2019/05/11

君と僕と、山猫と


「いいものをあげようか、オセロット」
そう言って持っていた銃を渡す。SAA。綺麗な彫刻が施されたコレは、ある意味御守りだった。血の繋がらない父から譲り受けたものである。だが、もう必要がないものである。いいんですか、と尋ねた彼に、構わない、と答える。
「きっとこの銃も君に使われた方が喜ぶ」
あぁ、どうか、彼に神のご加護を。

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また懐かしい夢を見たものである。体が動かないのは、金縛りではなく、隣で寝ているジョンが離してくれないからだ。痛い。しかしながら、また、あの何かが落ちてきたような音がして無理矢理体を起こした。ジョンが何か文句を言ったがベッドから降りて窓をあける。白い花が舞う。ジョンが来てから一年。またこの花が咲く季節になっていた。その中に見つけた赤は血ではない。襟巻きだろうか。見下ろした人物は私の記憶よりも歳を重ね、しかしながらジョンよりは年下だろうことがわかる。脈を確認する。ある、し、呼吸も楽そうだ。
「ーーオセロット」
そう言って彼を揺する。もう一度なを呼べば、どろりとした目で私を見た。
「ーーヘイティ?」
彼はゆっくりとその手で私の顔を触る。そして何か満足してーーまた意識を飛ばした。
「ナマエ?」
「ジャック、オセロットが降ってきた」
「……は?」

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オセロットぐらいなら私も楽々運べるだろう、と思ったが、ジャックがオセロットを担いだ。ベッドに降ろすかと思えばソファに寝かす。投げるかとヒヤヒヤしたが、そうでもないらしい。
「まさかまた降ってくるとは」
「まて、俺も降って?」
「落ちる音がしたから恐らくは?」
「落ちる音?俺は全く聞こえなかったが」
「君は寝てだからだろう。とりあえず、コーヒーか何かをいれてくるから見ておいて」
そう彼の寝癖を手櫛で整えて後にする。何か動こうとしたジャックに声をかけた。
「今のうちに外に連れ出すなんて酷いこと、しないよな?」
「何もしてないだろう?」
じとっと彼を見る。彼は顔をそむけ、わかってる、とむくれた。手招きされたのでそちらに行けばキスを落とされる。
「コイツには恩がある。流石にすぐ捨てるなんてことはしない」
……すぐ捨てる?
若干言いたいことはあるが、仕方がない。じゃあ任せる、と言えば彼は離そうとはしない。しばらく見つめあったが、このまま雰囲気に流されると大変なことになるので首を左右に振る。ちょっと拗ねたが気にしないことにした。

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コーヒーを淹れている間に目を覚ますことはなかったらしい。一応三つコーヒーを淹れたが、ジャックが着替えていること以外は変わりがない。
「まだ目を覚ましそうもないから、走ってくる。コーヒーはあとで飲む。目を覚ましたら鳴らしてくれ」
「いいのか?」
「いいわけないだろう。だが、男には色々あるんだ」
ムッとしてそう告げたジャックはもう一度、起きたらスマホをならせ、と釘を刺す。はいはい、と返事をして彼のそばに座った。
しばらくすれば、身動ぐ音がした。起きたらしい、と雑誌をめくる手をやめる。勢いよく起き上がった彼に、おはようオセロット、といえば彼はこちらを見た。
「ヘイティ?」
よろよろと起き上がった彼は私を触る。幽霊じゃない、と笑いながら手を取ってやめさせれば、あぁ、俺も死んだからか、などと自嘲したように言う。とりあえず、今のぼんやりした状態から目を覚まさせるため、取っていた手をひねってみる。ソファに着地した彼は一瞬驚いたように固まったが、すぐにこちらを見上げて笑った。
「本当だな、ボスとヘイティの動きは少し違う」
「ボス?」
「スネーク……貴女がいうジョンのことだ」
「体格差、体重差、動きの癖がお互いにあるからな」
「昔みたいに痛いと喚かなくて残念ですか?」
「少しだけ」
そう少しつまらない顔をして手を離す。そろそろ目を覚ましただろうか、と彼を見下ろした、ら、引き寄せられたが。
「ヘイティが迎えにきてくれるとは思わなかった」
「オセロット、それなんだが、少し違うようなんだ」
「少し違う……?」
「話すとややこしいんだが……」
「ーーボス?」
小さく私の後ろを見て口を開いたオセロットに、私が振り返る。まぁ、なんと不機嫌そうなジャックだろうか。
「ナマエ、オセロットが起きたら鳴らせと言ったよな?」
「彼は今起きたところだ」
「ほぅ?それにしては、ベタベタと、くっつきすぎじゃないか」
「欧米ではこんな感じだろう?何怒って……あぁ、ヤキモチか」
そう納得すれば、ジト目で見てきた。とりあえず、オセロットの手が離れたので立ち上がる。
「ボス?どうして」
「ナマエーーヘイティ、から何も聞いてないのか?」
「いえ、まだ、何も」
「じゃあ、前体験者である俺が説明しようじゃないか、なぁ、オセロット?」
「……えぇ、まぁ、はい……」
そうサッと目をそらしたオセロットに、首をかしげる。とりあえず何か作ってくると言えば、ジャックがそこそこ時間がかかるものをリクエストした。仕方ないので作るけども。

「オセロットを虐めるのは大概にしろ」
肩で息をするオセロットとジャックを見てそう告げる。虐めてない、男同士の話をしていただけだ、と主張するジャックには悪いが、部屋が散らかっているのをみると結構な暴れようだ。
「オセロット、大丈夫か?怪我は?」
「いや、……大丈夫、です」
「話は理解できた?」
「にわかに信じられませんが、貴女とボスがいるのなら信じるしかないですね。他には?」
「この世代はいない」
「この世代、と言うことは他の世代からいると?」
「上じゃないがな」
そう葉巻に火をつけたジャックに私は首をかしげる。まぁ、だいたい誰か想像はつくが。眉間にシワを寄せたオセロットに、放っておいても危害はない、とジャックは首を振った。そして、ジャックがこちらを見た。
「……ナマエ、大学はいいのか?」
「今日は休む。……あぁ、でも、私は少し出かける」
こうなった以上、オセロットの服なんかを買った方がいいだろう。幸い、ゲストルームが空いている。当初ゲストルームはジャックが使っていたが、今や彼は私の部屋を使っている為空室だ。
「部屋を散らかさなければ別に話してくれて構わないが、オセロットを虐めるな」
「俺がいつ虐めたんだ」
「私の記憶では今回を抜いても二、三回あると思うが?」
「2、3回?」
「私があげたSAAにケチをつけてくれてありがとう、ジャック」
そうひらりと手を挙げれば、流石に思い当たったのかこちらを見た。
「まて、あれ、お前の……通りで!」
「何が。オセロット、食事はダイニングにあるから話が落ち着いたらジャックと食べてくれ」
それだけ告げて部屋を後にする。ジャックがまだ何か言っていたが、気づかないふりである。

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「増えてないか」
「増えました……」
買い物をしていたらサチ達に会ったのだが、向こうも向こうで増えていたらしい。デイヴィッドとサチ、もう一人は眼鏡をかけた青年である。
「二人の知り合いかい?」
「うん、私の友達で、色々知ってる人。ナマエちゃん、この人はハル・エメリッヒ」
「オタコンって呼んでくれ。よろしく」
「こちらこそ」
軽く握手をする。細い、と言うことはグリーンカラーではなさそうである。
「ナマエちゃんは一人で買い物?珍しいね」
「まぁ……多分、しばらくはうちに来ない方がいいかもしれない」
「どうして?」
「急な来客があって」
「あぁ、ならゲストルームも満室か。借りようかと思ったんだが。しばらくはソファで我慢しよう」
「まぁ、こちらも何か考えるよ」
「荷物を運ぶか?」
「いや、ありがとう。大丈夫」
じゃあ、と手を振って荷物を握る。服のサイズは目視だが、まぁ、ジャックよりは細いのは確かだろう。それにしても、増えたとはどういうことなんだろうか。私と同じようなことがあったのか、それとも。


家に帰るといつも通りジャックとちょっと草臥れたようなオセロットがコーヒーを飲んでいた。話は済んだ?と尋ねれば、粗方な、と返答がくる。頭を抱えているオセロットは大丈夫だろうか、と彼を覗き込む。
「オセロット、大丈夫か?」
「えぇ、ありがとうございます」
「ジャックに何かされたら言ってくれ」
「なんで俺が何かする前提なんだ」
「さっき虐めてただろう。無闇にCQCをかけたり」
「あぁいえ、ヘイティ、あれは私が悪いので……」
「ヘイティーーヘイトは元はクラウディアさんのコードネームだから、私のことはナマエと呼んでくれたらいい」
「呼びづらかったらヘイティでもいいんだぞ、オセロット」
「ジャック、威圧しない……オセロットはなんて呼ぶかな……」
そう言えばジャックが耳元でアダムスカって呼んでやれ、と告げる。アダムスカ?と首を傾げたが、ジャックが顎で呼ぶように促したのでとりあえず呼べばいいんだろうか。
「アダムスカでいいのか?」
「っ、ボス、からかわないでください……!」
「おっと、俺はボスじゃない。ここではただのジョンだ、アダムスカ」
カラカラと笑ったジョンに彼は目を見開いてーーそうですね、と緩やかに笑った。

==


私が大学に行っている間、ジャックがアダムスカを色々と連れ回しているようである。なので一人で大学を行き来しているのだが、私が別れた説が出ているらしい、とはオタコンも連れてくるようになったサチの言葉だ。
「そんな馬鹿なことがあるとは思えないが……実際どうなんだ?」
「別れてないが、最近新しい同居人を連れ回してるんだ。まぁ、仲が良くて結構」
そう言ってレジュメをまとめてサチに渡す。彼女はありがとう〜!とお礼を言った。
「しかし、同居人ということは居つくのか。よくアイツが許したな」
「いや、許してないみたいだな。私が可愛が……外に一人出すのが心配なので家にいてもらってる」
「子供かい?」
「いや」
「ならナマエより年下か?」
「……年上……?」
「女の人?」
「男」
そう言えば、二人が動きを止めたがオタコンが親戚かい?と尋ねた。面倒くさいのでそうしておくとする。恐らく、ジャックも会わせるつもりは当分なさそうだ。まぁ、彼はボスの息子であるし私の養父だったクラウディアさんはコブラ部隊にいたのだから、コブラ部隊に親がいるもの同士親戚といっても……流石に無理があるか。聞き慣れた足音がして振り返る。そこにいたジョンとアダムスカに、ひらりと手を振った。
「珍しい」
「別に珍しくないだろう?帰るぞ」
「はいはい。じゃあ、」
そうサチ達に手を振る。オタコンはジャックを見て固まったが。二人はアダムスカにピンと来てないんだろうか、何も反応がない。が、逆にこちらの二人が何かあるようである。
「ナマエ、あの眼鏡の男は?」
「オタコンーーハル・エメリッヒ。デイヴィッドとサチの友達」
私の返答にアダムスカもジャックも安心したようだったのだが。

==追記は没
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