと思う?」
「大学の寮なら嬉しいなぁ」
希望をつげたが、彼は笑うだけである。
ーーまぁ、予想に反してたどり着いたのは私の希望通り大学の寮だったが。
「予想外だったか?」
「えぇ、他の所に連れて行かれるかと」
「ヘイティを連れて行けばそれはもうパニックになるだろうから、今回は遠慮しておこう」
彼はそう言ってメモを渡す。書かれていたのは連絡先だ。
「ーー今は貴方をなんと呼べば?」
そう尋ねれば彼は目を見開いた。
「俺は今も昔もオセロットだ」
「……そう、じゃあ、アダムスカ。また」
ちょっとした意趣返しである。彼は私の言葉に目を見開いてこちらを見た。私はそれに気づかないふりをしてスーツケースをひいて、学生寮に入ったのだけど。
oo本当は学生寮ないみたいだけどまぁそこはそこで
偶にオセロットが来るようになったのは監視なのかなんなのか。私についてはうまくやっておいた、とはこの国についてからの話だろうか。まぁ、勉強ばかりで煮詰まる私を遊びに連れて行ってくれるので別にいいが。偶に同級生に「おじさまとデート?」と言われたりするが、それは、まぁ、うん、仕方がないだろう。彼がロリコン扱いされないことを祈るだけだ。
彼以外とはまだ会っていない。それは私が知りたくないと拒んでいるわけではなく、彼の判断で会っていない。私が変に突っ込まないからもあるんだろうか。
ーー私が一番年下。
彼はたしかにそう言った。彼はぱっと見三十代という所だろう。ならば、ジャックはそれ以上の年ということになる。なんとまぁ素敵な年の差だろうか。記憶を思い出した、とはなんとも言い当て妙だった。再び目を覚ましたこの世界にあのゲームはない。しかし、あの世界が過去というわけではない。
「隣、いいだろうか」
そう告げた人に、あぁどうぞ、と譲る。その先にいたのはジャックによく似た人物だった。でも、かすかに違う。彼はジャックより線が細いし、何より彼の髪は白髪に近い色に思える。
「ーーあぁ、どうぞ」
「綺麗な英語だな、日本人だと聞いたが訛りがない」
「それは誰に?」
「君は知らないのか、結構噂になってるぞ」
「誰が」
「君が」
その言葉に目を瞬く。彼はそれを見て口を開く。
「誰かがシンデレラストーリーだと思っているようだ。パトロンが君をあの島国から連れ出してこの大学へ連れてきたと」
「それはあざけているのでは」
「さぁな、嘲りと嫉妬半分、推測が半分といったところじゃないか?」
「私がここにいるのは日本にきていた先生に勧められたからであり、彼とは関係ありませんよ」
「なら恋人か?」
「あいにく恋人はいませんよ。彼はなんというか……」
そう言って彼をみる。彼は言葉の続きを待つようにこちらを見た。
「……保護者?」
私の言葉に彼はクツクツと笑った。いかにも面白いというように。何か変なことを言っただろうか、と思えば彼はすっと手を差し出す。
「ジョージだ。ジョージ・シアーズ。経済学部だ。」
「ナマエ・ミョウジです。経済学部ならあまり被りませんね。私は歴史学なので」
そう言って彼の手を握る。彼は肩をすくめて「と、思うだろう?」と告げた。どういう意味かと理解するのは、次の授業も同じ授業で、よく鉢合わせするようになったからだ。まぁ、お互い一匹オオカミというかそういう風だったから余計に、だろうけども。
==
「パーティー?」
テラスのカフェである。ジョージは相変わらず優雅にコーヒーをのんでラップトップを見ていた。
「あぁ、各界の金持ちが集まる。まぁ、自分を売り込むための場所だな。基本的には上級生が誘われるが」
「君が声をかけられた?」
「あぁ。だが、パートナーがいるようでね」
「……他の女の子に声をかければいいじゃないか、君が声をかければ断る人はいないだろう?」
「そうだな、君以外は。嫌か?」
「あー、苦手なんだ、そう言う場所は」
そう言って目を逸らし、持っていた本を読む。なんとも面倒くさそうである。
「面倒くさいのは分からなくもない、が、私のパートナーが務まるのは君ぐらいだ」
「それはどうかわからないが、そもそも、ドレスがない」
「パトロンに強請ればいい。こう言う時のパトロンだ」
「だから、そう言う関係ではないと……」
ため息混じりに言えば、彼は頬杖をついてこちらをみる。本当に、ジャックそっくりだ。
「ーー私には君が必要だ」
止まった思考、を、頑張って動かす。彼は人心掌握に長けているきらいもある。私は苦笑いして彼を見た。
「……なんとも人を動かすのに都合のいい言葉だな。仕方ない、今回は話に乗ろう。君には貸しを作った方が良さそうだ」
「……おっと、そうきたか」
=
「そのドレス、似合ってるじゃないか」
迎えの車の中でそう白白しく言ったジョージに、お世辞でも嬉しいよ、と肩をすくめる。彼はクツクツと笑う。いつも思っていたが彼は何処かのお坊ちゃんだろうか。運転手付きの車でくるとは。
「結局ドレスは例のパトロンに?」
「お店だけ聞いて買いに行った」
「ケチなパトロンだな」
「だから、パトロンじゃない。学校内でもパーティーがあるからそれを理由にした。お陰で夏休みはどこにもいけそうもない」
「帰国する予定はないと言っていなかったか?」
「……遊びに行きたかった」
そうぼやけば、彼は意外だったのか目を瞬いた。私だって遊びたいときは遊びたいのだ。アメリカといえばディズニーランドやミュージカルである。このままではアルバイトをする夏休みになってしまう。窓の外を眺めてため息を着けば彼が口を開いた。
「連れていってやろうか?」
その言葉に彼をみる。しかしながら、他人にお金を出させるなんて嫌なので首を左右に振っておく。オセロットといい、お金を出そうとするのはやめてほしいところである。
値踏みされてるなぁ、と思う。私はまぁジョージのパートナーを勤めればいいので、彼の隣にたって愛想よく頷いているけれど。まぁ、周りは勝気であったり売り込みに必死なのはわかる。大手会社の社長や取締役、政治家、官僚、エクセトラ。気に入られれば将来は決まったようなものなのだろう、とレモネードに口をつける。恐らくは彼らの情報交換の場でもあるのだろうが。ジョージの周りが白熱した議論をし出したので、私は少し距離を置くことにした。議論の分野は私の管轄外だ、巻き込まれると面倒そうである。私が離れるそぶりを見せたからか、ジョージの視線がこちらに向く。テラスにでもいるよ、と口パクで言えば彼は頷いた。そのまま人の波を擦り抜けてテラスに出る。そこで深呼吸をした。やっぱりああ言う場所は好きじゃない。まぁ、テラスにいても喋りかけてくる人は来るし、やはり値踏みされるが。……これはジョージがいた方が楽なのでは、と思い始めた頃に颯爽とジョージが現れたけれど。慣れてるなぁ、とエスコートする彼をみて思う。何処に連れて行かれるかと思ったら、エントランスだ。
「もういいの?」
「あぁ、目的の人物には自分を売れた、し、他はあまり好きではない。挨拶周りは兄達で十分だろうしな」
それは初耳な気がする。そう思っていれば目の前に車が止まった。
「ジョージ、お前が抜け出すなんて珍ーー」
珍しい、そう彼は言いたかったに違いない。車から顔を出したのはオセロットである。彼は眉間にシワをよせた。
「ナマエがどうしてジョージといる?このパーティーに出るなんて聞いてないぞ」
「……ナマエの噂のパトロンはお前か、オセロット」
そう言ったジョージに私は二人をみる。二人は知り合いか?と聞けば彼らはこちらをみた。
「あぁ、ちょっとした知り合いだ。それにしても、そのドレスは似合ってる」
「お世辞でも嬉しいよ、ありがとう」
「ナマエ、帰るぞ。寮に入れなくなる」
「……乗っていくか?」
「アンタは兄の迎えだろう」
近くで止まった車は行きと同じ車だ。一応ひらりと手を振っておいたが、不服そうな顔だった。
「ナマエ、彼とは何処で?」
「……空港でーー色々あって助けられた」
「色々?」
「色々」
「人質にでもなったか?」
明らかに冗談っぽく言われたが、事実そうなったので肯定するとする。「よくわかったな」と言えば彼はこちらを二度見したが。
==
仲が悪いのだろうか。オセロットにそう問えばそうでもないと言われたが、ジョージは「あいつは信用してない」と言った。何かあったらしい、が、ジョージは触れないで欲しそうなので触れないでおく。少し機嫌がわるそうだ。
「夏休み」
「……夏休みがどうした?」
「何処かに行きたい。州の中でいいから」
そう頬杖をついていってみる。彼は一拍置いて口を開いた。
「てっきりフロリダのディズニーワールドあたりに行きたがるとおもったが」
「……なんで知ってるんだ」
「留学生は大体行きたがる。そうか、行きたいのか。君は意外と子供っぽいな」
可笑しそうに笑った彼に「悪かったな」とすねておく。
「で、何泊するんだ?」
「え」
「ディズニーワールドは1日や二日でまわりきれないぞ」
==
「ナマエ?」
不意にかけられた声に振り返る。そこにいたのは知らない男性だ。何故私を知っているのだろうか、と、考えていれば彼は頭に手を当てた。……体調が悪いのだろうか。とりあえず、近いて大丈夫ですか?と尋ねてみる。あぁ、と頷いた彼はこちらを見下ろす。
「お前は……」
「私はただの学生です」
それだけ言って、持っていたスポーツドリンクを差し出す。彼はそれを受け取った。
「ただの学生、な」
「何か?」
「いいや、ありがとう。助かった。偶にああなるんだ」
そう言った彼に大丈夫そうだな、と思う。さて、そろそろ折り返さなければ授業に遅れるだろう。
「大丈夫そうなので私は行きますね」
「……お前の……貴女の名前は?」
「名乗るほどのものではありませんよ」
緩く笑って頭を下げて折り返す。何処かであったのだろうか、なんて。
==
「なんでこういうことになるかな。日本に帰ったらお祓いに行こう」
そうため息をついてみる。近くにいるらしいジョージが「余裕だな」と小さく呟いた。視界は覆われて見えそうもない。後ろ手にガムテープを巻かれているが、どうにか外せないものかと眉間にシワをよせた。周りに足音はしない。後は神さまに祈る声と啜り泣く声くらいか。
「普通は周りみたいに泣くものだぞ」
「君も落ち着いているな」
そう言って手を動かす。誰かの手に当たった。
「君の手か?」
「なんだ、握って欲しいのか」
「ガムテープを外して欲しい。君は右側にいるんだな?」
「あぁ」
そう頷いた彼の肩に擦り付けるように目隠しをずらす。なんとか下がった目隠しに、周りの状況がやっとわかった。やはり周りには犯行グループはいないらしい。同じようにされている学生が目につく。
「ジョージ、目隠しは外す?」
「外せるのか」
「君の肩あたりで目隠しを外させてもらった」
「……外そう」
彼の言葉に彼の目隠しーーのこめかみあたりを噛む。そのままずり落とせば、彼はこちらを見下ろした。
「行儀が悪いぞ」
「手が使えないから仕方ない。ガムテープが巻かれるとは思わなかった」
「外してやろうか」
そう言った彼の両手は自由である。……コイツワザと捕まったふりをしていたらしい。むっとしていれば彼はじっとしていろ、と私に告げた。袖からか取り出したカッターナイフで彼はテープを切る。ようやく自由になった両手に息を吐いた。
「人が悪い」
「私がいなくなると君が怖がると思ったが、案外そういうことでもなかった」
「怖がりはしないが、心配はする。か、今君は大丈夫なんだな、とわかった」
神経を張り巡らしながら周りを見る。どうやら倉庫に閉じ込められているようである。扉は一つ、ダクトもない。人が密集しているし、臭いもある。監視カメラはない。運がいいのは私達が端にいることだろうか。とりあえずジョージと一緒に扉の傍まで行った。壁には特に何も仕掛けがなさそうだ。ジョージは扉を調べたらしい。何も仕掛けはない。が、不意に聞こえた足音に彼は眉間に皺をよせた。隠れていろ。口パクでそう告げた彼に、何をするつもりなんだろうか、と思えば彼は扉を開けた。
「おい、お前、何をしている!」
「っ!」
「どうやって抜けだした?」
カツリカツリと誰かが彼を部屋の中に追い詰める。一人、二人……三人。銃口をむけた彼らに、ゆっくりと扉を閉め、そのまま彼らの背後に立った。引き金を引く瞬間、一人を拘束する。ジョージがその隙に銃を奪うと、銃で拘束していた男の鳩尾を殴る。呻いた彼から手を離し、私はそのまま隣にいた男をのした。もう一人も声からしてジョージがのしたんだろう。周りの学生は何が何だかわからないため震え上がった。そのまま落ちた銃を拾い、鳩尾を殴られた彼に向ける。
「形勢逆転だな」
「なん、なんだ、お前らは」
「私は家柄出来るだけだ。彼女は知らないが」
「私はまぁ、ノーコメントで」
やれやれと息を吐く。「で、」と彼を見る。
「学生を人質に何をする気?」
「大方政府に対して身代金でも求める気だろう。……あとは、CIAへの報復あたりか」
「あぁそうだ」
「やめておけ。どの部署を恨んでいるかは知らないが、準軍備隊のどれかが動き出すのが目に見えている。鎮圧もそのうちされるだろう」
「本当にそうだと思うか?」
「なんだと?」
「ここにはまだ名を上げてない学生ばかりだ。そんな奴らのために、政府の犬が動くと思うか。自惚れるのもいい加減にしたらどうだ」
嘲笑うように告げられたそれは、それは彼のなにかを抉ったらしい。ジョージが眉間にシワを寄せて、男に向かって引き金をーーひきそうになったので、男を投げるとする。変な声を上げた男はこの際置いておく。ジョージの顔を覗き込む。
「ジョージ、どうしたんだ、大丈夫か?」
「……いや、大丈夫だ」
「大丈夫じゃなさそうな顔だ」
「気にしなくていい」
「だがーー」
「気にするなと言っているだろう!」
そう怒鳴った彼に仕方のない奴だ、と息を吐く。しばらくはそっとしておくべきだろう。その時ちょうどなったスマートフォンをとりあえずとった。オセロットからである。
「ナマエ、今どこにいるんだ?」
「ご察しの通り閉じ込められてる」
「無事なんだな」
少し安堵したような声だ。
「ジョージとも連絡が取れない。知らないか?」
「ジョージなら側にいる。私を庇って巻き込まれてくれた。人質は二十人程度、倉庫に閉じ込められている。扉はあいにく一つだけ。外の状況はわからなーーあっ」
ジョージが私のスマートフォンを取り上げると、スマートフォンを放り投げて銃で撃った。周りがひどく怯える。ジョージ、と眉間に皺を寄せる。
「あぁすれば、お前のパトロンは動くだろう」
「一理あるかもしれないが、私のスマートフォンなんだが」
「まだ買えばいい。新しいのを買ってやる」
「出るぞ」
「外の状況がわからないのに行くのは危険だ」
「心配いらない」
「ジョージ、なにを焦ってるんだ、頼むから落ち着いてくれ」
「私は落ち着いている!」
「落ち着いてないから言ってるんだ!」
そう言って彼の肩を掴み、無理矢理こちらを向かせる。
「さっきから何を焦ってるんだ、君らしくない」
「逆に私らしいとはなんだ、兄のようになれと君までいうのか!」
「ジョージ、私は君の兄を知らない。君の焦りが何からきてるからわからない」
そう小さく首を左右に振った。そして彼の目を見ながら落ち着かせるように告げる。
「君は君だろう。君の兄がどうだとかは関係ないよ。君は、私の友達の、ジョージだ」
数秒、であるのか、数十秒であるのか。じっと目を見ていれば彼は息を吐いた。
「すまない、取り乱した」
「いいや……これからどうする?」
「彼らはこのままの方が安全だろう。さっきも言ったが恐らくお前のパトロンが介入してくるはずだから助け出されるだろう。目下の問題は……」
その時である扉が開いたのはしまった、と思うのと扉の向こう側にいた目指し帽を被った人物たちが銃をこちらに向けるのは同時だった。
「通信が帰ってこないと思えば、いきのいいのが二人もいるな。銃から手を離して両手をあげろ」
その言葉に目を細める。まぁ、そのうちの一人が、銃口を私たちではなく周りの学生に向けたため私たちは銃から手を離して両手を挙げたが。
「連れて行くぞ。まずは二人、見せしめだ」
「見せしめ?」
「お前たちはわからないだろうが、外はマスコミで一杯よ。そんな中、お前らを殺せばどうなる?」
「要求が通りやすくなるとでも?政府は簡単に人を殺すぞ」
ジョージの言葉に彼らは鼻を鳴らした。
「言ってろ。連れて行け」
==
さて、どうやら彼らは教員だかなんだかはもう殺してしまっているらしい。下に転がる死体を無視して私とジョージは引き摺られるように屋上をいく。遠くからは人の声やサイレン、マスコミだろう人たちのざわめきが聞こえる。
「男からいく?女からいく?」
「さあて」
「私からにしろ」
そう言ったジョージに、男は口を開く。
「オリエンタルからにしろ。もう片方は押さえ込め」
どうやらそれは私を指すらしい。髪の毛を引っ掴まれて屋上縁に立たされる。ちらっと後ろを見下ろせば結構な高さである。下には武装した勢力や同じく武装した警察やマスコミがうじゃうじゃいた。さて、どうするべきかと考える。ジョージは押さえつけられていて動けそうもない。上にいる敵はまだ少ない。飛び降りるとしても死ぬかもしれない高さである。
「向こうを向け」
その言葉に外側を向く。空が青くて高い。後ろで男は演説のように声を上げる。それを聞き流しつつ人ごみを見つめた。ただこちらに向かってカメラを構える周り、その中を掻き分けるようにして進む男性を見つける。それを止めようとするオセロットの姿も。最前線まで来た彼ーーではなく、その隣にいるオセロットを見る。そして手を動かした。恐らく見えるだろう。まぁ、配置の確認というわけだ。それに気づいたオセロットが口元を隠す。男性が気づいて同じように口元を隠して指示を出し始めた。
「最後に何か言い残すことはあるかな、オリエンタル」
そう尋ねた男は拡声器のマイクを私に渡す。私は彼の方へ振り向いた。
「そうだなぁ、じゃあ、一言だけ」
そういって緩やかに笑う。足元を縁にかける。オセロットをちらりと見て頷いたのを確認すると昔の彼の真似をすることにする。
「にゃあお」
そうして私は後ろに重心をかけた。男が目を見開く。落下する手前、私は縁に手をかけて落下をとめるともう片方の手で下げられた銃をつかみ下に落とす。その後に起き上がる勢いを利用して覗き込もうとした男の横顔を蹴った。ひどい音がした気がしたが気のせいだろうし、一瞬ひるんだ周りは突入してきた部隊とジョージが制圧したらしい。とりあえず男を押さえておくかと彼を拘束し押さえつけた。そこで気づく。あ、コイツ何か持ってる。しかもやばいやつだ。これは離れるに限る。ピピッとなったその音に伏せるように叫び、そのまま私はまた飛び降りた。その瞬間、爆発音がする。破片から身を守るために手をあげた、が、時間が惜しい。一か八かで壁に手や爪や足を立て減速を図るが、まぁ、痛いだけで無理なわけで。落下して行くだけかと思ったが、誰かがしたのかいの窓を開けて私の手を掴んだ。
「今度は飛んだじゃじゃ馬になったものだな」
軍服を着た男性には見覚えがあった。ジャックに似ている。でも、違う。両手で私の手を取った彼は後ろにいた誰かに声をかける。現れたのは彼と同い年ぐらいの男性だ。髪は金に近い。
「もう片手を出せ」
その声に手を上げる。その手を取った彼に、私は現実に意識を戻す。足を近くの段差にかける。そのまま引き上げられて室内に入った。
「大丈夫か」
「ありがとう、ございます、」
「……下に救急車がきてる。歩けるか?」
「はい」
「兄弟、長男が運んでこいと言ってる」
「……だろうな」
歩けるんだけどなぁ、と思ったが恐らく緊張と緩和の関係だろう。なんとも情けないことだろうか。腰が抜けたというか、震えがでた。
「……すいません、立てそうもないです」
「だ、そうだ。俺は末っ子を迎えに行く」
「わかった」
席を外した金髪の男性に、私は彼を見上げる。彼は困ったようにこちらを見下ろす。
「久しぶりだな、パートナー……いや、『はじめまして』、か?」
その言葉に、私はああやっぱりと目を伏せた。が、最後、眠ることも意識を飛ばすこともないだろうと思っていたのに体の自由が効かなくなる。意識がもうろうとしていく。スネークのおい!?という声が聞こえて、意識は飛んだ。
==
「記憶は恐らく保持しています」
「DDではあるんだな。では何故俺やボスに会わさなかった?未成年だからか?」
「いえ、そういうわけでは。彼女はあの世界のことを夢だと」
「夢……また思い出して日が経ってないのか」
「恐らくは」
==
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