2019/07/17

スランプ脱却のために書きなぐってるだけH

・大神妹がマスター


「いや、なんというか、ナマエちゃんってお姫様みたいだからさぁ」
そんなことを言ったリツカちゃんに、違います、とぽこぽこしておく。私はお姫様キャラでも、妹キャラでもありません!と抗議すれば彼女はケラケラと笑ったのだけど。
「マシュちゃんも何か言ってください」
「わ、私は先輩と同意見なので……」
その言葉にがっくしと肩を落とす。やはり前世からの癖というか宿命的のは抜けないらしい。ギャルゲ主人公の妹としてうまれた宿命からは。いや、そもそも今世も妹の身である。まぁ、前回の温かな家族像とは違い、殺伐としたものであるが。マスターというかレイシフトというか、そんなものに適性がなければ私はただよその家と婚姻を結ぶだけの存在だった。まぁ、今は束の間の自由というわけだ。ため息をもう一つつく。
「でも、ナマエさんは魔術師らしくないですよね、なんというか……やはりお姫様やお嬢様に行き着いてしまうというか……」
「アーラシュからも偶にマスターじゃなくて姫さんって呼ばれてるしね」
「うっ……それは、アーラシュさんが勝手に」
項垂れてみる。私のサーヴァントであるアーラシュさんはたしかに偶にそんなことを言う。いや、私がぽこぽこと怒って叩いてる時にとか何かある時にだいたい「姫さん」って言う。否定するが、本人はなだめるだけなのだ。
「お姫様じゃないですよ……」
「その心は?」
「その心は……?アンデルセン先生にメリーバッドエンド書かれそう……?」
私のぼやきに二人はあぁ、みたいな顔をした。

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私の性質自体は変わってない。霊力ーー魔力を溜め込みやすいというか、魔力を放出しにくい体質であり、何かで放出を補助しなければならない。そしてそれらは困ったことに、家の魔術の関係で操るという力のおまけ付きだ。それは死霊魔術に違い。怖いから操らないけども。まぁ、何がいいたいかというと、前とほぼ同じことができる上に定期的に何かをして魔力を溜まりすぎないようにしなければならないのだ。アーラシュさんと契約してからはまだ彼に魔力が向かうので随分と楽であるが、カルデアにきてーー英霊達が現れる前までは私はフルートで魔力を放出していたのである。今日はそれをみていたスタッフに、ナマエちゃんはもうフルート吹かないの?と尋ねられた。実は吹いていないわけではない。アーラシュさんとレイシフトした時に吹いたりしている。偶に精霊みたいなものが現れて美しいのだ。本来なら敵となりうるんだが、まぁ襲ってくる気配はないしいいだろ!とはアーラシュさんの台詞だ。
「結構ナマエちゃんのフルート、いやされてたんだけど……」
「え、聞こえてました?防音には気を使ってたんですが……」
「たまーにね」
そう苦笑いした彼に、角からやってきたドクターロマニと別のスタッフが「こらそこナマエちゃん口説かない」と注意した。
「ちが、違います、ドクター。俺はただナマエちゃんにフルートを吹かないのかを聞いていただけで……やましい気持ちはこれっぽっちも……」
「本当に?」
ドクターは見事なジト目である。彼は刻々と頷いた。
「でも、確かにナマエちゃんフルートあんまり吹かなくなったね」
「レイシフト先で吹いてるよねー?」
「あっ……周回もモニタされてるの忘れてました……」
私の返答に彼らは目を瞬いた。
「あんまり聞かれたくないかい?」
「人によっては雑音になるので」
「フルートの音はヒーリング効果があるっていうし、気にしなくていいよ」
「本当です?か」
そう伺うように尋ねれば彼らは刻々と頷いた。よくわからないけれども特に構わないらしい。
「じゃあこちらでも吹くようにします。モーツァルトさん達がいない隙を狙って……」
コソッといえば彼らはあぁ、みたいな顔をした。理解してもらえて何より。

と、いうことでフルートを部屋で吹いてみる。アーラシュさんは留守だ。モーツァルトさん達は周回だとリツカちゃんが言っていた気がする。愛用のフルートに少しの魔力を乗せて吹く。そっと目を閉じて曲を奏でると落ち着くのがわかった。
とりあえず、数曲吹き終えたので手をグーパーしてみる。うむ、調子がいい。そのまま外に出れば、アーラシュさんが扉の近くにいた。
「アーラシュさん?中に入ればよかったのに……」
「いや……でも珍しいな、今までカルデアで吹かなかっただろ?」
「うるさいから邪魔かなって思ったんですけど……ドクター達がいいよって言ってくれたので」
「なるほどなぁ」
「でも、精霊さん達が寄ってこないのは寂しい気もしますね」
幻想的な光景であるし、何かともらったりできるのである。アーラシュさんはニカリと笑って、そうだなぁと私の頭を撫でた。
「ま、他が色々寄ってきてたんだけどな」
その言葉に私は首をかしげるが、彼はそろそろ飯の時間だし、行こうぜと私の背を叩いた。

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「ナマエちゃんって音楽得意なの?」
そう聞いてきたリツカちゃんにギョッとする。聞いていたんだろうか、とか思っていればアーラシュさんが聞きにきてたぞと告げた。それを早く言って欲しかった。
「得意といっても素人の域ですが……好きか嫌いかと聞かれれば好きですね」
「魔術師もフルートとかふくんだね、なんか意外だった」
「家族でも祖父しか理解してくれなかったのであまり好かれないのかもしれません」
そう言いつつ食事をとる。うむ、本日も美味しい。
「……普段は周回のレイシフト先で吹くんですけど、ドクター達に吹いてもいいよって言われたので」
「へー、じゃあ今度一緒にレイシフトした時に吹いて」
「えっでも」
「なんか落ち着くから」
えへへと笑った彼女に、それでリラックスできるなら構わないけれどと頷いた。

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綺麗な水辺近くでちょっと休憩するらしいので冷たい水に足をつけながらフルートを取り出す。そのままフルートを奏でる。すっと魔力を落とし込む感覚に目を伏せた。


「あ、ナマエちゃんのフルートの音だ」
そう言えばアーラシュが「あぁそうだな」とニカリと笑った。
「あんま一人の時に吹くなよって言ってたんだが」
「何かあるの?」
「イフリートとかが寄ってくる」
「は?」
「精霊の類とかが寄ってくんだよなぁ。多分魔力乗せてるから余計だと思うんだが」
そうガサガサと茂みを掻き分けて水辺に向かう。そこにいたのは確かにナマエちゃんだけじゃなかった。イフリートの水番みたいなものがナマエちゃんを覗き込んだりしているのが見える。危ない、と叫ぼうとした私とマシュの口を覆ったアーラシュは、ナマエに危害はないと言った。
「何するわけもないんだよなぁ。偶にワイバーンなんかも寄ってくるんだが……敵意は基本ないんだよ」
「基本ない?」
「たまに連れて行こうとする輩がいるから、流石にそれは止めてる」
「えっ、」
「ほら、ああやってな」
ナマエちゃんの周りをくるくると踊るように回っていた精霊が動きを止めた。湖の水が高くなり、ナマエちゃんを囲うように動き出す。身構えた私やサーヴァントをよそに、アーラシュは悠々とそこに近づく。
「悪いな、マスターは人間だから連れて行ったら溺れて死んじまうからよ。偶に連れてくるから、それはやめてくれ」
そういえば精霊達が顔を見合わせてーー大人しく引き下がった。それと同時に笛の音が止まる。ナマエちゃんはそこではじめて周りに精霊の類がいたことに気づいたらしい。
「わ、わわ、すいません、おやすみのところを邪魔してしまいましたか?」
「いや、気に入って寄ってきたんだろう」
「私もここが気に入りました。またきても?」
そう尋ねたナマエちゃんに精霊が寄ってきて、ナマエちゃんの頬にキスをしたのが見えた。

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「人理が修復したら……私は結婚ですね」
そう言って頬杖をつく。何人かのスタッフや英霊、リツカちゃんやマシュなんかはギョッとして私をみた。
「いえ、相手がいるわけではないんです。ただ、何人か候補の人はいると聞かされています。魔術師としてはよくある話でしょう?」
困ったように笑ってそう言えば彼彼女らは納得したような顔をされた。
「まぁ、結婚という選択肢があるだけマシなんですけどね」
「それってマシなのかな。好きでもなんでもない人と結婚するんでしょ?」
「うーん、もしかしたら、結婚したら好きになるのかもしれないし……」
「順序が逆だよ、ナマエちゃん」
「それが通例だから私は変えられないかなぁ。だから、あんまり恋をしないように、とは母親によく言われたよ」
「どうして?」
「その人を想い続けて旦那さんをみないからじゃないかなぁ」
母親がまさにそうだ。父親ではない誰かを想い続けーー父親をまともにみていない。だから父親はイライラするし母親とも仲が悪い。いや、二人目の私がいる時点でという話になるかもしれないけれど。
「ナマエちゃんには幸せになってほしいなぁ」
「私は今で幸せだし、私はリツカちゃんやマシュ達に幸せになってほしいよ」
そう言って笑みを浮かべた。

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私のサーヴァントはアーラシュさんのみである。偶に増やしてみる?と聞かれてリツカちゃん曰くガチャガチャ?すると概念礼装ばかり来るので驚いた。まぁ、アーラシュさんは笑って許してくれるしリツカちゃんやマシュ達も笑いながらサーヴァントを貸してくれたり協力してくれたりするのだ。しかしながら、私がレイシフトしたのにアーラシュさんがいないという謎のバグに苛まれている。もしかしてこの特異点にはアーラシュさんがいるのではなかろうか、とは今はいないダヴィンチちゃんの言だ。しかしながらーーあっちにうろうろこっちにうろうろしてたどり着いた場所にアーラシュさんがいたために納得した。なるほど。
「この状態でガチャガチャしたらナマエちゃん誰か来るんじゃない?」
召喚サークルを設置したリツカちゃんたちに言われてなるほど……?と首をかしげる。山の翁である呪腕さんが「ナマエ殿のサーヴァントは……」と言ったことから始まったことだが。
「そういや、そっちのやつもマスターなんだよな。サーヴァントは?」
「カルデアではアーラシュさんを呼び出したんですが、恐らく貴女がいるので……」
「あぁー、なるほどな!」
ぐしゃぐしゃと頭を撫でられる。う、わ、と声、を漏らせば、彼はケラケラと笑った。
「悪いなぁ、同じ俺は俺なんだが……同じクラスで同じ存在、同じ年の頃の呼び出しはちょっと無理か」
「はい、そのようで……」
「ナマエちゃん、その為のガチャガチャだよ」
そう呼符を渡されて召喚サークルとにらめっこする。
「ナマエさんが多少魔術を使えても、身を守る人はいた方がいいでしょう」
仕方ないので呼符を召喚サークルに投げ入れて、口を開き召喚の呪文を唱える。現れた符は……。リツカちゃんが目を瞬く。
「え、あ、まさかのバーサカーきちゃった!?しかも金色!?いや、オールラウンダーだけど!」
そしてその符は一回転すると、人の形を作り上げる。
「サーヴァント、ここに参った。余に血を捧げるマスターは貴様か」
そう言った彼は私を見下ろす。マスターは確かに私です、と言えば彼はすっと目を細めた。この人ちょっと怖いぞ。アーラシュさんが優しいお兄さんだったから特に。

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「あっ、」
アーラシュさんの言葉に遠い目をする。これ一回やったことがあるというか、二人でレイシフトした時にやるやつである。いやしかしながら、あの空中射撃とかカタパルトに比べたらまだマシ……そんなことはないか。これ私着地できないんだよな、と思っていればヴラド公が私を引っ掴んだことにより回避する。この人冷静だな。周りがガクガクするなか平然としてるし。ありがとうございます、とお礼を言えばこちらをチラ見して報酬は血でいいぞなんていうのだから、ジョークが好きなんだろうかと考えてみる。ドクターが、ナマエちゃん、多分ジョークじゃないよと言ったけども。

現れたその人に、なるほどあの人はと理解する。いなくなって仕舞えばーー召喚できるのである。私は彼に宝具を使わないように言っているのはだからというか、だから、なんだけれど。守るためには仕方ないことではあるし、私も見送りはした。しかしながらも悲しくてハラハラと泣いていれば、彼は苦笑いするのだ。
「ほーら、泣くな泣くな、俺なんかの為に泣くな」
「なんかじゃないです」
そうぽこぽこと彼を叩く。
「なんかじゃ、ないんです、アーラシュさんだから、泣いてるんです。私はあいにく、顔も名前も知らない人の為に涙を流すような人間じゃないんです。そこまで、私は聖人じゃない」
そう目元を袖で拭う前に、アーラシュさんが手で拭った。ありがとな、と笑った彼は相変わらずである。

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「ひえっ」
モゾリと動いた手に飛び跳ねる。ざっと距離を取ろうとしたけれど、それは壁によって阻まれた。こんなことをしてくる人は一人である。フェグルスさんだ。心の中で、アーラシュさんとヴラドさんにヘルプを出す。ジリジリと寄ってくるその人にぎゅっと目を瞑れば「やっぱりまたか」みたいな声がして距離があいた。
「あんたも懲りないな。ヴラドに串刺しにされるぜ?」
「おっと、それはご遠慮したいな」
「マスターもマスターだ。俺やヴラドがいなかったらどうするんだ?」
そう叱った彼に、痛いところを突かれたなと思うが、そもそもーーそもそも、昔、彼のような人に抑え付けられた記憶があるため、恐怖心が勝つのだ。まぁ、祖父が助けに入ったので助かったようなものだが。言い返せない私をみてアーラシュさんはため息をつく。わしゃわしゃと頭を撫でた彼に私もそっと息を吐いた。


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「ナマエちゃんって偶に新茶のことマキャヴィティって呼ぶよね。どうして?」
そう尋ねたリツカちゃんに、真名がわからないからと言いつつ、ホームズさんと仲が悪いのを見るに予想はできているからと答えるか否かを迷う。
「ミュージカルの登場……人物?に似てらっしゃるので」
私の言葉を聞いたスタッフが噴き出して笑う。元ネタがわかったらしい。マシュがコテンと首を傾げた。
「ミュージカルの登場人物ですか?」
「はい……まぁ、人物というよりも猫なのですが」
「猫……?」
「うん、猫」

「お嬢さん、私を猫だとは……いやはや、貴方は面白い考察をされる」
「あ、いえ、うーん?」
話がすごい飛躍しているような。そもそも、あのミュージカルに登場するのは全て猫である。だから、猫というのにも何かひっかかるというか。
「猫は猫なんですけど……誰から聞きました?」
「マイガール から」
「私が偶に貴方をマキャヴィティと呼ぶので、それはなぜ?と聞かれまして」
「マキャヴィティ?あぁ、なるほど……では私は君をヴィクトリアと呼ぶとしよう」
なんということだ。ネタが通じてしまった。しかも本人に。

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「ナマエちゃんって幽閉されてたって本当?」
誰だリツカちゃんにそんなことを言ったのは。そう思っていれば、どうやらかの有名なロードエルメロイ?さんが諸葛亮孔明としてきたらしい。私の家の兄達や姉はかよっているのでそこで知ったんだろう。話を聞いたアーラシュさんとヴラドさんが眉間にシワをよせた。
「……幽閉?」
「違うのか?」
「えーと、確かに祖父しか私を連れ出さなかったんですけど、それは私の体が弱いからというか……まぁ、いつも決められた部屋というか小さい屋敷の中にはいましたけど」
私の言葉に周りは頭を抱えた。それを幽閉というのでは、とはマシュちゃんの言葉だ。
「ナマエちゃん、体弱いの?」
「弱いというか、厄介な体質なんです」
「厄介な体質?」
「魔力の量を一定量に保たないとオーバーヒートしてしまうといいますか……自分の魔力は一定数なのですが、空気中にある微量な魔力を吸収してしまうらしくって、それを他者に移すなりなんなりしないと高熱を出して倒れるんですよ。カルデアに来てからはアーラシュさんやヴラドさんと契約してるので常に一定量を保ってるわけです」
「幽閉中はどうされていたんですか?」
「幽閉中ですか?幽閉中は祖父に魔力を移したりとか……フルートの音に魔力をのせたりとかして発散してました」
「おい……おい、マスター、この天然お嬢様をなんとかしろ。通りでお前の兄姉が妹妹騒ぐわけだ。祖父に利用されてるぞ、お前」
「利用されているというか、私は祖父に魔力をわたせば私は元気になる、祖父も元気になるし、私を外に連れ出してくれる……それに、カルデアを勧めてくれたのも祖父ですし、悪い人ではないですよ。家族の中で唯一優しい人ですし……助けてくれたし……」
「助けて?」
「小さい頃に、大人に抑え付けられて乱暴されそうになったんですけど、祖父が気づいて助けてくれました」
「……っ、おい、人理修復が終われば即刻家を出ろ、いいな?」
彼の言葉に首を傾げる。彼は何度も私に念押しするのでとりあえず頷いておいた。

=

「あの、しかしながら、それは仕方ないかと……アーラシュさんはナマエさんがカルデアに来た当初から契約されているサーヴァントですから、付き合いが一番長いですし……」
「アーラシュも世話焼いてるしなぁ」
そう言ってナマエちゃんが呼び出した英霊に言ってみる。ナマエちゃんがはじめての10連でサーヴァントを二人呼び出した。まぁ、私とマシュがアーラシュとヴラド公だけじゃ大変だろうと言った結果である。サーヴァント二人は事足りる的な顔をしていたのだけども、ナマエちゃんの護衛もいるしという話でまとまったらしい。それがまぁ、アルジュナとカルナなのである。些細な喧嘩はするが、さすがに命の取り合いはしないらしい。
「あとナマエさんは見るからに年下の方以外は若干人見知りかと」
「それだ」


「あの、そういうわけではないんです……信頼してないとか、そういうわけではなく、ただ、あの、」
そうあわあわしているナマエちゃんは可愛らしい。何だ。どうしたんだ、と思えば、そういえばアメリカの特異点でわちゃわちゃしてたな、と思う。うー、といいながらナマエちゃんはアーラシュをみる。アーラシュは「マスター、そういうとこだぞ」と言った。
「たがわからんでもない、確かにマスターはアーラシュに比重をかなり置いてるところがある」
「君にも結構置いてるように見えるけどね」
新茶の言葉に、ヴラドさんは当然だろう、と告げた。
「余はアーラシュがいない状態で呼び出されたサーヴァントだ。まぁ途中から来たが」
「どういうことです?」
「あぁ、そうだった、そうだった、別のアーラシュが特異点にいたからいつもいるアーラシュが召喚できなかったんだった」
「ならマスターあの二人を置いて行くぞ。二人に頼れない状態を作ればいいんだろう?」
カルナさんの言葉にナマエちゃんが困ったように二人をみる。そういうところだぞ、マスターとヴラドさんとアーラシュが告げた。

まぁ、別のサーヴァントが来るたびにそれは起こるのだが。

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「あんまり魔術はつかいたくないんですが、今回ばかりは仕方ありませんね」
そっと息を吐いて相手を見つめる。あんまり魔術は好きではない。なぜなら死霊魔術に似たそれだ。体を無理やり動かすそれは冒涜だと私は思うのだ。しかしながら、こうなって仕舞えば仕方がなかった。最優先されるのはマシュとリツカちゃんの生存である。私は彼女らの(知れ渡ることのない)英雄譚の一部にしかならずーー消えるのだろう。何ができるのか、と問いかけた相手に時間を稼ぐぐらいはと告げる。
「令呪をもって、命令します」
そうそっと口を開く。傷だらけの彼彼女らは意を決してこちらを見た。
「リツカちゃんとマシュちゃんを連れて安全なところまで撤収してください。時間は私が稼ぎます」
「えっ」
そう声を漏らした彼女らに、驚いたような顔をした彼らに笑みを浮かべる。さようなら、と言う前にそっとフルートに唇をつけた。

「まだ生きている」
アーラシュはそう言って何度も後ろを振り返る。繰り返される確認、私の頭は真っ白だった。彼らは消えてない。なら、ナマエちゃんが生きているのは確かだった。どれぐらい距離が離れたかはわからない。ただ、かなりの距離を移動したとわかる。怖くて震える。それはあの敵への恐怖ではない。身近な人物が死ぬかもしれないと言う未来にたいしての恐怖だった。そうしてようやくついた安全な場所に、彼らはまた元に戻る道を見るのだ。
「マスターは死んでない」
そう、言い聞かせるように。

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パキリと言って壊れたフルートに、周りの敵は動き出す。今度は歌声に魔力を込めればまたそれらは動きを止めた。しかしながら、それは私の声が枯れて仕舞えば、私の魔力が枯渇して仕舞えばまた動き出すのだろう。時間の、問題だ。

そう、時間の、問題なのだ。浮いた足。浮かべている愉悦の笑み。感じる息苦しさ。このまま首の骨を折られて仕舞えば、私はいとも簡単に絶命する。そっと相手を見つめる。そな化け物じみた大きな手に手を触れる。その手に残った魔力を注げば、それはただ目を見開いてーー。
ぷつり、と意識が途切れる。死ぬんだろうか、と思う。あの暖かなーーあの、暖かな場所に戻れるのであればそれで構わない、のかもしれない。

真白の世界の彼は言う。おつかれさまと笑みを浮かべて。私はそれをみてわらう。そうして、穏やかな眠りにつくのだ。


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穏やかな夢だ。あまりに穏やかな。窓からは暖かな陽射しが差し込んでいる。まるで童話の始まりのように、ソファに座った祖父は私を見下ろした。
「お前は婆さんにとてもよく似ているね」
彼はそう言って私の頬に触る。擽ったくて笑えば、彼はフッと息を漏らした。
「お前は死なない」
「お爺様は時々、変なことをおっしゃいます」
クスクスと笑って彼を見る。人はいつか死ぬものですよ。そういえば彼は目を見開いて、ナマエは賢いなと笑った。
「でも、それは間違いだ。お前は死なない」
「どうして?」
「ナマエには難しいだろうがーーただの、おまじないさ」
彼はそう言って私の手に手を添えた。
「君は、死なない」
そう笑った祖父にゾクリとしたような感覚がする。その手を離してもらおうとすれば彼は笑みを浮かべたままだ。やっと離れた手に、そのまま駆け出す。祖父は笑いながら、追いかけっこかい?と尋ねてーー追ってくる。物陰に隠れる。チクタク、チクタク、時計の音がする。足音がする。私を呼ぶ名がだんだん違う名に変わる。目の前に現れたのはいつかあの紐育でみた私だ。彼女はまた悲しげに私を見下ろす。私はか細く名を紡ぐ。祖父がやってきて私を見下ろした。
「助けて、アーラシュさん」
あぁ、どういうことだろうか。今の私が呼んだのはあの人なんかではなくて。
あの、ペルシアの大英雄なのだったから。

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声が聞こえた。フッと景色が真白にかわり、ぼやけた視界にはアーラシュさんが見える。
「あー、らしゅ、さ、ん?」
「!マスター!!」
彼から目を周りにうつす。先程の場所には違いない。ただ、相手をしていた相手はいない。
「……ねむたい……」
「寝るなよ。とりあえず合流するからな」
「さっきの……ひとは……?」
「サーヴァントなら倒した。マスターがだいぶ弱らせてくれたみたいだからな」
「……あーらしゅ、さん、だけ?」
「残念だったな、他はリツカ達といる」
彼はそうニカリと笑い私を抱き上げると森の中を走り出す。うつら、うつらと眠りにつこうとすれば、彼は声をかける。
「マスター、レイシフトから戻ったらまたあの曲吹いてくれよ」
「あの曲、?」
「あぁ、ペルシャの民謡だって言ってた曲だよ」
「……うん、」
「だからーー……だから、その目を閉じてくれるな」
そう私を抱き寄せた彼はまた前を見る。私はただ、その顔を見つめた。

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「馬鹿、ナマエちゃんの馬鹿」
そう泣きじゃくる私に大怪我をしている彼女は目を見開いた。馬鹿、馬鹿馬鹿馬鹿、そうなんども彼女に告げる。マシュもぼろぼろと涙を流す。アーラシュに抱き上げられてる彼女はそっと私達に手をのばした。
「ぶじで、よかった」
そう微笑んだ彼女は私の頭を撫でる。もう立てるよ、とアーラシュに告げた彼女にアーラシュはゆっくりとおろす。ふらつきはしたけれど、彼女はアーラシュを支えに立つ。ナイチンゲールがよっていった。彼女がしばらくレイシフト禁止になったのは仕方がないことであるし、彼女のサーヴァント達や私達が過保護になるのも仕方ないことである。

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「あれ?ナマエちゃん、フルートは?」
「この前ので大破してしまって」
そう苦笑いする。あのフルートには無理をさせてしまったと思う。真っ二つとはいかないが、結構粉々になってしまったし。えっ、と動きを止めた彼らに私は苦笑いするしかない。近くにいたマリー王妃が、残念だわ、と呟いた。
「ナマエがフルートを吹いているのを聞くのが好きだったのだけれど」
「というか、君どんな使い方したんだい?フルートを壊すなんて。管楽器じゃないんだから鈍器になんてなれやしないよ」
「あ、いえ、殴ったのではなく、フルートの音に魔力をのせて相手の動きを止めていたといいますか。私の家の魔術が死霊魔術に近いものがあるので」
「へぇ……これは驚いた。きみの魔術ってそんなえげつないのだったんだ」
「人やサーヴァントは精々、動きを止めさせたりとか逆に力を増幅させるとかしかできません……父や一番上の兄などは完璧に死霊魔術の域なのですが、私は祖父の元にいたのでそうではないです。フルートは私の魔力を馴染ませてはいたのですが、前回のは負荷がかかりすぎたみたいで」
「そりゃあそうだろ」
「えっ?」
「あれ、安物だろ?」
断定である。普通の奏者なら聞くに耐えない音しか出ないそこらへんに売ってる安物、と告げたモーツァルトさんにああこの人はやはり耳がいいんだなと思う。たしかにその通りで母がかってきたそれは量販店で売っているもので一番安いものだ。
「キミのとこにサリエリいたろ。サリエリは何も言わないわけ?」
「うーん、吹いてるとジッとされてはいますが無言です」
「ふーん」
「そうだわ、アマデウス、ナマエにフルートを見繕ってあげて」
「えっ」
「だって、サリエリは何も言わないんでしょう?なら、貴方に頼むのが一番よ」
そう麗らかに笑った彼女は強い。とても強い。その笑顔は屈託もないし裏もないのだけれど、頷くしかないあたり強いと思う。

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「あれ、ナマエちゃん、新しい服?」
今日はお休みのナマエちゃんにそう尋ねる。彼女はニコリと笑って口を開いた。
「いつものことながら、ヴラドさんに刺繍が施された布を頂きました」
「いつものことながら、凝ってますね」
マシュがそう言ってナマエちゃんのワンピースをみながら告げる。確かに刺繍が入っているそれは凝っている。そう言えばナマエちゃんの部屋は中々あの破壊された場所に近かったなとは思ったりするわけで。しかしながら、彼女の服は最初から種類があったような気がする。
「前は自分で作っていたんですが、ヴラドさんが来られてからはおおかたを作ってくださるので助かります。着せ替え人形になりつつありますけど……」
「たまに公の趣味丸出しのやつあるよね。黒いのとか、ワインレッドとか」
「趣味かどうかはわかりませんが、ヴラドさんと二人でレイシフトする際はそう言った服を着るように促されます。今日はモーツァルトさんと出かけるので」
「……ん?」
「あ、フルートを見繕っていただくだけですよ」
そう言って彼女はパタパタとモーツァルトのところにかけた。

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ただ今のナマエのパーティー
・アーラシュ(初期からずっといる)
・ヴラド
・アルジュナ
・カルナ
・ネロ
・サリエリ

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「アルジュナさんもヴラドさんももう一人ずつ増えて、呼び方が困りますね」
「今更の話題だな、俺たちやエミヤさんかも複数いるだろ」
「私の所属の方でははなかったので……オルタさんもかぶりますし……うさじゅなさん?」
そう告げたナマエちゃんに私達は固まる。この子、今なんと?近くにいたクーフーリンのツボに入ったらしい。アーラシュが「おっ、いいな、わかりやすい」などと同調する。
「マスター、飲酒されましたね。アーラシュ、貴方が付いていながら」
「酒?飲んでなかったけどな」
「マスターがこのような物言いになるのは飲酒された時でしょう。それともーー酒の入った菓子を食べたか……」
「あー……酒呑童子に菓子もらったとは言ってたな……それか」
「じゃあ嬢ちゃん、こっちは?」
「ふつじゅなさん」
「マスター、私にあだ名はいりません。私はアルジュナのままで構いません」
「うさぎさん可愛いですよ」
「そういう問題じゃないです」

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「よくわかりませんがとりあえずパラケルスさんの仕業でしょうか」
小さくなったリツカちゃんとマシュを見下ろす。こちらをチラチラとみる二人は可愛らしい。頭を抱えているのはスタッフだけではなく、サーヴァントもである。エミヤさんも頭を抱えているうちの一人だ。
「いや、今回の理由はわからなくてな」
「悪いな、嬢ちゃんの負担がでかくなる」
「それは大丈夫です。困った時はお互い様ですし」
とりあえず目線を合わせてこんにちはと笑いかける。
「私の名前はナマエと言います。貴方達のお友達です。何か困ったことがあればおっしゃってください」
「あーい!」
そう手を挙げたリツカちゃんに、マシュちゃんが遅れて「はい」と手を挙げた。……可愛い。

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