2019/06/02

兼任司書カルデア没三巡目 2

置いていかれる夢をみる。あの人が消えてしまう夢をみる。消えないでほしいと願っても、あの人は呪いをかけて消えてしまったのだ。私は待とうと思った。でも、いくら待ってもあの人は現れなかったのだ。夢をみる。あの人が消えてしまう夢をみる。もう、名前も声も、そして姿さえもおぼろげなあの人は誰だったのだろうか。

「今日妹不機嫌そうだから、あんまり構わない方がいいぞ」
そう言ったカナタに、私たちはカナタくんをみる。ナマエちゃんはいつも通りに見える。しかしながら、カナタくんは口を開いた。
「夢見が悪かったんだろ、そっとしといてやってくれ。って、言っても今日一日掴まらねぇと思うけど」
カナタくんはそう言って、またいつも通りに食事を始める。私達は顔を見合わせたのだけど。

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この子供もこう言った顔をするらしい。はっきりと滲ませた嫌悪、そして苛立ちに似た表情にこちらもこちらで眉間に皺を寄せた。しかしながら、その表情はすぐに隠される。ごめんなさい、今日は虫の居所が悪いのでと眉尻を下げて頭を下げると部屋に向かってかけていった。
さて、あの子供は見かけと精神の年齢がどうも不釣り合いである。さしずめ作家仲間である童話作家に近いのだ。周りに兄以外の誰かがいればニコニコ笑いながら童のように振る舞うが、兄だけではそうではない。第1、このくらいの齢の子供が自分の作品を全て読み理解できていることもまたそう考えらせる原因なのであるが。
「あちゃあ、遅かったか」
そう声が聞こえて振り返る。そこにいた子供の兄は頭を抱えた。
「今日妹不機嫌だから、寄り付かない方がいいって言おうと思ったんけど、あんたら部屋にいるんだもんなぁ。多分今日一日つかまらないとは思うけど、突っつかないでくれよ」
「つかまらない?」
「おー、」
それだけ言って兄は廊下にきえる。その言葉は事実でその日一日誰も彼女を見つけることができずーー騒ぎになった頃に、マイルームで眠っているのがみつかるのだが。
「昨日どこに言ってたの?」
「……?」
惚けるのが上手なことで。

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「普通に考えて、シェイクスピアとアンデルセンが消えてないってことはまだ大丈夫だろ。生きてりゃ大丈夫」
軽い。あまりにも軽すぎる。実の兄ならばもう少し心配してもいいのでは。そう思っていたが、こまめにシェイクスピアとアンデルセンが消えていないのを確認しているあたりやっぱり心配らしい。
「しかし、参りましたね……私はまだお会いしたことがないのですが、一人だとさぞ心細いでしょうに」
「アイツ多分ああ見えて神経図太いから楽しんでると思う」
そう言ったカナタはやれやれと肩をすくめる。
「多分そのうち会えるだろ」

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微かに聞こえた歌声に、ほうらな、と肩を竦めて息を吐く。絶対妹は幸運値がよくある種の魅了持ちだと思うのだ。俺はため息をもう一度ついて口を開き、叫ぶようにうたう。
「戦うものの!歌が聞こえるか!」
その言葉に敵も味方もこちらを見たが無視だ。何これ恥ずかしい。
「鼓動があのドラムと響き合えば!」
そこまど歌い終えれば、あとは勝手にどうにかなるだろう。敵が笑ったのをみて、さてはて、その余裕はいつまで持つか、と相手を見た。
「新たに熱い命がはじまる」
「明日がきたとき、そうさ明日が」
近くから聞こえてきた声に俺は一歩さがった。それに変わるようにたくさんの人が前に出たからだ。
「悔いはしないな、たとえ倒れても」
「な、なに?え!?」
「流す血潮が潤す祖国を」
「この歌」
「屍超えて開け明日のフランス!」
「戦う者の、歌が聞こえるか!鼓動があのドラムと響き合えば!新たに熱い命がはじまる!明日がきたときそうさ明日が!列に入れよ!我らの味方に!砦の向こうに!憧れの世界!皆聞こえるか!ドラムの響きが!そうさ明日が来る、明日がくるさ!」
俺たちの前に出た彼らは銃を弓を構える。そして、聞き慣れた声で動き出すのだ。
「うて!」
その瞬間、放たれた矢にそこにいた敵が怯んだ。
「今がチャンス、柳生のじっちゃん、牛若、頼む!」
そう指示を出せば周りは動き出す。あとは全力で抑え込むだけだ。


なんとかその危機を乗り越えれば、周りの人達は紙に変わる。ひらりと落ちた紙を掴めばやはり妹のもつ手帳を使ったことがわかった。ひょこりと顔を出した妹のそばには知らない人物がいる。ありがとうございました、といえばその人もまた紙に変わったのだけど。とりあえず俺は散らばった紙を集めることにする。リツカさんがナマエを見つけて駆け寄ったが。
「ナマエちゃん!よかった!無事だったんだね!」
「はい、なんとか。若干色々ありましたが、まぁ、兵士の方に助けていただいたりとか」

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・振り向かないのがわかってるから魔力供給を理由にして色々したいとか

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あぁ、なんという背徳感だろうか。魔力が足りないといえば、そうなるを得ないのだから。そっと彼女の頬に触れる。彼女は目を固くつむって、これから起こることに耐えようとしている。マスター、と耳元で囁いてやれば、彼女はただ恐れたように目を開いたのだが。そうして瞳に映った自分の姿に、笑みが零れる。自分は彼女が望んだ人物では決してない。しかしながら、彼女はマスターという立場である限り、それを受け入れるしかない。そうして距離をゼロにすれば、彼女は全てを諦めたように。

貴方が欲しいのです。
そう告げても恐らくは手に入ることはない。体は手に入る。マスターとサーヴァントという関係を使えば。しかし、肝心の心をつかむことが難しかった。

==ぼつん!



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