2019/06/02
兼任司書カルデア没二巡目 2
・多分このナマエ14-15歳あたりの姿してそうだなって。
「遺憾の意を表します。何故私はアンデルセン先生の作品しか読んではいけないと言われるのか。いえ、言われたってシェイクスピア先生の作品も読みますけど」
ナマエがぽこぽこと怒っている。ムッとした表情から見るにサーヴァントに言われたのか職員に言われたのかわからないけれどもまぁ口を出されたのだろう。
「私に好きと苦手はあれど嫌いはありません。エログロナンセンスなんでもこいです。エミヤさん、私は取り上げられた本の返却を希望します」
「ダメだ、君は未成年なんだぞ」
「私は見かけより年を取っています。ええ、きっとそうです。本、返してください」
「あー、あー!いたー!ナマエちゃん!ダメじゃないか!」
エミヤとナマエとの問答を見ていれば、ドクターがドタドタとやってくる。
「今日は部屋でお休みって言っただろう?」
「む、元気です」
「元気じゃないの。朝だって咳してただろう?」
「ナマエ、体調悪いの?」
「うん、どうやらこの前の魔霧の影響を少し受けたみたいでね」
「えっ、大丈夫?」
「平気です、元気です、藤丸は自分の心配をするべきです。何してるんですか、エミヤさん」
「子供体温だからと思ったが、確かに熱いな。部屋まで担ごう」
そう言ってナマエを担いだエミヤに、今日は周回だけだし休んでいいよと言えば彼女はムッとしたまま連れられていったのだけど。
「ナマエは大丈夫なんですか?」
「まぁ、今のところ風邪みたいな症状だし1週間あれば治るとは思うんだけど……それにしても二人してあの魔霧の影響があれだけって……」
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大人しくしろ、と、言われてしまったのでベッドに寝転んで仕方なく大人しくする。というか、シェイクスピア先生が作家部屋となっている部屋から無理矢理連れてこられ見張りにされている。可哀想に。紙にペンが走る音がする。ひどく落ち着くそれに目を伏せれば意識は簡単に飛んだ。
パチリ、と目を覚ましたら牛若さん(と以蔵さん)がさめざめと泣いていた。なんだ?と思ったら、私が死んだように寝ていたかららしい。なんぞ、と部屋にある時計をみればデジタル表記の日付は三日ほど進んでいる。……思ったより毒の影響があったようだ。
「マスターが死んでしまうかと」
「私は元気です」
そう起き上がり、ペタペタと牛若さんの顔を触る。彼女に言い聞かせるように、私は大丈夫です、元気ですよ、と笑った。
「なんかもう気分爽快です。三日あればなんとやら。お腹すきました。ご飯食べます」
「!すぐに持ってまいります。ドクターも呼んできましょう!」
「ドクターは別に」
そう言ったところで消えた牛若さんには聞こえていないらしい。部屋の外にいたらしい宝蔵院さんと柳生先生にヒラリと手を振れば二人は息を吐いたのだけど。まぁ、ベッドから出ようとすれば以蔵さんに寝ろとベッドに入れられたが。不服である。
「いや、元気じゃないよ!一時期本当にヤバいレベルまでいってたんだからね!?」
そう怒っているドクターに、ムッとする。ムッとしてもダメ!と怒った彼に私はなんとも言えないわけで。
「君には多分対毒のスキルなんてあってないようなものなんだよ。完璧な対毒スキル持ちの藤丸くんに対してかなり薄いんだ。ギリギリで命が保てるラインだし、処理をするのに時間がかかるんだ」
「ははぁ、ということはあのような毒の場合でも三日で処理ができると……便利……どんな場所でも生きていける……」
「もうやだこの子、誰がワーカーホリックにしたの」
頭を抱えたドクターに、それは元々の節があるよなぁ、と首を傾げた。
「とりあえず、今週一杯はレイシフトは禁止だから」
「えっ」
「えっ、じゃない。君のサーヴァントじゃなく藤丸のサーヴァントに見張りを頼むからね!」
なぜに、と思ったが、多分甘やかすのが目に見えているからだろう。仕方ないのでベッドで寝るとする。……そういやシェイクスピア先生どこいった。
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「お前はよく見ると人形みたいな顔だな」
そう告げたアンデルセン先生に、はて?と首をかしげる。意識がなく眠っている間、それは人形みたいでした、とマシュも頷いた。その実それは兄と同じく昔から言われることである。恐らく神様(作り物)である父親の存在の影響だろう。なので、肯定する。
「そうですね」
「なんだ、自覚があったのか、つまらん」
「え、えええ、なんですか、それ。というか、それ、シェイクスピア先生が言い出したんでしょう?」
「……なんだ、知ってたのか」
「あの人、最初の頃に私の寝顔見た時から言ってましたからね。マスターは人形みたいな顔をお持ちですねって」
そう言ってゼリィをつつく。プルプルと動くそれはキャットさん特製だ。
「私の幼馴染や家族みたいな人達は言わないのですが、友人達はよく言いますね、その言葉」
夢野さんと初めて会った時、というか、一部の文豪と初めて会った時、私が庭のベンチや図書館のソファで座って寝ていた為に人形騒ぎになっていたのを思い出す。
「お前のその顔は本当に自前か?」
「失礼な、自前です」
姿は多少幼くなっているが、顔は自前である。そうちょっとムッとすれば、黒髭さんがデレデレとした表情を見せた。不審者である。
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シェイクスピア先生が話を書いたので読めば人形に恋をした伯爵の話だった。まぁ、やはり綴られる言葉の羅列が美しい。真剣に読み耽れば読み終わる頃には夜である。渡されたのがお昼過ぎだったし、まぁ、うん、これくらいはかかるだろう。
人形を愛する。それは刀を愛した母親と同じだろうか。いや、父親は付喪神だけあって人間と変わらないのだけども。
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「省いたな」
シェイクスピアにアンデルセンがそう告げる。ぴょこぴょこと嬉しそうに本を持ってきたナマエが本の感想を熱心に語り、一部に寝る時間だと連れさらわれていったのを見送った後である。
「省いた?まさか、私がそんなことをするとでも?二本書いただけです!」
ドヤっというような顔でシェイクスピアがアンデルセンを見る。アンデルセンは微妙な顔をしたが。
「その話はどんな話ですか?」
「人形に恋をした伯爵の話ですよ。おとぎ話のような、ね」
「馬鹿言え、それはナマエ用に書き直した分だ。本筋はメイドが眠っている姿に欲情する伯爵の悲劇譚だ」
「全く違う話のような……?」
「……仕方ないでしょう。この前、そりゃあもうこってりとやれ未成年の情教育に悪いやら、読ましていい話と悪い話があるやら言われたんですから」
やれやれと肩を竦めたシェイクスピアに、マシュが「あぁ、確かにこの間もナマエ先輩とエミヤ先輩が問答されていましたね」と納得した。そこで、俺はハタと思う。
「ナマエをモデルにしてるから読ませにくいとか?」
「……まぁ、それもありますがね!」
はははは、と笑ったシェイクスピアに、ああやっぱりかと思う。
「さて、マスターが駄々をこねる前に寝物語を語りに行くとしましょう!」
ケラケラと笑って席を立ったシェイクスピアの背を見つめる。そして、気づいた。
「え、ナマエとシェイクスピア同じ部屋にいて大丈夫?」
「馬鹿者、作家は現実に満足しないからペンに走るんだ」
==それは私もです
「おや、これはマスターの夢の中、かと思えば違うようですね」
昔懐かしい帝国図書館の夢を見ていたと思えば、シェイクスピア先生が現れた。何を指して彼はそう告げたのかと思ったけれど、恐らく私の姿を見てそう告げたのであろう。普段はまぁ15歳あたりの姿である。あれは多分カルデアとの橋繋ぎ役である役人の好みだと思う。
「麗しきお嬢さん、お名前をお伺いしても?」
「苗字ナマエです」
「……ん?」
「貴方のマスターです。夢だからこの姿なんでしょう」
そう返せば彼はふむと考えた。
「そう言うことにしておきましょう。こちらは図書館、ですかな。随分と本が多い」
「私が以前つとめていた図書館ですね。日本で一番の本の量だったと」
あたりを見渡していれば、ナマエ、と名を呼ばれる。そちらを見れば、あの時の彼らがいた。ナマエ、と手招いた彼らに、春夫さんに私は首を左右に振った。
「いきません」
「どうして?新しい話がかけたんだ」
「そう、ですか。それが現実であればどれほど嬉しいでしょうか。ここは、ただの願望です。私のね」
そういえば、彼らは桜吹雪とともに消え、あるべき図書館へと変わる。それと同時に私も縮んだらしい。いつものようにシェイクスピア先生を見上げて本でも読みますか?と尋ねれば、彼は本当にマスターでしたか、と笑ったのだが。
==
「この化け物!」
そう言われた夢をみる。周りにいる有象無象は私に次々とやれ化け物だ、やれ幽霊だ、やれ妖だと声をあげた。そうして武器を取った彼らを私はただ見上げる。大きく振りかぶられたそれ。目を緩やかに伏せる。いつもならば兄が現れて、私を連れて行く、のだが。今回ばかりは違うらしい。柳生先生が先にのした。きっちりとそこにいた全員をのした彼は私をみる。
「主殿、ご無事か」
「はい、ありがとうございます」
「無事ならば良い。この有象無象は」
「昔ははっきりしていたんですけど、もう顔も思い出せないのでこういう姿になっているのだと思います」
「ふむ……主殿の過去か」
「はい、まぁ、そんなところです」
「如何して主殿は化け物と?」
「狐の子だからって言ったらどうします」
鳴狐のように手を狐の形にする。彼は「狐か。狐の子か」と繰り返すと笑った。
「別に何もない、が、それならそれでまた一興よ。かの有名な陰陽師の例もあるがゆえ。それにしても、狐の子か、化けるのが随分とうまい」
「冗談ですよ、でも、人じゃないものの血を引いてるのは本当です」
そう言って手を空に向ける。だから、不安定である。だから、長らくいきているのである。だから、化け物なのである。
「しかし、主殿は鬼の子というわけではあるまい」
「まぁ、確かに鬼の子ではないですね」
「ならば、やはり狐の子か。化けるのがうまいこと……」
「貴方は化け物だと言わない?」
「今は自身が化け物であるが故、何も思わぬ」
そう告げた彼は優しいのだろう。あたりが白くなる。ああ、夢から覚めるのだと目を伏せた。
==
「そもそも、人間であるかも怪しい」
そう私を指差したらしい人に、私はこの人はなんと鋭い人なのだろうかと見上げた。まずこんな子供はいないはずだし怪しい、こんな整った姿は怪しい、こんな子供が知識を、術を、沢山の点を挙げるその人に、鋭い考察の数々に私は拍手を送りたくなる。しかし、出した結論はあまりにずれたものだったが。
ーー神様に頼んだのでしょう。
そんなことはない。それならホムンクルスと言われた方がマシには違いなかった。なのでちょっとがっかりする。第一、神様に頼むって誰に頼むんだろうか。どの神様だろうか。首をかしげれば、その人ふ周りを見たらしい。
「貴女たちは違和感覚えなかったわけ?主人公やマシュやドクターはともかく、サーヴァントでしょう?」
「違和感?年の割に賢い子だなぁ、とか、流石日本政府御用達なだけあるなぁ、とか……」
ドクターの返答に、日本政府の御用達……とこちらに視線がむく。あちゃあ、とそれに頭を抱えた。まぁ、兄と同じく使い勝手が良いからもあるのでそう呼ばれるんだろうが。
「日本政府の御用達、ですか?」
「彼女は日本政府の推薦できてね。カルデアが集めたマスター枠とは別だったんだよ」
ドクターの言葉に今までの処遇に対して納得する。
「あぁ、通りで私は通常訓練をあまり受けさせていただけなかったんですね。あの日、藤丸といたのも恐らくは私を以前警戒してのことですか」
ふむ、と自分で考察する。ところで私の紹介はなんと?と聞けば、この子は悪い子じゃないよ、役にたつよ的な感じだったらしい。流石私を少女の姿にしただけある。少女か幼女かどっちが良い?とは彼の言葉であったが。
「実のところーー我輩もマスターに違和感を抱いておりましてね」
そう言ったシェイクスピア先生は私を見下ろす。
「マスターの年齢と仕草は噛み合わない時がありますからね」
「それ私の仕草が年寄りって言いたいんですか?」
「いえ、そういうわけではなく。まぁ、外見が作り物だと言われても納得はできる。人形のようですし」
「作り物だもん、ね?」
そうあざ笑うような声で尋ねたその人に、自前なんですが、と言おうとしたが、年齢は作り物である。なので首をかしげれば、ドクターが「え、作り物なの!?」とわたしを見た。
「もしかして、ホムンクルスとか!?」
「それは違います。しかし、結論はともかくあの人の推測は面白いなって思います」
「あの人?」
「あの人です」
その問いに私はその人に手を向ける。性別がわからない。なにかが混ざったような霞をつけているが故に。
「すいません、私にはあの人の性別を区別できません。というか、あの人は人何ですか」
私の問いかけにシェイクスピア先生がわたしを見下ろした。
「マスター、どういうことですか」
「そのままの意味です」
「……ナマエ先輩、貴女には何が見えているんですか?」
「難しい問いです」
「見るからに性別はわかるはずなんだけど」
と、いうことはあの霞のようなものは私にしか見えないらしい。
「……いえ、ならばいいのです」
「はぐらかすな、何が見えている?」
キャスターのクー・フーリンさんが私を見下ろす。その問いに少し手に術を宿して前にやったように彼の片目に当てた。そちらのほうの目で見たらしい彼は眉間の皺を深くしたのだが。
「こりゃあ、性別がわかんねぇはずだな。おい、お前、何者だ?なんでサーヴァントが識別できねぇモン纏ってる?」
「何言ってるのさ?」
「自覚がねぇと来たか……まいったねぇ、こりゃあ。嬢ちゃんは近づかない方がいい。また魘される羽目になんぞ。あと、お前の悪い癖を治せっつってんだろ」
そうぐしゃぐしゃと頭を撫でた彼に、それは難しいなぁと思う。見えない、聞こえないのであれば、いないのも同じだからだ。
「それは同意しかねます。見えない、聞こえないのであれば、それはいないと同義です。それを指摘したところで理解はされません」
「ナマエには何か見えてるってこと?」
「何時もの『想像のお友達』じゃないのか?」
「イマジナリーフレンド……なるほど、言い当て妙です」
アンデルセン先生の話にそう納得する。たしかに私だけが見えているからそうだ。まぁ、付喪神や幽霊ではないのだけども。
「黒い霞で埋もれてやがる。意図的に見えねぇようにしてるのかどうかはしらねぇが、普通の人間が纏うようなモンじゃねぇな」
「貴女、何をしたの?」
そう尋ねたその人はこちらにやってくる。私は息を吐く。この手の人間は酷く嫌いだ。
「彼に術をかけた?何をしたの」
そう尋ねた人物に私は一歩下がる。ああ、いけない、あの夢と被ってしまう。その人物が言葉を吐くたびに霞は濃くなっていく。まぁ、クー・フーリンさんが前に立ったが。
「確かに術をかけたが、嬢ちゃんの術はそんなモンじゃねぇよ。安心しな」
「嘘、騙されてる。その子に全部騙されてる」
「何を根拠に」
「私にはわかる。その子、わたしと同じところから来たに違いない」
その言葉に、はて、と首を傾げた。私と同じ場所からきた、ということはあの人は神域から来たことになるが。ひょこり、と、顔を出してもう一度みる。
「私と同じところから、ですか。でも、何のために?ただでさえこちらに赴くのは兄様か私かというお話でした。貴方が兄様ならば話はわかります。それならば、恐らく役目を交代しろということです。でも、貴方は兄様じゃない」
「……でも、役目はそう。交代するために来た」
怪しい。怪しいが過ぎる。しかしながら、あまり相手もしたくないので「そうですか、交代ご苦労様です」と頭を下げる。
「じゃあ、私は藤丸の友人として彼のサポートにはいるとしましょう」
「帰ればいいじゃん」
その言葉に、ああ面倒なタイプの人だ、と理解する。帰る場所なんて、と誰かが告げる。
「この世界の人じゃないんだから、かえれるでしょ。それとも、帰らせてあげよっか?」
ほうら、ややこしいタイプだ。
「貴方にいくつか尋ねましょう。貴方は何の為にカルデアに?」
「きまってるじゃない、貴方の代わりに人理を修復するためよ」
「……そう、ですか。とりあえず帰るのはカルデアの職員の方に許可を得てからにしましょう。あとはお好きにどうぞ」
それだけ言って踵を返す、前に、口を開く。
「わかっているとは思いますがーー歴史を変えようとするのはおやめください。自分がなり変われるなどと奢るのも、ね。あとその霞どうにかした方がいいと思いますよ、閉鎖空間ですので」
それだけ告げてそこを後にする。さてと、あの人をどうすれば良いのかと息を吐いた。
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「おりませおりませ、こんちゃん」
そうなを紡げば現れたこんのすけは、いつものように「主さま!また幼子のような……!」と怒る。まぁまぁと言いながら彼を膝に乗せた。
「私の交代を名乗る人が来たけど、その実どう?」
「まさか、ありえませぬ。あちらもいまてんやわんやですし、兄上もお忙しいのです」
「ですよねぇ、同じところから来たって言われたんだけど、役目違うし……」
こんのすけのお腹に顔を埋める。こんのすけがコラ!と怒ったが、もふもふはやめられないのだ。ふわり、と桜を纏って現れたむっちゃんが「しっかし、何のために嘘をつくんかのう」と言いながらベッドに座る。
「ようわからんやつじゃ。主にいねゆうたり、ようわからんもんまとっとったり」
「あれは石切丸事案だろうけど、面倒くさいしほっとく」
そのままベッドに寝転べば、こんのすけが私を見下ろした。
「……あるじさま、何があったのですか?」
「よおわからんやつがいきなり現れて、主にいちゃもんつけたんじゃ」
「あと交代って言われた」
「主はその対応でお疲れじゃあ、なぁ?」
そう首を傾げたむっちゃんに、ねぇ、と返せばマイルームの扉が開く。現れたのは藤丸とマシュである。
「ナマエ、ちょっとちゃんと説明してほしい……って黒い狐のぬいぐるみ?」
「これはこれは、藤丸さま、マシュさま。お初にお目にかかります。私は主さまの使い魔のーー」
「こんちゃんです」
「こんのすけでございます!!主さま、私の名前を誤って広めるのはおやめください!」
たしたしと私を叩いたこんのすけの足をあげる。
「ナマエ先輩の使い魔……初めて見ました」
「我々は主さまに呼び出されなければ基本見えませんが故、仕方がございません。我々が姿を見せる時は基本的に主さまに何があった時のみでありますので」
「あぁそうそう、ナマエ二ちゃんと説明してもらおうと思って」
「藤丸さま、主さまはお疲れのご様子。私でよければお話をお聞きしましょう。主さまはおやすみくだい」
そう言ったこんのすけに、頷く。むっちゃんが見張りは任せいて笑った。藤丸たちがこんのすけを連れて外に出る。それを見て息を吐いてベッドに横になったのだけど。
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「藤丸くん、マシュ、そのぬいぐるみは?」
「ナマエ先輩の使い魔のこんのすけさんです」
「ナマエちゃんの使い魔?あぁ、そうか、あの子は魔術を使えるんだったね。で、ナマエちゃんはなんて?」
「主様ならおやすみになられました。随分とお疲れのようでしたので、私が代わりに説明を」
喋り出したこんのすけに周りのサーヴァントやスタッフが肩を跳ねさせる。こんのすけは視線に臆することなく口を開いた。
「え、喋れるの!?マスコット的な使い魔じゃなくて!?」
「喋れますよう。私は主様のサポート役でございますが故!主様が幼き頃よりそばにいましたが故に主様のことは何でもわかります。して、例の交代様は?」
「あぁ、彼女なら今別室で待機してもらってるんだ」
「ふむ、左様でございますか。で、主様のことについてなにをお聞きしたいのですか?」
「そりゃあもう色々と、初めから全部聞きたいくらいで。ナマエちゃんったら、何にも教えてくれないんだもの」
そう言ったドクターに、こんのすけは尻尾を揺らす。
「それはそうでございましょう。何も教えなければ、貴方達は主さまをただの子供と見るのですから」
「えっ、」
「主さまは生まれも育ちも非常に特殊です。特殊指定と言われるほどに。ですから、日本政府が主様を管理しております。こちらに出向いたのは政府の言付けを守っただけのこと。普段ならこうしているのはありえません。それほどまでに特殊な人物です」
こんのすけはそう言って俺の腕から降りると近くの机に乗った。
「ちょっと待って、こんのすけ。それってどういうことだい!?色々初耳なんだけど!それならそうと先に言ってくれれば」
「そうなるのが嫌だったのでしょう。主様は一度、暴徒とかした人間に襲われましたが故に。黙っていれば、そんなことにはなりませんから」
「人間に襲われた?」
「えぇ、私が駆けつけた時にはもう主様はボロボロになっておりました。それでもなお、化け物だと彼らは殴っておられましたね」
「そんな、ひどい、どうして」
「主様が人間にとって異質だからです。異質でなければそのようなことはあり得ません。主様が黙っているのは、それを何処かで恐れているからでしょう。最初は皆親切である、それは我らはよくよくわかっております」
そう告げたこんのすけは、さて、と口を開く。
「私から意見を述べさせていただきますと、主様の交代という件はございません。主様の身に何かあったときに、主様の兄がくることはございましょうが、主様の兄ではございません故に」
「しかし、カルデアの外は」
「人理焼却されている、でしょうか。主様のご親族などに至ってはそんなことは関係ありませぬ」
「じゃああの方いうように、貴方達は異世界から?」
「いいえ。そうではございません。主様とその兄、そして主様を遣わした方の一部は人と何かの混血児でございます。そして、普段はこちらにおられません」
「えーと、つまり?」
「……主様とその兄は日本の八百万の神の眷属との間の子でございますがゆえ、普段は八百万の神につかえておいでです」
「えっ、えっ!?えええ!?ちょっと待ってくれ!!そんなものが現代にいるなんて!サーヴァントクラスの化け物だぞ!日本でそんな存在がいるなんて聞いてない!」
「いいや、いるぞ、ドクター。ただ、ソレは魔術協会が手出しできない場所の話だから、ほとんどの魔術師は知らないだけで」
そう言ったのは同じ日本人のカルデア職員だ。彼はちらりとこんのすけをみる。
「しかし、神につかえているならなぜ人の身に?」
「もとより主様もその兄も人の身をお持ちです。しかし、体そのままで神域にいるために非常に不安定でございます。それを、日本の術者が術を使い安定させたのが今の主様です」
==
・色々あった
「あ、ヤベェ」
そう言って苦い顔をしたカナタさんに、俺たちはカナタさんをみる。ナマエが暴走している。カナタさん曰く、酒に悪酔いした感じ、らしいけどもそれにしたって、だ。あの子は恐れたようにこんなはずじゃなかった、と繰り返すのだけども。宙に浮かんで笑みを浮かべるナマエにカナタさんは頭をかいた。
「こいつのコレ、俺じゃあ対処できないんだよな。おい、文系サーヴァント、出番だぞ」
「この脳筋が、俺たちが叶うと思ってるのか、馬鹿め!」
「いや、手合わせなら俺が勝つんだよ。聞くけど、藤丸、百人一首は得意か?」
「えっ?百人一首?」
何故そんなことを聞くのか、と彼をみる。彼はあー、と頭を抱えた。
「そっかぁ、俺、そこんとこ説明してなかったよなぁ。俺、コイツより武勇に優れてるオニイチャン。武器と武器にまつわる人に好かれるトクセイがあるから特段契約してなくても武器をホイホイ取り出せるし手合わせが好き。コイツ、俺より文芸に優れてる妹。著者と作品に好かれるトクセイがあるから、お遊びは文系、ならびに育った過程の都合によりカルタが好き。多分満足したら寝る」
「カルタ?」
「カルタ」
「カルタって、あのカルタ?」
と、聞こうとすれば上から文字が降る。は、と思っていればそれは散らばって宙に止まった。
「兄様、兄様、武器を振るうのも良いですがカルタ遊びなぞ如何でしょう」
「嫌だ」
「先程まで私は兄様の手合わせにお付き合いいたしました。今度は私の番です。大丈夫、優しいところからはじめますから」
ニコニコと笑ったナマエは、奥山に、と言葉を紡ぐ。その瞬間、カナタさんが大きく飛んで文字を触った。するとそれは紅葉の葉になり鹿が現れて消える。それに理解した。あ、これはまごうことなく百人一首だと。
「触ればいいんですか?!」
「ああ、でもお手つきすんなよ!お手つきしたら一回強制スタン状態になんぞ!」
「え、なにそれこわい」
「負けたらどうなる?」
「ナマエが正気に戻るまでここから出られないってだけだな。いつもなら一週間以内に戻るが強制的にああなってんならアイツが抵抗しても一ヶ月はかかる。藤丸がもたない」
「それを早くいうべきだ」
そうある意味戦闘態勢になった周りに、ナマエがまた上の句を読む。そうして盛大なカルタ大会が幕を開けた。
しばらくして、ナマエがまた上の句を読む。いや、今度は上の句ではなかった。
「Shall I compare thee to a summer's day? 」
「ほうらきたよ、百人一首以外!」
カナタさんがそう言って周りを見た。
「ここまできたら俺はお手上げだぞ」
「ええッと、しかしながらこの詩は」
「ーーソネット集18番を」
そう言ったシェイクスピアに、ああそうか、この詩は、と納得する。その指示に牛若丸が飛び上がってそのタイトルを当てた。次から次へと読まれるのはシェイクスピアとアンデルセンの作品らしく、彼らがタイトルを告げて素早いサーヴァントが取りに行く。
「ーーマスター、読者が著者に勝てると思おいで?」
「……」
「最後の一つは、リア王ですが」
最後の一つをとった瞬間、ナマエがグラリと傾いて宙から落ちた。それをキャッチしたシェイクスピアは「吾輩は文系なんですぞ」とだけぼやいてナマエを抱え上げた。その瞬間、周りの景色が弾けるようにして元のカルデアに戻る。カナタさんが近いてナマエの
額に手を当てた。そのまま紡がれた言葉に、ナマエはよく知る姿に戻る。
「コレでよし。すまんな、妹が迷惑かけて」
「いえ……子供の姿に戻してしまうのですか」
「なんだ、マシュ、あっちのナマエの姿の方がいいのか?こっちの方が柳生の爺さんとのジジ孫みとか宝蔵院と岡田との兄妹みとか牛若との百合みとか色々あるぞ。何より」
「何より?」
「いや……うーん、」
カナタさんがまた何か言うとその姿は俺やマシュと変わらないくらいの年に変わる。おお、と俺たちが声を上げればカナタさんがシェイクスピアの肩を掴んで睨んだ。シェイクスピアは肩を竦めたが。
「柳生の爺さん、妹頼むわ。まぁ、偶にしごいてやってくれ。で、お前だが」
そう言ってカナタさんは事の発端になったあの子を見た。ひっ、と声をあげたその人に、彼は何とも言えない顔をしたのだが。
「藤丸に任せる。今のコイツにゃあ何の力もねぇ。妹が悪いもんも消したし、他も剥ぎ取ったからな」
「なんじゃあ、殺さんのか」
「どうでもいいね、俺はコイツがどうなろうが。だがまぁまた不審な動きをすれば斬るからよろしくな」
「先輩、いかがしましょうか」
「殺すのはちょっとなぁ……うーん、でも、何にも害がないなら、手伝ってもらうとか……?」
「そうかい、お前が決めたなら何にもいわねぇよ」
そう言ってカナタさんはあの子に向かって何か呟いた。その瞬間、意識を失ったあの子にカナタさんは俺を見る。
「其奴の記憶を消しといた。目覚めたら自分が誰であるかくらいしか覚えてないだろう。しばらく妹は警戒するだろうが、まぁそのうち慣れる」
ひらり、と、紅葉が舞う。その枚数が増え、視界が紅葉で埋まる。
「じゃあな、藤丸。気張れよ」
そんな言葉と共にカナタさんは消えた。
==
目が覚めたら体が大きくなっていた。なんだ?と思ったが、兄が来ていた記憶がおぼろげにあるため恐らくはその都合だろう。
「なにやら暴れてしまった気が」
そのままベッドから降りてマイルームを後にする。グゥ、となったお腹の音に、まずは食堂かと足を進めた。
ーーどうやら夜中であったらしい。寝静まって真っ暗なそこを歩く。昔に比べて随分と減った何かに私は夜も出歩きやすくなった。さて、夜中であればエミヤさんは眠っているだろう。ならば、自分で調理しなければならない。
とりあえず食堂にはいり、大きな冷蔵庫を眺める。なにを作るか、と考えていればとなりに光忠さんが現れた。
「あぁ、お腹が空いたんだね。何か作ろうか?」
「作ってもらいたいんですけど、流石に見られたらややこしいので作ります。レシピ提供してください」
「わかった。うーん、主はしばらく寝てたみたいだし、ああ、そうだ」
彼はピンと指を立てた。まるでテレビのようである。
「お茶漬けはどうだろう?」
「あぁいいですね」
まぁ、こだわり出すのは目に見えているのだけども。
どうやら夜食を食べるサーヴァントはチラホラいるらしい。ついでだからと作っていれば結構な人数になった気がする。まぁ、その中には飛んでやってきたエミヤさんもいるのだ
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