2019/06/02

兼任司書カルデア没二巡目 1


新たに発生した特異点についたが、アクシデントでみんなとはぐれてしまったらしい。ふむ……柳生先生や以蔵さんはマシュや藤丸と一緒だろうか。とりあえず気配を探ろうとあたりを見渡していれば近くの茂みが揺れた。現れたのは今回連れてきていないシェイクスピア先生である。
「おや?」
首をかしげた彼は私をマジマジとみる。
「マスター、では、ないようですが……ふむ……」
「シェイクスピアさん、カナタさんいた?」
その後から顔を出したのは明るい茶髪の女の子とマシュである。はた、とあった目に、彼女は首をかしげる。
「ダヴィンチちゃん、人違いでした」
『ん?おかしいなぁ、たしかにカナタくんと同じような魔力の質だったんだけど……』
そんな会話に私は動きを止める。あ、これアレじゃないか。超ややこしいことになってないか。
「あ、マシュ、この子、カルデアの戦闘服きてるよ」
「あ、本当ですね」
「えーと、あの、貴女達は私と初対面なんですよね?」
そう尋ねればそこにいた彼女たちは首をかしげる。ダヴィンチちゃんが、どういうことだい?と私に尋ねる。
「あー……えーと……あの、貴女達はカルデアから来たんですか?」
「はい、まぁ、そう、とも言えますね」
「……奇遇ですね、私もカルデアから来ました。ついさっき、ダヴィンチちゃんとドクターに見送られてもう一人のマスターやマシュとレイシフトしたのですが……」
「えっ?私ですか?それにマスター?」
「えーと、私?」
「貴女ではありません。藤丸という私と変わらないくらいの少年でーー待ってください、貴女がカルデアのマスター?」
「うん、一応……」
「一応ではありません、カナタさんと先輩はマスターです」
その言葉に納得する。ははぁ、と手を叩けば彼女達は困惑した。が、話は簡単である。向こうは恐らく、並行世界のカルデアのマスターだ。そして、カナタときたのでそれは確定だろう。藤丸が女の子、そして私ではなく兄がカルデアにいる世界から来た人達だ。
「なるほどなるほど……」
「えーと、何を納得されているのでしょうか」
ちらりとシェイクスピア先生を見上げる。恐らく彼は私が聖遺物を渡していた結果、兄に呼ばれたのだろう。
「と、いうことは」
私の召喚で柳生先生と宝蔵院さんは偶然だと思っていたが、兄が持たせてくれたお守りにどちらかの聖遺物があったと推測できる。ふむ、と納得していれば、もう一度、あの、とマシュに声をかけられた。
「あぁっと、すいません。私だけ納得したような形になってしまって」
「いえ」
「私の名前は苗字ナマエと申します。貴女達が探す苗字カナタの実妹、そして貴女達の世界では人理焼却に巻き込まれて消えた存在でしょう」
そう名乗れば彼女達は動きをとめる。
『なるほど、君は並行世界からきたカルデアの人というわけか』
「そういうことです、ダヴィンチちゃん……いえ、貴女とは初対面でしたね。さて、お互いの状況や情報を確認したいところですが、私は私のところのマスターやマシュを探さないといけませんので、失礼します」
「ちょっと待って、一人は流石に危ないよ!サーヴァントもいないんでしょう!?」
「ははぁ、流石の藤丸の鏡面向かいさん。お優しいですが、私が有害な人間だったらどうするんですか。私は大丈夫でーーはないですねぇ」
そう彼女達の反対方向を見る。マシュが同じくそちらをみた。敵勢力を確認、という声にマスターである彼女は私の前に立つ。
「シェイクスピアさんはその子をお願いします!」
「ええ、わかりました。さて、お嬢さんはこちらに。いくつか質問もよろしいですかな?」
「よろしくないです」

==

「シェイクスピア先生、いい加減しつこいですよ。いくら素晴らしい作品を作るためと言っても、質問攻めはおやめください」
戦闘が終わってもなお質問してくる彼にそう言えば彼は固まった。というか彼女達も動きを止めた。全く違う反応だね、とは白い帽子を被ったサーヴァントの言葉である。
「君のお兄さんは彼を殴って止めるから」
「殴る?」
「はい、ある意味お約束といいますか、はい」
「シェイクスピアせんせ……さん、大丈夫なんですか」
「残念ながら、慣れましたとも。それより、お嬢さん、先程なら私のことをなんと?」
「あぁすいません、こちらの貴方のことをああ呼ぶので」
そういえば彼はすっと目を細める。ええっと?と首をかしげれば、アンデルセン先生が口を開いた。
「おい、現実を見ろ、現実を。お前のマスターは顔だけは整った体育会系和風ゴリラのカナタだ」
その発言に吹き出してしまったのは仕方ない。ふふ、と笑えばアンデルセン先生は顔をしかめたのだけど。
「おい、兄をこけおろしにしたのに笑うのか。恨みでもあるのか?」
「いいえ、的を射ていると思って……ふふふ、兄は本を読まないですもんね」
「はい、そうですね、カナタさんはあまり読書を好まれません。いつも部屋に積んでおられます」
「えーと、ナマエちゃんは本が好きなの?」
「えぇ、好きです。カルデアにある本は大方読み終わりましたので、先生達の書き上げる話を大人しく待ってます」
そうニコニコと笑う。まぁ、その二人の先生は締め切りデッドレース中であるが。
「マスターや坂本さんとは似ても似つかないなぁ……可愛い」
「……はて、坂本さん?」
「あぁ、僕のことだよ。坂本龍馬、こっちはお竜さん」
「……、えっ、あ、え!?坂本龍馬、え!?」
「どうかしたかい?」
「あぁ、いぇ、……私の育ての兄が大層貴方のファンでして……しかし、何故坂本龍馬さんが水神様を?」
「水神様?」
「おりゅうさんさま?は龍神様ではないのですか?」
そう尋ねれば一部に警戒された。ふむ、これは突いてはいけない箇所だったのか。やってきた彼女は私の上からしたまで見ると口を開く。
「お前、カナタと同じでそういうのが見えて好かれるタイプだな。色んなものが視えすぎて困るタイプだ。あんまり突くと連れてかれるぞ、カナタと違ってひ弱そうだからなお前」
「はぁ、気をつけたいとは常々思っているのですが……」
不意に感じた気配にそちらを見る。サーヴァント反応だ、と告げたダヴィンチちゃんに、周りは警戒したが私は慣れた気配であるため見つめるが、あ、やばい、と思う。マスター!と現れて私を引っつかんだのは以蔵さんだからだ。
「マスター、無事か」
「はい、無事です。以蔵さん、彼らは敵ではないので刀を納めてください」
「どうみても警戒されちょったけんど」
「それは私が余計なことを突いたからでして」
刀を納めてくれたのはくれたが、柄から手を離さないのを見ると警戒しているらしい。リツカさんが彼を見て首をかしげる。
「えーと、以蔵さんはナマエちゃんのサーヴァントってことだよね」
「あぁ?なんでワシの名前をしっちょるんじゃ」
「以蔵さんでない以蔵さんとお知り合いだからでしょう」
「ワシじゃないワシ、やと?……まぁええ、マスター、藤丸が探しちゅう。魔力探知でマスターを探しちょったら怪しい男を見つけたき、龍脈からは動いちょらん」
「怪しい男?」
「おん、マスターとは似ても似つかん男じゃ」
「あぁ、それ多分彼らの連れなので彼らも連れて行きましょう。以蔵さん、道案内をお願いしても?」
「マスター、いっつもワシらが言っちょることを忘れたやが?警戒すべきぜよ」
「彼らは大丈夫ですよ。私の読みが外れたことあります?」
「……はぁ、ほんっに、おんしはお人好しぜよ。……まぁ、マスターになんかあったらワシが斬るまで、じゃけんど。こっちじゃ」
そう私を担いで引き返した彼に、毎度のことながらこの運び方はなんとかならないものかと思う。まぁ彼らもついてきているからいいのだろう。たったっとリツカさんとマシュがやってきてとなりに並んだ。

==

龍脈につけば、兄のそばに柳生先生とか藤丸の主力がいた。なるほど、めちゃくちゃ警戒されてる。こちらに気づいたサーヴァントとマシュ藤丸たちに以蔵さんが私をおろした。
「あ、ナマエせんぱ……えっ!」
「えっ!マシュが二人いる!!」
「ほらみろ、俺の言ったことは事実じゃねぇか。あっちが俺の可愛い後輩ズだよ」
「マスター、ご無事でしたか。それでは早速……妹君とマスターをチェンジ!」
「テメェ、シェイクスピア、殴られたいみたいだな」
そう立ち上がった兄にシェイクスピア先生が私の後ろに隠れた。
「何を馬鹿なことを言っとるんじゃ、作家先生は一人でええ。面倒くさいだけじゃ」
そう吐き捨てた以蔵さんは私の手を引いて藤丸達の方へ行く。入れ違いに兄がリツカさん達の方へ向かったが。
「主殿、息災であったか」
「はい、幸いにも彼らが保護してくれたので。優しい方で助かりました」
「ナマエ、あの人達は?」
「恐らく並行世界の方々かと。藤丸があの女の子、私が兄という風に配役がずれた世界でしょう」
「ということは、彼が君の兄か」
「はい、そういうことです」
「その割には、お互いあまり感動したような節はないといいますか……」
マシュの言葉に肩をすくめる。
「彼はたしかに私の兄ではありますが、ずれた世界のあにであり、実の兄ということではありません。向こうにとってもそうでしょう」
「ーーナマエ」
不意にそう呼ばれてそちらを見る。立っている兄の眉間に皺が寄っている。
「お前、戦闘はサーヴァント任せ、らしいな」
「兄様、それが普通でございましょう」
「普通、ね。お前が普通なわけがないだろ」
「兄様、その手をお納めください。私に殺されたいという変な願いもお捨てください。私は貴方の挑発には乗りません」
というか、武芸に秀でた兄に勝てるわけがないのである。それでもなお、兄の手は宙に止まったままだ。
「貴方がもしも私が人理焼却でいなくなったことで自身を責めているのであればそれはお角違いでしょう。というか、貴方に勝てるわけがないでしょう。どうせサーヴァントの方々とやれ手合わせだ、やれ訓練だ、やれシュミレーションだとやってたんでしょう。勝てるわけないじゃないですか」
そうぽこぽこと宙に止まった手を叩いてみる。
「なんだ、お前も手合わせしてもらってるかと思った。というか、なんでしてないんだよ」
「私は文系なんですよ?分かってます?」
「文系かっこ笑いだろ。どうせ年上に甘やかされてんだな?柳生殿、こいつ、こう見えてほくーー」
「余計なことを言わない!」
そう手首を捻る。痛い痛いと喚く兄に、マシュが本当にナマエ先輩のお兄さんのようですね、と納得した。なんでそんなことでなっとくしたんだ。
「まぁ、とりあえず敵じゃない、みたいだし……俺は藤丸。こっちはそこにもいるけど、俺の後輩のマシュ」
「藤丸ね。私はリツカ。で、こっちは私の後輩のマシュと、ナマエちゃんと戯れてるのがもう一人のマスターのカナタさん」
そうお互いに挨拶した藤丸とリツカに息を吐く。マスター同士で打ち解けて仕舞えば大丈夫だろう。
「しかし、同じ特異点を違う世界のカルデアから派遣なんて」
「多分できるぞ。前に違うカルデアのマスターが作り出した特異点もあったしな。聖杯使えばできる」
「えっ、えっ!?」
「ええっ!?」
「は?」
「藤丸達とナマエの反応見る限り原因はお前らじゃないな。かといって俺たちでもないしなぁ」
ガシガシと頭をかいた兄に私は考える。ふーむ、嫌な予感がしてきた。
「兄様、私か兄様はカルデアに帰った方がいい気がします」
「お前な、結論だけ口に出すのはよくない」
「この特異点、私と兄様が揃ってる」
そう言えば、周りが首を傾げたが、兄だけが動きを止めた。
「あ、ああー、あー、そうだな、俺の世界にしろお前の世界にしろ俺たちはまず揃わないもんなぁ。揃えようとしたらこういう形にするよなぁ」
「カナタさんとナマエちゃん、二人揃えば何かあるの?」
「ややこしい話だ、前にしたことあったろ。俺たちは人間であって人間でない」
さらりと告げた兄に私は固まる。まって、それ私言ってない。兄は私の表情など見ていないので話を続ける。



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