2019/06/22
スランプ脱却のために書きなぐってるだけC
・兼任司書の立場に誰かが塗り変えられる→逸れた兼任司書の魂が審神者になる前/幼女の姿に作り変えられる、その影響で目が見えないが、誰よりも視えるので問題はない→別の図書館に拾われて森先生に育てられてるなう
「ぱぱ」
そうかけてきた子供は見えていないというのに器用に森先生に抱きついた。彼は口元を少し緩ませる。ああ可愛らしい親子図だ。抱き上げた森先生は完璧にパパである。
「あかんあかんで、森先生。連れてけへん。ナマエちゃんは図書館がお留守番や」
「でも、オダサク、ナマエちゃんが悲しくてないちゃうかも」
「あかん、お司書はん、あかん。他の余裕派とナマエちゃんはお留守番。なー、ナマエちゃんは良い子やもんなー?」
「うーんー?」
「いや、なんでくびかしげんの」
「ぱぱといれるならね、ナマエ、わるいこになっちゃう!」
「うっ……」
「あ、これはあかん。森先生のハートに心臓にクリティカルヒットや」
「うっうっ、ナマエちゃんつれていけるか申請する……」
「こっちもか!」
==
帝国中央図書館に幼女がふえた。まぁ、理由はなんて事ない。研修という形でやってきた水仙の紋を持つ図書館ーーこの図書館の分館だーーから研修をうけにやってきた司書と文豪達が連れてきたのだ。どうやら森先生を父親だと思っているらしいその子の面倒を見るために増員したらしい。といっても、余裕派とオダサクさん、その司書だけだけど。ちょうど此方からの出向はあるけれど、研修を受けに来る人は彼らだけだったからちょうど良いのかもしれない。
そんなこんな、新人共感覚アルケミスト司書ちゃんの教育をする棋院と通常の業務をする私達であるが、エントランスで水仙の正岡先生とその幼女がいることに気づき足を止めた。隣にいる中野先生も同じく足を止める。
「正面階段は20段だな」
「にじゅー?」
「10を二つ。手すりは右端と左端。真ん中は危ないからダメだからな。どうしても真ん中を通りたいときは誰かの手をつなぐこと」
「はーい」
「よし、じゃあ数えるぞ。いーち」
「いーち!」
そう言って歩きはじめた二人は先程のことばどおり十を二回数えて階段を登る。そうして登りきった二人ーーというか、正岡先生ーーは此方に気づいて会釈をした。
「よし、ナマエ、今度は降りるからな」
「十を三つ?」
「増えてる増えてる。十をふたつ」
「じゅうをふたつ。この階段さん、あんよをあげないとだめねぇ」
「ナマエが小さいからな。ほら、降りるぞ」
そうしてまた二人は階段を降りる。はて、何をしているんだろうかと二人して首を傾げた。にじゅう!と声を上げた二人は可愛らしい。正岡先生はもう一度会釈をすると幼女と手を繋いだままそのまま廊下に消えた。
幼女ーーナマエちゃんがエントランスの前で手を挙げている。何をしてるんだろうと思っていれば、先に我らが森先生が声をかけた。
「何をしてるんだ?」
「あ!ぱぱ……ぱぱ?」
「君のぱぱではないんだが……そうか、君が研修生ときた……」
「ぱぱの偽物……?」
「それも違うな。そうだな……ふむ……林太郎先生とでも呼んでくれ」
「りんたろーせんせ!」
そう元気よく鴎外先生を呼んだナマエちゃんに彼は満足そうに頷く。
「で、なにをしていたんだ?」
「かいだん、のぼるから、てつだってください!」
「階段?」
「子規さんにね、内緒でね、降りてきちゃったから、のぼれなくなった!」
「そうか、では手伝うとしよう」
「じゅうをふたつ、かぞえる!」
そう言ってナマエちゃんはまた階段を登る。ありがとう!りんたろーせんせ!と告げて走り出そうとしたのを森先生がとめる。
「一緒に行こう」
「わーい!」
なにあれ可愛い。
==
どうやらあの子が手を挙げている=助けてほしいということらしい。だからといって私達が手を貸す前に水仙の彼らが助けていくのだけど。しかしながら、ご飯の前にも手を挙げているのはどういうこだろうか。私達が首をかしげる中、研修の昼休み中である森先生が慣れたように配膳を入れ替えていく。できたぞ、という声にナマエちゃんは手を下に下ろした。
「左利きですか?」
「いや、」
「ぱぱ、おはしはー?」
「今日はスプーンやで、ナマエちゃん。ってことはー?」
「オムライスだー!」
「違う違う、ライスカレーや、ライスカレー」
「カレーかぁー」
「……すまんなぁ、この子、この前はじめてオムライス食べてえらい気に入ったみたいで……」
そういった織田さんに、いやいや違うのだ、と首を振る。向こうはあくまでいつも通りなんだろう。カレー(のライスだけ)を混ぜはじめたナマエちゃんをみて苦笑いしている程度には。
「お嬢さん、ルーが絡まってへんで」
「はい!」
「あかんあかん、手あげても手伝わへん。自分で混ぜ」
「オダサクのけちー」
唇を尖らせてナマエちゃんはまたスプーンで混ぜる。水仙の夏目先生が、ナマエ、もう少し右の方ですよと促せば彼女はルーにいきついた。
「午前中は何してたの?」
「子規さんとー、たんけん!おひるからもー、たんけん!」
「流石にこの広さだと午前中だけでは無理か」
「奥まったところと庭以外は結構回ったんだけどなぁ。なんせ階段が多くて」
「ひとりでわかるよ!」
「……と娘さんはおっしゃってますが、どうです?お父様」
「多少の怪我ですむならいいが……ひとりでうろうろして迷子になるのが一番困るだろう」
「大人でも迷いそうですしね」
「……ま、なんにせよ、どっかにこの図書館の文豪はいると思うぜ」
そう言った按司は、要はその嬢ちゃんが手を挙げてりゃ声をかければいいんだろ、と告げた。
「あぁ、それは助かります。ありがとうございます」
「でも、どれくらい見えてないんだ?」
「お、按司センセはダイレクトやな。まぁ嫌いやないで」
「……全く見えてない。ただ、場所を覚えて仕舞えば一人で遊びまわるくらいにはなる。階段は苦手だな。あとは……時々はしゃぎすぎて現在地わからなくなるのが欠点だ」
「時々、目の前で迷子宣言するからなぁ」
「そうですねぇ」
「……それは黙ってる先生がたが悪いんちゃいます?」
織田さんがそう促せば、余裕派と司書さんは目をそらした。
==
「うーんー?」
ナマエちゃんが首をかしげている。どうやら何かを考えてるらしい。何もないところを見上げている。それを見た水仙(の司書)ちゃんがゲっとこえをあげた。
「ナマエちゃん、また何か見えてる……」
「えっ」
「だめだよー、だって、ナマエいなくなったらぱぱがまた泣いちゃう」
そういった先にはたしかに誰もいない。ひぇっと思っていたら佐藤先生が通りかかった。
「何してるんだ?」
「佐藤先生、あそこ、何います?」
そう指を刺せば佐藤先生は首を傾げる。子供と……といって、そこに何があるか理解したんだろう。佐藤先生が足早に近いて、子供の手を引いて腕に閉じ込めた。そのまま連れてやってきた佐藤先生は、そちらをひと睨みする。ひぇっ、やっぱりなにかいたらしい。
「えーと、佐藤先生、なにがいたの?」
「わからないが、子供っぽいやつだった。ああいうのについていっちゃダメだぞ」
そう注意を促した佐藤先生に、ナマエちゃんは首をかしげる。
「ナマエ、やだっていったよ。ぱぱ泣いちゃうもん」
「ぱぱ?」
「あー、そういえば、佐藤先生潜書中でしたもんね。水仙の図書館印の司書さんのところの森先生です。こちらが水仙の図書館印の司書さん」
「えっと、はじめまして?」
「あぁ、この図書館の佐藤春夫だ」
「佐藤先生」
「水仙ちゃんの図書館にいない?」
「はい、まだ」
「こういうのを聞くと、図書館の差があるんだと思うな」
佐藤先生はそう言ってナマエちゃんをみる。ナマエちゃんは小さな手で容赦なくぺたりと顔を触る。
「なんだ?」
「あぁ、多分佐藤先生が初めましてな人なのでどんな人か確認してるんだと思います」
「確認……」
「ナマエちゃん、目が見えないので」
さらりと告げられた言葉に佐藤先生が動きを止める。
「だから、私達と見えない何かを同じに思うみたいなんですよね」
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