2019/09/19
我々、一般市民ではありません!
我々、一般市民ではありません!
・大神妹と奏くんが現代トリップ後に従兄弟と偽ってマスターしてる話
・元ギャルゲー攻略できない妹キャラと乙ゲー(になりかけてた)二周目以降に攻略できる男キャラ
・アルジュナを引いてる妹、カルナと音楽系サーヴァントを引いてる奏くん
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「うるせー、俺みたいな凡才は努力するしかないんだよ」
そう言った奏くんに、アマデウスさんはケラケラ笑う。私がおもうに彼は海軍からいきなり指揮者に抜擢されているのだから、天才の分類になるのじゃないかとはおもう。凡才というのは私のことではと思うのだけれど。一緒にお茶を飲んでいるリツカちゃんが首をかしげる。
「ナマエちゃん、どうしたの?」
「いえ、奏くんは天才型だと思うのですが……昔は全く違うことしてましたし」
兄と加山さんに連れられて我が家にきた時は別の流派で姉と対峙していた気がする。まぁ、例のごとく吹っ飛ばされてたけど。あれは姉が英霊並みに強かったのではと思う。
「妹ちゃん、俺は天才じゃなくて付け焼き刃っていうんだぜ」
私が言葉に奏くんがそう返した。付け焼き刃というのは私のことでは?と首を傾げれば、妹ちゃんは天才の類いと釘を刺されてしまった。
「あれ、ナマエも音楽を嗜むの?意外……でもないか!奏よりはやってそうだし」
「あの子はフルートと声楽だぞ」
「私は声楽ではないですよ、もっと別の何かですし……それこそ付け焼き刃です」
「歌上手いの?」
「音痴ではない、というぐらいです」
そう苦笑いしてティーカップに口をつける。今日の紅茶も美味しい。
=
「妹ちゃん結構人たらしだからな。年上の男魅了スキル持ち、みたいな」
「その表現、酷くありません?」
「妹ちゃんは病弱妹キャラだから」
そう親指を立てた奏くんにムッとしてぽこぽこ叩く。妹キャラでは!ありません!と抗議したところで意味はなさそうだが。
「奏、マスターをからかわないであげてください」
「アルジュナさん、もっと言ってあげてください」
「奏も案外カリスマか何かは持っていそうですが。それより……マスターが病弱?」
おっとアルジュナさんはそこに食いついたか、と苦笑いする。元気ですよ?とガッツポーズすれば、奏くんが口を開いた。
「うーん、妹ちゃんはちょっと特殊な体質でな。れいりょ……空気中に含んだ魔力を溜め込んだりしちまうんだよ。ある意味霊媒体質ってやつ?ただ、上限があるから上限が来るかある一定までなくなればと高熱が出るわ、動けなくなるわ、だぞ。まぁ、サーヴァントがいる限り大丈夫だろ」
「奏くんも大丈夫じゃなくても大丈夫って言ったり無理をしますよ」
「俺は大人だからいいの。ナマエちゃんは子供だろ」
そう釘を刺した奏さんに、私はムッとする。たしかに今の私は17.8歳ぐらいのすがたである。それに比べて奏さんは20歳ぐらいの姿だ。
「ま、面倒見てやってくれよ」
そうひらりと手を振った彼に、私は子供ではないんだけどなぁ、とおもう。アルジュナさんは私を見下ろして無理はしないように、とくぎをさした。
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妹ちゃんは大神に似て人たらしなところがある。するりと人の領域に入るというか、なんというか。気づいたら懐かれているとはよくあるのだろう。だから、恐らくこの男もそうなのだろう。知られたくない一面があるだろう男は、いつのまにかいた妹ちゃんに戸惑っている。見られたくなかったからこそ、こんな奇行に走っている。しかしながら、加山を見る限り妹ちゃんはそんな部分も覆ってしまう(もしくは許してあげる)あたりやはり大神の妹だなぁと思うのだ。そっともう一人のアルジュナを抱きしめた妹ちゃんの映像に俺は目を伏せたのだけど。
「妹ちゃんは強いんだぞ。人を許せるんだ。大体のやつならな。それでいて意外と頑固だ」
そう言えば、カルナがこちらをみた。まぁ、ヒロイン達の中にいたのだから当たり前かもしれない。俺のかなり薄まった記憶では、妹ちゃんが攻略できなくて最終加山にとられて嘆く大人の姿が浮かぶが、まぁ、それはおいておく。
「まぁ、妹ちゃんに救われた人間は少なくないだろうさ。あの人魚姫が大きくなっちゃって、まぁ」
「人魚?ナマエは人魚なのか?」
「物の例えだよ」
そうわしゃわしゃとカルナの頭を撫でておく。まぁ、妹ちゃんがリツカと問題児ホイホイになっていくのは余談だ。
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見事に外堀を埋めたな、あの英霊。そう頬杖をついて思う。妹ちゃんは他の英霊が落ち込んでいるとはてなをたくさん浮かべているが、まぁ、なんだ、自覚がないのがタチ悪いというか。あの英霊は案外加山と根は似ているらしい。
「妹ちゃんがアルジュナとだいたい一緒に行動してるからだろ。妹ちゃんのおはようからおやすみまで提供はアルジュナ」
俺の発言に藤丸とリツカが笑う。いや、お前らも他のサーヴァントからそうされてるだろうと思ったが、俺もジャックにそうされている気がする。なぜ懐かれた。
「アルジュナ、そんなことするの?」
「確かにアルジュナさんに起こされたり寝る前に会いに来るのもアルジュナさんですね」
「わ、本当におはようからおやすみまでじゃん」
藤丸の言葉に、アルジュナが咳払いしながら現れる。
「癖のようなものですよ、私しかいなかったころのね」
「ね」
「なら他のサーヴァントにおはようからおやすみまで譲ってやったらどうだ?」
俺の発言に少しムッとしたアルジュナであるが、妹ちゃんがじゃあアルジュナさんは少しおやすみしてもらいましょうか?と首を傾げる。アルジュナが何か言い出す前にトントン拍子で周りが話を進めていきーーアルジュナには一週間の休みが課せられたのである。
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「なんていうか、やっぱりアルジュナさんの隣は落ち着きますね」
爆弾発言である。アルジュナ抜きの一週間を過ごした妹ちゃんであるが、アルジュナに会うなりそう告げた。アルジュナが嬉しそう、というより勝ち誇った顔をしたのは気のせいではない。
「そうですか。私も落ち着きます」
「?そうなんですか?私といると、アルジュナさんは忙しいのでは?」
「いいえ」
そんな様子を眺めながら一言。
「……お互いがお互いの外堀埋めてるって恐ろしいな」
それが無自覚であれ、有自覚であれ。俺の言葉に藤丸が「あれは無意識カップルというんですよ」とゲンドウポーズで告げた。前から思ってたがこいつ結構オタクだな。
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ナマエちゃんも奏さんってあんまり怒らないよね、とリツカが告げたが俺も妹ちゃんもそこそこ長く生きているが故だろう。まぁ、妹ちゃんは俺より先に死んだ気がするが、それにしてもあの二人や一部の英霊よりは長生きしているのだ。
「まぁ、俺はともかく妹ちゃんがマジギレするって相当のことがあった時だぞ。怒るのは偶にある。妹キャラっていったり、妹ちゃんの菓子を勝手に食べたら怒る」
加山がよくからかっていたなぁ、と思う。ぽこぽこと叩いてくるのが可愛いとかなんとか惚気ていた気はしないでもない。確かにムッとした表情とかはさすが舞台女優だけあって様になるし。ぽこぽこと叩くのも手加減されているらしく痛くはない。
「奏さん、お菓子勝手に食べたの?」
「残ってたんで、ついな」
「意外に甘党なんだ」
「お兄さんは好き嫌いがないといってほしいな」
そう笑ってワシワシと頭を撫でてやる。サーヴァントが俺を呼ぶ声がして、リツカに一言投げかけてそこを離れた。
=
「そういえば、何故妹ちゃんと?」
最近やってきたシェイクスピアがそう尋ねる。ダチ兼従兄弟の妹だからといえば彼らは目を瞬いたが。
「まぁ、なんだ……妹ちゃんの兄、俺、もう一人で友人やってたんだが、もう一人が妹ちゃんって呼んでたからうつった」
俺の言葉に近くでレポートを書いていた藤丸が目を瞬いた。
「ナマエちゃんってお兄さんいたの?」
「かなり人たらしのな。絶対殺傷沙汰修羅場になるだろっていう雰囲気でもならないあの不思議よな」
ケラケラと笑いながら告げ、俺は楽譜に目を移す。エリザベート嬢の曲をデスメタル風にしたら怒られるだろうか。デスメタルアイドル、ありだと思うのだが。
「ならマスターの初恋はお前かそのもう一人あたりか」
「もう一人だな」
ポロっと出てしまった言葉に、あ、と思うが本人は気にしていないと思われるし、俺じゃないと否定しても同じだろう。シェイクスピアが素早く筆記用具を構えた。
「詳しく」
「詳しく……っつってもなぁ……あの子、昔は体が弱い原因がわからなくて家からほとんど出れなかったんだよ。で、もう一人が無自覚に一目惚れして気にかけて外に連れ出した。妹ちゃんはそいつと接したうちに惚れた、だった気がするんだが」
「じゃあ彼女は未だ思い続けているわけですな?それとも男が振りました?」
「いや……くっついたけど、人理云々以前に死別した」
妹ちゃんと最初にあった時、死んだと思ったらこちらにいたと言っていたのでそういう解釈で合っているだろう。目を見開いた周り。ぽつり、とアンデルセンが口を開く。
「……あのマスターがやけに大人びていると思ったら」
「大人だ……ナマエちゃん大人だった……」
「これはこれは……詳しい話を聞きにいきますか!」
そう立ち上がったシェイクスピアに、期待外れの返答しかこないんだよなぁと思えば妹ちゃんとリツカ、マシュとサーヴァントが通った為速攻拉致られたが。
=
いきなり引っ張られたと思ったら、私の初恋を聞かせてほしいなどと言われたので奏さんを見る。奏さんはもくもくと作曲している。ふーむ。
「奏さんに聞いたのでは?」
「お兄さんのご友人に初恋、成就したら死別とまではお聞きしました!」
死別、は、確かに正しい表現である。が、彼らは当たり前であるが私が置いていかれたと思っている。そもそも私に昔の記憶、転生前の記憶があることはアルジュナさんしか知らない話だろう。なので適当に話を合わせるとする。
「そうですね」
紛れもなく私の初恋は彼であるし、彼と死別したのは確かだ。
「それで、どんな気分でしたか!?相手と死別した時は!」
「どんな気分、は、難しいですね。あの人は私を安心させるために涙など流さなかったし、最後まで優しいこえをかけてくださっていたので……最後の一瞬まで満ち足りてました。この人を愛してよかったとは思いました。きっと、私の悲しみもあの人が奪っていったんですよ」
そう笑んでおく。
「悲しくなかったの?」
「そうですね、悲しいです。今でも、時々、夢に見てはその時の幸せにすがりつきたくなります。でも、その悲しい一瞬よりも、彼がくれた喜びとかそういうものが大きいですし、昔の幸せにすがってしまえば今出会った人たちのくれる幸せを蔑ろにしている気がするので」
しばらくの静寂である。目を瞬いている彼らに私は首を傾げる。奏くんがカリカリとペンを動かしながら口を開く。
「だから期待ハズレだっていったろ」
「ところで奏くんはすごい賑やかそうな曲を作ってますが、もしかしてエリザベートさんの?」
私の言葉に周りはギョッと彼をみる。
「おー、デスメタル風にしてやったぜ……デスメタルアイドル。新しいジャンルだろ」
遠い目をして奏くんが告げる。まぁ、彼女の歌声はなんというか特徴的だからなぁ、とぼんやり考えてみる。
「一部がくせになりそうですね」
「そうだな、そうであればいいと俺は思う」
この作曲家、投げやりである。
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前世があると思うか。そう問われたら私も奏くんもイエスと言わざる得ないだろう。しかし、それがこの世界の歴史かと問われればノーとなるのは間違いない。奏くんと二人で調べてみたが、降魔関係の事件が陸軍海軍のいざこざになったり知らない大きな大戦があったりとしたようである。だから、アルジュナさんに説明をした際は特異点のような場所だと説明するしかなかった。それが一番わかりやすい説明だったのである。
「私は残した側だからあんな言葉を言えるのかもしれませんね」
そうチクチクと布に糸を通しながら告げてみる。私の作業を何をするもなく眺めていたアルジュナさんはこちらをみた。彼は私の言葉が何を指しているのかわかったのだろう。
「あの人は、幸せに生きたんでしょうか」
「……えぇ、きっと」
そう笑んだ彼は優しい人である。
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「アイドルはジャンルが違うような……」
とは、エリザベート嬢とネロ嬢のライバル発言を受けた妹ちゃんの台詞である。確かにそうで、妹ちゃんは舞台女優というか、花形すたぁなのでアイドルとは少し違う……いや、ブロマイド売ってるから一緒か?
ちなみにエリザベート嬢のデスメタルアイドルはボツになったが楽曲は採用され、癖になるどころか失神者が出ることになった。殺す気か!とロビンに言われたが、俺はそういうのを回避したかったのである。閑話休題。
「しっかし、妹ちゃん、巻き込まれてんな」
そうゴタゴタしているステージのような場所を見る。困っている顔をした彼女は大きく息を吐いたようだった。そして聞こえてきた美しい歌声に、懐かしい歌に目を伏せる。あの子も俺も結局、あの延長戦を生きているのである。
==
「ナマエ嬢の歌を聞いた?そりゃあうまいだろ、あの子知る人ぞ知るプロだし」
そう告げたのはスタッフである。え、と彼を見れば、別のスタッフは彼をみて、お前の推しだもんなだなんて言葉を吐いた。
「ナマエちゃんがプロ?」
「あぁ、世界を巡業してる歌劇団があるんだけどよ、そこの娘役。なおかつ、メンバーが国によって変わるはずなのに、東京・巴里・紐育と三つの都市でメインに組み込まれてるんだよ。去年、ちょっと休業するって言われて、意気消沈したらここにいたから運命かと思った」.
「奏さんは?」
「アイツは確か、その歌劇団の作曲とか指揮とかやってるやつじゃなかったか」
そうごそごそ彼はバインダーに綺麗に飾られているチラシを見せる。指さされたそこにはやはり二人の名前はあった。
「はぁ、俺も聴きたかったぜ、ナマエ嬢の歌」
だから、ジャンルが違うのか!
==
「大神ちょっと歌ってみて」
クマを作った奏くんがそう告げる。食堂である。私の苗字を大神(昔の苗字であるが、今のステージネーム)で呼ぶということは相当疲れているらしい。手渡された曲には歌詞などついていない、が、恐らく主旋律を軽く歌えばいいんだろう。ということで軽く歌う。一通り歌い終えたら、彼は「妹ちゃんはいいんだよ、妹ちゃんはこれで充分になるから!」と顔を覆った。あぁ、なるほどエリザベートさんの新曲、と思う。
「これをロック調に変えてみては?」
「それだ!」
勢いよく顔を上げた彼は別の紙にそれを編曲していく。私はお昼ご飯に戻るとする。近くにいたロビンさんが奏くんの紙を取り上げようとして、奏くんに怒られた。
「奏くん、作曲してる最中は機嫌悪いからそっとした方がいいですよ。特に何か思いついてる最中は」
「それをはやく聴きたかった」
「曲作りを止めるなら、作る前に止めないと」
「しっかし、どこの人魚が歌ってんのかと思えば、オタクだったわけね」
「人魚?」
「偶にマスターが鼻歌を歌ってらっしゃるでしょう?それを聞いた周りが噂をしていただけだと思いますが。それとも、マスターを口説きたいか」
「私を口説いて何になるんです?」
そう首をかしげる。彼の本命はリツカちゃんではなかろうか、とは私の読みである。それをみてロビンさんはがっくしと肩を落とした。
「鈍感か……」
「いや、そうではなくて、ロビンさん、どちらかというと、リツカちゃんの方を気にかけてらっしゃるので、私を口説く意味とは?と思っただけです」
「リツカは世話がかかるっていうか……」
ガシガシと頭をかいた彼にニコニコと笑っておく。彼はウッと身を縮めたが。
==以下はサクラとクロスしてみた没
いやまさかそんな。
そう思いながら頭を抱える。無人の街並みであるが、見覚えがある。パリだから、といえば聞こえはいいが、一度訪れたフランスのパリとは時間が違う。というか、そもそも現実に、シャノワールはない。しかしながら目の前にあるのはシャノワールである。奏くんが私を凝視するので私はそっと顔を背ける。しかしながら小さな物音がして開いた扉に振り返れば見知った顔がこちらを覗いた。
「ナマエちゃん……?」
「シーさん?」
そう尋ねれば彼女はパァッと目を輝かせて、ナマエちゃん、来てくれたんだね!と私に抱きついた。今にも泣き出しそうな彼女の頭を撫でる。
「……エリカさん達は?それにこれは一体……」
「それが、」
「シー?どうしたの?」
そう顔を覗かせたのはメルさんである。ナマエさん?と目を瞬いた彼女は、私達にすぐに中に入るよう促した。
中は何一つ変わっていない。そこを見渡していれば、メルさんが口を開く。
「ナマエさん、無事にお会いできてよかった……しかし、どうやって巴里に?」
「と、いうと?」
「今の巴里は出ることも入ることもできないようなんです。貴方のお兄さん達が調査をしたのですが……」
「えーと、最新技術をつかって……?」
そう首をかしげる。最新技術、と目を瞬いた彼女らにレイシフトを説明したところで意味はないだろう。
「変なことをきくが、今何年だ?」
「……こちらは?」
「帝国華撃団奏組の苗字奏だ。で、こっちが俺の部下の藤丸リッカとその他多勢。こっちが候補生の藤丸リツカとマシュとその他多勢」
ざっくりと名乗った彼はほかに余計なことを言わないように逸平する。メルさんとシーさんはそれを聞いて安心したようである。
「貴方が混乱するのも訳ありません。ここは何年でもありません」
「あの、それはどういうことでしょうか?」
「人によって認識が違うのです。姿は一貫して1929年ごろだと思うのですが、記憶がまちまちというか……しかし、街の人は同じ年代です」
「街に人が?」
「今はみんな眠ちゃってるの……マダムや大神さん達も」
「起きてるのは二人だけ?」
頷いた彼女達は、だから、このままどうしようって、と目を伏せた。
「……それで、兄は?」
「こちらです。みなさん、色々な部屋に寝かしています」
「妹ちゃんは行ってきな。俺は色々と共有しとくから」
そう促した奏くんに頷く。しかしながら、一人は心細いので色々と知るアルジュナさんを連れて行くとする。
たしかにお兄ちゃんは寝ている。傷だらけの体は恐らく彼が最後に眠ったからだ。そっと手を取って、彼の中の何かを抜き出そうとする。あまりこれをすると体の調子が悪くなるが、事情を聞くにはそれが一番いいだろう。感じた物は見知った感覚だ。目を閉じて魔力ーー霊力を注ぎ込む。呼吸が整った彼に手を離した。
「!呼吸が楽に!」
「ただ、あんまりこれをすると私が倒れてしまうので」
そう苦笑いして息を吐いた。
「また怪人が?」
「はい、それも前よりも力が増えていて」
「怪人……というと、ます……ナマエさんに聞いた存在ですね」
「はい、巴里で暴れた存在です。花組の活躍でいなくなったはずなんですが」
彼女の言葉にこれは嫌な予感がするぞ、と思うと同時に、もしかしてループくんがいるのでは?とも思う。もしいるのなら彼に協力してもらえないだろうか。悶々と考えながら、みんなと合流するために向かう。投げやりな奏くんが見えて少し心配になったが。
「妹ちゃん、大神は?」
「兄の中の嫌なものは取って、私の霊力を注ぎ込みました。明日には目が醒めるかと思うのですが」
「妹ちゃん、それ、あんまりやるなって言われてるだろ」
「兄を目覚めさせた方が色々と早いと踏んだまでです」
「起きたら大神が怒るぞ」
「寝てる方が悪い」
バッサリとそう言えば奏くんが頭をかいた。まぁ、その瞬間、サイレンが鳴るのだけど。
==
「ナマエ?」
そう目を見開いた兄に、寝起きの私は目をこする。どうやら彼は予想通りに起きたらしい。果たして彼はいつの時代の記憶を持つ兄なのだろうか、と考えてみる。こちらによってきた彼は、そうか、と自分が起きた理由を察したんだろう。だから、怒る。きっと、怒る。
「ナマエ!なんてことを……!」
「なんてことを、じゃない。お兄ちゃんが目を覚ましてなかったら、みんなが目を覚ました時に不安になるでしょ」
「ナマエ!いけないんだ!こんなことは!」
そう怒った彼に、あぁ恐らく彼はーー彼は私が死んだ記憶を持っているのだと察した。そうでなければ彼はここまで怒らない。
「知ってる。でも、お兄ちゃんーー隊長しか状況がわからない、隊長が一番の司令塔になりうるから起こした、ではいけませんか」
わざと敬語で突き放す。
「メルさんとシーさんしかいないんです。彼女たちもよくわかってない。貴方の方がきっとわかってる」
そう告げて彼をみる。彼は眉間にシワを寄せた。
「ナマエさん、目覚められたのですね」
「アルジュナさん」
「今迎えに向かおうとしたところなんです」
そう行ったアルジュナさんに、ありがとうございます、とお礼を告げる。兄は少し目を見開いてー首を傾げた。
「お兄ちゃん?」
「いや、ナマエの霊力と似てる気がしただけだよ……彼は?」
「アルジュナさんです。回り回って私の護衛をしてくれています。アルジュナさん、こちらは私の兄の大神一郎です」
「ナマエさんにはいつもお世話に」
「……いえ、妹がお世話になってるの間違いでは?」
苦笑いしながら告げた兄に、私は「後は奏くん達もいるよ」と言えば兄は目をパチパチと瞬いた。
=以下はクロスゾーンな没。
「ナマエちゃん!?」
「加山ちゃん!?」
「ナマエちゃん!」
「ナマエ!?なんでここに!?」
そう呼ばれた名に私は頭を抱える。いや、なんか嫌な予感がするなぁと思ったのだ。藤丸くんとリツカちゃんが熱を出し、スタッフにも風が蔓延し出したため奏さんはマシュとスタッフの補助、そして、私だけがレイシフトするのだから、嫌な予感ははっきりいってしていたのだ。アルジュナさんが私をみる。私のサーヴァントは私の色々を知る人達だから良いけれども、スタッフはそうじゃない。
「マスターの知り合いですか?」
「この前話した私の兄です」
そう告げた瞬間アルジュナさんは目を瞬いた。ツカツカとこちらにやってきた兄はナマエは帝都にいるはずだろう!?と口を開く。
「えーと、あの、あのね、お兄ちゃん、話を聞いてほしいんだけど」
そう頭を抱えながら告げれば、ピピッという音とともに通信がはいる。
「おっとやっと繋がっ……なんで大神がいるんだ」
「……苗字?」
「よぅ、別世界の首席、別世界の万年三席こと苗字奏だ」
そう言った奏くんに私はなにもいうまいと口を紡ぐ。兄が周りを見渡して首を傾げた。
「別世界?」
「俺と目の前の妹ちゃんはお前たちの記憶があるが、今生きてるお前たちの世界の俺たちとは他人だからな。俺たちは俺たちであるが、主席と次席が毎日関わってるであろうナマエと俺は帝都にいると思うぞ」
ざっくりっした説明であるが、そうとしか言いようがないのだ。しかしながら兄は「ナマエと奏には変わりがないんだろ?」と言い出した。これだから兄は……と思ったらピロリンと音がする。好感度の音、仕事しなくていいから。兄の後ろから顔をのぞかせているのは知らない人達である。
「えーと、私達はとりあえず、この特異点……おかしなことの調査に来たんです。こちらは……アーチャーです」
そう告げればアルジュナさんは頭をしずしずと下げた。狐耳が生えた女の子が口を開く。
「調査、ということは別世界の森羅みたいなものかのう」
「これは興味深い!」
聴こえてきたダヴィンチちゃんの言葉に肩を跳ねさせる。
「ダヴィンチちゃん……」
「別世界のカルデアみたいなものか。それとも、カルデアの日本支部がそう名乗っているのかはわからないけれども協力するに越したことはないね!」
ケラケラ笑いながら告げたダヴィンチちゃんに、苦笑いする。
「誰かいるの?」
「えーと、奏くんとマシュちゃん、ダヴィンチちゃん……他にもスタッフさんが私達をモニター兼ナビゲートしてくれてます」
「無線みたいなものかしら」
「そうだね、そう捉えるのが一番いいかもしれない。とりあえずカルデアは森羅だっけ?君たちに協力しよう」
「おいしい話には裏がありそうだが」
「簡単な話さ。事件の収束をはやくして、妹ちゃんに帰ってきてほしい。ただでさえこちらは今人員が不足していてね。本来なら4人で行ってもらうのを1人で行ってもらってるから」
「ちなみにその1人が俺な。スタッフと後の2人が風邪をひいたタイミングでこの特異点が現れたってわけだ。敵意はない」
そう告げた奏さんに、お兄ちゃんの周りはそうかと納得したようである。ふむ、優しい人達だ。
「よくわからないけれど、ナマエちゃんも一緒に戦ってくれるのね!」
「わーい!心強いです!」
「よろしくね!」
そう告げた彼らに頭を抱えたくなる。アルジュナさんはちらりとこちらを見下ろして一歩前にでてくれた。彼らは味方だと首を振ったが彼は引き下がる気はないらしい。うーむ。
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「簡単なことよ、彼、人間じゃないわ。魔力はナマエちゃんとほとんど同じね」
「だからどうだというのです。私は彼女を守ります。それが私の勤めですので」
ツンツンしているアルジュナさんを宥める。困ったように見上げれば、彼は息を吐いたが。
「マスター、他も散々言ってますが、もう少し警戒することを覚えてください」
「むっ、敵には敏感ですよ」
「そういう意味ではありません」
「やめとけ、アーチャー。妹ちゃんのそれは兄貴譲りで治らない」
「俺はナマエほどじゃないよ」
「私は兄ほどではありません」
「あなた方が善性を持つのはわかりましたが、張り合わないでください」
スパッと言ったアーチャーは息を吐いた。機嫌が悪いのだろうか、と思ったら、なるほどヤキモチかな、とダヴィンチちゃんが告げた。
「久しぶりにナマエちゃんと2人だけで長期レイシフトかと思ったら、その他多勢がいたから機嫌が悪いね!」
「レオナルドダヴィンチ、帰ったら覚えておいてくださいね」
「おっと、じゃあダヴィンチちゃんは黙るとしよう」
プツリと切れた通信に、アルジュナさんがこちらを見下ろす。幻滅しましたか?と尋ねた彼に首を振った。
「いえ、私も今回のレイシフトは楽しみにしてたので。また2人でレイシフトしましょう?」
「えぇ、必ず」
「これは間違いなく大神の妹だな」
そう告げた有栖さんに兄妹で首をかしげたけれど。兄はもっと酷い気がする。ジルさんが首をかしげる。
「恋人なの?」
「……いえ、彼女は私のマスターです。私は彼女の1番のサーヴァントなので」
「アーチャー、その発言に皇帝他ナマエと契約してる奴らが怒ってんぞ」
奏さんがざわめきを背後に迷惑そうに告げる。私はごめんなさいととりあえず謝っておいた。マスターが謝ることではないでしょう、と言われたけれど。
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「アーチャー、もう1人増やしましょうか?」
「いえ……人がいる場所で混戦というのが気を使うだけですから、大丈夫です」
それならばいいが、と息を吐く。うーむ、たしかに今まではサーヴァントの混戦だったが今は完璧に人との混戦だ。気を使うのは確かだろう。しかしながら、ことはなかなかおおごとそうである。他にも英霊を呼ぶことも視野に入れなければならない。彼の手を取り魔力を入れて回復をはかる。ありがとうございますと彼は笑んだ。
「ほうほう……褐色青年の執事とお嬢様的なラブロマンス」
ニヤニヤしている小牟さんに、実際は彼は王族なんだよなぁと思う。アーチャーと告げたからそれ以上は言わないが。兄以外の歌劇団関係が赤面しているが、手を繋いでいるだけである。
「ナマエちゃんが大胆に……!」
「えっ?」
「こっちのナマエが見たら驚くだろうなぁ」
そんなに私はウブだったんだろうか。首をかしげる。アルジュナさんも首をかしげた。
「しかし、アーチャーさんの武器は興味深いですね。弓矢と聞いて少し心配していたのですが」
「銃以上の火力だろ、アレ」
アリサさんとゼファー君の言葉に、まぁ普通の弓矢を想像したらそうなるよなぁと思う。しかし、それをいうとフレンさんやユーリさんもその類だと思うのだ。
「アーチャー……射手を名乗るだけのことはあるな。王国にスカウトしたくなる」
「あれ、名前だと思っていたんですが、そちらの意味でしたか?」
クロムさんとルキナさんの言葉に、周りが首を傾げる。
「彼のようなサーヴァントは真名を隠すのが普通なんです」
「じゃあ、ナマエはソイツの名前を知らないのか?」
「いいえ、私は知っています。真名を晒すことは弱点を晒し出すことと同じだと考えられているので」
「なんでだ?」
「なんでって……例えば、兄が大神一郎と名乗らなければ、華撃団の隊長とも海軍にいることも誰もわからないでしょう?顔は知らなくても名前を聞けば情報がわかることもありますし」
まぁ、でもカルデアでは結構みんな名前を名乗っているけれど。
「名前が知られちゃ困るっていうことは名前が知られてるのね」
「マスターの世界と似た世界ならば、という言葉が付きますが。まぁ知る方知らない方、色々でしょう」
まぁインドあたりの国籍の人はいないからいいだろうけど。
==
うーむ、やはり聖杯が関係していそう、なので、情報を共有しようかと思いながらアルジュナさんと有栖さんのところに向かう。通信が不安定で繋がる場所と繋がらない場所の差がひどい。丁度、結構リーダー格の人が集まっていたらしい。こちらに気づいた春麗さんが、あら、ナマエちゃん?と首を傾げた。
「おそらく関係していそうなので皆さんにお知らせしとこうと思いまして」
そう告げれば彼らは首を傾げた。
「えーと、私達は有栖さん達と似たような組織だと最初にお話したんですが、私達が調査するゆらぎーー特異点というのです。私達はその特異点を調査、原因を回収することによって特異点をなかったことに戻しています」
「ゆらぎの原因?」
「私達の世界には聖杯と呼ばれる代物があります。どんな願いでもかなえるというものです」
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